2008年05月12日

久生十蘭の仕事部屋から(48)

43d48a79.jpg随分、間が空いてしまい、ついにネタ切れかと思われた方もいらしゃるかも知れませんね。何だかんだと余裕がなく、失礼しました。まだ、ご紹介していない写真がありますので、またぼちぼちアップしていきます。

これからご紹介していく写真は、フランスから戻ってからのものとなります。この写真は昭和16年9月3日とあります。場所は書いてありませんが、千葉・犬若海岸の海の家ではないかと考えられます。十蘭の隣が、翌年、結婚する幸子。左端は竹内清。幸子の隣の眼鏡をかけた男性は、清の11歳年下の弟・信次です。



竹内清は十蘭より4歳年長。十蘭が所属していた演劇グループのリーダーでした。函館毎日新聞の記者でしたが、昭和元年から3年までは朝日新聞ハルビン支局に駐在。帰国後、日本で初めてのロシア語新聞「週刊函館新聞」を発行しました。翌年、新聞は発行中止となりました。

そこから先の足跡について、長女・瑠璃子さんにお聞きしました。「異例のスピードでパスポートが取れたそうです」。パスポート取得日は6月18日。「7月10日にソビエトに入国し、24日に出国したというスタンプが押されています」。

この年の12月10日、竹内と石川正雄が滞在するパリのホテルに十蘭が現れ、10日ほど3人でダブルベッドに雑魚寝をしたと、石川が書いています。(昭和35年「海峡」第71号「久生十蘭追悼特輯号」)

竹内は「演出や舞台装置の勉強のためにフランスに行ったようです。フランスのある先生に傾倒して、その先生についてドイツにいったと聞いています」(瑠璃子さん)。さらにパスポートからこんな足跡が分かりました。

1933年(昭和8年)
2月21日オーストリアから22日イタリアに入国
3月5日イタリア出国
3月21日コロンボ・ハーバーポリス通過

帰りはシベリア鉄道ではなく、航路のようです。残念ながら帰国のスタンプは見当らないそうですが、十蘭は昭和8年5月までに帰国したことが分かっています。十蘭と一緒だったとも考えられますが、どうでしょうか。

竹内の弟・信次は仙台第二高校から東京帝国大学文学部美学科に入りました。6年からミュンヘン大学で美学を学び9年に修了、帰国して築地小劇場監督部に所属して演出部員となっています。戦後はフリー演出家となり、日本映画新社、岩波映画製作所、東京シネマなどで数多くのドキュメンタリー映画を発表し、国内外で高く評価されました。

竹内清には、信次との間にも弟がいます。幸子の姉・貞子の夫です。楽しそうな光景をレンズのこちら側から覗いている精吾はカメラが好きで、ファミリーの写真を多く遺しています。(つづく)


hisaojuran at 23:35│Comments(3)TrackBack(0)

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by pumpkin   2008年09月29日 16:21
ごぶさたしています。
いよいよ定本久生十蘭全集全11巻の刊行が始まりますね。
わたしは詳細パンフレットを見ましたが、かなりリキがはいってます。また、国書刊行会のホームページはこちら。

http://www.kokusho.co.jp/series/hisaojuranzenshu.html

注目点はいろいろありますが、新字体ですが、旧仮名遣いです。大衆小説系作家(十蘭をそう分類する是非はともかく)で旧仮名遣い全集というのは珍しいと思います。
また顎十郎捕物帳の奇譚初出のDVD(全巻購入特典)もあります。奇譚は入手困難な上、顎十郎の初出は流布本と大異がありますので期待大です。
2. Posted by 著作権管理人   2008年10月05日 00:34
pumpkinさん、いつもコメントありがとうございます。
このブログもすっかり間が空いてしまって、申し訳ありません。
ネタがないわけではないのですが、ついつい仕事に追われていて、時間がとれない状況が続いています。

ところで、全集のパンフレットを見てくださったのですね。
あまりに立派なのでビックリしました。オールカラーの20ページ。
先日、これより薄い映画のパンフレットが600円だったので、
「それなら全集のパンフレットは800円でもいいかも」と思ったくらいです。

国書刊行会ではかなり力を入れてくださっています。
新聞広告もかなり大きなスペースです。
ちなみに毎日新聞は9月28日、朝日新聞は30日に掲載されました。
6日には読売新聞、7日には東京新聞にも載るそうです。
ご参考まで。

3. Posted by pumpkin   2008年10月15日 20:39
新全集第一巻入手しました。
箱はちょっと「日影丈吉全集」に似ているけれど、なかなか瀟洒で、本体もまたいいですね。
中はまだぱらぱらと見ただけですが、江口先生の解題は期待通りです。諸版、諸稿の違いがはっきり判ります。
新太陽社版はほんとうに著者に断って出したのかな、と思っていましたが、十蘭の手が入っているのですね。例外的一段の削除は目移りの脱落の可能性もないわけではなさそうですが、やはりくどいので、削除なのでしょう。
などなどいろいろ楽しめそうです。
編集の先生方、先は長いですが、がんばって下さい。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔