短いが身近というお話

俳句、短歌そして読書、映画などなど・・・。なんでもつめこんで、やけくそに面白い!

柚月裕子「盤上の向日葵」

「本屋大賞」ということで読んだ。
作者についても、作品についても
まったく予備知識なしで。
読後、「本屋大賞」ってなんだろう?
と思った。

盤上の向日葵

















いま、将棋は人気だ。
駒の動かし方くらいしか判らない
筆者にも盤上の戦いの熱が
伝わってくるほどの描き方であることも
十分に読めた。

刑事二人が将棋の王座決定戦が行われている
冬の天童市へ向かうところから物語は始まる。
駒彫りの名人がつくった名駒の
行方を追っている訳だが、
それが殺人事件に関係していると
いうことが判ってくる。
数々の捜査の果てにそこに至った訳である・・・。

ここから、ある少年の物語に変わる。
母をなくし、父のギャンブル好きのため
食べるものもろくに与えられぬ小学生が
将棋に並々ならぬ興味を持っていて
それを元教師が鍛えようとする・・・。

この二つの物語はやがて交錯し
一つの流れになるであろうことは
読んでいてすぐに判る。
そして、きっと、二人の刑事の名駒を
追いかける捜査の旅があまりにも
饒舌というか、
よくある展開であることに気づき、
この長い捜査の話は不要であるように
思えてくる。

少年は成年になり、経済界で成功するが
将棋への想いが残っている。
そこへ学生時代に知り合った
将棋で飯を食う浪人と再び出会い、
将棋への火が再び燃え始める。
そんな展開の方をメインにした方が
よかったのではと思った。

もうひとつの欠陥は時系列はあるのだが
あまりにも交差し過ぎていて
時代感覚を失ってしまう・・・。

もっともっと書きたいけれど
結論だけにする。
将棋の勝負の描き方はたしかに上手い。
しかし、それ以外はあまりにも古くて、
ところによっては稚拙。
これが「本屋大賞」?と思ってしまった。






桐野夏生「路上のX」

最近のこの人の作品は出だしで
とても苦痛になり、
何度か読むのを中断する。

社会的にまったく普通の
主人公がいまにも底辺まで
落ちそうになる。
宙ぶらりんのまま
まだ落ちてしまってはいないのだと思わせる。
こういう連続の展開に
読み続けることも
ぎりぎりになっていく。
そんな物語なのだ、これも。
路上のX
















今回の主役はJKと呼ばれる女子高生。
レストランを経営する両親に
突然、経営が頓挫したと告げられ
女子高生真由は父の弟の家に、
弟は母の妹に家に預けられる。
真由は都内の私立高校へ行く予定が
近くの偏差値の低い
どうしようもない公立校へ進学することになる。
預けられた叔父の家は
叔母はパート、叔父は酒浸り。
狭い家で、
真由は二人の従兄弟のベッドの間に寝るしかない。
もちろん、机はない。
朝ご飯は食べさせてもらえないことが多く、
昼は小遣いからパン1個で済ますしかない。
やがて真由は渋谷のラーメン屋でアルバイトをし
叔父の家に帰らなくなる。

物語の出だしはこんな感じだ。
こんな真由を狙って、
大人の男たちが近づいてくる。
JKビジネスに誘い込まれるが
街で知り合った同じような境遇の
仲間たちの機転で
どうにか大人たちの手から逃げ出すが
すぐに次の手が迫る。
ラーメン屋で寝泊まりしている真由は
その店のチーフと呼ばれる男に
レイプされる。

ようやく親しくなった仲間の手引きで
寝泊まりできるようになった
東大生のちょっと裕福そうなマンション。
東大生はMでオタク。

世の中にはこんな人々が
うようよいるんだ、みたいな話が続いて
警察へ。
そこで大どんでん返し。
真由はどこへどう流れるのか?
この辺りになると
一気に読みのペースがあがる。

そして、最後は
面白いね、この作家。
良かった!!





原田マハ「モダン」

久しく「読書感想文」を書いてない。
再開しようと思う。
再開第一作がこの本。
この人の美術館あるいは画家ものを読むと、
とても絵が判り、絵への関心が高まる。
いわば絵の、画家の、ガイド書みたいな
位置づけである。
今回はニューヨーク近代美術館MoMAを
舞台にした短編集。
モダン














全体はMoMAの物語なのであるが
ワイエスの「クリスティーナの世界」、
ピカソの「アヴィニヨンの娘たち」、
ルソーの「夢」、モネの「睡蓮」などの
絵が登場する。
その背景を
9・11アメリカ多発テロ事件や
東日本大震災などが支える。
そんな興味深い物語の中でも
とくに
27歳の若さでMoMAの初代館長になった
アルフレッド・H・バーの話には惹かれた。
「見えないところで、役に立っていて、それでいて美しい」
そういうものを「アート」と呼んで
「マシン・アート」を展示するとともに
建築・デザイン部門を美術館に拓いたという。

「見えないところで、役に立っていて、それでいて美しい」
それがアート。
この言葉を得ただけで、この著書を
読む価値があった。

きむらけんじ「あしたも世間はややこしい」

 でたらめの唄で草抜く余生
 なりたい人にもなれず天道虫にもなれず
 蛸揉んで妻の秘密を吐かせている

俳句&写真&ミニエッセイで構成される
この著の中から適当に俳句を選んでみた。
上の2句には写真とミニエッセイが付いている。
3番目の俳句にはそれがない。

あしたも世間は
















実はこの著書、ほぼ5年前に上梓された
「きょうも世間はややこしい」の
いわば続編である。
では、中身は同じようなものなのか?
じっくり読むと大きな違いを感じる。
最初に挙げた2句に代表されるのだが
この「あしたも」はやや諦念の気分が強くなっている。
前著にあった3句目のような強い意志を含んだ
俳句作品が少ない感じがする。
さらに、述懐というか、自責というか
自分に跳ね返っていくパワーが弱い。

 働くの向いてないので飴舐めている
 うんとかああとかだけで老いてゆく 
 新人はミネラル豊富面白味なし
 駅舎につばめ来て発車時刻を見ている

この3句目、4句目では作者は観察者の位置に
立ちつつある。

前著と比較するのが目的ではないが
この5年間が著者を変えた。
著者もやはり変わったのである。

どちらがいいというのではない。
そういうことを考えながら読むと
何かしら読者も変わったのかもしれないと  
ということに気づいたのだ。

筆者のような読み方は邪道で
この著を素直に読むことが
ホンとはいいのだろう。

全体に流れる疲労感というか
ペーソスは相変わらずだ、
というだめ押しを最後に付けておく。








京都嵯峨野誕生物語

歴史、地理が好きな人にはたまらないだろう。
京都嵐山、嵯峨野が好きな人にはたまらないだろう。
つまり京都嵯峨野を歴史的に、地理的に一望する一冊。
嵯峨野誕生物語縮小


















門外漢のワタシはびっくりというか
すごい!としか言えなかった。
京都嵯峨野に旧石器時代、弥生時代があったとは!
嵯峨野に古墳群があるなんて!
天竜寺や妙心寺、竜安寺は知っているけれど
嵐山城跡がいまもあるという。
角倉了以が保津川を掘削し、渡月橋が現在の位置に
架けられたという。
この本を読んでいると
京都嵯峨野の歴史があれこれと登場し
いまの姿を合わせると
混乱してしまう。
一度読んだだけでは、整理ができない。
観光地としてしか認識がなかった嵯峨野を
ちゃんと歩きたく思う。
幸いに歩き方、地図も掲載されている。
とうてい1日ではムリだけれど
とりあえず4月10日に歩くことにした(笑)

この本 NPO法人さらんネットの製作。



京都新聞から

京都新聞に
絵本「はいくのどうぶつえん」が
紹介されている。
と知人から掲載誌の切り抜きが
送られてきた。

この記事の書き手は
小生の生意気な俳句観まで理解してくれている。
すごく嬉しい!素晴らしい!

京都新聞














俳句は「書く」ことと同じくらい
「読む」ことを大切にしたい。

きむらけんじ「きょうも世間はややこしい」

きょうも世間は
















 口に泡ためて理屈のわからぬ人だ

 働かな食えぬと猫に言ふ

 黒々りっぱな手帳で仕事はあるか

こんなペーソスあふれる自由な俳句に
風刺の効いたエッセイを添え
写真までも付けて上梓した
自由律句集「きょうも世間はややこしい」。

筆者のとりわけ推しの句は次の2句。
 
 刺しても刺しても死なない夢であった
 
 どうしたものか隣の柿に手がとどく
 

達成できそうでできない、
どこか焦燥感に満ちた作品に魅力を覚えていた。

5年近く前に仲間内プラスアルファで
話題になったこの句集&エッセイ集。
なぜ今ごろ、再び語るのか。

この続編が3月初旬、発売なのだ(象の森書房)。
俳句+エッセイ+写真の同じスタイルで。
同じ1,200円で。

このタイトルがまたまた、ややこしい。

「あしたも世間はややこしい」

乞うご期待!である。(予約受付中)

あしたも世間は


はいくのどうぶつえん

俳句をネタにした絵本である。
俳句の解釈をそのままに
絵物語にしたのではない。
ライターたちが俳句からイメージした世界を
物語にして、それを
イラストレーターが絵にしたのである。
俳句は解釈する文芸ではないと思うから
俳句は読む人がイメージを勝手に広げる文芸
と思うから、この絵本が出来たのである。

9784990739379
















そんな理屈からか、
幼児には難しい絵本になった。
そこで工夫がある。
1枚の絵にこっそり動物が隠されている。
たとえば、このように。
(絵の右上にピンクの豚がいる)

はいくの動物園3








はいくの動物園3右上





こんな動物捜しから
家族や友達のコミュニケーションが始まり
俳句に親しみを覚え
できるなら日本語を好きになってもらえたら
どんなに嬉しいことか。

俳句はおなじみ坪内稔典さんの面白い作品を
借りた。
文章はコピーライターや翻訳家、取材ライターなど
日頃、文章を書き続ける皆さんにお願いした。
そして、絵はイラストレーターの米津イサム氏。
発刊後まだ500部くらいしか世に出ていない。
しかし、極彩色の絵は評判である。
チャンスがあれば、手にとってもらいたい。

桐野夏生「天使に見捨てられた夜」新装版

いまから20年ほど前、
この作品を読んで桐野夏生の
ファンとなった。
それからコミック作品は別にして
かたっぱしからこの人の作品を読んだ。
たぶん、すべての作品を読んできた(と思う)。
この前作「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞を受賞。
本格作家デビューしたわけだが
「コミック出身」ということで
差別的なことを受けたと、
何かのエッセイにあったように思う。
電子書籍化にも消極的だった時代もあった。
今回新装版が出て、電子書籍で読んだ。
やっぱり面白かった!
他の作品ももう一度読みたくなった。

天使に見捨てられた夜
















この作品は村野ミロシリーズの第2弾。
父から譲り受けた貧乏探偵事務所を
孤軍奮闘して守り、
事件を解決していく。
今回はAV出演した一色リナを
人権擁護の立場で捜す渡辺の依頼で
ミロは捜査を始める。
1本のAVつながりから登場してくる
独特の製作関係者たち。
脅しや依頼者渡辺の死とともに
リナを巡る人の輪は広がっていく。
かって人気を極めたロック歌手、
大手建設会社の社長夫人、
リナの母親、リナの先生・・・。
追う人が増えるごとに、
捜査が翻弄される。
その翻弄は読者の予想を裏切る。
今度は読者が裏切りを期待する。
それが面白いのだ!

真山仁「オペレーションZ」

近頃、微妙に住みにくくなっているのではと
感覚的に思う。
社会保障が軽んじられるとか
憲法の改正が直前の課題になりつつあるとか
賃金が実質的にあがらないとか
北朝鮮が・・・というような
マスコミやネットで呷られる
政治的なこと以外に
日本の価値が下がっている気がする。
たとえば、GDPは世界で3位ではあるが
2位の中国と比べると2倍以上の差が生まれている。
株が上がっているというけれど
2010年は1ドル87円強だったことを思い出し
それを加味すると、そんなに上がっていない。
むしろ価値としては下がっている。
もっと具体的に、世界の大学ランキング200に
中国は7つも入っているのに
日本は東大と京大のみ。
2013年、東大は27位だったが去年46位、
京大は54位から74位に下がっている。
民主党時代に「2位ではだめなんですか?」という
政治家の発言を揶揄したが、いまはどうなっているのだろう?
手放せないスマホだけれど、日本製のものは
世界でどのくらい使われているのだろう?
あのシャープだって経営者が変わったら
再上場・・・・・という具合。
日本は優秀と信じてやまなかったけれど
国際的にみたら決していまや優秀ではなく
どこか「井の中の蛙」になっているのではなかろうか。
こんなことをひとり考えていて
昨年、この本を読んで衝撃を受けた。
これは小説だけれど、目前に迫った
日本の問題のひとつに違いないのだ・・・。

オペレーションz















国家予算が1千兆円を超え、
このままだと国家破滅を迎える。
そう意識した総理は1年で予算半減し
この危機を突破する特別プロジェクトを編成する。
いわば「選ばれた」官僚たちが
このために取り組んだのは予算の33%を占める
「社会保障費」と「地方交付税」をゼロにする案。
当然、官僚の抵抗、マスコミ・メディアの抵抗を受ける。
さらには、政争の道具とされ数々の裏切りも生まれる。
この大胆なプランを実施するため
総理は総選挙へ・・・。
結論をここには書かないが
日本はここまで来ているのではないかというより
いま、ここにあるのではと感じてしまうのだ。
この小説にもあるが、
意外に日本国民は穏やかで温和しい。
このかなり危険な状態に反発はするが
それほど大きな動揺をしない。
本当にそれでいいの?

多くの人にこの1冊を読んで欲しい。
ひょっとして、日本は深刻なのだと思うかもしれない。
訪問者数

短歌、俳句
にほんブログ村 ポエムブログ 俳句へ
Categories
livedoor 天気
  • ライブドアブログ