[光と影:渡辺淳一:講談社文庫]
人生の光と影について書かれた小説です。
[光と影]、[宣告]、[猿の抵抗]、[薔薇連想]の小説がおさめられています。
渡辺淳一さんが直木賞を取った、光と影を紹介します。
[光と影]
主人公は小武敬介です。
陸軍大尉の小武敬介は、文武の全てにおいて、
陸軍大尉の寺内より優秀でした。
陸軍大尉の小武敬介と陸軍大尉の寺内は、西南戦争で
右腕をピストルで撃ち抜かれます。
二人とも右腕を切断する手術を受ける予定でしたが、
ある偶然から、小武は右腕を切断され、寺内は右腕を
温存する施術を受けます。
小武はすぐ回復して、退院しますが、寺内は傷の化膿が
なかなかなおらずに、入院が長引きます。
寺内は右腕を切断してくれと依頼しますが、
聞き入れてもらえません。
小武は右腕がなくなったために、陸軍を不本意にも
退役して、階行社という軍人交流クラブを運営する会社で
働きます。
寺内は、不完全ながら右腕が残っていたので、陸軍に
残ることができます。
寺内は、それからすごいスピードで出世していきます。
自分より劣っていた寺内が陸軍に残り、出世していくのを
小武は鬱屈した気持ちで見ています。
何かが大きく動き始めているような気がする。
それが何か、しかとは言い表せない。
しかし眼に見えないもう一つのものがすこしずつ
自分と寺内の間を引き離しているように小武には思えた。
小武が右腕を切断され、寺内が右腕を残す施術を受けた
理由を聞いた小武は驚愕します。
どのような理由だったのでしょう。
小武は思います。
寺内の信条は天命に逆らわぬということだ。
しかし俺とても逆らっていない。逆らったのは俺ではなく
天命の方ではないのか。
自分にとって天命はあまりに不合理ではないのか。
天命は不合理でいいのか、それでもなお従えというのか、
寺内、お前のようにうまくいく天命ばかりではないのだ。
運命とは、思い通りにはならないものですよね。
ある偶然から、自分の右腕を切断された小武。
小武は腕がないので、陸軍を退役して、不本意な
仕事をする。
寺内は右腕を温存されたので、陸軍に残って出世していく。
自分の方が全てにおいて寺内より優秀だったのにと、
いつまでも対抗意識が消えない小武。
しかし小武と寺内の差はひらいていく一方です。
小武は自分は影で、寺内は光だと思います。
天命とは何だと考え込む小武。
人生とは難しいものですね。
才能や努力だけではどうにもならないものですね。(ブログ作者)