ちょっと前に~恋のささやき~シリーズの記載をupして以来、何故だか、卵巣ガン手術後のセックスの解説者?のように思われてしまった私は、実は、少し前に、とあるインタビューを受けた。

 これって、誠に気分の良くない取材だった。
一応、医療職の端っくれてあるので、出来るだけ客観性をもって誠実に質問にお答えしたけど、内心、この問題の対応には、ほとほと疲れた。

 この取材を受ける気持ちになったのは、それまで全く気が付かなかったのだけど、どうも、卵巣や子宮を失った場合の女性や、精巣や前立腺を失った場合の男性は、セックス出来なくて当然・というのが、世間一般の認識レベルであるらしきお話を遺憾に思ったからだ。

 こうした誤解は、先の「がん情報センター」のサイト記事に由来するものであるとのことだったのだけど、私は腰を抜かすほど驚いた。
 
 AV女優さんが、卵巣がんに罹患されたニュースが流れた時に、セックスのし過ぎで卵巣ガンになったなんていう大バカなカキコをした2チャンネル住民レベルの人たちであれば放っておくのだけど、一般の認識が、そのようであっては、婦人科手術後の女性や男性科?手術後の人々に対する微妙な偏見を生みかねない。

 で、とりあえず、一応インタビューには、お答えすることにした。
だけど、これには、途中でかなり私のご機嫌が斜めになった。

「卵巣の摘出手術後も、セックスできるものでしょうか?」

「ええ、できますよ。」

「最初は、いたいとか、出血はないのですか?」

「一般的な平均値が確実に伺えるような調査資料を見つけることはできてはいませんが、個人的にはあり得ないです。今後、こうしたことは、医学か性科学の分野で研究されてゆくことが希求されますね。」

「普通にセックスして支障はないのですか?」

「普通にって?」

「体位による問題があるらしいのですが。」

「はあ?」

「ですから、可能な体位があると聞きましたが。」

「現代は、さまざまな風評被害を生むような情報に満ちていますから、先ず、あなたが入手された何らかの情報の内容の確実性を検討するべきでしょう。その上で、ご質問頂くならお答えしますが、あなたの質問の仕方は、どうも、好奇心が先立ってるように思えてなりません。」

「一般的な統計は見当たらないのです。しかし、多くの婦人科手術後の女性や精巣ガンや前立腺がん手術後の男性が、出来なくなると言われています。このことをどのように考えられますか?」

ここまでの会話で、私はかなり頭に来ていた。ので、
「『関係ありません!以前と変わりは全くありません!』」
とちょっとヒステリカルに断言し、言葉を続けた。

「と、私は手術後に、主治医に言われたことが良かったと思っています。私個人に限っては、全く変わりませんし、更に年齢とともに様々な感性が素晴らしく深まっています。女性は成熟するとともにその魅力が深まってゆく神秘を宿していることは、フランス人だけじゃなくって各国共通の人間の特性ですから。
 
 ただ、神経分布を考える時、様々な要因が重なれば、セックスに関する何らかの障害が残存する可能性はあり得ると思います。
 だけど、もしも、多くの方々が、あなたのような先入観を持っているとしたら、その先入観の方が神経損傷よりも遥かに数多くのセックスレスの原因になるでしょう。ある種の宗教では、セックスを子孫を残す為の行為と規定しているようですから、そうした認識も、卵巣や精巣が無ければセックスできないという妄信や妄想を生みやすいのでしょう。」

「セックスできなくなることには、妄信や妄想も影響するのでしょうか?」

「すべてがそうではないですが、影響は大きいと思います。
実際に器質的・機能的問題が発生する可能性もあるかもしれません。
先ず、必要なのは、器質的変化を知ること、次に必要なのは、機能的変化を知ること、但し、機能的変化に関しても器質的な変化に起因するものもあるでしょうし、心理的問題に起因するものもあるでしょう。
本来、病気などの場合は、あらゆる器質的問題や機能的問題を先に精査して、そこで問題が無ければ初めて心理的な疾患を疑うという流れがあると思うのですが、セックスは、先に検査することはできないですから。
更に、セックスは、理性の発達した人間にとって非常に高度で精密な精神的感作が必要な行為ですから、ちょっとした心理的要因でもその行為に影響が及ぶ。
これらを勘案すると、できなくなる!と思い込むことによる影響はかなり大きく左右すると思いますから、一般的にはできる!と思っていることが、先ず、大切なことだと、私は、思います。
ケースにもよるとは思いますが、先に、出来なくなっると思い込むより、もしも、出来ない時には、然るべき医師に相談すれば大丈夫ってくらいに考えておけば、心理的要因が少し改善するのではと。

逆説的に言えば、精巣や卵巣を失ってもセックスができるってことは、セックスは生殖という機能に限定して存在するものではないと言うことができるでしょう。

もしや、それまで何らかの理由で致し方なくセックスをしていた場合などは、手術を機会にセックスレスになるってケースもあるかもしれませんが。。。

私、今、あなたの質問の仕方に、かなり頭に来ていますので、ヒステリカルにあなたを叱りたくなっています。
19世紀ではヒステリーは子宮の痙攣と真面目に信じられていたとはご存じですよね。あなたの観念は、19世紀のようです。
そもそも、取材する前に、あなたはご職業としてご自分でどの程度の予備知識を持っている事が必要だと自覚されているのですか?」

「先入観を持たずに、一般的ながん情報センターの知識程度の観点からインタビューさせて頂こうと思いました。」

「あなたが一般的と思い込んおれらるがん情報センターがまき散らした困った先入観を、あなたは、思いっきり持っておられます。
先に、然るべき婦人科医師や泌尿器科医師に取材されてから、当事者に取材するのが基本でしょ!」

「・・・・・・」

「今回の取材は、『こうした生殖器ガンのサバイバーは性機能障害を持つと一概に決めつけられることを大変遺憾に思っている』という私のコメントを取ることを目的にされてるのではないですか?あの滑稽過ぎるな「がん情報センター」のSM好きなライターが書いたかのようなセックスリハビリ記事の広報に関しては、既に訂正を求めておきましたが。
取材の条件として申し上げた通り、記事にするなら先にその文章に関して私の了解を得て下さいね。これは、全ての取材に関しての私のスタンスだから、例外はありません。」

「了解しました。」

 ということで終わった僅かな会談であったが、がん情報センターの記事は無事取り下げられて、その後取材元から記事の草稿も送られて来ない。

 もしかしたら、あれは、昨今の医科大学の不正入試問題の多発時期にもあって、次は、国立ガン研が監督するがん情報サービスの情報提供の中に見つけたジェンダー問題(女性の性機能障害についての記載と、男性の性機能障害についての記載を比較すると、女性には苦痛や出血を我慢してまでセックスすることを勧め、男性にはお相手の女性に理解を求めることを勧めている・っていうジェンダー差別的記載も見受けられたので)についての、一種のスクープを狙ったものであったのかもしれない。

 ジェンダー問題は、人間の理性の発達とともに解消してゆく種類の問題だと思う。
こういう端々の問題よりも、戸籍制度という問題が最も大きいとわたくしは見ているのだけど、それに言及するオピニオンリーダーが未だに出現していないこと自体が、この国の集合的無意識の洗脳の強さを物語っているかのようだ。