不貞の季節 (文春文庫)
団 鬼六
文藝春秋
2011-02-10


[不貞の季節:団鬼六:文春文庫]
団鬼六の短編小説が4編入っています。
「不貞の季節」、「美少年」、「鹿の園」、「妖花」の4編です。
どれもすけべな小説ですが、従来の団鬼六の
SM悪漢小説とは違い、心理描写等もすぐれた
新境地を示す作品です。
「不貞の季節」を紹介します。

[不貞の季節]
40才の主人公の男は、代用教員をしています。
妻は34才で教師です。

私は東京でアングラ劇団を創立しようとして
失敗し、借金取りから逃れるために神奈川の地元で
教員を始め、妻と結婚します。

私は教師をしながら、SM雑誌にSM小説を書き、それがヒットします。
机に隠していた原稿が妻に見つかります。
「ああいう下らない変態小説を書くなんて、
あなたにはそういう趣味があったの?」

私は2年間、東京で勝負することにして、
教師をやめて、単身赴任します。

東京でピンク映画製作や緊縛写真集を出して、
これがヒットします。
SMキングを創刊し、これもヒットします。

妻は教員をやめて、上京します。
私は妻と同居します。

私は単身赴任時に、私が作った鬼プロに緊縛師として
入ってきた川田の紹介で、
女子大生の相沢京子を愛人にしていました。

私の仕事場に模様替えに相沢京子が来ていた時に、
妻がやってきて、私が愛人を作ったことを知り、
激怒します。

妻が知り合いのアメリカ人のマックの
英会話教室を週に2回手伝いすることになります。
マックが妻を狙っているのではないかと疑う私は
用心棒兼運転手として、川田を一緒に行かせます。

マックの告げ口で、妻と川田が関係を持っていた
ことがわかります。
私と妻はどうなるのでしょうか。

私と妻のセックスはせいぜい20分ぐらいの時間の
淡白なものでした。

川田がわたしに白状します。
・奥さんはフェラチオの名手である。
・奥さんは名器の持ち主である。
・数えきれないほど、気をやる。

川田は妻を後ろ手に縛り、座位型対向位で
セックスするという。
座位型にすると男は長時間の交接にも
疲れない。
「大体インテリ女性というものは気位の高さから
最初は拒むものですが、男のサディステイックな
性癖を充分に受け入れる体質を持っているものです」
川田は言う。
今のところ初歩程度しか調教は進んでいないので
単純に奥さんを後ろ手に縛ってセックスしているだけだが、
縛られた方が情感が迫るらしく、奥さんのいく回数が
増えました、と川田は言った。

私は川田に命じて、川田と妻のセックスの時の
声をテープに録音させた。そしてそれを聞いた。

妻の声だ。
ああ、川田さん。私、いくわっ、また言っちゃうわ。
ね、お願いだから、あなたもいって、私と一緒に
いって。

私はこれがあの妻かと驚きながら、テープを
繰り返し、聞きます。

妻が私の仕事場にやってきます。
二人はブランデーを飲みながら、話をします。

妻は言います。
「はっきりいって、性の極限の悦びというものを
川田さんに教えられたわ。
Gスポット感覚というものまで教えられたのですもの。」
いく、というあの絶頂感も川田によって初めて知った、
などと妻は酔いも手伝って次第に露骨な事を口に
するようになった。

私と妻はどうなるのでしょうか。

団鬼六のSM悪漢小説はワンパターンで
私はあまり好きではありません。
あまり読んで興奮もしません。
「不貞の季節」の4作品は、読んで興奮させる
ものを持っています。
人間関係や心理に卑猥なものが描かれているからです。
「不貞の季節」は、これまでの悪漢小説とは
違う小説です。私、妻、川田、相沢京子の心理状態や
お互いの関係などがうまく描かれています。
また私の心がどういう状態になっていくかも、
うまく描かれています。
団鬼六が老境で切り開いた新境地の作品です。
性に淡白だと思っていた妻の淫靡な事を知って
驚く主人公の男。
それにしても、4作品ともすけべーな小説ではあります。
おすすめです。(ブログ作者)