2006年07月24日

久生十蘭の仕事部屋から(30)

サッカーのワールドカップにかまけて、更新が遅くなりました。この間、十蘭ファンのイラストレーターYOUCHANさんの個展にもいってきました。

「キャラコさん」を題材に、本の表紙を想定した絵で、かわいらしいキャラコさんが描かれています。清原啓子さんの細密画のようなエッチングとは全く趣を異にした作品ですが、現代の女性にこうして取り上げられる小説を書いた十蘭は、とても幸せだと思います。次のサイトで、現代の(?)キャラコさんに会うことができます。
http://www.youchan.com/blogs/archives/2006/06/calico_tenji.html

さて、十蘭は昭和8年(1933年)に、足掛け4年滞在したフランスから帰国し、新築地劇団演出部に所属して、演劇に情熱を燃やすことになります。今回は演劇指導に関連する写真を2枚、ご紹介します。
ddb9ebd3.JPG5eabf295.JPG
上段の写真は、本読みをしているところのようです。場所や日時は不明ですが、舞台づくりの様子がうかがえます。

10月5日〜25日に開催された「築地小劇場改築竣成記念大公演 ハムレット」では、十蘭こと阿部正雄は舞台監督を担当しています。プログラムにはこうあります。


 演  出  久米 正雄
 演出助手  久保  榮
 同     今 日出海
 同     水品 春樹
 同     時岡辨三郎
 
 舞臺監督  阿部 正雄
 監督助手  依田 一郎
 同     米山  彊
 同     竹内 信次
 舞臺装置  伊藤 熹朔
 同 助手  奥野文四郎
 
 音樂作曲指導 山田 耕筰
 同 助手   市川  元
 照  明   小畑 敏一
 同 助手   岡田猪之介
 
 音響効果  成田 梅吉
 同 助手  小嶋 正雄
 
 大道具制作 菊地 良吉
 小道具制作 元木  勇
 衣装制作(土方衣装部)掛替花子


監督助手の竹内信次は、竹内清の11歳年下の弟です。仙台の旧制第二高校から東京帝国大学文学部美学科に進み、昭和6年、ドイツのミュンヘン大学に留学して美学を学びました。清の長女・瑠璃子さんによれば、「父も同じ時期にミュンヘンの大学で演劇の勉強をしていた」そうです。

信次は帰国後、十蘭と同じ築地小劇場に入りました。このプログラムからすると、ハムレットの舞台を一緒に作ったようですね。十蘭は間もなく劇団を離れます。信次もその後、朝日映画社、日本映画社を経て、フリーの演出家として活躍し、短編ドキュメンタリー映画で内外の賞を数多く受賞し、昭和49年、65歳で亡くなりました。
(つづく)


hisaojuran at 22:37│Comments(1)TrackBack(0)久生十蘭の仕事部屋から 

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この記事へのコメント

1. Posted by pumpkin   2006年07月24日 23:25
わたしは演劇の歴史には詳しくないのですが、それでも当時の築地小劇場のスタッフは、一流の人が集まっていますね。
ただ時代の流れは段々きびしくなり、経済的にも大変だったのではないでしょうか。

十蘭の小説家への転身の理由はどんなものだったのでしょうか。

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