たまもの (ちくま文庫)
神藏 美子
筑摩書房
2018-03-07


[たまもの:神蔵美子:ちくま文庫]

神蔵美子さんの写真と文の本です。
神蔵さんは、写真家です。
最初に神蔵さんが泣いている写真が出てきます。

夫だった坪内祐三さんと、不倫相手の末井昭さんの
思いに引き裂かれて泣いています。

坪内さんは、評論家で、末井さんは編集者です。

神蔵さんは夫がいたのに、坪内さんと出会い、
坪内さんの事が好きになります。
神蔵さんは離婚し、坪内さんと結婚します。
坪内さんは、結婚を約束した相手がいたのに、
結婚式の1週間前に相手と別れ、神蔵さんと
結婚します。

神蔵さんは、坪内さんと結婚して6年経ってから、
女装写真のモデルになってくれた末井さんと
急速に親しくなります。
不倫です。

神蔵さんは、坪内さんにその事を言って、
家を出ます。
神蔵さんが「好きな人ができたから家を出ようと思う」と
泣きながら言うと、
「美子ちゃんはアーティストだから好きにすればいい」と、
坪内さんもわかってくれます。
末井さんは、30年間一緒に暮らした奥さんと
別れます。
神蔵さんと末井さんは一緒に暮らし始めます。
週に1日は家に泊まりに来て欲しいと坪内
さんに言われて、神蔵さんは泊まりに行きます。


神蔵さんは、最初の頃は有頂天です。
夫と愛人がいて、愛人と暮らし、
仕事も順調だからです。

神蔵さんは、坪内さんと離婚し、
末井さんと結婚します。
坪内さんに相思相愛の相手が現れます。

神蔵さんは、末井さんと暮らし始めて2年経った頃から
焦燥感にかられるようになります。

別れても、近くにいてくれると思っていた坪内さんが、
好きな相手ができて、遠ざかっていくように思えたからです。
自分の事をよく話す坪内さんの話を聞いていた時は、
二人で同じビューポイントで世界を見ているようで
安心できました。
子どもの頃、親の愛情を知らないで過ごした
末井さんは、自分の殻に閉じこもる傾向が有り、
自分の事はあまり話ません。

神蔵さんは、末井さんと二人で向き合っていると、
幸せになれるのか不安になってきます。
末井さんは沈黙しています。
何を考えているのかよくわかりません。
おしゃべりな坪井さんとは全く違います。
末井さんは、昔はギャンブル狂いで、
女性関係も乱脈だったようです。

タイプの異なる二人の男への愛情に引き裂かれ、
神蔵さんの焦燥感と憂鬱はつのっていきます。
神蔵さん、末井さん、坪内さんの写真がその時々の
状況を雄弁に語っています。

末井さんと家族になりたいと思った神蔵さんですが、
貝のように自分の世界に閉じこもる末井さんと
親密になれずに悩みます。
二人はどうなるのでしょうか?

坪内さんと少し距離をとる事ができると思えるように
なった時、坪内さんが路上で暴漢に襲われ
重傷をおいます。
病院に坪内さんを見舞った神蔵さんに
昔の思い出がよみがえり、
また坪内さんにとらわれるようになります。
末井さんと神蔵さんの関係がぎくしゃくするようになります。
神蔵さんの心に、坪内さんを思う、センチメンタルな
気持ちがやって来たのです。
どうなるのでしょうか?

神蔵さんは書いています。
1990年のある秋の日、祝詞をあげたあと神棚に手を合わせて
「坪内祐三さんにもう一度会えますように」とお願いして
家を出たら、夕方になって地下鉄東西線の早稲田駅の
ホームに降りたところで、むこうから歩いてきた坪内さんに
バッタリと出くわした。


神蔵さんは書いています。
古くてガランと広い、渋谷のラブホテルの部屋で、
末井さんの後ろ姿の向こうには大きく窓が開いていて、
立ち並んだビルの向こうには夜空が見えた。
わたしはその後ろ姿とネオンの反射するビルや空を
見ながら「神さまこの人を幸せにしてください」という
気持ちになった。
だからその古いラブホテルの窓のあたりは、わたしには
神聖な場所に思える。
その頃末井さんはギャンブル漬けのせいばかりでなく、どこか
空虚な感じがした。
あてどなく夜の街をひとりトットットとさまよい歩いている
はぐれ犬のような感じだった。

結婚相手がいるのに好きな相手ができるとは
困ったものですね。
アーティストだから自分の気持ちに正直に生きざるを
えない。
結婚相手と別れ、不倫相手と結婚したあとに
元夫へのセンチメンタルな気持ちがやってきて、
心が引き裂かれて苦しむ。
人生とは困ったものです。
末井さんの元奥さんも怒ったでしょうね。


神蔵さんはあとがきで書いています。

「人生はセンチメンタルなものだ」
たまものはそのことをわたしが経験するドキュメンタリーである。
人生がセンチメンタルなものだとわかることは、たとえ泣いても、
経験しなければよかったということではない、愛があるから、
センチメンタルになるのだ。
センチメンタルになり、センチメンタルを経て生きてゆくこと。

愛です。やはり大切なものは愛です。愛があるから
センチメンタルになるのです。
愛があるから心が揺れ、引き裂かれ、泣くのです。
泣くなら経験しなければいいではないかという事では
ないのです。
泣きながら、揺れながら生きていく。
その根底には愛があるのです。
愛した人たちとの出会いを神様に感謝してと
神蔵さんは言っています。
文章も素晴らしいですが、写真も心に深く
染入ってきます。
写真の存在感がすごいです。
1200円しますが、写真がたくさん入っています。
おすすめ本です。(ブログ作者)

写真のある本なので、写真も紹介します。

IMG_0987



















神蔵美子さんが泣いています。
1998年、神蔵さんが38才の時です。
36才の時に、夫の坪内さんの家を出て、
末井さんと暮らし始めます。
最初の頃は、末井さんに夢中でしたが、
自分の殻に閉じこもり、無口で自分の事を
話さない末井さんとの関係の将来に
不安を感じます。
家を出ても、坪内さんとはいつまでもつながっていると
思っていたのですが、坪内さんに恋人ができ
坪内さんと、距離ができてきます。
こんなはずではないと思い、
悲しくなり、涙が止まらなくなります。
センチメンタルな気持ちがやって来たのです。


IMG_0982




















坪内祐三さんの写真です。
おだやかそうな感じのする人です。
自分の世界を弁舌さわやかにはっきり語る人のようです。
神蔵さんは、坪内さんの事が好きでした。
ただ、坪内さんが、神蔵さんの世界に入ってきそうもない点が不満だったようです。
神蔵さんは、いつまでも坪内さんと一緒で、
別れる事などないと思っていたようです。
坪内さんは、セックスに淡白そうな気がします。
(坪内さんに怒られるかな)


IMG_0984



















末井昭さんです。
坪内さんとはタイプが違います。
ワイルドな感じがします。
神蔵さんと出会った時は、借金があるのにギャンブルをして、
さらに借金を増やし、女性関係も乱脈で
愛人が3人いたそうです。
神蔵さんと会うと、女装の話をするかセックスをしていたそうで、
セックスは強そうですね。
神蔵さんと末井さんの最初の結びつきはセックスも大きな
ウエートを占めていたような気がします。
(こんな事を言うと、神蔵さんに怒られるかな)
末井さんは、自分の事を語らないで自分の世界に
こもる人だったそうです。
神蔵さんは末井さんと向き合っていると、
その沈黙が不安だったそうです。


IMG_0983




















神蔵さんが36才の時の写真です。
神蔵さんが末井さんと出会って、付き合い出した頃です。
写真のタイトルは「新しい怒涛のような時間が」です。
末井さんと知り合い、お互いに好きになり、
会話したりセックスしたりしていたのでしょう。
神蔵さんは坪内さんと暮らしていた家を出ます。
末井さんは奥さんと別れ家を出ます。
怒涛のような生活が始まります。
神蔵さんは末井さんと暮らし始めますが、
なかなかうまくいきません。
坪内さんへの愛情も相変わらずあり、
二人の男への愛情に引き裂かれます。
坪内さんに、愛する女性が現れます。
そして神蔵さんにセンチメンタルな気持ちがやってきます。

二人の男を愛すると、愛情に引き裂かれ、
センチメンタルな気持ちになるという事ですね。
坪内さんとの出会い、末井さんとの出会いを
神様に感謝すると神蔵さんは言ってます。
愛情があるからセンチメンタルがやって来るそうです。
坪内さん一人を愛していれば、心が引き裂かれる事も
なかったのでしょうが、アーティストでもある神蔵さんは、
他の男への好きと言う気持ちにも正直にならざるを
得なかったのですね。
神蔵さんのような女性と結婚した男は
なかなか大変ですね。(ブログ作者)