幽 花腐し (講談社文芸文庫)
松浦 寿輝
講談社
2017-01-11


[花腐し:松浦寿輝:講談社文芸文庫]
主人公は46才の男の栩谷です。
大学時代の友人とデザイン会社を作りましたが、
友人が借金を作り、夜逃げしたので、
会社は倒産して、破産しそうです。

古いアパートの立ち退きを伊関という男が
拒否して居座っています。
伊関は38才です。
伊関は多額の借金を抱えています。
栩谷は、ノンバンクの小さな会社の社長から
伊関を立ち退きさせてくれと依頼されました。
伊関は立ち退きを拒否します。

栩谷と伊関は一緒に酒を飲んで話します。
すべてのものはくずれて、腐っていくと、
伊関は言います。

伊関はマジックマッシュルームを育てて、ネットで
売っています。
合法ドラッグ、幸せきのこです。
アスカという20才のキャパ嬢が、
伊関の部屋でらりっています。

伊関が言います。
「ブラックホールね、俺はあれに東京も日本も
呑み込まれちまえばいいと思う。
ちっぽけなプラスを一生懸命かき集めたって
もう何にもならないんだから。
もう下手に足掻いたり頑張ったりしない方が
いいんだよ。
マッシュルームを食ってぽやっとしてるに
越したことないんじゃないか」

栩谷はひどく酔って、伊関の部屋で寝ています。
栩谷にマジックマッシュルームを食べてらりった
アスカがせまって来ます。
どうなるのでしょうか。

伊関が栩谷に言います。
「あんたにはまだわかっていない。
いろいろ不平をぶうたれながら、それでもまだぬるま湯に
漬かってるんだよ。
空っぽってどういうことだかわかっていやあしねえ。
ほんとに空っぽになっちまったとき初めて見えるのよ」
「何が」
「この世の花だろうなあ」

栩谷は、昔の恋人の祥子の事を思い出します。
同棲していましたが、祥子は事故死しました。
このくずれて、腐っていく世の中で、
栩谷は祥子とまた会いたいと思います。
会えるのでしょうか?

破滅しそうな栩谷と伊関。
どろどろにくずれて、腐っていきそうです。
しかしこの二人の会話は深みがあり、
ユーモラスでもあります。
伊関は言います。
「この世の花。それをいとおしむ気持ちって
ものがね。初めて湧くの。
空っぽをどう愉しむか、虚空を踏みながら
どうやって生きるのかっていう、せめてものケアーだよ」
「じゃあ、生きるのか、やっぱり」
「そう、生きる」

深みがあり、面白く、ユーモラスな小説です。