山田耕筰作品集校訂日誌

総合音楽制作会社クラフトーンの文化事業の一環として2005年から開始された、山田耕筰の作品の校訂、普及事業にまつわるこぼれ話や演奏会情報などを紹介。

チャリティーコンサート「祈り」演奏会のお知らせ

2月11日に鎌倉の恩寵教会の礼拝堂にてチャリティーコンサート「祈り」が開催されます。
東日本大震災が起きてからまだ1年経っていません。
「絆」という言葉だけが氾濫し、陳腐化していく中、もう一度考えてみませんか。

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大人のためのコンサート終了

オトナのためのコンサート1月14日土曜日に逗子文化プラザなぎさホールにて「大人のためのコンサートVol.2」無事に行われました。
私がアレンジしたビゼーの「カルメン」から抜粋した4曲が演奏されることもあり(それまでの練習には一度も立ち会えず・・・)、リハーサルに立ちあうために早めに会場入りすると、舞台ではフルートとヴィオラが二重奏の合わせをしている場面に遭遇。たった2本の楽器で繰り広げられる豊潤な世界にも驚かされたが(さすが天才!)、二人のアンサンブルの素晴らしさと響きの豊かさにびっくり! フルートとヴィオラだけなのに550人入る中型ホールいっぱいに音が広がっている様は見事!

フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、ハープ、ソプラノ、ピアノによる6人のリハも、最初は前の方に座って聞いていたが、やがて真ん中に移動、そのあとは後ろの方に移動して全体のバランスを確認。とにかくよく響くアンサンブルで、私も初めてスコアを書いたときには、実際に鳴らした時とのバランスがうまく合わず、かなり修正を余儀なくされました。最近になってようやく全体の響きを頭に鳴らすことが出来るようになった気がします。急遽加えたタンバリンなども含めて、私がスコアに書いた以上のダイナミックな演奏を繰り広げてくださった皆さん、ありがとうございました!

第1部の写真と音楽のコラボも非常に緻密で秀逸な構成。メンバーの一人が動きに合わせて秒単位で選曲と構成を考えられたとか。皆さん想像を絶する様な多忙な中での取り組みには、改めて頭が下がります。そんなのとくらべたらまだまだ自分はあまちゃんだな〜と思いました。
多彩に活躍するメンバーの方々、粂川氏の素晴らしい写真の数々。鎌倉高校ってどこにでもあるような普通の県立高校だったのに、不思議とこんな風に様々な活躍をする諸氏が多く、さらには僕の世代(1972年前後数年)もすごい方が多い。僕もそんな流れに便乗できればな〜なんて(^_^;)

次回のベルフィーユ・アンサンブルのコンサートもお楽しみに!

さて、次は鎌倉のチャリティー・コンサート「祈り」です。
薩摩琵琶による「静」にフルートとピアノを加えた作品が演奏されます。演奏家の方々は皆さん素晴らしい方々なのですが、肝心のスコアがちゃんと鳴るのかどうか心配で心配で・・・。

大人のためのコンサートvol.2

1111002明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
今年こそ、スコアの出版を実現させるぞ!などなど毎年掲げている抱負も、だんだん民主党のマニフェストみたいな重みのないものになりつつありますが、(^_^;)
今年こそはやりますよ!
あとはもう少しライブラリを増やす。
特に入手困難な歌曲などをご提供できるよう、頑張ってまいります。

さて、今週の土曜日に私も編曲で関わってるベルフィーユ・アンサンブルの演奏会があります。
去年は中目黒でやっていましたが、今年は逗子です。
お近くの方、ご興味ある方はぜひともお越しください。
私は昨年の6月の演奏会用に手がけた「カルメン」の「前奏曲」と「ジプシーの踊り」に、さらに「ハバネラ」と「間奏曲」を追加しました。
「ハバネラ」はソプラノの歌で始まり、2コーラス目はサラサーテのカルメン・ファンタジーの超絶フレーズを挿入した愉快なアレンジになっています。

一年ありがとうございました!

111228_2340~01山田耕筰関連にアクセスしてくださった方々、一年間本当にありがとうございました。
今年は震災もあり、私の心も一時折れてしまい、せっかくの生誕125周年に出すはずだったスコアも出版できませんでした。でも来年こそいろとプロジェクトを進めてまいりたいと思います。その際このブログを見てくださっている方々の小さなコメントとかがすごく励みになりますし、このスコアを出版せよというお言葉を頂戴することは会社を動かす原動力になります。
みなさん、お力を貸してください。
そして山田耕筰、そして近代日本の作曲家の埋もれた作品を我々の力でしっかり守っていきましょう!

画像はクライアント周りをしていていただいたお菓子の詰め合わせ。
めちゃめちゃうまかったです。
S姐さん。ありがとうございました。
来年も姐さんにご迷惑をかけないように一生懸命がんばりますのでよろしくお願いいたします。

東誠三リサイタル

東誠三リサイタル行ってきました、東誠三さんのリサイタル。リスト生誕200年記念もありアンコールまで全部リスト。実に重厚な演奏会でした。このプログラムは3人ぐらいのピアニストが順繰りにでてやるような内容なのではないかと思うぐらいの大作揃いで、しかも曲中もほとんど裏に戻らず、拍手の隙もなく弾き続ける。
プログラム最後のロ短調ソナタが終わったときには、客席からでもげっそりされているのが分かるぐらいでした。
プログラムを掲載すると前半が、

1. 巡礼の年第2年「イタリア」から「ペトラルカのソネット第104番」
2. 巡礼の年第1年「スイス」から「オーベルマンの谷」
3. 巡礼の年第1年「スイス」から「泉のほとりで」
4. 巡礼の年第2年「イタリア」から「婚礼」
5. メフィスト・ワルツ第1番

休憩

1. イゾルデの愛の死(トリスタンとイゾルデのパラフレーズ)
2. ソナタロ短調

アンコール1. コンソレーション第3番
アンコール2. ラ・カンパネラ
アンコール3. 愛の夢第3番

前半は1曲目と2曲目の間だけ曲間があったほかはぶっ続け。
後半はぶっ続け。
すべての音符が自分の中に入っているだけでもすごいのに、なんでしょうあの超人的なスタミナ!

メフィスト・ワルツなどで多用される、鍵盤を暴力的に(しかしもちろん東さんは実に音楽的に!)連打されていくさまはロックバンドのドラムソロみたいですね。
今の音楽ファンがロックコンサートに熱狂するように当時のリストに熱狂的なファンが付いたのはそんな部分も多かったんでしょう。

そんなリスト作品群の中でもやはりロ短調ソナタは別格の完成度がありますね。緻密な構成、緩急のバランスの取れたピアニズム(多くの曲がだんだん音数が増えて最後はド派手に爆発する)、豊かな対位法の手法などこの作品には他では目立たない要素も数多く見いだせ、リストとしても特別な作品だったんだな〜と思わせる充実ぶり。リサイタルでも様々な声部が明快に響き渡り、惰性的なる部分が一度もありませんでした。凄まじい集中力!素晴らしい演奏会、堪能しました! 
さすがに全曲リストは疲れましたが(^_^;)

またぜひ伺いたいです。


クリスマス・カード頂きました♡

ChristmasCard

東誠三ピアノ・リサイタル間近です

higashi12月18日に紀尾井ホールにて開催の日本楽劇協会主催のピアノ・リサイタル。
リスト生誕200周年ということでリスト・プログラムを組まれた東誠三さん。
2009年にやはり日本楽劇協会主催で行われたクリスマス・コンサートは残念ながら伺えずに、のちに記録の音源を聞かせていただいたのですが、壮大な奥行きを擁するダイナミックなショパンのスケルツォに感動。次回はどうしても行きたいと、どうにか調整しました。
う〜ん、楽しみ楽しみ。
ただ、私はフランツ・リストとほとんど接点のない人生を送ってきたために、プログラムの曲目にもあまり接点がありませんでした。
交響詩全集とか、ロ短調ソナタ(管弦楽編曲版含む)、ピアノ協奏曲第1番など、それなりの音は聴いてきたし、昔吹奏楽の指揮者の仕事をさせてもらっていた際にもハンガリー狂詩曲第2番を指揮したこともありましたが(あれは今思い出しても悪夢だった・・・吹奏楽でハンガリー狂詩曲??)、どれもどうもピンと来ないと言うかなんというか・・・。
で、今回はもうすこしちゃんと勉強しようと、ロ短調ソナタの楽譜を持ち歩き用に製本し、iPODで聞きつつ移動していたら、全体像を掴みづらいこの作品のディーテイルがようやく分かってきました。
111214_2010~01
わかってくれば、こうしがたい魅力は音符の間からどんどん沸き立ってくるのが見えるようになり、気づくと大好きな作曲家の大好きな作品になります。

巡礼の年、ロ短調ソナタ。なかなかいいじゃないですか!!
管弦楽編曲版もトンデモものではなく、ピアノの声部からさまざまな音色を引き出し、まとめ上げた手腕は大したもの。シェーンベルク編曲のブラームス「ピアノ四重奏曲ト短調」よりずっとすばらしい!
これからまた楽しみが増えてきました。
今年はあまり踏み込んで来なかったヴェルディにもどっぷり浸りましたが、来年はリストかな〜。
ハンガリー狂詩曲は最近ピアノ版の全曲盤を買ったけど、第1番からして「・・・・・」なのだが・・・。

こちらが、ロ短調ソナタ。ピアノ版と管弦楽版の二種類が収録されています。
LisztSonatainBminor

これがハンガリー狂詩曲全集。
リストのピアノ作品を全て録音したレスリー・ハワードの盤。
作品も演奏も中庸的であまり面白くないという間奏は、いずれ変わるかな〜。
LisztHungaryRhapsody

こちらは同じレスリー・ハワードのパガニーニ練習曲全集。
こちらも非常に中庸で奥行きのない演奏。
「ラ・カンパネッラ」は清水和音さんのズシーンというすごいのを高校生の頃から聴いていたので、最初から最後までメッゾ・フォルテの演奏にいろんな意味でびっくり・・・。
LisztPaganiniEtude



深夜食堂2第16話「クリームシチュー」について

TBSの火曜の深夜にやっている「深夜食堂2」。
11月22日放送の「クリームシチュー」の最後で、ギターの弾き語りで1コーラスの歌が流れましたが、あれは山田耕筰の「ペィチカ」の歌詞を乗せ変えたものでした。
福原希己江さんという方によるものなのだそうですが、クレジットの挿入歌の部分で、作曲は山田耕筰であることを明記しないと、盗作になってしまうんじゃないでしょうか?
クレジットでは

挿入歌
「クリームシチュー」福原希己江

とだけになっていました。

北原白秋の詩があってこそ生まれた名旋律に、別の詩を載せることはどうしても許せないと、日本楽劇協会の山田理事長は再三に渡って差し止めを頼んでも先方はなしのつぶてで、今回の放送になったようですが、別の詩の件はともかく、少なくとも本当の作曲者に対する敬意と最低限の仁義は守るべきなのではないでしょうか。あのメロディーを生み出したのは山田耕筰です。

以後、この曲(「クリームシチュー」)の一切の権利は「・・・・・(プロダクション?)」が持つ旨の通告もあったとのこと。これは完全に「ペィチカ」の、ひいては山田耕筰の権利を踏みにじるものであり、断じて許せません。
おそらく歌手の方はこうした権利とかなんじゃもんじゃに関わっているわけではなく、耳馴染んだ山田耕筰のメロディーに言葉を乗せたらとてもしっくりハマったといったことだったのでしょうし、自分の作曲だと声高に主張するつもりもないのでしょうけど(そうあることを信じます)、その後ろで音楽をお金にしている方々の、音楽家とその音楽への敬意のなさに悲しい思いがしました。

オーケストラ文明史@春秋社刊

オーケストラ文明史地元の図書館に寄った際に発見した本書。まだ刊行されたばかりの新刊でした。オーケストラはなんぞやというところから、その発生、発展に至るまでが明快な文章ですごくよくわかる一冊です。ただし、決して入門書でもなく、膨大な文献資料を精査した末に紡がれた、第一級の音楽文献であります。「オーケストラって何?」的な本はたくさんありますが、古代ギリシャまで戻って、その発生の起源からたどった本は今までなかったのではないかと思います。オーケストラの語源が舞台と客席の間に設けられたスペース「オルケストラ」だったって、私も全く知りませんでした。
更に更に、ベートーヴェンがオーケストラにもたらした革命的、第9交響曲を初演したケルントナートーア劇場の様子(オーケストラは舞台の下で、まさに舞台を伴奏するように座り、舞台上には合唱が並ぶ)など、今では信じられないような状況が語られていきます。やがて劇場付属の伴奏管弦楽団以外に、音楽を愛する中産階級の人たちが楽友協会(今でも存在する)を設立し、セミプロみたいな音楽団体が演奏活動を始め、ベートーヴェンの交響曲などが盛んに演奏され、やがてウィーン・フィルのようなプロの管弦楽団も増え始めてくる。もともとは愛好家集団だったというヨーロッパのオーケストラ成立史ののちに、
舞台は日本に移動。日本では愛好家集団というより、軍楽隊的な側面を持ちながら(実際初期のオーケストラには軍楽隊からのトラが多かったとも・・・)次第に根を下ろし始めていきます。その黎明期に最初に東京フィルハーモニー協会という組織を設立して、オーケストラの演奏会を始めたのが誰であろう、山田耕筰
1年ほどで組織は崩壊し、演奏会は中断を余儀なくされてしまいますが、やはり黎明期の山田の不断の努力があってこそ、現在のようなオーケストラ受容があるのですね。
終章には、グローバル化の中にあってローカルな特色が薄れ行く中での、著者からの警笛も共感を受けました。いい本だ。

こういう充実感は、重みのある書籍をページをめくりながらでないと得られないですね。

書籍バンザイ!

図書館で借りた本は返さなければならないので、近々購入予定。

幸田姉妹@ショパン

幸田姉妹明治の治世になって、西洋音楽が我が国に入りつつある、黎明期に大きな影響を与えた幸田延、安藤(幸田)幸姉妹を描いたノンフィクション。今では世界でも認められるクラシック界の日本人ですが、まだ髷を切って30年ほどでこうして欧米で右も左もわからぬ中で西洋音楽を吸収し、日本に根づかせる努力をしたこういう人たちいたからこそであることを、我々はもっと知るべきだと思いました。紙幣になってもいいぐらいか?
ま〜そうなったらもっとたくさんの分野でそうしたまったく無名のパイオニアが続々でてくるのでしょうけど。
幸田延の留学は1889年。まずはボストンで翌年にはウィーンで、ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世に師事しています。すっげ〜。しかもまだブラームスもブルックナーも健在。
妹の幸は1899年にドイツに留学。翌年には東京音楽学校の同窓生滝廉太郎もドイツに向かい、ベルリンで再会するも滝は数ヶ月で病を得て帰国。幸さんはなんとヨーゼフ・ヨアヒムに師事。
なんとこの人はブラームスの親しい友人で、ブラームスの協奏曲のアドヴァイスまでした超弩級の名ヴァイオリニスト! こんな人の弟子に日本人がいたってだけでも大事件です。
山田耕筰の留学はそこから更に10年先になります。

帰国後の幸田姉妹は後進の指導を中心とした活動になり、芸人ではないという理由で公開演奏会を行わなかったために、どんな演奏だったのかというのはお弟子さんたちの証言が中心になってしまいますが、やがて姉の延は「女だてら」的ないいがかりに近いバッシングの嵐にさらされて、東京音楽学校を追われてしまいますが、妹幸は65歳まで音楽学校の教授を続け、その後はふたりとも個人レッスンを通じて、後進の指導を続けていきます。

帰国後に苦労は重ねつつも好きなように音楽に対峙していた山田耕筰とは正反対な生き方ではありましたが、こういう方々のことはもっと知らないといけませんね。

ちなみに延さんのレッスン料は月額30円だそうです。
当時、一戸建てが3000円、裕福なサラリーマンの月給が100円くらいだったそうです。
つまり、上記の数字に「万」をつければわかりやすいですね。

30万円ですかΣ(´∀`;)

チャイコフスキー交響曲集@アバド

TchaikovskySymAbbadoVPOLSO前回ご紹介したクラウディオ・アバドのチャイコフスキー交響曲全集の続き。
こちらはアバドが1972年から76年までにウィーン・フィルやロンドン交響楽団と録音したチャイコフスキーの後期交響曲集。この時期、アバドは後期の3曲の他に第2番をまっさきに録音していたそうで、第2番への彼の趣向が伺われますね。
こちらはシカゴ響との全集を購入してから程なくしてたまたま入手したもので、中古でなんと100円。第6番だけはすでに持っていたのですが、なにしろ100円ですし(^_^;)

そんなわけで聴き始めてびっくり!
第4番などは旧盤の方がサウンドが引き締まっており、演奏も実にスリリング。大学生になってアバドの4番(CSO)を発売直後に購入して、金管を抑えた融和なサウンドにかなりの違和感を覚えた記憶がありますが、この旧盤は全く反対のアプローチ。早めのテンポでキビキビとした仕上がり。どことなくカラヤン&ベルリン・フィルの71年盤のアプローチにも似ているといえば似ていますが、アンサンブルはウィーン・フィルの方がもっとざっくばらんとしつつも、豪快に攻めていく感じ。カラヤン&ベルリン・フィルのやつはまるでシンセのように磨かれまくっており一糸乱れぬ印象。どっちもありですが・・・。
第5番は新、旧のアプローチの違いはそれほどありませんが、旧盤の方がいささか豪快。ロンドン交響楽団がアバドの意向を一番汲み取った演奏をしているような気もしました。第4番、悲愴はウィーン・フィルと共演した往年の巨匠たちの解釈もタップリと活かされたという印象も拭えませんが、それでもこれはこれで見事な演奏。全体の輪郭は旧盤の方がはっきり出ていて好印象。

中古屋さんに流してくださった方、ありがとうございました。
アバドのチャイコフスキーは第4番に関してはこの旧盤が一番のおすすめです。
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