山田耕筰作品集校訂日誌

2015年は山田耕筰の没後50年にあたります!! 総合音楽制作会社クラフトーンの文化事業の一環として2005年から開始された、山田耕筰の作品の校訂、普及事業にまつわるこぼれ話や演奏会情報などを紹介。

「あやめ」校訂日誌3

オペラ・バレエ「あやめ」の第一場では日本古謡の「箱根八里」や「忍路高島」などが歌われます。「あやめ」が書かれたのは1931年ですが、山田耕筰はそれ以前の1927年にこれらの古謡をピアノ伴奏譜に編曲しています。リズムがはっきりしない詠唱的なこれらの唄を見事に譜面化したのも素晴らしいですが、それよりもここに付けた山田の和声がほんとうに素晴らしい。
ちなみに、そのピアノ伴奏譜も、後に「あやめ」に挿入された編曲もほぼ同じ内容になっており、山田の中ではその編曲が完成されたものになっていたのがわかります。

ちなみに1927年に作成された「箱根八里」はこちら(部分)。

箱根八里は

こちらは「あやめ」のヴォーカルスコアから。
あやめ(箱根八里)

4拍目から始まるのか2拍目から始まるのかなどの際はありますが、アーティキュレーションはほとんど同じで、付けられている和声も同じものです。

山田耕筰はこのオペラ・バレエ「あやめ」から5つの部分を抽出して組曲にしていますが、その第1曲はまさにこの「箱根八里」の部分。第2曲目は第一場後半であやめが歌う「忍路高島」の部分。これだけなら日本組曲じゃん!とツッコミを入れたくなるような内容です(笑)

ちなみに組曲の第2曲になるあやめの歌はチェロのソロも歌と重なっているので、組曲版の楽器指定はありませんが、第1曲の「箱根八里」の部分は他の楽器が指定されていないので、組曲用に山田はヴォーカルパートをイングリッシュホルンで演奏するように余白に書き込みを入れています。

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オペラ全曲版の譜面が完成したあとはこの組曲版の方も楽譜を整備する予定です。
なお、「箱根八里(馬子唄)の楽譜ピースはクラフトーン・エディションで校訂版を購入できます。

「あやめ」校訂日誌2

山田耕筰オペラ・バレエ「あやめ」のお話の続き。

台本はアメリカ人のジャーナリストで一時的に日本の大阪毎日新聞社にも籍をおいていたパーシー・ノエル。「あやめ」の委嘱を取り付けたのも彼の尽力だったようです。ノエルは「あやめ」よりも前、1925年にはシカゴの歌劇団からも日本を題材にしたオペラの委嘱を取り付けて山田に仲介し、これはのちの「黒船」になります。ノエルに英語の台本が書かれ、序景のみシカゴにスコアが送られましたが、結局日本語のオペラとして完成されました。
「あやめ」もノエルによって38ページのタイプされた台本があり、山田はこれに基づいてまずヴォーカルスコアを書き、そのあとで総譜を完成させました。
この台本、登場人物のセリフ以外のト書きというか情景描写が何ページも続いていたりするのも特徴で、あんまり戯曲っぽくない。あとはとても奇妙な英語で書かれていて、スター・ウォーズのヨーダが倒置法をさらにひん曲げたようなおかしな言葉が多く、意味を捉えるのはとても難しい。かというと「殿のお金を〜」などのおカネのやりとりの部分ではなぜか「gold」になっていたり。金貨を意識して書いたのでしょうか?それにしても「gold」を連呼されると全然取引の感じもしなくなってしまうのは、私の英語力のせいなのか・・・。

そして山田耕筰はスコアの中に、たくさん書かれている登場人物の情景描写から、必要なセンテンスだけを抜き出して書いているのですが、これがまた困った・・・。

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潰れていてなかなか読み取りづらい・・・。

おじいさんの五線に書かれた「タバコ盆を叩く/Tap the fire bowl」
時次郎の五線に書かれた「お茶屋の後ろから現れる/appears behind the tea house」
「イソイソとおりてくる/Comes down with lighthearted gait」

こちらは台本の最初にある
「The rising curtain discloses OJISAN seated on the loose matting of the platform with smoking set before him, holding a long metal pipe.
Exhaling a puff of smoke, OJISAN taps his pipe on the edge of the first bowl twice and, as if in answer to a call, TOKIJIRO appears, behind the tea house, Left.
OJISAN turns away as TOKIJIRO with lighthearted gait comes down, Center.
からイタリック体の部分を抜いたものですが、このあたりはまだ密集していてわかりやすいのですが、いくつかの動きをまとめたト書きを新たに書き込んでいたりするものもあり、台本との整合性をどうしたものか迷います。

こちらはスコアの2ページ目。

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「再びタバコ盆を叩く/Taps on the bowl again」
(・・・ってさっきはonとかなかったやん!)

時次郎:「はっと我に返る/He's distraction passes」
(この英語から「はっと我に返る」を導き出した山田先生すごい!)
おじいさん:「同じくおじぎをして/with formal bow」
(かしこまっておじぎする??)
画像では外れていますが、このあと時次郎にも「with formal bow」が書かれているのですが、ここの山田訳は「チョットおじぎして」となっていて、同じ言葉なのに、山田耕筰は使い分けているようです。ちなみにノエルの台本では時次郎のト書きは「The Same」。まあ「with formal bow」のことでしょう。

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時次郎:「控えめじゃなく/less restrained」
(抑えきれずに?)
物語の冒頭はおじいさんが、君が付き合ってるっていう「あやめ」って子、あの子いろいろあるみたいだけど大丈夫か?みたいな話しをされているのに、時次郎さんは「あやめ」の名前を聞いただけでいろいろ頭のなかに思いが盛り上がってしまって「ああ〜〜!」と絶叫してしまう、今聞いたらちょっとアホっぽい部分です。
「控えめじゃなく」ってのはちょっとね(^_^;)

あやめ台本(オリジナル)4p

この部分のオリジナル台本がこちらです。

おじいさんの最初のセリフ「Long my eyes rest not on thee, Toki-san.」
何を言ってるのか最初はさっぱり分かりませんでしたが、「ずいぶんと見かけなかったな時さん」って感じですね。こんな英語は初めて見ましたが、戯曲では一般的なのでしょうか・・・。

これだけ読んでもぜんぜんわけがわからないところなのですが、山田耕筰がこの場に付けた音楽の美しさ!!びっくりします。あまり日本調の色彩にはなっておらず、敢えて例えたらドビュッシーに近い印象派風の響きになっています。
ほんと、冒頭の台本を読んでどうしたらこのイメージが浮かんだのか全く分かりませんが、山田耕筰がこの場面を非常に美しく仕上げたからこそ、変な言葉の羅列が美しい歌として私たちに届くのでしょう。

「あやめ」校訂日誌

新型コロナウイルスの影響で会社がテレワークとなり、4月からずっと自宅で仕事をする日々が続いています。
音楽業界はかなり厳しい状況下にありますが、幸い、楽譜の出版は継続可能で決して多くはありませんが毎日新しい楽譜を作る機会を頂いています。
栃木県立美術館の「山田耕筰と美術」展も再度の観賞に伺えないままロビー・コンサートも中止となり、とても悲しい気持ちのままGWに突入。
ただ、例年この時期は連休であってもほとんど家にいられない日々がつづくのですが、今年はSTAY HOMEで自宅待機。2019年の1月ににひと通りの浄書を終えたまま中断していたオペラ・バレエ「あやめ」の校訂を進めるまたとないチャンスです!

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(写真は「あやめ」スコア冒頭、自筆譜とその浄書版下)

本作は、山田耕筰がパリのピガール座から委嘱を受けて、パーシー・ノエルの英語台本に作曲した、一幕三場からなる英語のオペラ。題材は明烏という歌舞伎から取られています。パリではこれを更にフランス語に訳して上演する予定でしたが、リハーサルまで進んでいたところで、まさかの興行主が破産。情炎が頓挫し、山田はレニングラードなどで演奏旅行をしながら傷心のうちに帰国します。
シベリア鉄道で渡欧し、パリについて台本を受け取ってすぐに作曲を開始、ヴォーカル・スコアをわずか5日ほどで書き上げたというから驚き。
約一ヶ月後には85ページからなるフルスコアも完成しています。
本作はめずらしく複製ではあるものの自筆譜が残っており(オリジナルは消失)、山田の緻密な筆致を見ることができます。一方で1930年台の写真製法に寄る複写のために、画質が非常に荒く、英語で書かれたト書きや歌詞はほとんど判別できません。

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(自筆)

さらにヴォーカル・スコアとフルスコアでヴォーカルのニュアンスも微妙に違っていたりというのをどのようにまとめていくのかが校訂ポイントです。

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「あやめ」は日本民謡や踊りのリズムなどを大々的に取り入れながら、印象派風の響きも取り入れた流麗なオーケストレーションと歌唱が魅力ですが、もともと西洋の前衛的な響きが根底にあった山田作品にあって、ここに来てようやくジャポニズムをも含ませた新たな地平を獲得したといえる作品。山田耕筰というとグランド・オペラ「黒船」があまりに有名ですが、「あやめ」はその「黒船」を更に凝縮した魅力にあふれています。
こんな状況下にありますので、校訂を終えてもいつ出版できるのか全く分かりませんが、いつかみなさんのお手元に届けられるように準備を進めていきます。


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「山田耕筰と美術」展@栃木県立美術館

遅ればせながら2020年今年もよろしくお願いいたします。

ハプニング続きで2年も滞ってしまったヴァイオリンとピアノの作品集、さらに「御大典奉祝前奏曲」オペラ・バレエ「あやめ」スコア、今年は必ず出版します。5月までには出せと社命と予算も付けられましたので、今度こそ後戻りなしで進めます。といいつつ年明けからずっと本業がマックスで毎晩2時間ちょいしか寝られない日々ですが。

さて、1月11日から栃木県立美術館にて「山田耕筰と美術」という企画展が行われているのはご存知でしょうか。

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実は昨年より、どの楽譜を借り出して展示すればよいかという相談をいただき、私なりの意見を申し上げておりました。山田耕筰は舞台音楽を数多く手掛けているゆえに美術やその他のジャンルとの交流が非常に多彩でもあり、さらに若手を重用していたこともあり、彼のもとからバラエティ豊かな人材がそれぞれのジャンルで才能を開花させました。その中心に彼の存在があったわけですが、この展示ではそこまで山田先生が関わっていたのかと瞠目するほどたくさんのジャンル、芸術家の軌跡を山田耕筰を通じて知ることができます。
企画をされた学芸員の木村様ともお話させていただきましたが、とても明るく物腰の柔らかな素敵な女性で、しかも様々なジャンルにとても精通されていらっしゃる方でした。様々なところからこれだけたくさんのものを交渉して借り出すのは生半可な努力ではできなかったと思います。木村様の情熱には本当に頭が下がる一方、大変感動しました。
1月11日初日で、私は1月13日に参りましたが、3時間みっちり回って、それでも後半はかなり駆け足になります。とても一度では見きれなかったので、後日改めて朝から夕方までじっくり見ようと思う次第です。
まず到着して、美術館の看板でまず瞠目、感動。

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斎藤佳三との書簡や「曼荼羅の華」の自筆総譜、東郷青児のキュビズムの影響を受けた有名な「コントラバスを弾く」なども運良く借り出されていて、本物が見られます。また、恩地孝四郎が手掛けた山田先生の童謡などを多数出版した日本交響楽協会の楽譜の装幀全66点も全て本物が見られます。山田耕筰というより近代日本の芸術史展という方が近いかも。この時代に興味のある方はぜひ足をお運びください。




山田耕筰先生、お誕生日おめでとうございます!

6月9日は山田耕筰の133才のお誕生日です。
おめでとうございます。
楽譜の世界ではありますが、この偉大な先達にお近づきになれたことを心からうれしく、誇らしく思います。
昨年夏にあと一息のところで頓挫してしまったヴァイオリン&ピアノ作品集、あれから1年経ってしまいましたが、今年こそ出します。現在パート譜作成中。ひとまず「夕べの歌/まきば」のピースと「麗しき天然/泊り舟」のピースを刊行します。さらに「太湖舟」、初期作品の「ルナに」「負いめ」「ヴァイオリン二重奏」まで出す予定。
長らく更新できなかったウェブサイトの歌曲のページを更新し、これも一年前に刊行しましたが、「唄/赤とんぼ」が新しくラインナップに加わっています。楽譜は2年かけて再校訂し、さらにピースの内訳も再考。
「六騎/蟹味噌/鐘が鳴ります」(蟹味噌は初登場)、「待ちぼうけ/ペィチカ/砂山/この道/あわて床屋」「城ヶ島の雨/松島音頭」(松島音頭は初登場)などなど、年代を考慮して再構成しています。ちなみに「からたちの花」「待ちぼうけ」は教育芸術社の教科書の出典元になっています。春秋社新全集じゃないんです。
楽譜屋さんでいることは大変難しい状態にありますが、この火を絶やさないようにこれからも頑張ってまいります。

まえのブログで書いた、近代音楽館にて申請した初期作品のコピーがようやく届きました。
ほぼ1ヶ月かかりました・・・。忙しくて精査する時間もなかったからいいけど、なんでこんなに時間がかかるのかまったくもってわかりません。
また、楽譜のコピーとともにあれはやるなこれもやるなという禁則がたくさん書かれた書面も着いてきました。

・研究会のために複数部コピーして配布する。
・研究会などで画像として投影する
・複製を作って第三者に提供する
・出版物に掲載する
・公開演奏会で演奏する
・録音資料を作成する
・演奏用楽譜を作り(浄書するってことか?)第三者に譲る
・インターネットに楽譜を乗せる
・複製資料によって演奏し、音声データをインターネットにアップする

これじゃあ、ただ眺めていてください、と言われているようなものです。
どれぐらい山田耕筰作品を守りたいと思ってるんでしょう。
マイクロフィルムを保存しているだけでは山田耕筰を守ったことにはなりません。
研究機関が管理する団体の言動としてはあまりに傲慢かつ横暴な気がします。
研究し発表もしくは演奏することで周囲に作品が認知され、演奏回数を重ねることで作品理解を増やしていくことっなるのだろうと思いますが、この全く逆行するリストには失望を禁じえません。「画像を投影」だって無理なんですよ。山田耕筰作品を管理しているのならそれなりのことをすべきじゃないかとも思うんですけどね〜。

山田先生、素敵な133歳をお過ごしください。

銀座のヤマハさんにて

銀座のヤマハさんに資料探しに行っていたスタッフが送ってきてくれました。

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綺麗に飾ってくださっていて大変感謝です。
背景の木目と相まってとっても格調高く見えますね〜。
みなさま、この棚から手にとって早く新しい在庫と取り替えてください(笑)


5月11日に近代音楽館に伺って山田耕筰の初期作品の資料複製をお願いしましたが、その後使用用途をA4の用紙にまとめて提出するようにと連絡があり、すぐに送ったのですが、その翌週はネット公開しない、出版はしないという一筆も足すようにと連絡があり(当座出版はしないと何度も言ったのに・・・)これまたすぐに送ったのですが、今日で3週間・・・。
まだ時間がかかるのですかね・・・。
私も忙しくて家でも仕事しているからすぐにもらってどうこうするわけでもないんですが、見たいものがなかなか見られないというのはつらいものがあります。
これでダメってこともあるのかなあ・・・。

旧遷喬尋常小学校講堂コンサートvol.2〜山田耕筰ルネッサンス〜

5月25日に岡山にて行われるコンサートのお知らせです。

音楽学者の瀧井敬子先生の企画で山田耕筰が青春期を過ごした岡山で山田耕筰ルネッサンスと題されたコンサートが開催されます。
現存する山田の最初の作品「My True Heart」はこの岡山で書かれたもの。山田の姉で婦人参政権運動などで活躍した恒の夫、エドワード・ガントレットに音楽の手ほどきを受けていた頃に書かれました。
山田耕筰の音楽の原風景みたいなものがここにはあるかもしれませんね。
ピアノは佐野隆哉さん、ヴァイオリンに相川麻里子さんなど、素晴らしい面々が登場します。
行きたいな〜。でもちょっと岡山は遠い・・・。
お近くの方、ご興味おありの方はぜひともおでかけください!

なお、山田耕筰の楽譜はすべて私の手がけた校訂版を使ってくださっているそうです。
大変嬉しく名誉なことです。ありがとうございます!
私ももっと精進して山田作品の楽譜の整備を進めていきます。

山田耕筰ルネッサンス〜(表面)




山田耕筰ルネッサンス〜(裏面)

近代音楽館にて

調べたいことがありまして、無理やり一日オフにして明治学院大学の図書館にある近代音楽館にお邪魔しました。
こちらには山田耕筰の自筆譜のほとんどや出版譜など山田耕筰に関する資料のほとんどが保存されています。

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実は大学受験のときに明治学院大学受けたんですよね・・・。芸術学部。
落ちましたけど・・・(第一志望の日芸には受かったのでよし)

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もしかしたらこんなシャレオツな大学行っていたのかもしれなかったんだなあ。
場違いだっただろうなあ・・・。
そして今日は楽譜屋でもその他諸々の雑多屋でもなく、ニワカ音楽研究者として5年ぶりに近代音楽館に。

事前に電話予約が必要なのですが、名乗って電話を切ったあとで、リダイヤルか何かで電話がかかってきて「あなたクラフトーンの人ですか?!」

いや、そうですけど、なんも悪いことしてないです。
今回は会社は関係なくて個人的な研究のための閲覧と複写依頼だし、出版予定もない旨お話して予約を入れます。
前回に行った2014年に聞かされましたが、未出版のものをこちらで閲覧、複写して出版すると1曲につき1万円取られるのです。歌曲のピースなんか2曲で500円ですよ。2〜3ヶ月に1部売れるかどうかってぐらいの微々たる部数しかないのに1曲1万も取られたら元手回収するのにどれだけかかるんですか・・・・。そもそも資料を抱えているアルヒーフが本来は研究をして原典版などの制作をするのが筋なのに、それを周りがやってくれてるのに、勝手に複写を広めるなってのはどうかと思うんですけどね〜。
クラフトーンは日本楽劇協会と結託して未出版のものを片っ端から出版していると、以前お小言があったと、とある関係者からも聞いたことがあります。近代音楽館が明学に入る前のことでしたが。
とりわけ今回は習作に近い初期作品を中心に閲覧しているので絶対に売れないこと間違いなし。ベートーヴェンの選帝侯ソナタぐらいの作品。心配ご無用でござんす。

その後は一心不乱にマイクロフィルム7本を4時間で閲覧し、複写が欲しいものをリスト化しましたが、複写申請する際には目的を必ず書かなければいけないのです。ところがこの目的っていうのがまた曲者で、先程行ったように出版は上記の制約がかかります。その他に、論文として発表というのも審査が厳しくなるのだそうです。とにかく表に出したくないんですかね。はっきりいって意味がわかりません。興学を煽るのがこういう研究機関の役割ではないのですか。部屋にも著作権物なので写真撮影はもちろん、写譜も禁止だそうです。
学生時代、民音音楽資料館にはよく気になる作品の楽譜を写譜しに行っていたものでしたが(楽譜を買う金はなかった)、近代音楽館は写譜もだめ(と書いてあった)。
複写目的に「個人的なコレクション」というのもだめだと伺いました。
今日一番意味がわかりませんでした。
飾るぐらいいいじゃないの。

あんまり愚痴ると、以後出入り禁止なりそうなのでこの辺にしておきますが、せっかく貴重な資料があるのだし、生原稿見せろっていっているわけではないのだから、少なくとも出版やら複写についてはもう少し柔軟であっていいのではないかと思いました。そもそもここでコピーを頼んでも1枚40円。コピーはやってもらうわけですから人件費とか考えたら全然お金儲けになってないし(むしろ赤字?)、会員登録も年間500円。1回の入館料1500円とかそういう儲け方はまったくしていないのです。
このあたりをしっかり清貧でやっている点において研究者には非常に手厚いのに、なぜ作品そのものの普及にはブレーキをかけようとするのかが全くわかりません。どんなに出版譜がたくさん出ても自筆資料の価値はそことはまったく別だと思いますので、そこだけご一考いただきたいと、切に思いました。
でも1本のマイクロフィルムにどんだけのお宝が詰まっていたことか!!!
本当に・・・。
1曲だけのために出してもらったマイクロフィルム1本でも結局全部閲覧してしまいました。
至福の一日。
その中身の感想だけでもブログ何回か分の情報を得られました。
(こういうのも良くないらしいので書きませんが・・・)
また無理やり時間作ってこんどは朝イチから行こう!

集中しすぎて大学を出た途端に崩れ落ちそうになりました・・・。
で、まず飛び込んだのが最寄りのローソンでビールを1本!
うまかったけど、もう少し冷やしておいてね。

山田耕筰「明治頌歌」が演奏されます!!

ホームページにはレンタル可能と告知していましたが、2017年のミニチュアスコア刊行に際した修正などを反映させたパート譜は作らないままきてしまっていた山田耕筰の代表作「明治頌歌」。この作品は2005年の蘇演とそれに併せたナクソクのレコーディング以来、一度も演奏機会がなかった作品です。この2005年の演奏会をきっかけにクラフトーンにて山田耕筰の復刻作業を行おうと孤軍奮闘し、楽譜を整備していく中、序曲ニ長調はすでに数えきれないほどの演奏回数を重ねた他、長唄交響曲「鶴亀」、そして日本初の交響曲「かちどきと平和」なども幾度もレンタル頂くほどになり、小さな一歩ではありましたが、確実に山田耕筰の管弦楽曲が演奏される環境を作ることが出来たとおもっています。山田作品の中で格段に難しい「マグダラのマリア」はなんと中学校の管弦楽部が演奏してくれました。あのときは本当に嬉しかった! 演奏した音源を送っていただき、聴きながら涙が出ました。昨年「かちどきと平和」を演奏してくださった中央大学管弦楽部さんの演奏も、ものすごく溌剌とした素敵な演奏でした。孤軍奮闘ではあったけど、頑張ったかいがあったなあと、お送りいただいた演奏音源を聴きながら飲んだ酒は最高でした。
そして長年の懸案であったのが、山田先生が一番気に入っていた作品、「明治頌歌」が未だ演奏されていなかったこと。
それが今年ようやく実現に至りました!
演奏してくださるのは東広島交響楽団さん。
これまでにも佐村●●的な方の交響曲「HIROSHIMA」や、新垣隆さんの交響曲なども演奏するなど、意欲的なプログラムが魅力な市民オーケストラです。

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今年1月にレンタルのオファーがあり、狂喜する一方でさて困った・・・。
レンタルがないのを憂慮している一方でパート譜ちゃんと作ってなかったのです。
しかも1〜3月は出版界は年度末に向けた繁忙期。手元にある仕事をこなすだけでも20時間近くかかっているのにあの大作のパート譜を作る余裕が全く無く、ギリギリまで待っていただきながら3月にようやくお送りすることが出来ました。常日頃から出版用の楽譜は山程作り続けてきていましたが、演奏用のパート譜というのはまた独特な伝統があり、浄書ソフトが使えるからって簡単に作れるものではありません。
特に弦楽器などは演奏中に楽譜をめくらないようにページめくりの部分を調整したり、休み中にうまく入れるように外のパートのガイドを入れたりと、さまざまな配慮が必要です。


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そうした配慮とあとは音符と隙間のバランスを調整して音符が浮き出して見えるように作っていくのがこの職人技です。
ただ、最近は作曲家も浄書ソフトで作曲し、パート譜作成業者(クラフトーンの関連会社、東京ハッスルコピー)もそのデータを使ってさささっとパート譜を抽出していくので、古い伝統準じてレイアウトしていくよりも、ささっとページに収めてしまう傾向にあるらしく、私がつくったようなものよりのぜんぜんゆるゆるのものがけっこう普通に出回っているようですね。
これはピアノ譜などの出版譜などにも言えることですが、ハンコで作っていた昔からの浄書の伝統みたいなものが次第に消えつつあり、コンピュータでざっとレイアウトした「それっぽい」楽譜が次第に増えていっているように思えます。私が楽譜浄書の世界に入った頃はまだコンピュータ浄書とハンコ浄書が半々に近い状態で、私などはハンコ浄書に馴染んでいたベテランのクライアント編集者さんにかな〜〜〜り鍛えられましたが、今となってはそういう古きよき楽譜を知る編集者も浄書屋さんも少なくなってしまい、キャリアの初期からコンピュータで打ちっぱなしの、私から見たらありえないような譜面も、それでも手書きよりきれいなのでそんな譜面に馴染んでしまっていたら、私が音符1つ1つに施しているような小さな隠し味などもなにも気づかないまま、「こんな程度」の楽譜が巷に溢れていってしまうのでしょう。まあこれが現実といえば現実。100円ショップの品物が売れたことで淘汰されてしまった良いけど高いものなんていくらでもあります。そしてそれほど我々は不自由していない。
楽譜もそんなふうに変わっていくのかもなあと思いました。
寂しいですがそれが現実ですね。
ただし、私が手がける山田耕筰の楽譜はそんなふうにして手間暇をかけて作っていっているものです。今回の「明治頌歌」のパート譜も楽譜浄書の粋を尽くして作り上げました。
東広島交響楽団の演奏会は8月12日。入場は無料だそうです。
みなさまぜひ、山田耕筰がもっとも愛した自作「明治頌歌」を聴きに行きましょう!!

山田耕筰最新CD@ピアノ作品集

最近はCD屋さんに行く機会もネットでCDを捜す機会もほとんどなくなり、こんなCDがリリースされていたことも知りませんでした。

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杉浦菜々子さんが演奏した山田耕筰ピアノ作品集。
いままで正規録音がなかった「源氏楽帖」や、晩年の前奏曲なども収録された、山田耕筰の器楽の顔を知るのにとても貴重な一枚です。「子どもとおったん」などの比較的演奏機会のある作品なども収録されている一方、ニューヨークで伊藤道郎さんと舞台にかけたと言われる「フォックス・ダンス」もピアノ作品として収録されている。
そして楽譜についてはこのCDのために一から校訂し直されたようですべての出版譜はもちろん、すべて自筆譜にも立ち返って因襲的な誤りも全て正されたそうです。

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解説には参照譜についても明記され、それぞれの誤りについても言及されておりました。学術的にもしっかりと裏付けされた一枚とも言えますね。

ところで・・・・。

最近知ったと私が申し上げたとおり、このCDについては何も知りませんでしたが、CDのライナーノーツには私が手がけたハッスルコピー刊のピアノ全集にも言及され、ここは誤りだなどとも指摘を頂いておりました。こういうのって出す際にひとこと当事者に連絡があってしかるべきなのではないかと思うのですが、松浦菜々子さん、台信遼さんはどうお考えなのでしょうね。
ということを当事者ではなくこんな辺りにぶちまけてる私も私ですけど(爆)
でも知らないうちにオメーの楽譜違ってるぞってのが流布されているのはいい気持ちがしません。
じゃあ、正確な楽譜をちゃんと垂れ流せってことなんでしょうけどね。

べつに喧嘩をするつもりもなく、山田耕筰の作品が少しでも知ってくれる人が増えてくれればいいと、心から願っているだけですので、CDのリリースについては心よりお喜び申し上げる次第で、1枚でも多く、人の手にわたっておくことを願ってやみません。

いつか、そのご苦労の結晶である楽譜もでるといいですね!
その際にはこれぞ決定版ということになるのでしょう。

これまで13年、孤独の戦いを続けてきた私も肩の荷が下ります。
私はあくまでも学者ではなくて所詮は楽譜屋ですから、手掛けられた作品も13年もかけて微々たるものでしかありません。
能力も時間もある実力者に手掛けていただいたほうが山田先生もお喜びになるでしょう。
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