2009年11月02日

屋台風居酒屋で一人・・・鷺ノ宮「新右衛門」

DSC01980かつて、鷺宮3丁目に「ヤマシン」という漬け物工場があった。なぜ鷺ノ宮で漬け物工場かというと、鷺ノ宮地区は練馬区に隣接していて、練馬の名産品であった大根を使ってたくあんを作るというところから始まったというわけだ。始まったのは150年くらい前のことらしい。今、工場は群馬に移転し、本社として残っていたお屋敷も取り壊されてしまった。

あまり詳しくはないのだが、その「ヤマシン」の創業者が大野新右衛門という人で、その人から数えて4代目が創業の地である鷺ノ宮に帰ってきて、創業者の名をとって「新右衛門」という会社を作ったということだ。「新右衛門」の存在に自分が気づいたのは、何年か前に、事務所の一角でランチを始め、同じく駐車場で、群馬の安全な野菜や漬け物なんかを売るようになった辺りからだ。

そして今年の8月から、その野菜販売所の一部にテーブルと椅子を置いて、週末だけの居酒屋を始めた。マンションの1階にある駐車場なので、屋根はあるが前面の壁やドアがないオープンなスペース。だから屋台風居酒屋を名告っている。

夏頃、この屋台風居酒屋の前を通りかかると、夕方の涼しい風の中で何人かが飲んでいた。その光景が、本当に楽しそうで、自分も仲間に入りたいと思いつつ、用事がたまたまあったりして、通り過ぎることが続いた。土日だけの営業で、しかも午後8時には閉まってしまう。宣伝はしていないようなので、知る人ぞ知るという店なのだと思う。

今日(11月1日)は、気温が上がり、11月だというのに夏日になった。しかし、午後から風が強くなり始め、明日から寒くなるという予報が真実味を帯び始めた。午後5時20分。薄暗くなった街を抜けて、「新右衛門」に近づくと、まだ、提灯に灯りがついていない。このお店の提灯は緑。つまり「地場産品応援の店」の印なのだ。・・・やってないのかな、と思って、奥をのぞき込むと、お店の男性がなにやら作業している。「居酒屋、やってますか?」と問うと「どうぞ」と笑顔で迎えてくれる。店の真ん中に長いテーブルが置いてある。その一つの席に座る。先客はなし。
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「飲み物はどうなさいます?」展示板のようなボードに短冊のようなメニューが貼ってある。風が強いのでそれがひらひらと動いている。「ビールや、日本酒、赤ワインもあります。」「そうですねー。」ボードに貼ってある日本酒のうち、群馬の酒を飲んでみることにする。特別本醸造「赤城山」と同じく「妙義山」・・・「赤城山を最初にください。」と注文。突き出しとグラスがのったお盆がまず置かれ、冷蔵庫から取り出した瓶から、グラスに酒が注がれる。「どうぞ。」
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「どうも。」・・・では、一口・・・やや辛口のすっきりした味・・・程よく冷えているので、今日のような日には心地よく飲める。美味しいなあ。突き出しは「水菜と油揚げの煮物」。この水菜がまた美味しいのだ。この店の野菜は味が全然違うとは聞いていたが・・・。日本酒が進む、進む。

メニューは、飲み物もおつまみもすべて300円。煮込みや、カレーライス、チリビーンズなんかもある。変わったところでは「銀杏とむかごの炒め物」とか・・・美味しそうなメニューが並んでいるが、せっかくだから、「漬け物の盛り合わせをお願いします。」と注文。楽しみ、楽しみ。
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お酒のおかわりは「妙義山」。グラスが替えられ、冷蔵庫で冷やしたお酒が注がれる。では、一口・・・おお!これこそ淡麗辛口・・・透明な味とでも言おうか・・・これも美味しい。「いつもだと、もう少し群馬の酒があるんですが、今日は切らしてまして・・・。」「次に来るのが楽しみです。」

「漬け物盛り合わせ」が届く。どれどれ、ほー、「ふき、みょうが、人参、たくわん、長芋、それにこれは・・・瓜ですよね。」「はい、隼人瓜です。」「へえ〜。」・・・それでは一口・・・シャキシャキの歯ごたえ。で、ほのかにメロンのような風味もある。美味しいものだなあ・・・。人参はどうだ?・・・味が濃い!「人参って味がするでしょう。」「そうでうすね。濃いです。」「昔の人参の味です。長芋も食べてみてください。山葵がのせてあるでしょう。」・・・では、一口・・・ちゃんと糸を引いているんだなあ・・・ほへー、山葵がこんなに合うとは!これはいい!・・・日本酒、日本酒。
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「赤ワインも試してみます?」「いいですね。」「フランスやイタリアのようには行きませんが、群馬のブドウもそれなりに美味しいんですよ。」・・・一升瓶から試飲用のグラスに注いでもらう。一口・・・ブドウの甘さを残しながらも、スッキリとした味に仕上がっている。「女性に人気があるんですよ。」「飲みやすいですもんね。」・・・改めて一杯もらうことにする。大きめのグラスにたっぷり注がれる。
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「レタスちょうだい。」と野菜を買いに来たお客さんが、お店の人に声をかける。どうやら常連さん。「あとチリビーンズもね。息子が大好きなんで。」・・・奥から出てきたお店の女性が「いつもありがとうございます。新製品で里芋のコロッケがあるんだけど、試してみます?」と、常連のお客さんにパックに入ったコロッケを見せる。3つで200円です。この付け合わせはキャベツじゃなくて、白菜の千切り。今の時期は白菜の方が柔らかくて美味しいの。」・・・ほー、白菜か。美味しそうだ。常連さんは、コロッケも買って帰る。

「これから寒くなりますね。居酒屋は続けるんですか?」「ええ、8月に始めたときは考えていなかったんですが。寒くなったら、中がありますし。」・・・ランチをやっている店の方で居酒屋を続けるらしい。「おでんも始めますよ。」・・・いいなあ。また来なくては。

ワインを飲みながら、野菜の話をいろいろ聞く。野菜の色の秘密や、旬の野菜の話。「これからは野菜の美味しい季節ですよね。」「そう、何と言っても大根ですね。夏は青首ばかりでしたが、もう何種類もでてきますよ。」「へー、そんなに何種類もあるんですか?」「例えば・・・」といいながら、何種類か大根を出して見せてくれる。聖護院大根や、赤い大根もある。面白いもんだなあ。勉強になる。
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風は相変わらず強いが、全く寒くはない。心地よく屋外で飲んでいるという感じ。この雰囲気もいいなあ。例えばビニールを張ってでも、冬も続けて欲しい。室内もいいが、こっちも雰囲気があると思う。

野菜や畑の話を聞きながら、楽しい時間を過ごさせてもらった。今日はこの辺で。「ごちそうさま。いろいろ教えていただいてありがとうございました。」「いえいえ、またどうぞいらしてください。」・・・勘定はもちろん驚くほど安い。一品300円なんだから。

店を出て、家へ向かう。家までは5分。強い風が吹いている。空は曇ってきて、明日からの寒さを予感させる。でも今夜はこの心地よさをもう少し感じていたいと思う。

東京都中野区鷺宮4丁目45−18
03-6228-1598


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この記事へのコメント
見つけましたね。最高のとこみたいじゃないですか。

あまりにも多くの時間と人が通り過ぎたので作為が全く無くなってしまった場所がいい。
経堂「朝日屋」とか目白「たにし亭」とか…いまはすでに影さえもかたちさえもない場所。
(建築の設計なんかやってるもんだから、しょうがない)

いいですね。吹きっ晒されながらうっすらと落ちたしつらえの影に思いをよせる、なんて、さ。
仮初だ、かりそめ。
Posted by taka at 2009年11月03日 07:46
takaさん、こんにちは。

今時こんなに飾り気のない店は珍しいです。でも、中身は充実してます。いい気分で飲めました。

誰もが評価する有名店を回るよりも、こういう店で、静かに飲んでいたい・・・そんなことを思いました。
Posted by 寄り道 at 2009年11月03日 17:01