ポイントブランクマーヴィン



















先日、映画の先輩とやり取りしていて、今ではすっかり忘れられてしまっている『夏の夜の10時30分』(66年ジュールス・ダッシン)の話になった。
マルグリット・デュラスが原作(60年)で自ら脚本も手掛けたこの映画のことを、そういえばなにかの本で読んだことを思い出し、そんな渋いタイトルが出て来るといえば川本三郎さんの本じゃないか?と見当を付けて本棚を物色していると、おや?
川本さんが『キネマ旬報』に連載していたコラムを纏めた『映画を見ればわかること』(04年)にピンクの付箋がしてある。
まったく記憶がなかったので、そのページを開いてみると、そこには『殺しの分け前』(67年ジョン・ブアマン)に触れた文章があった。
『イングリット・ペイシェント』(96年アンソニー・ミンゲラ)の原作者マイケル・オンダーチェの『アニルの亡霊』(00年)に、『殺しの分け前』のリー・マーヴィンは、どこを撃たれたのか?という手紙を書く女性法医学者が出て来るというのだ。
それで、へー読みたいと思って付箋をしたんだと思うがそれを今まですっかり忘れていたのだ。というわけで読んでみたよ。
舞台は内乱のスリランカ。遺跡から出土したその骨は、最近殺された政治テロの被害者なのではないか?女性法医学者(わざわざ「女性」を付けているのは、アニルという名は大抵は男性に付けられる名前だからです)アニルは真実を追う・・・というのが大雑把な筋だけど、タイトルの通り“亡霊”についての物語である。
『殺しの分け前』を観たアニルはブアマンに、冒頭で撃たれるリー・マーヴィンは、どこをどのようにして撃たれたのか?法医学の立場から知りたい!と手紙を出す。
その展開に映画ファンならきっと痺れるはず。というのもマーヴィンは撃たれたにも関わらず、アルカトラズ島からサンフランシスコまで泳いで渡ってあるいはマーヴィンは死んでいるのではないか?
『殺しの分け前』を選んだところに、オンダーチェの才気が窺える。
ところで、『映画を見ればわかること』の索引に『夏の夜の10時30分』のタイトルはあった。しかし川本さんは作品についてはとくに言及しておらず、デュラスについて「夏の作家だった」と書いている。
夏といってもデュラスが描くのは、太陽が照りつける激しく暑い夏ではなく、どこかさびしく寒々とした夏である
果たしてダッシンの『夏の夜の10時30分』にはそんな夏が描かれているだろうか?
(16.6.6/18.12.10)

※『夏の夜の10時30分』は記事にしています。よければ読んでください。