想像する。





27大戦、最終種目のマイルリレー。

この勝負で総合優勝が決まる。応援席は総立ち、名前を叫ぶ声で空気が震える。

4走が2位でバトンを受け取る。バックストレートでじわじわ差を詰め、第4コーナーで並ぶ。

ホームストレート、誰もが祈り、叫び、腕を上げる。ゴールした瞬間、一橋の歓声が競技場全体を覆い尽くす。

仲間が駆け寄り、抱き合い、涙を流す。27大戦、念願の総合優勝。

────────







想像する。





春、関東インカレ。1部昇格をかけた大会。

このままでは総合3位。あと数点稼げれば昇格に届く。

幹部は頭を抱えながら対策を練り、選手はプレッシャーを背負いながらも自分の種目に挑む。

当日、応援席は一体となり、順位ひとつ、記録ひとつに歓声が上がる。

最後のリレーを走り切った瞬間、『一橋』が競技場の主役に変わる。誰もが「この組織で戦い抜いたんだ」と心から実感する。

────────







今回の27大戦、そしてその他の多数対校戦は、残念ながらそういう舞台ではありません。
総合優勝を争うことは難しく、優勝するのは部員の多い大学か、推薦で選手が入ってくるような大学が常です。

だからこそ、チームとして戦うよりも「個人としてどれだけ高みを目指せるか」に目が行きやすい。
僕自身、関東新人と関東インカレに出場したとき、そういう空気を感じました。27大戦でも、その空気は少なからずあると思います。




一方で、「総合優勝が難しい=個人で戦う場と捉えるべき」とは必ずしもならないと思うのです。理想とするこの部の姿を考えたとき、上位大会で戦えるだけの実力と、どんな大会でも「チームで戦う」風土、この両輪が揃ってこそそれが成し得ると思うからです。









今、この部には確かな変化があります。
先輩方から脈々と受け継いだものに加え、三商戦、東大戦、四大戦と戦ってきた中で、「チームで戦う文化」が根付き始めました。

勝ちを目指すために専門種目・サブ種目に挑み、声を枯らして応援し、運営に回る人も全力を尽くす。
そうして一人ひとりが「当事者」として対校戦に関わる。
ただ戦うだけでなく、善く戦う。だからこそ、負ければ本気で悔しく、勝てれば心から喜べる。

例えば先日の10000m記録会でも、箱根予選の標準切りに挑戦する長距離選手のため、短距離の選手や女子部員が応援に駆けつけていました。専門・性別問わず、「部の一員として」応援する風土が生まれている。

言い換えれば、少数対校戦で育まれてきた「チームで戦う文化」が、少数対校戦の外にまで広がり始めているのです。




だからこそ、27大戦もまた、「個人主義に戻る大会」ではなく、「チームで戦う文化を育む大会」にしたい。

確かに開催は3日間にわたり、応援がない時間も長い。総合優勝を争えない現実もあります。
でも、ここであえて「チームで戦う」意識を持てれば、それは将来、より大きな大会で必ず生きてくるはずです。




「個人として高みを目指す」ことはもちろん大切です。
それぞれが自己ベストを狙い、挑戦するのは競技者としてあるべき姿です。ラウンドを踏み、1つでも順位を上げ、表彰台を目指す。このような経験ができる数少ない舞台を、めいっぱい楽しんできて欲しいと思います。


ただ、その挑戦は同時に、「この部の挑戦」でもあることを感じながら戦ってほしいです。
また、応援する側も、一個人として応援するだけでなく、「この部が高みを目指す」ためにこの人は戦ってるんだと感じて欲しいです。自分事として受け止め、思い切り応援し、共に喜んで欲しいです。
そうして一人ひとりの挑戦を「組織の財産」に変えていく。


こういう気概で戦えたら、いつかこの部が成長したときに、27大戦・その他の上位大会においても善く勝てるんじゃないかと思うんです。




何度もお話していることですが、僕が描くこの部の理想像は「少数対校戦は皆で協力しながら余裕で勝って、上位大会でも活躍する組織」です。
言い換えれば、「少数対校戦だけでなく、多数対校戦・上位大会においても善勝できる組織」になると思います。




今年は総合優勝は難しいかもしれないです。入賞できる人も、限られるかもしれません。


けれど、「一橋大学・津田塾大学陸上競技部として戦った」と全員が胸を張れる大会にしたい。
誰かの活躍を一緒に喜び、誰かの挫折を一緒に悔しがれる、そういう大会にしたい。




それが成せたとき、チームで戦う文化はこの部に揺るぎない形で根付き、高みを目指した経験は次の枝葉となって未来の部をさらに大きくするはずです。




一人ひとりがこの部を代表して、仲間と共に声を上げ、この舞台を全力で楽しみ、最後まで走り抜きましょう。



─────







想像する。





明日から始まる27大戦。

決勝の舞台。仲間の入賞が決まったその瞬間、応援席は割れるような歓声に包まれる。

死力を尽くしたレース。惜しくも予選落ちした選手の姿に、仲間が肩を叩き、共に悔しさを噛み締める。

圧倒的な実力を見せつけた競技。表彰台に立つ選手の背中を見て、次は自分がと誓う者がいる。


その一つひとつの場面に、「一橋大学・津田塾大学陸上競技部」を背負って戦う、誇りが宿っている。
個人だけの勝負ではなく、この部として戦った記憶そのものが、さらに善く、さらに強い、この部の未来に繋がっていく。











競技者として、部員として、高みを目指して。






27大戦、いくぞ。

主将 澁谷隆成