シーズンが始まってから、体が思い通りに動かない。
昨年まで出来ていたはずのことが出来ない。
10.75や10.60を目指して走っているはずなのに、視界に入る数字は11.なんちゃら。
自分の限界が10.98なわけが無いから。俺は絶対もっと最強だから。
自分の強さを証明するためにもう1年大学に残ったのに、周囲を心配させるような記録が続いた。
辞めたくなった。走るのが怖くなった。
自身の状況とは対照的に、チームは好調だった。
相次ぐ関カレ標準突破、大幅なPB更新。
何度も自分と比較して、嫉妬に駆られた。彼らの努力も見てきているはずなのに。
周りは輝きを放ちながら前進していっているのに、自分だけ時間が止まったように進めなくなっている。
陸上競技が嫌になった。関カレなんか出たくねーなとすら思った。
本来なら大舞台を悶々としながら眺めているのがお似合いなんだと思う。
それでも今年も、この関東インカレに立つ資格を得た。
自分の前方では多くの仲間たちが突き進んでいて、自分はチームの最後方で足を取られながらそれを眺めている。
懐かしい感覚だ。
3年前に入部した時に少し似ている。
流石に今回ほどの絶望感はないが、思うように体が動かない自分の状況と、周りの全員が格上に見える感覚。
最後尾から眺めるチームメイトたちに、否が応でも「置いてかれている」ことを分からせられる感覚。
そんな入部直後のブログに、こんな内容を書いていた。
「途中入部で現状部内の最下層である自分が、最終的に絶対的エースとして引退したらめちゃくちゃ面白くないですか?」
そうじゃん。俺そういうタイプだったじゃん。
ただ勝つだけじゃなくて、壊滅的な状況から捲ってこそ「面白れー」とか思っちゃう奴だったじゃん。
まだ大した会話もしていないのに、他の部員をびっくりさせちゃうぞーってちょっとワクワクしてたじゃん。
勝ちたい。
今俺の前を駆け抜けていっている、君たち全員に勝ちたい。
もちろん対校戦だからね。他所の大学にも当然勝ちたい。表彰台も全カレ標準も総合入賞も全部欲しい。
でも何より君たちに勝ちたいよ。他大の「誰だよお前」みたいな奴よりも、いつも同じ場所で練習している君たちを凌駕したい。
俺の中の当たり前の基準を引き上げてくれた、次代の一橋を担う1走の後輩にも。
2年前のどん底の状態から這い上がり、覚醒の兆しを掴みつつある2走の同期にも。
ずっと後ろに引っ付いていたはずなのに、気づいたら俺より前に居た3走の後輩にも。
長く部の最大戦力として、上位大会で戦ってきた君たちにも。
ブレイクスルーを起こして、大舞台に挑戦していく君たちにも。
今この場で宣戦布告する。
全員に勝つ。
誰よりも、俺がこの第105回関東インカレで1番輝く。
不思議なことに、国公立戦以降少しずつ走りがまとまり調子が上向いてきている。強がりでもなんでもなく、今なら淡々と公言できる。
主役は、俺だ。
関東インカレまで、あと7日。 明日は小堺。
短距離5年 沖中優真
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