こんにちは。中長2年の吉田です。
昨年の予選会、今年3月の立川ハーフを経て、人生3度目のハーフマラソンの試合となります。超長距離レースの経験を重ねれば重ねるほど、徐々にではありますが、走り方が分かってきたような気がします。逆に言えば、複数回やらないとこの距離は掴めないのかもしれないな、なんて思っています。
だからこそ、少しずつ分かってきたような、まだ掴めていないかのようなそんな距離と向き合い、自分の中での最大限を出したいと心から思うのです。
超長距離種目は、面白みがあるものだと感じます。僕自身、“見る”陸上競技に興味を持ち始めたのは最近になってのことで、これまでは意図的に自分と陸上競技観戦との間に距離を作っていました。陸上はあくまで自分がやるものだと感じていて、コンテンツとしての魅力はあまり感じられなかったんですね。むしろ自分がその要所における苦しさを知ってしまっているから、見ているだけで辛くなってしまうような。
ただ、世界陸上を見てまるっきり変わりました。陸上に魅せられて、陸上に涙して。心の底から面白いと思えた瞬間でした。特に良かったのはラシッドさんの決勝後の涙。自分の弱さや悔しさをさらけ出せる強さを感じられて非常に良かったです。プロレス向きだと思いました。
かつて、陸上を真正面から楽しめなかったときでも、唯一面白いと思えた種目が、駅伝とマラソンでした。100とかリレーとか5000とかは冗長に感じられてしまってあんまりだったのですが、超長距離種目だけはなんだか見れたんですね。
超長距離レースには、“人“が乗る気がするのです。
レースプランだとか、駆け引きだとか、実力差だとか、懸ける思いだとか。それらがゆっくりとロードにたゆたうことにより、そこに各人の深みや味わいが生まれてきます。
その人がどんな人生を送ってきたのか。どんな人柄で、どんな練習をして、自分とどんな向き合いをしてきたのか。そういった大河ドラマのような壮大な物語が、選手たちに乗って、それがきっとカッコ良さだったり華だったりに繋がっていたのだと思います。
超長距離な分、その人の弱みと強みが残酷にも露呈してしまいます。
だからこそ美しいし、儚いし、兵どもの夢の跡なのだと思います。
僕なりに、僕の出来る限り全力で、陸上に対し努力を続けてきました。足りない力はどこだろう、強みはどこだろう、それを踏まえてどんな練習をしたら良いのだろう、プランは?目標は?……自分自身、本当の意味で、アスリート・吉田陸人と向き合い始めたのがここ最近の話なので、色々な人の助言を貰いながら、ここまで頑張って考えてやってきました。何とか形になると良いな。
今回、嬉しいことがあります。大好きな先輩二人と走れることです。
先日、影響を受けた部員として僕のことを挙げてくれた、優しく謙虚で皆を包み込むような魅力を持つ木村さんと、魂のアツい標準切りを見せてくれた、普段はふとした気配りの素晴らしい小阪さんの、K×Kコンビです。PL学園以来の。
入部以来、普段から楽しい雰囲気で練習させてもらったり、大事な試合などのキーポイントで心に染みるような言葉を貰ったり、本当に僕の心の支えとなってくれた二人です。どんなに困難な状況でも明るく心の温まる声かけしてくれる小阪さんや、ものの見方にハッとさせられたり見習わなきゃと思わされる木村さんの謙虚な人間力は素晴らしいものがあるし、普段から僕も練習頑張ろうと思えるきっかけとなってくれる二人です。
普段から頑張っているのを、箱根予選に対する二人の並々ならぬ思いを、その熱量を、曲がりなりにも僕は近くで感じ取ってきました。だからこそ、なかなか出場が敵わないもどかしさや悔しさも、僕なりに感じ取ってきました。今回、出場することになった熱量がひしひしと伝わってきます。レース中に互いの頑張る姿を見たら、きっともう一段階、頑張ろうと思えるはずです。ずっと、同じ場所で、同じ目的を持って、同じレースに出たかったのです。
この二人と一緒に予選会を頑張るのが、実は入部以来の一つの夢だったのです。
今回、一緒に走れることになって何よりも嬉しかった。
それに後藤さんとも走れるのが最後だと思うと、万感の思いです。アツく粘る姿を間近で見られるのが最後だと思うと、なかなか心にくるものがあります。ここまで大きなストップ無くコツコツと積み上げてきたものは、きっと最後に大きな力を押し出してくれるはずです。
僕はチームの中でも、予選会出走者の中でも、強い方ではありません。練習も自分だけではどうしようも無くなってしまうことも多々あるし、上手くいかない練習があると人並みには落ち込むし、他よりも実力が無いことを実感すると悔しく悲しい気持ちになるし、とはいえ潜在的な才覚があるわけではないし。
でも、そんな中で僕なりに今日まで頑張って生きて、練習してきた。周囲の人に恵まれ、力になることもあって、それでも最終的には僕だけの脚で歩いてきた。誰がなんと言おうと、僕は独りで歩いてきた方が大半です。
ハーフマラソンには、どんなに楽しみだったとしても、緊張感という名の恐怖感は常につきまとう。それがハーフマラソンだ、と思います。コントロール出来そうで、常に気を張っていないとコントロール出来ないのが、ハーフマラソンだ、とも思います。日に日に緊張感は増していく。ワクワクが増していく。これが、ハーフマラソンなのかもしれない、とも思います。
何だか調子が出ないとしても、当日眠かったとしても、思うように身体が動かなかったとしても、雨でも風でも熱くとも寒くとも。上等。ここまで怪我無く紡いできた練習はきっと裏切らないはず。
だからこそ、このハーフは、全力で頑張りたい。闘って闘って勝つ姿を、自分自身に、示したい。
当日は、頑張ります。
明日は、チームの中でも力走が期待される3年の梶岡さんです。当日は背中は見えないでしょうが、きっとチームの前の方で執念の力走を見せてくれるはずです……
………………
ーーーー煽りVTRが終わり、会場が暗くなる……
”第3試合 60分1本勝負を行います”
ーーーー会場の歓声ーーーー
煽りVを見ながら、バックステージ裏で考える
遠くの方で観客の声が波止場の水しぶきのように打ちつけてくる
セコンドもスタッフもいない中、暗く陰る無骨な鉄板に囲まれながら、一人、物思いにふける
……ここまでやってきたよな
無意識的に鼓動が高まってくるような、自然と手が汗ばんでくるような、勝手に息が詰まるような。他の試合とは違う。そんなビッグマッチを再認識した。
緊張感で内へ内へ意識が向く選手と裏腹に、観客は外へ外へ熱量を発している…………
Road to 10.18
前哨戦は積み重ねてきた。相手がどんな間合いで、どんな技を使うか、自分がどんな試合運びをするか、何度も何度もイメージして、仮想戦を繰り広げてきた。
日に日に、重圧と期待は高まっていった
上手くいかないこともあった。すごく調子が良いこともあった。
会う人会う人から応援されることもあった。誰も見ていないこともあった。誰かだけ見てくれていたこともあった。
ゆっくりと歩き出すと、今日の箱からの歓声が打ち付ける波のように、段々と押し寄せてくる
今日やろうとしているプロレスをもう一度思い起こす
相手の?団体の?客の?関係ない、僕だけのプロレス
今日はこんなもんか、こんなもんだろうと思えてくる
緊張が段々と興奮に、高まりに置換されていく…………
…………
リングネームが観客に叫ばれながら、入場曲が流れ始める
出走する選手の名がチームメイトに叫ばれ、各校の応援歌がこだまし始める
足元がせり上がり、会場を一瞥する
召集場所に向かい、駐屯地を一瞥する
花道を通り過ぎて、ガウンを脱ぐ
コースに入って、ベンチコートを脱ぐ。
セコンドと円陣を組む
中長チームで円陣を組む
コールを受け、リングに上がる
最終召集を行い、スタート地点に立つ
AM8:29 On Your Mark……
””さあ!本日の第3試合!60分1本勝負のゴングが迫って来ました……!””
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