2019年12月

2019年12月28日 19:27

今年は、5月1日に元号が平成から令和に代わり、新しい時代が始まりました。思えば昭和から平成に元号が変わった時は、大学受験の時でした。平成元年に大学にめでたく入学しました。平成の時代を振り返ることは、自分自身の大学から社会人となった今日までの歩みを重ねて振り返ることにもなり、様々な思いがこみ上げ、いろいろと考えさせられました。
ところで、2024年度から新しい一万円札に渋沢栄一さんが登場します。私は大学時代に東京都北区王子に住んでいました。近所には飛鳥山公園という東京の桜の名所があります。今でも春には、時折当時を懐かしみ花見に訪れます。実は、この飛鳥山公園に渋沢栄一さんは居を構えていました。公園には渋沢史料館もあります。(現在史料館は改装中で休館しています。)
 ちなみに、飛鳥山公園は徳川幕府の8代将軍徳川吉宗公が享保年間に「江戸の庶民にも桜を楽しめるようになってほしい」ということで多くの桜の木を植え整備をしたところです。また、王子には若き日の田中角栄元首相が学んだ中央工学校という専門学校もあります。
 当時、私は渋沢栄一という人物を知っていましたが、その偉大さがわからず、「公園には散歩に行くが、史料館にまでは行かない」という今考えればもったいないことをしていました。視野が狭かったのか浅学非才だったのだろうと我ながら痛感しています。
 渋沢栄一といえば、昔見たNHKのテレビ番組を今でも覚えています。渋沢栄一とともに日本の資本主義経済を築き上げてきた三菱財閥の創始者岩崎弥太郎を取り上げていました。番組には経済評論家の堺屋太一さんと日本マクドナルド社長(当時)の藤田田さんが出て対談をしました。当時はバブル経済が崩壊し、日本の経済も徐々に下降線をたどっている時でした。それぞれの立場から両氏の功績を紹介した後に、堺屋太一さんが、「ぜひ、ビック渋沢栄一がこれから出てきてほしい。」といったことに対して、藤田田さんが、「スモールでもいいからたくさんの岩崎弥太郎が出てきてほしい。」と言っていました。とても印象的な発言でした。
 さて、話題は変わりますが、今年の8月にアメリカの主要企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルが「脱・株主第一主義」を宣言したことは、私にとって大きな驚きでした。この宣言は、「顧客や従業員、取引先、地域社会といった利害関係者に広く配慮して、長期的に企業価値を高める」という、今までのアメリカの経営姿勢からすれば大きな方針転換を行う内容です。
「アメリカ資本主義の重要な分岐点になる」という識者もいれば、懐疑的にみる向きもあります。実際の動きがどうなるかはまだ不透明ではあります。
 バブル崩壊後の日本の企業経営は平たく言えば、従来の日本型経営を否定し、完全とはいえないまでもアメリカ型の経営を取り入れていくことに力をさいてきたのではないかと思います。しかし、その資本主義の本家のアメリカでこのような重要な変化が生じたことは大きな衝撃でした。
 よく言われるように、リーマンショック後の急速な富の偏在、格差の拡大、中間層の没落、既存の政治家、政党への不信感の増大、ポピュリズムの席巻など多くの原因があるのだろうと推察します。アメリカのある世論調査によれば、ソ連崩壊をあまり知らない若い世代の間で、社会主義に好感をもつ人たちが半数近くいるということも衝撃な話です。
 折しも今年は東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩壊して30年です。アメリカの著名な政治学者フランシス・フクヤマさんが「歴史の終わり」で著したように、資本主義が社会主義に勝利したはずでしたが、30年たちどうなのだろうとも時折感じますし、また今後どうなるのだろうと考えを巡らせたりします。この間、中国やロシアのように強権的な国家資本主義ともいわれる体制も出現しています。
 しかし、考えてみれば、どんな制度も完全無欠で完璧という制度はないはずです。よりよい制度を創っていくことに英知を結集していかなくてはならないのだろうと思います。資本主義市場経済という制度をより健全で多くの方が豊かに暮らしていける制度へと進化をさせていかなくてはならないのだろうと思います。そういった課題に微力ながら挑戦していき、令和の時代をよりよい社会へとしていくことに力を尽くしていきたいと思っています。
来年が皆様にとりましてよりよい一年となりますことを心からご祈念申し上げます。



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