INSTOCKHOLM

「Hitomi Nishiyama in Stockholm 〜Live at Glenn Miller Cafe」
西山瞳・イン・ストックホルム
〜ライブ・アット・グレン・ミラー・カフェ〜

税込定価 : 2,640円
品番 : SOL JP-0008
レーベル : Spice of Life (アミューズ)
発売日 : 2008年2月20日


西山 瞳 ピアノ Hitomi Nishiyama : piano
ハンス・バッケンロス ベース Hans Backenroth : bass
ポール・スヴァンベリー ドラムス Paul Svanberg : drums
カール・マーティン・アンクヴィスト テナー・サックス Karl-Martin Almqvist : tenor sax
アンダーシュ・シェルベリ ドラムス  (track 06のみ) Anders Kjellberg : drums


[収録曲]
01. In The Night Watch [quartet]
02. Bye For Now [quartet]
03. SAKIRA [duo]
04. 君をのせて [trio]
05. Giraffe's Dance [quartet]
06. You Are Not Alone [trio]


track 01〜05/
2007年7月22、23日 グレン・ミラー・カフェ
track 06/
2007年7月21日 ストックホルム・ジャズ・フェスティバル
ストックホルム、スウェーデンにて録音


■詳細
北欧ジャズの中心都市、ストックホルム。数多くジャズライヴハウスがある中で高い人気を誇るのがグレンミラーカフェ。小さな店のためほとんどのお客が立ち見の満員状態。道路にまで溢れ出た客はそれでもビールを片手に聞き耳を立てる活気と熱気に包まれたジャズの店。それがグレンミラーカフェ。2007年7月に日本人として初めてストックホルムジャズフェスティバルに出演した西山 瞳はその後2日間、これも日本人として初めてグレンミラーカフェに出演し連日満員御礼、ストックホルムのジャズファンに温かく迎えられ素晴らしい演奏を繰り広げたのでした。このライブ盤はその記録とともにボーナストラックとしてストックホルムジャズフェスティバルの演奏も収めた、ファン必携の西山瞳2007年スウェーデンライヴです。
なお、4曲目「君をのせて」は1984年公開のスタジオジブリ製作アニメ映画「天空の城ラピュタ」エンディングテーマ曲で作曲:久石 譲、作詞:宮崎 駿による作品。西山 瞳の原点ともいえる作品をストックホルムジャズフェスティバルのステージ、そしてこのグレンミラーカフェでも日本の音楽文化紹介のために披露し、多くのスウェーデン音楽ファンを魅了しました。このライヴ盤でしか聴けない貴重な録音です。


■アルバム紹介フライヤーより、杉田宏樹氏の解説文

“初めて”が重なった夏の日の出来事であった。スウェーデン、ストックホルムのジャズ・クラブ出演。現地ミュージシャンとの共演。そしてライヴ・レコーディング。相当なプレッシャーがかかっていたとしても不思議ではない状況だ。もっともジャズという音楽の世界で生きているミュージシャンにとって、初めての場所での初共演は日常的な環境ではある。異国の地でのパフォーマンスもその延長だったということなのか。

この時、西山瞳の同行取材を通じて感じたのは、重圧をものともしないプロフェッショナリズムだった。同国の野外ジャズ祭としては最大規模を誇る「ストックホルム・ジャズ・フェスティヴァル」に初めて出演し、2000人の大観衆を前に自分の音楽を演じきった姿を観て、そう思った。いつもと違っていたのは曲間のMCを英語で行ったことくらいだったのかもしれない。そんな自然体に近い西山瞳を現地の人々は温かい拍手で迎え、すぐに受け入れた。終演後のサイン会の盛況ぶりや、ステージでの好演に現地マスコミがさっそく反応してインタビューを申し込んだのが、その証しである。極東からやって来て、母国のジャズメンとのトリオを率いてみせた女性ピアニスト。スウェーデンの観衆には少女のように映ったであろう西山瞳は、等身大の魅力によってたちまち人々の心をつかんだ。

ストックホルム・JFのステージを無事に務め、強心臓ぶりを実証した西山瞳は、1日をはさんで2日間連続のクラブ・ライヴに臨んだ。会場となった「グレン・ミラー・カフェ」は、近年数多くのライヴ・アルバムを生んでいる同地の最重要ジャズ・スポットであり、メインストリームから前衛派までを幅広くカヴァーするブッキングが、遠く離れた日本からも注目されているお店。そんな人気店だが、実際に訪れてわかったのは非常にこぢんまりとしたスペースであること。通りに面したクラブは立ち見を含めて最大40人程度のキャパシティで、休憩時間には店外に出て酸素を補給したくなるほどの濃密な空間なのである。ここで西山瞳は異なる演目を用意した。初日がトリオ、2日目がカルテットだ。メンバーのうち、スタジオ録音の過去2作のベーしストでもあるハンス・バッケンロスを除く2人は、この時が初共演。すでにフェスティヴァル好演で成果を挙げていた余韻が冷めないタイミングでのクラブ出演は、地元関西エリアでの日常的なライヴとさほど変わらない気分で臨めたのではないだろうか。小さなクラブだからこそ醸し出されたインティメイトな雰囲気は、異国の初めて演奏する場所と共演者というハードルを、軽々と越えさせたのである。

プログラムはデビュー作『キュービウム』の収録曲を柱とした全6曲。日々のクラブ・ギグで演奏している楽曲が、初めての環境の中でどのような新しい輝きを放っているのか。期待と注目が集まるこの点に関しては、初めてテナーサックスを起用したレコーディングとなったことで、西山瞳のオリジナル曲にフレッシュな生命を吹き込む成果をもたらしている。それが大きな収穫だ。現在スウェーデンで最もアクティヴな活動を展開するカール・マーティン・アンクヴィストは、同国を代表する俊英であり、カルテットのリーダーにかつてないほどの即興的な刺激を与え続けているのだ。テナーが呼び水となってピアノの力演をもたらした「イン・ザ・ナイト・ウォッチ」や、躍動的な演奏によってスウェディッシュ・カルテットの魅力を発揮した「ジラフズ・ダンス」が素晴らしい。アルバム初収録となる宮崎駿映画曲「君をのせて」は、世界的な人気が高まる和製アニメーションの正統的なジャズ・トリオ・ヴァージョンとして印象深いトラックだ。ラストにはジャズ・フェスティヴァルでのトリオ演奏をボーナス・トラックとして収録。2007年7月に日本人女性ピアニストが、異文化に囲まれた北欧の地で刻んだ確かな足跡を、改めて体験できる喜びがこのアルバムにパッケージされている。

杉田宏樹(ジャズ評論家)