2013年01月28日

コラムアーカイブ

都築響一さんのメルマガで、昔書いたコラムをアーカイブとして再掲載していたのが
面白かったのでマネしてみます。
2年前くらいにモバイルブロスというテレビブロスの携帯サイトに書いたものです。
文字数が緩やかで書いてて楽しかった。


モバイルブロス2010年11月「ブラックメール」
11月26日に拙作ドラマ「モテキ」のDVDボックスがリリースされます。深夜ドラマとはいえそこそこは評判になったし当サイトでも特集を組んでいただたりしたのでご存知の方も多いかと。昨年から今年にかけてほぼこの「モテキ」の仕事しかしてこなかったオレとしては一応このDVDリリースで作品のフィニッシュとなることは万感せまるものがあります。けっこう色んな人に誉められたけど、いやあぶっちゃけ良くやったと思うオレ。うん、胸を張って面白いモノを全力で作りましたと言えますよ。DVDはマジで手塩にかけて育てた娘を嫁に出す思いです。そもそもこのドラマ、企画の成り立ちが相当にいびつでして。最初はテレビ東京ではなく、業界のエリート官僚の集まりとされている某広告代理店からのスタートでした。「ウチで放送枠と予算を作るんでひとつ派手にバア〜ン!とモテキ花火打ち上げましょう!!」みたいなこと言ってたな最初の打ち合わせで。そんじゃ早速脚本とキャスティングを進めましょうと準備をし始めたのが去年の夏前くらい。12月には脚本の半分くらいと書き上げ森山未來をキャスティングしたものの、待てど暮らせど肝心の放送枠が決まらない。こりゃヤベえなあと思いつつも準備を進めている内に年が明けて・・・当初は4月クールの予定だったからそんな時期になって放送枠なんか取れるわけがない。どうすんだよおい!脚本もどんどん出来てるし主役も決まっちゃってんぞ!と、こちらが焦りまくってるうちに・・・・バックれました、その人たち。お詫びの一言もなく「放送枠取れませんでしたー」って。いやあ途方に暮れましたね。長年この仕事をやってきて何回かこういう経験はあったけどここまで準備して企画が頓挫したのは初めてでした。あえて露悪的な喩えをすると、妊娠8ヶ月もう堕胎できない状態で「やっぱ結婚無しね、バイバ〜イ」と彼氏に逃げられた不幸な女の気分。それからすったもんだあって最終的にはオレがテレビ東京さんに「このお腹の子の父親になってくれませんか?」と泣きついたんす。テレビ東京さん、優しかったす。「いいよ、産もうよ、お金は無いけどその子を立派に育てて幸せになろうよ、お金は無いけどね」とは言わなかったし、そんなに「金無い」主張はしなかったけどほぼそんなニュアンスで「モテキ」という子を受け入れてくれました。燃えましたねオレ。オレは才能もオリジナリティも無いけど、ネガティブな状況を負のパワーに変換して仕事をすることにだけは長けている。途中で逃げ出したあの糞野郎共を絶対見返してやる!良い作品にして後悔させてやる!みんなに愛されるドラマに仕上げてやる!!そんでいつか絶対あいつらを目の前で謝罪させてやる!!もちろんそんなオレの気持ちや力だけではなく、すべての役者・スタッフのパワーが集結して出来上がったのが「モテキ」です。オレは元々そんなに暗い性格じゃないので結果オーライならどんなに酷いことをされても忘れてしまう。事実、その糞野郎共がバックれてくれたおかげで自由な制作環境で「モテキ」が作れたとも思う。糞野郎共が目論んでいた局や予算だったらもっと口出しするヤツが多くてあの形で「モテキ」が出来上がることもなかったはずだ。だからもうあいつら糞野郎共のことをどうこう言うつもりはない。むしろ心のどこかで「バックれてくれてありがとう」とも思っている。が、問題はヤツらにはおそらく「悪気」も「悪意」もなかったであろうということだ。自分たちの発案でやるはずだった企画が流れたことに関して何も思っていない。「仕方ないっすね〜」なのだ。悔しさも懺悔の気持ちも無いのだ。だってヤツらにとって「モテキ」企画が流れても給料にもボーナスにもなんの影響も無いもん。ところがオレはそうはいかない。1年以上かけてやるはずだった仕事が目の前から消えたとなりゃ事務所の所属しているとはいえ歩合で食ってるオレにしてみりゃその期間無職無収入だ。オレだけじゃない、役者もスタッフもやるつもりで空けていたスケジュールが丸々空いてしまうのだ。そういうことをまったく考えていないのだよ、ヤツらは。「いやあモテキ来なかったすね〜」なんつってどこぞの酒場でヘラヘラしているのだ。どこの業界も似たようなものかもしれないが結局能力も無いのに会社なり組織の既得権益でのうのうと生きてやがるヤツらがうようよしているのだ。そして繰り返すが恐ろしいことにあいつらには「悪気」も「悪意」も存在しない。この世で起きているありとあらゆる問題の根幹は実はそこにあるんじゃないかとオレは思っている。

 てな話とはまったく関係ないんだけど昨日知り合いの女性編集者とモツ鍋食いながら飲んでたのね。そのコは「モテキ」の大ファンで「自称いつかちゃん」なんだけど東大出身25歳でサブカル好き(以降・仮名いつかちゃん)。見た目は可愛いんだけどどうにもモテない。以下オレとの会話。
「どうすか?恋愛は?モテてる?」「いやー全っ然モテないすねー、どうでもいい男にはモテてるんすけどねー」「へーそうなの?」「タイプじゃないんですよねー」「どんな男?」「2コ上のD通マンにこの間告白されました」「すごいじゃん、どんなヤツ?」「KO大学出てて都心の実家のそばのマンションで一人暮らししてるらしいです、でもご飯と洗濯は実家だそうです」「完全にお坊ちゃんじゃん、世の中的には超優良物件だぜそれ」「いやーでもさむいんですよ色々と」「どんな?」「まず合コンで知り合ったんですけど次のデートの誘いが【フェラーリの新車試乗会に行かない?】って」「(爆笑)マジで!?」「マジですよ、なんでも家族で海外旅行した時にカードで300万使ったらフェラーリからインビテーションが来たらしいんですよ」「なにそれ?行ったの?」「行かないですよそんなの!で、けっこう誘いがしつこかったから一回デートしたんですよ」「どんな?」「まず渋谷の109の向かいの映画館で【ナイト&デイ】観て」「トム・クルーズとキャメロン・ディアスの大味映画でしょ?」「そうそう、超つまんなくて、アタシ速攻寝ちゃって」「で?」「それで映画館出たら【いやーすごいおもしろかったねー】とか言って」「うんうん」「そんで【道玄坂の上にある店予約してあるから行こう】って」「まあそうなるよね流れ的には」「で、すごいのがタクシー拾ったんですよ!109前から道玄坂上ですよ!歩いて3分ですよ!!」「うわっ!」「アタシの会社なんか今タクシー代全然出なくて仕事が夜中になった時は会社のソファーに寝たりしてるのにこいつらは1メーターどころか200メートルの距離を・・・って悔しくなっちゃって」「そりゃそうだ・・・」「で、店出て歩いてたら【キスしていい?】とか言ってきて。わざわざ聞いてくるのも腹立つじゃないですか?その辺のリスクヘッジだけはちゃんとしてやがるんですよアイツらはっ!」そこまでは笑って聞いていたオレだったが目の前にいるそのコが「モテキ」のいつかちゃんに見えてきた。しかもあの可愛いいつかちゃんがバブル野郎にモテ遊ばれてる・・・かどうかはわからんし、そもそもそんな輩の誘いに乗るのもどうかと思ったがとにかく義憤に近い怒りが沸々してきた。「それからもメールとかけっこうしつこくてほんと嫌・・・しかもミッドタウンのイルミネーション見に行こうとかヴィトンのレセプションパーティー行こうとかベタなのばっかりで。行かねえよバカ!みたいな・・・アタシはドアーズのドキュメンタリー映画とか行きたいんですよぉ」「・・・・」ドアーズのドキュメンタリー映画にデートで行くのも如何なものかと思うが、どうにもその野郎が許せずオレは行動に出た。「・・・いつかちゃん」「え?」「携帯貸して」「え?」「そいつからのメール見せて」「・・・どうするんですか?」「そういうヤツは徹底的にバカにして笑い飛ばすことだよ」「・・・はい」
所謂ブラックメールというやつだ。オレはそのコに成りすましてメールを打った。【今、担当してるコラムニストとモツ鍋なう。つまんないですなう。鍋も私も煮つまってるなう】さらにさっきまで聞いた一連の出来事をオレの12500フォロワーに向けてツイートした。あっと言う間に50mention。「なにそいつ!?」「さむっ!」「今どきそんなバブリ〜やついるの!?」「SSI!(さっさと死ねばいいのに!)」などなど同調する返信ばかりでいつかちゃんも大喜び。「すご〜い!」とか言ってるうちに返信メールが来た!【モツ鍋良いなあ〜モツ鍋といえば中目黒の鳥小屋と恵比寿の蟻月が有名だよね。行ったことある?】うわベタ!モツ鍋=鳥小屋&蟻月って今どきTOKYOWALKERでも扱わないわ!しかもさりげなく誘ってやがるし!すかさず返信【蟻月は行ったことあるけど変な人とだったから良い思い出ないな〜鳥小屋行ってみたいです♪】すぐに返信が来て【じゃあ今度鳥小屋行こう!あんまり飲みすぎないようにね】リアクション早っ!ここで10分くらい寝かして返信【ちょっと酔っ払ったみたいでトイレに避難中!しつこいメールでごめんね。このまま二軒目に連れていかれそう。終電までには帰りたいにゃ〜】またすぐ返信が来て【むしろ終電逃してタクシーで帰った方が楽なんじゃない?タクシー代は出ないの?】出たタクシー!こいつどんだけタクシー乗ってんだよ!?怒りを抑えつつすぐに返信【タクシー代なんか出ないよ〜なんか六本木連れてかれるみたい・・・】で、またすぐに返信【マジで!?もし終電逃して朝まで時間潰したくなったら連絡ちょうだい、付き合うよ(笑)】これポイントですよ、優しさをアピールしているけど決して強要はしない、あくまで相手が頼んできたらそうするというリスクヘッジをここでもかましているわけです。いい加減気分が悪くなってきたオレといつかちゃんは次のメールで最後にした【なんとか逃れて終電間に合いました。何回もウザいメールごめんなさい、また連絡しますね。モツ鍋連れてってください】で、返信が来て【上手く逃れて良かったね。ウザいなんて思ってないから気にしないでよ。モツ鍋行こうね。】
ちなみにここまでのメールのやりとりはほぼツイート実況していたのでオレのメンションはちょっとした祭り状態で99%がそのさむいやりとりにワッショイワッショイだった。

ささやかな復讐は終わった・・・・かに思えたのだが、翌日昼過ぎいつかちゃんから電話が来た。「大変です!大根さん!!」「ん?どうしたの?」「あのD通野郎から【大至急話したいことがあるから電話して欲しい】って!」「そんで?」「なんか怖いからほっといたんですよ、そしたらまたメールが来て【僕、大根さんのツイッター、フォローしてるんだよ】って!!」「マジでえ!?」「マジですよ!どーしましょう?」「・・・・どうしようねえ?」「んー、つーかでもこれで完全に縁切れるんで逆に良かったっす!!電話もしないしメールもシカトします!」「だよね!!」
ざまあみろ!頑張れ!いつかちゃん!!そして売れろ!届け!!「モテキ」DVD!!!全ての恋愛燻り仲間に向けて!!!!!!!!!!!!

と、ここまで読んでいただいた皆さんの中でこう思った人はいないだろうか?「ん?その男は確かにサムいけどそんなに悪い人間じゃないんじゃない?」「むしろ、いつかちゃんのことけっこう本気で好きなんじゃない?」「メールのやりとりなんか優しいじゃん」
そうなんですよ、たぶんこの男は人間的にはそんなに悪くないしむしろ天然お坊ちゃんに近い部分もあるかもしれない。ただ問題はそこなんですよ。この男にはおそらく「悪意」も「悪気」も無い。ただ気づいていないのだ。フェラーリの試乗会もナイト&デイも鳥小屋や蟻月や道玄坂昇るだけでタクシー乗ることもタクシー代出ないの?もそこに対する相手がいることに気づいていないのだ。自分の住む世界と趣味嗜好が全てでありそれに疑いが無く、他者と何かを分かち合う気持ちが無いことに気づいていないのだ。世の中には二種類の人間がいて・・・なんてロジックは大嫌いだが「気づく人間」と「気づかない人間」は確実に分かれる。そしてこの世の概ねの判断や選別は「気づかない人間」によって成されるのだ。】




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Posted by hitoshione at 16:49│Comments(3)
この記事へのコメント
世の中には二種類の人間がいて・・・なんてロジックは大嫌いだが「気づく人間」と「気づかない人間」は確実に分かれる
Posted by Madeline at 2013年08月09日 13:10
私のプライバシー盗み見て迷惑で馬鹿にしたようなマンガや映画 そんな物が支持される事は、決してない!私に集って来た悪徳業者!

なぜあんた達に利用され侮辱されなきゃいけない?私は深刻な社会問題訴えていただけ 講談やテレビ東京にもそう伝えておけ! 
Posted by 山田一雄 at 2013年12月06日 16:42
「気づかない人間」がみんな悪者なんですかね。
Posted by 匿名 at 2014年02月19日 13:59