鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)
浅田 次郎
集英社
2000-03-17







[鉄道員:浅田次郎:集英社文庫]
短編が8編入っています。
鉄道員と悪魔が特に面白いです。
鉄道員を紹介します。

(鉄道員)
幌舞駅の駅長の乙松が主人公です。
乙松は今年で定年を迎えます。
幌舞駅は、昔は炭鉱の村として栄えましたが、
今は炭鉱は閉じられ、さびれた所です。
駅員も乙松一人です。

乙松の妻は2年前に死にました。
乙松の娘の雪子は、生まれて
二か月で死にました。
医者さえいないこの村に生まれて、
すきま風の吹く事務所続きの部屋に
寝かせていたからだと、乙松は
自責の念を持っています。

美寄中央駅の駅長の仙次から美寄の
デパート勤務をすすめられますが、
乙松はとてもつとまらないと、断ります。

乙松は言います。
「つらかった事は、ちっちぇえ子供らが、
集団就職で、泣きながら村を出ていくのさ。
そったらとき、まさか俺が泣くわけにも
いかんべや。気張ってけや、って子供らの
肩たたいて笑わんならんのが辛くってなあ」

鉄道員として、雨の日も風の日も
辛い事が有った日も、黙々と
鉄道員の仕事を乙松はしてきました。

幌舞駅に小学校に入学する年齢の
女の子がやって来ます。
次の日は、中学校に入学する年齢の女の子が
やって来ます。

少女達は、何か様子が変です。
どうしたのでしょうか?
こんな雪の時期に女の子が
一人で駅に来るのでしょうか?

17年前の吹雪の朝に、女房の腕に
抱かれたユッコをあのホームから送り出した。
いつに変わらず指差喚呼して、気動車を見送った。
そしてその晩の気動車で、ユッコは同じ毛布に
くるまれ、ひゃっこくなって帰ってきたのだった。
(あんた、死んだ子供まで旗降って迎えるんかい)
雪のホームにうずくまって、妻はユッコを
かき抱きながらそう言った。
そのとき、自分は何と言ったのだろう。
(したってよ、俺はポッポヤだから、どうする
こともできんしょ。俺がホームで旗振らねば、
こんなもふぶいているなか、誰がキハを
誘導するの。転轍機も回さねばならんし、
子供らも学校終えて、みんな帰って
くるべや)
押しつけられたなきがらのよろめくような
重さを、乙松は忘れない。

鉄道員一筋で働いてきた乙松の
仕事への矜持、孤独、悲しみや喜びが
深く伝わってくる小説です。
不器用でひたむきな乙松の姿に
共感を覚えます。