2009年03月09日

久生十蘭の仕事部屋から(50)

亜子探偵の仕事ぶりがあまりにも素晴らしいので、呆気に取られたまま長い間、失礼しておりました。お約束どおり入手した戸籍謄本の内容をお伝えします。このブログは研究者の方も読んでくださっているようです。原本を見たい方はご連絡ください。

さて、個人情報保護法が施行されてからというもの、親戚といっても本人の承諾なしに他人の戸籍を調べることは出来ないのですが、「今、私がやらなければ、未来永劫、誰もしることができない」と思い、手を尽くして入手しました。

戸籍謄本はまず十蘭の母「阿部カン」に関するものからご紹介します。
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【戸主:阿部新七】(「除籍」の押印)
本籍:北海道函館市春日町五番地
父:阿部栄吉 母:亡ノブ (二男)
養父:亡阿部五平 養母:亡カネ (養子)
出生:安政元年拾月拾参日

新潟縣北蒲原郡乙村戸主阿部栄吉二男阿部五平仝ノ妻カネト養子縁組届出明治六年弐月壱日受附入籍
明治七年八月拾七日前戸主五平死亡ニ因リ家督相續届出
隠居届出大正八年九月参日受附
函館區春日町五番地戸主阿部光平父分家届出大正八年九月拾日受附
昭和参年壱月四日午前壱時函館市元町三十一番地ニ於テ死亡同居者阿部カン届出仝月拾日受附
昭和参年参月拾弐日阿部カンノ家督相續届出アリタルニヨリ本戸籍ヲ抹消ス
昭和九年参月拾壱日火災罹り滅失ニ付キ昭和拾年八月弐拾日本除籍ヲ再製ス
司法大臣ノ命ニ因り昭和拾年八月弐拾日 本戸籍ヲ再製ス○印

「妻:カシ」
父:亡阿部五平 母:亡カネ(長女)
出生:安政元年参月五日
大正八年九月拾日夫新七分家ニ付キ共ニ入籍
大正拾四年七月拾四日午前五時函館市元町三十一番地ニ於テ死亡戸主阿部新七届出仝日受附

「二女:カン」
父:阿部新七
母:カシ
出生:明治拾参年壱月拾日
函館區寿町五番地戸主阿部氏廢家ノ上戸主阿部新七二女入籍届出大正拾年四月壱日
受附
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この戸籍から分かることは、カンの父・新七は母・カシの実家に養子に入ったこと、娘のカンは父・新七が亡くなった後、家督相続をしていることです。「二女・カン」とありますが、なぜか「長女」の記述はありません。




もう一つ、カンが養女として記載されている戸籍があります。
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【大西治郎吉】
函館區大酊八拾三番地
若松町四十八番地
越後国新潟(「潟」はサンズイに「写」の文字)区本町通十番町 亡父大西治三郎二男
安政三年一月九日生

明治十二年十二月廿三日分家
明治参拾弐年六月拾七日本戸籍変更届出仝日受附
明治参拾六年七月弐拾八日亀田郡湯川村大字下湯川村字柏野二十四番地ヘ転籍届出仝日仝村戸籍吏坂井一健受附仝日届??入籍通知?発送仝月参拾日受附除籍

「養女:カン」(「養」の字は上下に分解され「偏」と「つくり」になっている)
明治十三年一月十日生
明治十八年五月廿日越後国北蒲原郡荒井濱阿部新七二女入籍ス
明治廿三年十一月(「七月」と併記)十九日離縁實家送籍

「妻:タカ」
嘉永五年六月拾日生
明治参拾弐年八月拾日凾館区若松町四十八番地新藤氏廃家婚姻届出仝日受附入籍代理

「養子:富次郎」
明治弐拾年九月参拾日生
明治参拾参年五月四日凾館区若松町六十四番地三浦タキ 子養子縁組届出仝日受附
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戸主の大西治郎吉が阿部家とどのような関係にあったのかは分かりませんが、この戸籍によればカンは満5歳で入籍して養子となり、10歳で離縁しています。次回はいよいよ「阿部正雄」こと久生十蘭の戸籍について、です。(つづく)



hisaojuran at 19:32│Comments(4)TrackBack(0)久生十蘭の仕事部屋から 

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この記事へのコメント

1. Posted by pumpkin   2009年07月28日 00:05
お久しぶりです。
全集第四巻まで順調に発行されましたが、編者の先生方に感謝しています。

ところで第四巻は「女性の力」が目玉でしょうか。博文館から出版されたのに、どうしてこんなに稀覯本になってしまったのか不思議です。わたしは一度も見たことがありません。
もう一つ、解題に書き下ろし単行とあるのは何か根拠があるのでしょうか。構成的内容的に新聞連載小説のように感じられるのですが。
2. Posted by 亜子十郎   2009年08月04日 07:04
pumpkin さん、いつもありがとうございます。

ご質問は私達(元著作権継承者とその代理人)にはお答えできないので、編集委員の方々に聞いてみます。


                         亜子十郎 拝
3. Posted by 元著作権継承者   2009年09月01日 01:01
pumpkinさん、コメントありがとうございます。
大変遅くなりましたが、編集委員の皆さんからお答をいただきましたので、以下にご紹介します。
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<定本 久生十蘭全集 編集委員会>
「女性の力」につきましては、幸子夫人が校閲された島崎博編
「久生十蘭著作年表」にも初出誌の記載が無く書き下ろし出版扱いになっております。
また『新聞小説史年表』等にも 一切記載がないため「書き下ろし」出版と判断しました。未発見のテキストや資料をご存じでしたら、ご教示いただけると幸いです。
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ご参考になれば幸いです。
元著作権継承者

4. Posted by pumpkin   2009年09月21日 20:35
お忙しいところ、お返事をいただき恐縮です。

何も根拠はないのですが、1回ごとの区切り方が同じ分量になっていること、しかも区切り方が無意味あるいは不自然な箇所があること、また、ある程度盛り上がると章題を改めて場面転換するところ(これは月刊誌の連載にもありますが)などが新聞連載っぽいと感じたに過ぎません。
もしかして特殊な新聞(満州のものなど)かなと思ったりもしますが、こればかりはいくら論じても証拠がなくてはどうしようもありません。

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