私の好きな本、おすすめ本H.P.作者のつれづれ日記

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私の読んだ本で、心にグット来た本を紹介する、読書日記のブログです

2014年10月

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[光と影:渡辺淳一:講談社文庫]
人生の光と影について書かれた小説です。

[光と影]、[宣告]、[猿の抵抗]、[薔薇連想]の小説がおさめられています。
渡辺淳一さんが直木賞を取った、光と影を紹介します。

[光と影]
主人公は小武敬介です。
陸軍大尉の小武敬介は、文武の全てにおいて、
陸軍大尉の寺内より優秀でした。

陸軍大尉の小武敬介と陸軍大尉の寺内は、西南戦争で
右腕をピストルで撃ち抜かれます。

二人とも右腕を切断する手術を受ける予定でしたが、
ある偶然から、小武は右腕を切断され、寺内は右腕を
温存する施術を受けます。
小武はすぐ回復して、退院しますが、寺内は傷の化膿が
なかなかなおらずに、入院が長引きます。
寺内は右腕を切断してくれと依頼しますが、
聞き入れてもらえません。

小武は右腕がなくなったために、陸軍を不本意にも
退役して、階行社という軍人交流クラブを運営する会社で
働きます。

寺内は、不完全ながら右腕が残っていたので、陸軍に
残ることができます。

寺内は、それからすごいスピードで出世していきます。
自分より劣っていた寺内が陸軍に残り、出世していくのを
小武は鬱屈した気持ちで見ています。

何かが大きく動き始めているような気がする。
それが何か、しかとは言い表せない。
しかし眼に見えないもう一つのものがすこしずつ
自分と寺内の間を引き離しているように小武には思えた。


小武が右腕を切断され、寺内が右腕を残す施術を受けた
理由を聞いた小武は驚愕します。
どのような理由だったのでしょう。

小武は思います。
寺内の信条は天命に逆らわぬということだ。
しかし俺とても逆らっていない。逆らったのは俺ではなく
天命の方ではないのか。
自分にとって天命はあまりに不合理ではないのか。
天命は不合理でいいのか、それでもなお従えというのか、
寺内、お前のようにうまくいく天命ばかりではないのだ。


運命とは、思い通りにはならないものですよね。

ある偶然から、自分の右腕を切断された小武。
小武は腕がないので、陸軍を退役して、不本意な
仕事をする。
寺内は右腕を温存されたので、陸軍に残って出世していく。
自分の方が全てにおいて寺内より優秀だったのにと、
いつまでも対抗意識が消えない小武。
しかし小武と寺内の差はひらいていく一方です。
小武は自分は影で、寺内は光だと思います。
天命とは何だと考え込む小武。
人生とは難しいものですね。
才能や努力だけではどうにもならないものですね。(ブログ作者)

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[愛に似たもの:唯川恵:集英社文庫]
色々な女の人の愛の形について書いてあります。

短編が8個、載っています。
[つまづく]と[帰郷]を紹介します。

[つまずく]
公子は37才です。34才の時に離婚しました。
離婚の原因は、夫の浮気です。
夫からは慰謝料と2LDKのマンションをもらいました。
現在は、フラワーアレンジメントの仕事が順調です。

花屋で働いている19才の男、矢沢稔のことを気にいっています。
矢沢稔に真澄という彼女ができました。
公子が真澄の事を興信所で調べてもらうと、以前、風俗で
働いていたことがわかりました。
公子は矢沢稔に真澄とのつきあいをやめるように言いますが、
矢沢稔は、放っといてくれと言います。
公子は、だんだんとストーカーのようになっていきますが、
どうなるのでしょうか?

公子は言います。
「私はね、稔くんが大切なの。大切な人を守りたいって
 思うのは当然でしょう。悪いけど、あの子は稔くんには
 ふさわしくない」

何も知らないかわいそうな稔。どうしてあんな女に引っかかって
しまったのだろう。
きっとそれも稔の人の好さゆえだ。稔の恋人となるのは、
もっと稔にふさわしい、可愛くて優しくて思いやりのある女の子で
なければならない。

真澄は呆れた顔をした。
「ねえ、あんた、どうかしてるんじゃない。
 親子ほども年の違う稔に入れ込んじゃって、
 自分がしてることわかってるの。
 それなりに有名な先生なんでしょう。
 こんなことして、信用なくしたりしたくないでしょう」


[帰郷]
千沙は31才です。
18才の時、東京の大学進学で家を出てから、
帰郷しませんでした。
母が脳梗塞で倒れてあぶないと聞いて、
帰郷することにしたのです。


千沙は故郷での生活が嫌いでした。
特に母が嫌いでした。

母を見ていると腹が立った。何も言わず、歯向かわず、
自分のしたいことも、自分の望むことも、全部なかったことにして、
横暴な父にひたすら従い、自分勝手な息子や娘にも無抵抗を
決め込んでいる。
そんな母を見ていると苛々した。

千沙は東京に出て、ダイエットをして、美容整形をします。

千沙は、セミナーを主催する会社で働いています。
会長の愛人になっています。
会長が借りてくれたマンションに住み、破格の給料をもらい、
服もバッグも装飾品も、欲しいと言えば大抵のものは
買ってもらえます。

千沙は母と違った生き方をしたいと思って生きてきました。

千沙は思います。
幸せになりたかったから。
そして今、望み通りの生活を手に入れている。
それなのに、時々、どんどん幸せから遠ざかっているような気が
してしまうのは何故だろう。
あかあさん、教えて。
本当はどうだったの、幸せだったの?不幸だったの?

主人公の女性達が生き生きと描かれています。
女性読者なら、自分の事が描かれていると思う小説が有ると思います。
働く女性が多くなりました。仕事でも成功したい。妻としての忍従の生活は嫌だ。
でも愛する男は欲しいし、子供も、世間並の幸せも欲しいと女性は思うので、
色々と悩み、気持ちが揺れ動くのでしょうね。
そこらへんの事が書かれた小説です。
唯川恵さんは、女性は全て欲が深いと言います。
あれもこれもそれも欲しいと思うそうです。
ただ、自分が欲深なことに気づいている女性と気づいていない
女性がいるだけで、女性は全て欲深なそうです。
確かに女性の方が男性より忍耐強く、したたかですよね。
作家の渡辺淳一さんも、生物として、女性の方が男性よりも
ずっと強いと言っていました。男は、体の血液が1/3減ると死ぬそうですが、
女は、体の血液が1/2になっても、生きている人がいるそうです。
子どもを産む性である女性は、本当に強いですね。(ブログ作者)

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[卵の緒:瀬尾まいこ:新潮文庫]
心あたたまる小説です。

主人公は小学校5年生の鈴江育生です。
育生のお母さんは27才の鈴江君子です。
育生にはお父さんがいませんが、その理由を
お母さんに聞いたことはありません。

育生は自分を拾われた捨て子ではないかと疑っています。

育生が君江にへその緒を見せてくれと言います。
きみこが見せてくれた箱には、卵のかけらが入っていました。

君子は言います。
「母さん、育生は卵で産んだの。だから、へその緒じゃなくて
 卵の殻を置いてるの」

君江は会社の上司の朝井秀祐の事を気に入ってます。
おいしい料理を作ると、育生の許可をとって、朝井を
家に呼んで、3人で食べます。

君子は言います。
「すごーくおいしいものを食べた時に人間はこのことが頭に
 浮かぶようにできているの。
 ああ、なんておいしいの。あの人にも食べさせたい。
 で、ここで食べさせたいと思うあの人こそ、今自分が
 一番好きな人なのよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ちなみに母さんは、すごく食べさせたい人が
 いるんだけど」
 僕にはすぐにそれが誰かがわかった。
「朝ちゃんでしょ」


鈴江君子と朝井秀祐はどうなるのでしょうか、読んでみてください。

鈴江君子が育生に昔のことを教えてくれます。
どんな過去が有ったか、読んでのお楽しみです。


君子は育生に言います。
「・・・・・・・・・・たった18の女の子が
そういう無謀なことができるのは尋常じゃなく
愛しているからよ。あなたをね」


読んでると、心があたたかくなる小説です。
君子が魅力ある女性です。
君子の姿がいきいきと描かれています。
君子の育生に対する深い愛情が伝わってきます。(ブログ作者)

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[肩ごしの恋人:唯川恵:集英社文庫]
27才の女性の恋や人生について書かれた小説です。

早坂萌は27才の会社員です。
室野るり子も27才で、早坂萌とは幼稚園時代からの
友人です。

室野るり子は、室野信之と結婚しますが、これが3回目の
結婚です。
室野信之は、もとは早坂萌のボーイフレンドでしたが、
室野るり子が奪う形になったのですが、その事で
早坂萌と室野るり子の関係はくずれません。

室野るり子は、女である事を武器にして、欲しいものは
何でも手に入れたいという女性です。
同性に非難されても気にしません。

本当はみんな知っているはずだ。わがままを通す方が、
我慢するよりずっと難しいということを。
だからみんな我慢の方を選ぶ。
それは、楽して相手に好かれようと思っているからだ。
るり子は常々心に誓っている。
どんなに落ちぶれても、我慢強い女にだけは絶対に
ならないでおこうと。


室野るり子の結婚披露宴で、早坂萌は、室野るり子の
元恋人の柿崎と知り合い、セックスする仲になります。
柿崎は結婚しています。
不倫関係になったのです。

早坂萌は、輸入代行をしている会社で働いています。
会社でアルバイトをしていた15才で高1の秋山崇が、
家出をしたので泊まる家がないと言うので、
しばらくの間、家に泊めてあげることにします。

家出した理由で、秋山崇と早坂萌と室野るり子で議論になります。
萌が、るり子に言います。

「だったらるり子はどうなのよ。あの男の子がどうしたとか、
 新色のマニキュアが欲しいとか、
 そんなことしか頭になくて、その結果、
 いい歳になってもまともな仕事にもつけず、
 男におんぶに抱っこで生きてゆくしかないんじゃない」

秋山崇が言います。
「できることなら僕は、他人に『あいつはバカだ』と言われるような
 生き方がしたいんだ」
るり子と萌は思わず顔を見合わせ、しばらくの間、黙りこんだ。
そんな青臭くて、非現実的で、けれども純粋な言葉など、
もうずっと聞いたことなどないように思った。

早坂萌は、仕事と人生に一生懸命に取り組む女性です。
でも男とは微妙にタイミングがあわず、独身できています。
柿崎との関係はどうなっていくのでしょうか。

るり子が崇に言います。
「いいこと教えてあげる。女の子に人気があって、
男の子に全然モテない
女の子が、世の中でいちばん不幸なの」


室野信之が会社の若い女性と浮気をします。
それで室野るり子は家を出て、早坂萌の家に居候することに
なります。
早坂萌と室野るり子と秋山崇の奇妙な同棲生活が始まります。
3人の人生は、どうなっていくのでしょうか?

意外な展開が待っています。小説を読んでください。


早坂萌と室野るり子の二人の人生が生き生きと描かれていて、
とても共感をおぼえます。
女を武器にして、男との恋愛と結婚を繰り返す室野るり子。
仕事も人生も一生懸命なのに、タイミングをつかめずに、
独身で、損な役回りをやっているような早坂萌。
この正反対なような女性二人の友情は強固です。

るり子は思います。

女は、男に幸せにされるべき生き物だと思っている。
当然だ。女がにこにこ笑っていれば、男たちはそれで
幸せになる。女が幸せでいることが、結局は男を
幸せにする。だから女たちは美しく装い、意味ありげな
笑みを浮かべ、甘い匂いをまき散らして、自分を幸せにしてくれる
男を探し求めている。

早坂萌は思います。

恋が連れてくるやっかいなさまざまな感情、
たとえば会いたくて触りたくていても立ってもいられなくなる、
そんな切なさが、恋そのものだということらしいが、萌は
どうにも素直にそれを受け入れられない。
恋はしたいと思うが、我を忘れるような状態に
なりたくなかった。
実際、なったこともなかった。
以前、るり子に言われたことがある。
「萌は結局、いちばん自分が大事なのよね」

要は、室野るり子は恋愛体質で、早坂萌は、恋愛体質でないという
ことでしょうか?

私は、女性のことがよくわからないので、女流作家の本を
多く読んで、少しは女性の事を理解できるようになりたいと
思っています。
唯川恵さんや中村うさぎさんや姫野カオルコさんの本等は、女性を知るために、
勉強になります。(ブログ作者)

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[女たちは二度遊ぶ:吉田修一:角川文庫]
男と女の関係を描いた短編小説集です。

男と女の関係を描いた短編が11編入っています。
「夢の女」と「ゴシップ雑誌を読む女」を紹介します。


「夢の女」
主人公の男は、駅の改札で、いい女を見かけます。
主人公の男が女のあとをつけると、女は木造アパートの1階に
住んでいることがわかります。

男は女を見かけた時に、勇をふるって、
女につきあって欲しいと言いますが、断わられます。
男がバイトしているバーに来てくれと男は言います。
行けたら行くと、女は言います。
男は、バーに来ない女をじりじりとした思いで待っています。
どうなるのでしょうか?


「信じてもらえないと思うけど、電車の中で見かけたとき、誰かに
似てると思ってて、降りる瞬間にそれを思いだして、あの、ほんとに
馬鹿みたいな話なんだけど、いつも夢に出てくる女の人に、
あなたがあまりに似てて・・・・・」
とっさに出てきた嘘がこれだった。
正直、終わったな、と思った。

「それ、ほんと?」と女は言った。
一瞬、どっちにしようかと悩み、「・・・すいません、嘘です」と
素直に謝った。
すると女が、フフッと声を上げ、「だよね」と笑いだしたのだ。



「ゴシップ雑誌を読む女」
主人公の男の萩原は、契約社員として、貿易代行会社の
船便「輸入課」で働いています。
先輩の女子社員が、首藤泉です。

泉は、宴会で人の制止を振り切って、酔い潰れるまで酒を飲みます。

泉と萩原が公園で話をします。

「萩原くん、何かやりたいことがあるんでしょ?」
「やりたいことって?」
「将来の夢っていうか、たとえばミュージシャンになりたいとか、
実は、演劇やってるんですとか」
「ないですよ。どうしてですか?」
「これ、私の持論なんだけど、お昼休みをひとりで
過ごしたがる人って、なんか、そういうものがあるような気がするのよ」
「ないですよ」とぼくは笑った。

すると何かを思い出したように「そうなんだよねぇ。本当に
何かをやろうとしてる人って、絶対に他人には言わないんだよねぇ」
と彼女が肯く。「・・・私は駄目なんだよねぇ。すぐ、人に言っちゃうから」と。


泉さんは、4年前のホームステーで知り合ったロンドン在住のイギリス人と
文通だけでつきあっていると言います。
萩原は、その付き合いが本当かどうかを疑っています。

萩原は、正社員になる誘いを断って、会社を辞めることにします。
泉さんが送別会を開いてくれると言いますが、人は集まって
くれるのでしょうか?


吉田修一は、男女間の機微に通じていると思います。
女性経験が豊富なのでしょう(羨ましいです)

吉田修一の小説は、男女の会話が生き生きとしていて、
ユーモアが有り、エスプリに富んでいます。
人生について、考えさせてくれる小説です。

この小説集は、「初めて何かを思い出そうとして書いた
作品」だったと、吉田修一は語っています。
「何を思い出そうとして書いたのかは、結局わかりませんでしたが」
と、吉田修一は言っています。

記憶の底に潜って、忘れてしまった存在。それを思い出したいのだが、
思い出せそうで、思い出せない存在。思い出したつもりでも
本当にそれなのかわからない存在、でもとても大切な存在、
そのような存在を、吉田修一は小説に
書きたかったのだと思います。(ブログ作者)


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