
「Parallax / Hitomi Nishiyama」
パララックス / 西山瞳
税込定価 : 2,933円
品番 : PBCM61032
レーベル : Spice of Life
発売日 : 2008年9月17日
発売 :(株)スパイス・オブ・ライフ
販売 :(株)EMIミュージックジャパン
西山 瞳 ピアノ Hitomi Nishiyama : piano
坂崎 拓也 ベース Takuya Sakazaki : bass
清水 勇博 ドラムス Takehiro Shimizu : drums
馬場孝喜 ギター Takayoshi Baba : guitar (track 04、07)
[収録曲]
01. Bull's-Eye
02. Softly As In A Morning Sunrise
03. Front Man
04. Changing
05. The Other Side Of Midnight
06. Images & Words
07. Invisible World
08. 思ひ草
09. Blue Nowhere
10. Parallax
11. Aprilis
2008年4月1日&2日、滋賀県栗東文化会館さきら小ホールにて録音
ファツィオリF278使用
みずみずしい感性と若きエネルギーの衝突と交錯
日本のジャズ新時代の幕開けを予感させるボーダレスな世界
西山 瞳の第4弾は名器ファツィオーリの音色も話題の注目作
■詳細
2006年9月にスウェーデンのトップミュージシャンとの共演で制作されたCD「キュービウム」で注目のデビューを飾った西山瞳。ヨーロッパジャズに大きく影響を受けた叙情的で美しいメロディーを持った彼女の音楽は瞬く間に多くのジャズファンの心を奪い、広く注目される存在となった。翌年の2007年7月には日本人として初めて「ストックホルム・ジャズフェスティバル」に出演、そのスウェーデントリオでセカンドアルバム「メニー・シーズンズ」のレコーディングを行い。更にストックホルムで最も人気の高い「グレン・ミラー・カフェ」に於いて2日間に亘る現地ミュージシャンとの演奏とそのライブレコーディングを行うなど精力的な活動を繰り広げてきた。
国内外でさまざまな経験を積む中でその音楽性を磨き上げてきた彼女の待望の4枚目のアルバム完成である。今回の作品「パララックス」は彼女の日本レギュラーメンバーによる初録音作品である。「パララックス」とは写真用語で「視差:観察位置による対象物の変位」という専門用語。ピアノ、ベース、ドラムスの3者が織りなす音の世界は繊細なチームプレイによって構成・アレンジされ、聴く視点によって様々な表情を見せてくれる。3者のみずみずしい感性によるインプロヴィゼイションが大きな聴き所で、レギュラーメンバーならではの息の合ったプレイと若々しいエネルギーに溢れ、5拍子、7拍子などを駆使したスリリングな演奏が楽しめる作品となった。
ドラムスの清水勇博は人気クラブジャズユニットの要としても活躍。ベースの坂崎拓也は関西の若手を代表するプレイヤーの一人。トリオ全員が20代という若さで新たな日本のジャズの幕開けを告げるユニットである。今作品ではゲストギタリストとして2005年ギブソンジャズギターコンテスト最優秀賞受賞者の馬場 孝喜が2作品にフィーチャーされ、新たな西山 瞳の世界を創りあげることに寄与している。
本作品で西山はジャズファンの間ではハービー・ハンコックが愛用することでその名が多くの人に知られることになったイタリアが誇るピアノ、ファツィオーリを弾いている。ファツィオーリを持つホールは日本全国でも滋賀県にあるさきらホールのほか3ヶ所しかなく、彼女はこのホールに捧げる“SAKIRA”という曲を「メニー・シーズンズ」に吹き込んでいるが、今回の日本での録音に際して迷うことなくさきらホールを録音場所に選らんだ。ライブさながらに加工することなく録音された音は極めて自然でアコースティックな音色が魅力的な作品に仕上がった。近年クラシックの名ピアニストの多くが好んで弾く名器ファツィオーリのまろやかで艶やかな音色を楽しむことが出来る作品としても注目を集めることだろう。
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■アルバム紹介フライヤーより、工藤由美氏の解説文
「ピアニストは考える葦である」
―西山瞳の新作『Parallax』によせて―
西山瞳は「考えるピアニスト」だ。
動物的な嗅覚や反射神経はジャズに必須だが、それを芸術の域まで昇華させるのは、熟考と遂行という知的プロセスではないかと思う。絵描きの仕事と同じで、自分の内なるインスピレーションを白いキャンパスの上に移し替えるには、総体を構築する能力とディテールを検証し続ける忍耐力が必要だ。直感のみに頼ることなく、時に論理的思考を駆使し、遠くから作品を俯瞰してはバランスを見、今度は目を近づけて細部に息を吹き込む。その繰り返しにより絵は深みを帯び、初めてアーティストの心に秘められた表象が立ち上がってくるのだ。
私は、西山は世界で勝負できる数少ない日本人ピアニストと見ているが、それは必ずしも彼女のメジャー・キャリアを北欧でスタートさせることになった幸運に由来するものではない。天賦の才能というべき研ぎ澄まされた完成に「考える」力を加えたことで生まれる、比類なきオリジナリティが、彼女には備わっているからなのだ。
世界の人が耳を傾けるのは、その人が発する「言葉」である。そこに物まねではない個が、独自の美学とともに屹立していれば、それが魂の逍遥を促し、感動を誘う。西山瞳のピアノにはそれがある。
洗練されたスタイリッシュなセンス、日本の美しき伝統に根ざす繊細な心ばえに、簡素美を追求するシンプル・モダンの精神。それらが独特の配合によってブレンドされ、勤勉さによって培われた卓越した技量を介して、高揚感を誘うクリスタルな音のシャワーとなってこの世に具現化されるのだ。
ついでながら西山瞳は「考える」のみならず「葦」でもある。あの華奢な体とか細い腕は、折れそうで折れない。どこまでも柔らかにしなる「葦」には真の強さが宿る。たとえば新作の『Parallax』の唯一のスタンダード「朝日のごとくさわやかに」の派手なぶっ壊し具合に「考える葦」の真髄が見て取れる。
日記を書くように曲を書くことを自分に課しているという彼女。創作の源泉は、地道な努力により、豊饒の海となる。そして生まれ落ちた音たちは世界に向って飛び立つのだ。
音楽ライター 工藤由美
■BARKSニュース 2008年9月16日付
「西山瞳、宝石のような音色のジャズはいかが?」
ジャズは、ポップスやロックにはないスリリングさ、緊張感を持つと同時に、人の気持ちを柔らかくする癒しの要素をも秘めた多彩な音楽、ということを改めて認識させてくれるのが、西山瞳というピアニストが作り出す珠玉の作品群だ。
西山瞳は、ヨーロッパジャズに影響された叙情的で美しいメロディを持つアーティスト。特にスウェーデンでの人気が高く、北欧の静謐さとジャズの躍動感をピアノに乗せ、独自の空気を感じさせる旋律を特徴としている。彼女がトリオで9月17日にリリースするアルバム『パララックス』は、そんな彼女の魅力が凝縮されたもの。
このアルバムで、彼女はピアノの名器として名高いファツィオーリを全面的に使用している。このピアノはハービー・ハンコックが愛用したことで世界的に名前が知られたもの。このピアノを持つホールは全国で3ヶ所しかなく、今回のアルバムは滋賀県の“さきらホール”で録音された。ライヴの雰囲気を出すために、加工されることなく録音された音は、ホールのアンビエンスをふんだんに含んでおり、他では絶対に出せない音色になったという。
今回は、彼女の日本でのレギュラーメンバーによる初めての録音作品となっている。ピアノ、ベース、ドラムスの3ピースによる演奏は、プログレ、クラシック、フュージョンなどの範疇を超えたボーダーレスな出来。若い力と感性が隅々まで行き渡っており、その新鮮な演奏は、コアなジャズを知らなくても十分に楽しめる。
この秋、ジャズの魅力にハマッてみるのはいかが?
■レビュー
【Jazz Life 2008年10月号】
「タイトなアンサンブルが煌めくレギュラー・トリオ作品」
メジャー・デビューとなったアルバム「キュービウム」以来僅か2年の間に4枚目という驚異的なハイペースでのリリースとなった西山瞳。巨匠エンリコ・ピエラヌンツィさえ彷彿させる流麗なタッチと、気品溢れるヨーロピアン・テイスト。これまでに発表された3枚は多くのファンを魅了している。そんな彼女が第4作目にして大きな変化を見せた。本作は過去3作でヨーロッパのミュージシャンを迎えてきた彼女が、日本のレギュラー・メンバーを伴ってリリースする初の作品。ピアニストとしての技量のみならず、作曲やアレンジにおいても強い個性と抜群のセンスを発揮する彼女。行きの合ったレギュラー・トリオによる演奏ならばよりハイ・レヴェルなものになるに違いないと胸が高鳴る。期待通りアルバム冒頭の1から緊密な演奏が飛び出してきた。ベースには坂崎拓也、ドラムには清水勇博。共に20代後半のフレッシュなふたりが生み出すリズムはスピードと躍動感に満ちたもの。そのリズムに乗せて西山が透明感のある瑞々しいフレイズを紡いでいく。クラブ系の細分化されたリズムとゆったりとしたメロディのコントラストが不思議なトランス感を生み出す5など、バンド独自のカラーが発揮されている点が頼もしい。7拍子にアレンジされ、さらに大幅にリハーモナイズされたスタンダードの斬新さも光る。