2008年10月23日

久生十蘭の仕事部屋から(49)

皆様、長らくのご無沙汰にて失礼をいたしました。さて10月10日、ついに「定本 久生十蘭全集」(全11巻)の第1巻が発刊されました。(詳細は国書刊行会のサイトをご参照ください。http://www.kokusho.co.jp/news/index.html)

私の手元には数日前に届きました。700ページ近い厚さで、小型の百科事典といった感じです。上品なグレーの布張りで、ページを開くと目に優しいクリーム色の紙に二段組。活字の大きさと行間のもバランスもよく、何かとうるさかった十蘭も大満足ではないでしょうか。

小説、エッセー、翻訳等、ほとんどの作品を網羅し、1970年前後に出版された三一書房版の「旧全集」に比べると、約2倍の分量になるそうです。10月6日は十蘭の106回目の誕生日。「新全集」の発刊祝いも併せて、天国では妻と一緒に例年になく盛大に祝杯をあげているのではないかと想像しています。それにしても、歿後半世紀にして、これだけ立派な全集を出してもらえるのは、作家冥利に尽きますね。




ところで、私はこのブログで「著作権管理人」(正式には「著作権継承者」)を名乗ってきましたが、正しくは「元著作権管理人」です。著作権の保護期間は作家の死後50年。十蘭は1957年に亡くなったため、保護期間は昨年12月31日までです。著作権が切れた翌日、つまり今年1月1日には、早速、インターネットで小説が無料で読める「青空文庫」に、十蘭の作品が並びました。

「新全集」も、著作権切れを発刊の目処に何年も前から準備が進んでいました。作家の団体である日本文芸家協会では、保護期間を欧米並みの70年に延長すべく運動していますが、なかなか実現に至りません。音楽の世界ではすでに70年になっているので、文芸作品もいずれは延長されるのではないかと思っています。

叔母が亡くなり、著作権を最初に継承した従兄から私にその担当が回ってきたのは、4年前のことでした。「今どき、明治生まれの小説家(十蘭のこと)を読む人なんて、どれほどいるのだろうか」と、親戚中がほとんどそんな認識でした。その後、仕方なく作品を読み始め、研究者やファンから直接、お話をうかがったり、遺品や資料を調べるうちに、十蘭という作家についての認識が改まり、私も一通りの説明をすることぐらいはできるようになりました。

とはいえなにぶん素人ですので、このブログでは十蘭のファンは勿論のこと、研究者にも役立つような情報を提供してきたつもりです。遺品の中から偶然みつけた「従軍日記」が昨秋、出版されたことで気が抜けてしまい、ブログの執筆も滞り勝ちで申し訳ありません。
まだ若干のネタがありますので、これからもは続けます。

2006年11月19日のブログで、十蘭の父親について触れました。「父親不詳」とされていたのですが、実は、母の実家の廻船問屋の「番頭頭」だった小林善之助であることをご紹介しました。十蘭の姉の親族からうかがった話でしたが、その後、ある研究者から「戸籍がどうなっているのか知りたい」という依頼を受けました。

個人情報保護法が施行されてから、研究目的でも第三者が戸籍を調べることができなくなりました。そこで、私は十蘭の姪(※)であることを最大限に利用して、十蘭研究をされている方に情報を提供することにしました。(※私は血がつながっていないので、「姪」ではなく、「親族」と呼ばれることもあります。)その“成果”を次回、ご報告します。(つづく)



hisaojuran at 07:09│Comments(4)TrackBack(0)久生十蘭の仕事部屋から 

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この記事へのコメント

1. Posted by 十蘭好き   2008年10月24日 13:08
全集刊行開始、おめでとうございます。
今日、買いにでかけますw

生来の怠惰のせいでなかなか思うように進んでいないのですが、私も十蘭を研究中なので、十蘭の戸籍に関する報告を、楽しみにしております。
2. Posted by 十蘭ファン@岐阜   2008年10月27日 20:51
全集刊行おめでとうございます。
現在金欠なので(泣)まずは第三集からの購入を考えております。
引き続きのブログ更新楽しみにしております!
3. Posted by 条希   2008年10月31日 21:37
全集第一巻刊行おめでとうございます

高価なものなのでホントに手が出ませんが
いずれ必ず手に入れてやるぞと
(私にとっては)大きな目標です

毎年すっかり忘れているのですが
わたくし十蘭と同じ誕生日でした(笑)

刊行も始まったことですし
著作権管理人者さまも
あまり無理はなさいませんよう
4. Posted by 著作権管理人   2008年11月05日 23:28
「元著作権管理人」です。
十蘭好きさん、十蘭ファンさん、条希さん
早速のコメントありがとうございます。

私がいうのも何ですが、全集は1冊9,975円でかなりいいお値段ですね。
私の友人は近所の図書館に購入希望を出したそうです。
こういうテもあります。

条希さん、ご心配ありがとうございます。
十蘭関連で入手した戸籍は6部あります。
見たこともない文字に悩まされています。
辞書にも見当りません。

今月一杯には何とか次回のブログをアップしたいと考えています。いましばらくお待ちください。

そうそう「小説推理」11月号に、書評が掲載されました。
近々、読売新聞でも取り上げてくれるようです。

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