鵺鏡リプレイ「君影草紙:花の色さやかにも」

2017年12月13日

鵺鏡シナリオ「ククッ……奴は四天王の中でも最弱」※

【鵺鏡】「ククッ……奴は四天王の中でも最弱」
GM使用サプリ:「鬼合」
※以下には本編の表記を除いた、道標、己の道標を定むる法、導入、各道の判定などが書かれている。
慣れているGMであれば回すことはできるだろう。

【客分NPC】
酒呑童子 源頼光

【常ならざること】
[PC甲]は導入時一度命を落としている。

【演目之筋】
 彼の乱より魔都と化した平安京。
 その死の報は大江山へと届く。
 ――源頼光に四天王の一人がやられた。
 あるものは嘆き、あるものは喜び、あるものは策を弄す。
 己がうちにある感情を押さえつけ、彼らはひとところに会した。
 本心はいかほどか。互いの裏を知ってか知らずか、ひとりは口を開く。
平安幻想夜話 鵺鏡「奴は四天王の中でも最弱」

――それでも奴の死は、不穏な風を運んできた。

【道標】
[PC甲]
初期因縁:酒呑童子[主君]
初期喪失:片目(血脈)
推奨分限:屍、式、武士、人鬼
目的:酒呑童子と己を守る。

 あなたは酒呑童子率いる、新しい大江山四天王が一人、であった。
 付近の村を襲った際に源頼光に一刀の元に切り伏せられてしまったのだ。
 あなたは今死んでいるはずであった。
 しかし、主である酒呑童子があなたを復活させてくれた。
 前の戦で村が焼かれたときに助けだしてくれただけではなく、生き返らせてくれるとは!
 これは行幸だ!
 ここまでしてくれる主にどう報いればよいのだろうか。
 胸を撫で下ろしたあなたに向けて、酒呑童子は冷たく言い放った。
「キミを助けるために、少々高い代償が必要でね。まず、その片目は諦めてくれ」
「そして、キミが生き残る為に、僕と繋げさせてもらったよ。僕の死はキミの死。キミの死は僕の死、だ」
 あなたは己と主、二つの命を守らざるをえなくなった。

[PC乙]
初期因縁:源頼光[殺意]
初期喪失:地位(生様)
推奨分限:人鬼、異形、頭目、野盗
目的:源頼光を殺す。

 あなたは酒呑童子率いる、新しい大江山四天王が一人である。
 心の底から酒呑童子に忠誠を誓い、一番の部下であろうと研鑽を積んできた。しかし、最近四天王入りしたばかりの[PC甲]がやけに重用されていることに嫉妬している。
 それはおかしい。
 あそこにいるべきは己であるべきなのだ。
 そんな中、[PC甲]が頼光に殺されてしまう。
 所詮奴は四天王の中でも最弱。
 これはいい機会だ。[PC甲]が負けた源頼光を倒せば、どんなに成り上がれるだろうか。
 すべては我が主の為に。

[PC丙]
初期因縁:酒呑童子[仇敵]
初期喪失:故郷(生様)
推奨分限:野盗、惑師、娼妓、逆賊
目的:酒呑童子に復讐する。

 あなたは酒呑童子率いる、新しい大江山四天王が一人である。
 しかし、酒呑童子はあなたにとって家族の、そして故郷の仇である。
 酒呑童子復活の折に、その郎党らによって故郷も家族も焼かれてしまったのだ。
 あなたは元々酒呑童子に復讐するためにこの一団にもぐりこんだのだった。
 ようやく四天王の座まで上り詰め、酒呑童子の信頼を集めることにも成功した。
 しかし、同郷である[PC甲]はすっかり故郷の恨みなど忘れてしまっているようだ。
 ここで復讐を果たしても[PC甲]の居場所を奪うだけ、そう考えて今までその矛を収めていたのだ。
 しかし、[PC甲]があの酒呑童子の采配によって死んだ、となればそうはなるまい。
 故郷と[PC甲]、二つの復讐に滾る炎が今燃え上がった。

[PC丁]
初期因縁:源頼光[利用]
初期喪失:己の意志(魂魄)
推奨分限:神、孤高、変化、呪験
目的:源頼光の部下になる。

 あなたは酒呑童子率いる、新しい大江山四天王が一人である。
 酒呑童子の力、それにただ惹かれてここまで上り詰めて来た。
 四天王は互いに補い合い、切磋琢磨して力を高めていた。力の均衡こそすべての安寧である。
 しかし、酒呑童子の力を分け与えたはずの四天王が一人が砕かれ、この力も欠けが生じた。
 そろそろこの組織にいるのも潮時か。
 ただの部下ひとりに己の命をかける主君など興味はない。
 ならば、最大の敵対者である源頼光にすがって生きるべきなのではないだろうか。
 そう、例えば手土産に、酒呑童子の首を持って。


【己の道標を定むる法】
 [PC甲]は導入の時点で死んでいる。このことさえ念頭におけば、あとは中心で動くため、初心者でも演じやすい。
 また、[PC乙]、[PC丁]も目的がはっきりしているため、初心者向けといってもいいだろう。
 [PC丙]は[PC甲]とNPCとの間で揺れるため、少々慣れが必要かもしれないが、必ずしもよくないという道標ではない。
 それぞれが己がやりやすい、やりたいと思った道標を選ぶとよいだろう。
 また、人数を少なくして演目を行う場合、[PC甲]を必須として他のPCを除き、三本槍にする、NPC茨木童子や有象無象を加えてひとり都に行っているなどにするとよいだろう。

【客分かく動けり】
【酒呑童子】
 とても強い鬼。大江山という場所に住み、そこは酒が泉のように湧き出るという。
 己を求める女たちの怨念によって鬼と化した来歴により、酒呑童子は女を信じない。女性PCを使用する際は塩対応になる可能性がある。
 また、逆に男性PCには容易に心を許してしまう節がある。

 このシナリオにおいて、酒呑童子は源頼光に敗れたPC甲を生き返らせる。それは対源頼光戦に向けて戦力が欲しいのと、PC甲が泉に辿り着ければ自分の妖力も同時に回復できること。それにPC丙に容易に謀反を起こさせないための人質という意味合いもある。
 また、今の酒呑童子の状態はそれほどよくない。源頼光に敗れた際につけられた首の傷は未だ残り、そこから瘴気が零れ落ちる。
 常人では討てない今の状況でも、殺すには絶好の機会であろう。ただし、稀代の鬼である。討つにはそれ相応の覚悟と犠牲が求められる。さらにその体を傷付け一時的に命を奪ったとしても、その身の元は鵺の瘴気。幾日かはたまた幾年かの年月を経て、酒呑童子は再びこの世に姿を現すだろう。なにか、想定外のことがおきない限りは――。

【源頼光】
 妖怪絶対殺すマン。一度寿命を終えた源頼光が鵺の瘴気に呼応するようにして復活した姿。
 生前の源頼光から「妖怪を討つ」という感情、力のみが強調されており、妖怪を見つけ次第手当たり次第殺す。邪魔をすれば、人間にすら容赦はしない。
 しかし、ただ己の感情に振り回されるような人物ではない。利用価値があると踏めば、人間も妖もむやみには殺さない。たとえば妖の子を助け――親の元に案内させてからまとめて殺す、ということすらやってのけるのだ。

 本シナリオにおいては、基本的にPCたちと対立をする。そしてPCたちの道標がどうであれ、PCが妖であれば真に心を許すことはないだろう。

【舞台之事柄】
【大江山】
 酒呑童子の住まう山。酒の湧き出る泉などがあり、栄えている場所である。また、この地は酒呑童子の絶対領域であり、ここにいる限り酒呑童子に傷ひとつつけられないだろう。
 また、この地に入った人間は年を取らない。ここでは時間が止まる。そして、いつの間にか鬼と化す人間も現れるのだ。

【泉】
 [PC甲]および[PC丙]の故郷にあると言われる泉。酒呑童子も噂レベルしか聞いていない。
 曰く、「人が水を飲めば鬼となる」「鬼が水を飲めばさらに鬼となる」。
 GMはこの水に入ったPCがいた場合、人であれば【異形】人ならざるものであれば【異形】【大妖】の【業】のうち、場面にあるものをひとつ使用許可してもよい。
 シナリオの進行によって実際にあるかどうか、そしてその力は本当かどうか、さらに使われるかどうかなどは変わっていくだろう。

【演目かく流れん】
 この演目はそれぞれの四天王の目的を確認し、どのように行動するかを常に確認することによって物語が成立する。そのため、初期作成の時点で、初期目的に大きなずれが生じた場合、PC同士が対立せず演目としてうまく機能しなくなってしまう。GMが慣れない場合、最初の目的は守ってもらうことを重視してもらうとよいだろう。
 演目に入ったら、それぞれのやりたいことを確認していけば、自然と物語は転がっていく。GMはPC甲、PC丙の思い出をねつ造したり、NPCを自由に登場させてそれぞれの目的に向かう道筋を作るとよいだろう。
 NPCは基本的に最初は片方ずつ、三つ目の道以降から両方出すとよい。PC丙、PC丁は酒呑童子、PC乙、PC丁は源頼光に対して接触を持ってからの目的となる。長い間NPCが不在とならないよう、そして長い間PCが手持無沙汰にならないよう、1つ目の道でまったくでなかったNPCは意識的に2つ目の道で登場させるとよい。
 闇討ちをもくろむPC、そしてひそかに単独行動をしたいPCも出てくると予想される。そのために濃霧のようなものを発生させたり、残党を出して乱戦に持ち込むとよい。
 最終的な物語の収束はあくまでPC同士のすりあわせが優先させる。どうしても決まらない場合は、ダイスに頼るべきである。

【演題之幕開け】
それぞれの前日譚がやりたい、というものがあればそれを挿入するとよい。
また、以下に導入を二場面用意している。
一、PC甲が酒呑童子から任務を言い渡され、源頼光に倒される。また、酒呑童子の手により生き返る。
二、他四天王がPC甲の死を知る。

【一】
登場PC:PC甲
登場NPC:酒呑童子 源頼光
 ここではPC甲が源頼光に倒されるシーンである。
 まず、PC甲には酒呑童子から以下の命令が下された、ということを話すと良い。
・人を鬼にし、鬼にはさらに力を与えるという泉がある。
・それはPC甲(そしてPC丙)の故郷にあるらしいという噂がある。
・PC甲には調査に行ってきて欲しい。

 PC甲の道標として、これを受けない選択肢はないはずである。受けなかったら、受けた、ということにして先に進める。少なくともここで多くの時間をとる必要はない。
 続いてPC甲が故郷の村に辿り着く場面である。ここで源頼光と邂逅させるとよい。好戦的に戦いを始めるのであればそのまま、隠形するのであれば小さな物音や妖気(四天王の位を持っているのであれば、最弱であってもそれなりの気のはずである)に源頼光を反応させ、気付かせるとよいだろう。
 PC甲が源頼光に斬られた時点で、一旦PC甲には死んでもらう。
 その後、PC甲の元に酒呑童子がやってきて、PC甲を生き返らせる。「期待している」などの言葉でPC甲を煽ると良い。

描写:
 故郷の光景は寂寥たるものであった。元々都とは違い、そこまで栄えているような村ではなかったが、それでも寂しさ余りあるものであった。
 家は見る影もないほど朽ち果て、中には完全に崩れ去ってしまっているものもある。
 元は様々な穀物や作物が実ったであろう田畑には、今や草ひとつすら生えていない。そして、人の影すらない。
 一陣の乾いた風が頬を撫でた。
 その時、人の気配がなかった村の中から音が聞こえる。
 がしゃり、がしゃり。
 甲冑の揺れる音が、重苦しさを伴って辺りに響いた。

描写二:
「……ああ、よかった。ボクのことを受け入れてくれたみたいだね」
安堵したように酒呑童子はため息を吐く。
「そう、君は生き返った。無残にも一刀に切り伏せられた四天王が一人である君を。主であるボクが助けたんだ。……その代償は大きいけどね」
言って、そっと酒呑童子は[PC甲]の片目を撫でる。
「その力はボクと繋がっている。キミを復活させるために、ボクと君と力を共有しているにすぎない。だから……気を付けるんだよ。君が死ねばボクも死ぬ。ボクが死ねばキミも死ぬ」
「……期待しているよ。君には、君たち四天王には、ね」

【二】
登場PC:PC乙、PC丙、PC丁
登場NPC:酒呑童子

 ここでは、式などによりPC甲の死を察した酒呑童子によって、他の四天王が集められ、その有様を聞く場面である。
 先に四天王を集めて少し話をしてもらうと、それぞれの関係性が見えやすいだろう。二、三会話を交わした時点で、酒呑童子を登場させる。

 酒呑童子は以下のことを話すだろう。
・PC甲が死んだ
・PC甲は源頼光に殺された
・PC甲は故郷に噂のある泉に向かった
・PC甲の弔い合戦として、泉の力を利用しつつ源頼光を倒して欲しい

 そのことを話し終わり、PCの誰かが「奴は四天王の中でも最弱。面汚しよ」などという発言があった時点で、この導入は終了となる。

描写:
 日がな酒宴に興じる大江山の中枢。その一角に四天王が集められた。
 いつもなら腹に一物を抱えながらも、華やかな雰囲気を纏っている部屋の空気はどことなく重い。
 主である酒呑童子から四天王に緊急招集がかけられたのは、今日が初めてであった。
 なにかがあった、と自然と空気が重くなるのは必然であろう。
 そんな中、部屋の一段高くなった場所に一陣の生ぬるい風が吹く。
 それが酒呑童子が来た時のものだ、と一同は気付くだろう。
【道と判定】
【苦道】
[生様][血脈][魂魄]
【外道】
[血脈][魂魄][生様]
【我道】
[魂魄][生様][血脈]
【鬼道】
[生様][魂魄][血脈]



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