2010年10月07日

喜びと悲しみは同時にやってくる

5b1420b3.jpg 今日あたりから拙著『パンとペン』が書店の店頭に並ぶはずだ。この日が来るのを、どれほど待ち望んでいたことだろう。見本を手にしたときの感激。途中でアクシデントに見舞われたこともあり、最後まで気力が続くかどうか、毎日が綱渡りのような状態だった。

 新刊が出る日は書店に駆けつけて自分の目で確認するのだが、いまはそれもできず、鶴見総持寺にある堺利彦のお墓にも報告に行きたいが、しばらく動けそうにない。とにかく、書こうと決めてから3年半が過ぎて、ようやく形にできたことがうれしい。

 だが、見本ができ上がって喜びの絶頂にいたときに、今度は奈落の底に突き落とされた。一昨日のCT検査の結果、がんが増大傾向にあり、他の部位にも転移の疑いがあることがわかった。腫瘍マーカーも上昇してしまった。ここまで6クール続けてきた抗がん剤が効かなくなったのだ。あれほどつらい治療をしても、わずか3カ月で効果がなくなってしまうとは……。

 手術も放射線治療もできないこの状態では、別の抗がん剤を試すほかになく、そのために来月、3回目の入院をしなければならなくなった。さらに強い副作用がある抗がん剤を使うので、いよいよ覚悟を決めて闘病することになる。

 これまでの副作用で血液中のいろいろな数値が下がっているので、その回復を待ってからスタートすることになり、11月3日の福岡での講演は予定通り行い、帰ってきたら入院、ということになる。もちろん今月16日の東京堂書店での講演はやるが、以後は講演もしばらくできないだろう。原稿は可能なかぎり書き続けるつもりだが。

 いろいろなことを考え続ける毎日。でも、私は不運だと思ったことはあっても、不幸だと思ったことはない。こんな最悪のニュースを知らせても、友人たちは励ましてくれている。それがどれほど心強いか、がん患者でなければわからないだろう。とにかく、最後まで闘い抜くのみだ。


hisako9618 at 10:25│Comments(3)clip!闘病記 

この記事へのコメント

1. Posted by さかい   2010年10月08日 00:55
こんばんわ!
少なくとも気候だけは、少しいいです。

>とにかく、最後まで闘い抜くのみだ。
そうだ〜!
2. Posted by 田中   2010年10月10日 12:17
初めまして。学生時代に買ったまま積ん読になっていた独歩の「武蔵野」を最近読んで感動して、黒岩さんの「国木田独歩の時代」を知りました。東京古書会館で行われた「古書の森 逍遙」の出版記念講演も拝聴させていただきました。
ご病気のことはこちらのブログで知り、ずっと何か励ましのお言葉でもと思いながら、赤の他人が何を言えるものかと思いながら、何をどう書いたらいいのかわからないままでおりました。

今日、「私は不運だと思ったことはあっても、不幸だと思ったことはない。」という一文を読み、心の奥の方をを深く打たれた気がしております。

病状進行の報せは、読んでる他人ですら辛くなるのに、当のご本人がこれほどの強い言葉を記されている。「他人が何をどう言えばいいかわからない」などと逡巡することがとても小さく思えて、自分もとにかく何か書いて、少しでも気持ちを伝えたい、という気になって、こうして初めての書き込みをしてみました。

たくさんの人が、本当にたくさんの人が、黒岩さんのことを思って、心配して、励ましたい、支えたい、と思っておられるはずです。たとえ実際は何もできなくても、そういう気持ちを持っておられる人がたくさんいるはずです。そのことを時々思い出してもらえたら、それで少しでも何か黒岩さんの励みになったら、とてもうれしいです。

その痛みや苦しみ、悲しみを知らない第三者が、何も背負ってない者が軽々しく言える言葉ではないと思いますが、それでもやはりお伝えしたいと思います。

どうか、負けないでください。

長々と失礼いたしました。
3. Posted by Hisako   2010年10月10日 15:56
さかいさま、ありがとうございます。
頑張ります。

田中さま、初めまして。6月のトークセッションにも来てくださったとのこと、どうもありがとうございました。
お気持ち、とてもありがたく受け取らせていただきます。皆様のおかげで、今年の目標だった2冊の本を無事に出すことができました。これからも目標を立てて、それを1つずつ達成していきたいと思います。

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