2009年05月28日

森於菟『解剖台に凭りて』(昭和9年)

9baaeec0.jpg やるべきことが山のようにたまっているのに時間がない。締切までわずかな原稿もあるし、手紙の返事もメールの返事も書けずにいるのに、ブログなど書いている場合ではないのだが。そういえば、神奈川近代文学館で開催中の森鴎外展も、会期が残り少ないのではないかと思ってチラシを見ると、6月7日(日)までだった。会場まで往復3時間近くはかかるので、思い立ってすぐに行けないのがつらいところだ。次の展示は6月13日から8月2日までで、「生誕100年記念 中島敦展―ツシタラの夢―」だ。これも観たいが……。

 森鴎外展で思い出したのが、この前の五反田の古書展で、200円均一コーナーで買った1冊。昭和書房から昭和9年に刊行された『解剖台に凭りて』である。函無しで表紙はスレていて、とくに装幀に惹かれたわけではないが、著者が森於菟だったので手に取ってみた。開いてギョッとしたのが見返しのデザイン。驚いて、思わず声をあげそうになった。いったいこれは……! いや、もちろん森於菟は解剖学者ではあるのだが……。

 申し訳ないことに、私は鴎外の子供たちの書いた本はあまり読んでいない。森於菟についてもくわしく知らなかったので、この本は初見。序文によれば、彼は新聞雑誌から、書け、書け、と言われるようになったが、自分の引き出しには二通りしか準備がなく、一つは専門の解剖のことをもじった「グロ」物であり、他は父についての記憶を売り物にした「鴎外」物だという。それで、「承知しました。どちらを差し上げましょうか」ということになるのだが、今回は昭和書房が「グロ」と「鴎外」を一緒にして本にしてくれるというので、物好きな本屋もあるものだと思った、と述べている。

 なるほど。それで、この本は最初の章が「解剖室夜話」で、「屍をめぐりて」「屍体の粉飾」「屍体異変」「死面の印象」など、ちょっと引いてしまう見出しが並んでいる。その次の章が「父鴎外と私」である。私としては、「グロ」のほうには関心はないが、鴎外について書かれている部分は読みたいと思ったので購入した。

 この本は、いくつか版元が変わって刊行されていて、別の出版社から出た版では、恩地孝四郎が装幀をしているらしい。だが、この昭和書房版の『解剖台に凭りて』の装幀者は誰で、見返しの絵は誰が描いたのだろう。どこにも名前はないようだ。この表紙の絵もよくわからない。なにか動物を描いたようには見えるのだが、猫なのか犬なのか、もっと別の生き物なのか……。


hisako9618 at 12:07│Comments(0)clip!1.愛しの古本たち 

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