フューリー















『フューリー』(78年ブライアン・デ・パルマ)

カサブランカ。元諜報員ピーター(カーク・ダグラス)は、シカゴ大に進学する予定の息子ロビン(アンドリュー・スティーヴンス)と海水浴場で親子の絆を深めていた。ところに、襲撃!ロビンは何者かに攫われてピーターは銃撃され、これはピーターのかつての同僚チルドレス(ジョン・カサヴェテス)の罠に違いない。というのもロビンには特殊能力があった。念力少年だったのだ!ピキピキ、ドカンッ!で、その力を軍で利用としようと企ててでもピーターが当たり前だが許さないので、拉致ったってわけ。
チルドレスはピーターが敵国に殺されたことにしているので、ピーターが息子救出に現れると困るので追い回すが、百戦錬磨のピーターはジジイに化けたり警察の車をジャックしたりして手強い。
一方でチルドレスは、新たな超能力少女ギリアン(エイミー・アーヴィング)を発見してうまくそそのかしてドクター・マッキーヴァー(チャールズ・ダーニング)のパラゴン研究所でテストさせていたが、マッキーヴァーの手を取った瞬間、ギリアンには見えた。のは、自分くらいの少年が窓を突き破って転落する姿で、それはロビンだった。

息子のマイケル・ダグラスがようやっと『コーマ』(78年マイケル・クライトン)で映画俳優としてキャリアを歩み出した頃、パパ・ダグラスが出演したのが本作だった。2作ともに怪しげな研究所が出て来ることもあり、『コーマ』公開時、比較されたりしているのだが、当時を知らないと、この2本を並べて語ることは思い付かないと思う。当然、役者として親子も比較され、息子の方がスケールが小さいなどと言われているのだが、それよりも『コーマ』で息子が演じたのが、『ローマズリーの赤ちゃん』(68年ロマン・ポランスキ)におけるジョン・カサヴェテスのようで、本作で父はそのカサヴェテスと共演してしかもこれが息子を捜す映画だということが面白い。しかも劇中、予言もしている。ロビンの扱いは難しく、スタッフはチルドレスに愚痴る。「父親の映像を見せると感情的になって、まるで原子炉のようです」もしかして超能力を使った?!
一方で、デ・パルマは、弟分のことを気にしていた。つまり、スティーヴン・スピルバーグジョージ・ルーカスのことだ。『キャリー』(76年)がヒットして、一躍、ヒットメイカーとしてホットな存在となったデ・パルマだが、『JAWS』(75年)ほどの収益を上げられなかったことにガッカリして、よおし次は、『JAWS』を上回る大ヒット映画を作るぞ!と意気込んで臨んだのが本作だった。エイミー・アーヴィングがキャリー・ホワイトから超能力を譲り受けたスー・スネルのようで、繋がっているように見えるのは偶然ではない。目指されたのは、『キャリー』を超える『キャリー』だったのだから。
ジョン・ファリスの原作(76年)は、翻訳もあるが読んでない。その原作を読んで出たくないと思ったのがカサヴェテスだった。自分の演じるチルドレスが、下品だし道化だしでまったく魅力的でなかったからだ。いくら金のために出演するからといって(カサヴェテスは『オープニング・ナイト』(77年)を撮り終えたところだった)、あまりにバカバカしい、ので、勝手にキャラをアレンジ、チルドレスは圧倒的な権力者となった。ことで、あるいは閃いたのかも知れない。爆発させることを!
それは本作におけるド派手な名シーンで、当初はバスタブで血塗れで死んでゆくのだったが、ネタバレを避けてもうひとつの派手なシーンを紹介すると、猛スピードで観覧車はぐるぐる回り、間違いなくそれは『見知らぬ乗客』(51年アルフレッド・ヒッチコック)へのオマージュで、千切れた観覧車が窓をバリンッ!と破って壮絶なこの場面で連想するのが『大陸横断超特急』(76年アーサー・ヒラー)で、『大陸横断超特急』自体、ヒッチコックのオマージュ的作品だった(ヒッチコックオマージュといえば、ギリアンの親友を演じているのが『マーニー』(64年)ティッピー・ヘドレンの少女時代を演じたメロディ・トーマスダリル・ハンナも友人のひとりを演じている)。ちなみにその製作者は、本作同様のフランク・ヤブランスなのだが、観覧車に乗っているのがアラブ人だったためにヤブランスは人種偏見と見做し、バカな女子にそのヴァイオレンスが及ぶように変更したがったというのだが、それはそれで女性蔑視なのではないか?
ところで今、この映画を観ていて一番連想するのは、『デッドゾーン』(83年デヴィッド・クローネンバーグ)だったりするのだが、『デッドゾーン』公開時にその比較は為されただろうか?されたのだろうな、たぶん。あるいは人体破裂(ネタバレを避け、と書いているのにしてしまって、しまった!)は『スキャナーズ』(81年デヴィッド・クローネンバーグ)に先駆けてクローネンバーグはデ・パルマのファンなのだろうか?そうだといいが、そうではないだろうし、これはたまたまだろう。
そんな、いろいろ面白い映画と繋げられる本作なのだが、興行的にも、批評的にも失敗してそれが本当に残念だったのは、次回作に予定していた作品が頓挫してしまったからだ。アルフレッド・ベスターの『分解された男』(53年)は、『デ・パーマ・カット』(88年)の著者ローラン・ブーズロウによれば、『悪魔のシスター』(73年)と『殺しのドレス』(80年)の未来版だ。その小説の中で、人の心をいとる人びとがいて、彼らは“ピーパーズ(覗き屋)”と呼ばれる!なんてデ・パルマ的!

※blu-ray特典映像と下記書籍を参考にしています。

デ・パーマ・カット
ローラン・ブーズロウ
キネマ旬報社
1989-07