私の好きな本、おすすめ本H.P.作者のつれづれ日記

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私の読んだ本で、心にグット来た本を紹介する、読書日記のブログです

プロフィール:始めまして、50代の男の会社員です。
理系で、電子機器メーカで、長らくエンジニアをしていました。
しかし学生時代の得意科目は、数学と現国と古文と漢文と世界史でした。
なぜ理系に行ったんだ(笑)
今は品質管理の仕事をしています。
小説が好きで、すぐれた小説を見つける眼力には自信を持っています。
本ブログは、読んだ本で、面白かったと思った本、心にグットきた本のみ
紹介しているので、ブログの更新頻度は、多くないです。
読んでも、つまらなくて紹介しない本は多いです。
でも、紹介している本は、面白いと思います、よろしければ、ご覧ください。

時間をやりくりして、本ブログと、好きな本紹介のホームページ作成と
好きな本を紹介するメルマガを発行しています。
私の好きな本おすすめ本のホームページよろしければこちらもご覧ください。
子供の頃から、本を読むのが好きです。
小学校の時に読んだ、「飛ぶ教室」「くまのプーさん」「三銃士」等、
本当に面白かったです。
私が自信をもっておすすめする小学生へのおすすめ本はこちらです。
高校生に自信を持っておすすめする海外の名作はこちらです。
観劇も好きです。おすすめの観劇会はこちらです。
今でも本中毒で、3冊ぐらいの本を並行して読んでいます。
私のブログやH.Pを見て、好きな本が見つかると、嬉しいです。
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[蜜のあわれ:室生犀星:講談社文芸文庫]
主人公は、人間の女の姿をした金魚と老作家です。
老作家は70才ぐらいです。
人物描写や風景描写はなく、会話だけの小説です。
実験的な作品と言えると思います。

金魚女は2年金魚、人間の年では17才ぐらいです。
金魚女と老作家は、色々と話をします。
金魚女は、老作家に洋服やアクセサリーを買って
もらいます。
金魚女と老作家は、キスはしますが、もちろん
肉体関係をもつことはできません。

金魚女は、人間の女と同じような
直感やしたたかさを持っています。

老作家が昔、作品を見てあげた女性や、
老作家が昔追いかけたがふられた女性が
老作家に会いに来ます。
二人とも死んだ女性です。
老作家が作品を見てあげた女性とは、
金魚女は色々と話をしますが、
老作家をふった女性は、金魚女は
追い返します。

老作家は、二人の女に会おうとしません。
二人とも、金魚女が想像で作りだした産物だと
言います。

老作家の言葉です。
「おじさんはおじさんを考えてみても、
いのちを知るのに理屈を感じてだめだが、
金魚を見ていると却っていのちの状態が
わかる。ひねり潰せばわけもない命のあわれさを
覚える」

老作家と金魚女の言葉です。
「おじさまはどうして、そんなに年じゅう女おんなって、
女がお好きなの」
「女のきらいな男なんてものは、世界に一人も
いはしないよ、女がきらいだという男に会ったことがない」
「だっておじさまのような、お年になっても、まだ、そんなに
 女が好きだなんていうのは、少し異常じゃないかしら」
「人間は70になっても、生きてるあいだ、
 性欲も、感覚も豊富にあるもんだよ」


昔に老作家をふった女と金魚女の言葉です。
「だからその訳をいってゆっくり一度はあやまってみたいと、
そればかり考えて、うかがってみたんです」
「いまから幾ら謝りになっても、受けたきずあとが
そんなに簡単に治るもんですか、あやまるなんて言葉は
とうに通用しなくなっているわよ」
「怖い方ね、見かけによらない方」

金魚にとってはつらい季節の冬が来ます。
老作家と金魚女はどうなっていくのでしょうか?

奇妙な小説です。
老作家と金魚女の会話だけで物語が
進んでいきます。
室生犀星が死の3年前の70才の時に
書いた作品です。
金魚女が、人間の女と同じように、
気まぐれで、したたかで、愛情深い存在として
描かれています。
そして老作家を訪ねてくる二人の女の幽霊。
恐い作品ではないです。
70才で、超現実的な作品を書くエネルギーが
すごいです。
家で飼っている金魚を見ていて、この小説を
思い立ったと、室生犀星は言っています。
詩人として出発してから作家になった室生犀星。
とても才能のある作家だと思います。



     

田舎教師 (新潮文庫)
田山 花袋
新潮社
1952-08-19

田舎教師
田山 花袋
2012-09-27


[田舎教師:田山花袋:新潮文庫]
主人公は、林清三です。5年間の中学生活を
経て、田舎の弥勒という場所の小学校の
教師をすることになりました。
小説の時代は、明治時代です。

清三の父親は、人からだまされて店を手放したので、
清三一家は貧乏です。
清三の父親は、今はあやしげな絵を人に売る仕事を
していますが、かせぎはほとんどありません。

清三は、本当は都会の学校に進学したいと思って
いますが、貧乏な両親の事を思うと、
それもできません。

清三の中学の友人の加藤や石川や小畑等の家は
わりに裕福で、彼らは高校や師範学校に進学する
ことになります。

中学時代には、清三は加藤や石川や小畑と
将来の事や芸術について、色々と話をしましたが、
卒業後は、田舎教師として、自分だけ置いていかれた
気がして、暗い表情になり、友人達とも、あまり話をしなくなります。

清三は、女郎屋の静枝という女性と仲良くなります。
女郎屋でのお金の支払いのために、食料品店や
酒屋や米屋への借金が増えていきます。
知人にも借金するようになります。
どうなっていくのでしょうか。

清三は日記に書きます。
「体を大切にするべきだ」
「責任を大切にするべきだ」
「われに母あり」
貧乏に耐えて、清三を愛してくれる
母親を、清三は捨てることができません。
という事は、田舎教師を続けることに
なります。

音楽学校なら奨学金がもらえるので、
現状を打破しようと思い、
清三は東京の音楽学校を受験します。
結果はどうなるのでしょうか。

時代は明治時代です。
日本は日露戦争に突入していきます。
人々は時代の波に飲み込まれていきます。
清三は体調が不調になってきます。
清三はどうなっていくのでしょうか?

向学心も野心もあるのに、貧乏に
押しつぶされていく清三、その姿が
冷徹な描写で描かれています。
友人から置いていかれ、田舎で教師として
埋もれてしまいそうな自分に対する焦燥と、
どうにもならない現実が描かれています。
明治時代に描かれた小説なのに、
普遍的なテーマは、古いとは思えません。
普遍的なテーマは、古びる事がないです。

うどん屋、駄菓子屋、居酒屋、乾物屋などが
描かれています。今とあまり変わりませんね。

車夫という職業がありました。引っ越しの時の
荷物を人力車で運んでくれて、引っ越し先で
家具の配置をしてくれる人です。
今の引っ越し業者のお兄さんみたいなものです。
人力車がトラックに変わっただけで、あとは似たことを
します。

テクノロジーは変わりましたが、明治時代も
平安時代も、現代も、人間の営みや
感情や考えることは、あまり変わっていないだろうなと、
この小説を読んで思いました。
縄文時代もそうだったような気がします。
人間の普遍的な姿を描いた小説は
長い命を持つと思いました。(ブログ作者)

     

九年前の祈り
小野 正嗣
講談社
2014-12-16


[九年前の祈り:小野正嗣:講談社]
主人公は35才の女性のさなえです。
3才の息子のけびんがいます。
けびんには障害があります。
カナダ旅行の時に知り合ったカナダ人の
フレデリックと東京で同棲して、けびんが生まれますが、
フレデリックに女ができて、フレデリックは去っていきます。

さなえはけびんを連れて、両親の住む
九州の村に帰ります。
さなえはけびんを守りたいと思っていますが、
毎日の生活にひどく疲れも感じています。

さなえは9年前にカナダに旅行しました。
村の国際交流活動として計画された
旅行です。
さなえは26才で、他の参加者は40代後半の
女性が6人でした。

一緒にカナダに旅行した女性の渡辺ミツさんの息子さんが
脳腫瘍の手術を受けて、その後長い間、入院しています。
さなえはけびんを連れて見舞いに行こうと思います。

離れ島の文島の貝殻はお守りになるという言い伝えが
あるので、さなえはけびんと共に、文島に行きます。
貝殻は見つかるのでしょうか?

9年前の祈りとは、何のことでしょうか?

さなえはそこにいたけれど、みっちゃん姉は
さなえではなく自分自身に語りかけていた。
周囲の闇が震えていた。
さなえは気づいた。しかしその存在に
気づいても驚きはしなかった。
窓を背にしたみっちゃん姉のすぐ後ろに
悲しみが立っていた。
悲しみはいま薄暗がりのなかで初めて
その姿を現し、みっちゃん姉の肩を
優しくさすっていた。
しかし悲しみが行うそんな慰めの
仕草は、さすられる者とそれに気づいて
しまった者の心の痛みを増すだけだった。


「9年前の祈り」は、人間の苦しみ、悲しみと
それに耐えて生きていく人間について書かれた小説です。
苦しむ人間に寄り添い、静かに見守り、
静かに語りかけてくる小説です。
平易な言葉で書かれている小説ですが、
作者の力量はすごいと思います。
人生について、考えさせられる小説です。(ブログ作者)

     



[とにかくうちに帰ります:津村記久子;新潮文庫]
主人公は20代の女の会社員のハラです。
営業部所属です。

ハラは、豪雨で早く帰宅するように会社から言われたので、
会社から帰ります。
営業部の1年後輩のオニキリという男の社員と
コンビニで会ったので、一緒に帰ることになります。
バスが運休しているので、橋を渡る道路を
雨に濡れて帰ることになります。

サカキは35才の男の会社員です。
元妻と離婚していて、息子のよしひろは
妻が育てています。
よしひろは3才です。
明日の土曜日は、月に1回のよしひろと
会う日です。
家にプレゼントの絵本を置いているので、
豪雨の中、雨に濡れても家に帰らなければ
ならないのです。
バスが運休しているので、橋を渡る道路を
雨に濡れて、帰ります。

サカキは、帰る途中に、小学校5年の
ヤマダミツグと一緒に帰ることに
なります。
ヤマダミツグは塾の帰りに送迎バスに
乗り遅れたのです。
ヤマダミツグの母親はシングルマザーです。

雨に濡れて家に帰るまでに、ハラ、オニキリ、サカキ、
ヤマダミツギの様々な想いが描かれていきます。

サカキが家に部下を連れてくること、
サカキの給料がぱっとしないことについて
元妻は文句を言っていた。
サカキは仕事に出てるので、閉じこめられる
辛さを知らないのだ、と元妻は指摘した。
自分は一日中子供といて、大して感謝も
してくれないサカキのために家事をしている、
それだけの人生なのだ、と。
元妻が、こんなにものの考え方が違う自分と
それでも結婚しようと思ったのは、
30才を過ぎて焦っていたからなのだろう。

わかりますとオニキリが叫んだ。
「給料も今のままでいいし、彼女もできなくていいから、
部屋でくつろぎたいんです」
「部屋でくつろぐためなら、大抵のことはやります。
たとえば大雨の中をうちに帰るとか」
「そうだな」ハラは深くうなづく。
「べつに愛は欲しくないから、家に帰りたい」

大雨は皆の服の中に入り、体温を奪っていきます。
皆は無事に帰れるのでしょうか?

平易な文章で、ハラ、オニキリ、サカキ、ヤマダミツグの
行動や想いが描かれていきます。
それぞれの人生が広がっていきます。
津村記久子は、人生をあぶりだすような
物語を作るのがうまい作家だと思います。
読書後に、静かな感動が残ります。(ブログ作者)

     

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