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ピザの食べ方はこれに学んだ。
『コブラ』(86年ジョルジ・パン・コスマトス)

犯罪都市ロサンジェルスでは、狂信的な殺人集団による連続殺人が続出し、市民は恐怖に戦いていた。「未来は俺たちのものだ、ブタどもを殺せ!」今日も奴らは斧を振り翳して自らを鼓舞し、殺戮を繰り返す。グサッ!ぎゃ〜っ!その禍々しい形のナイフで行われた兇行を目撃してしまったイングリット(ブリジット・ニールセン)は、殺人集団を率いるナイト・スラッシャー(ブライアン・トンプソン)に狙われる羽目に。
彼女の護衛を担当するのが、すぐにホシをブチ殺すことで有名なロス市警のハミ出し刑事、犯人逮捕には毒蛇のように執念深い(笑うな!)マリオン・コブレッティこと通称コブラ(シルヴェスター・スタローン)だ。
コブラは療養先の病院で襲撃に遭ったイングリットを救出すると、山中のモーテルに身を潜めるが、その頃にはふたりの間には愛が芽生えているのだった。

原作はポーラ・ゴズリングの『逃げるアヒル』(78年)ということになっているが、さにあらず。どれほど違っているかは、エッセイストの温水ゆかりさんが文庫のあとがきに書かれた怒りの文章を読めばよーく分かる。以下、引用してみる。
思い出すだけでもあまりの情けなさに泣いてしまう。原作をあれほどまで無惨に切り刻み、粉々にしてしまうとは。換骨奪胎なんてまだ品のいい表現であって、あれじゃクソまみれ(略)まったく、アメリカのカウボーイの考えることといったら、チリビーンズに入ってる豆ほどの脳みそもないときてるんだから!
文中で豆ほどの脳みそもないと盛大にdisられているのは、もちろん我らがシルヴェスター・スタローンである。恐らくスタローンはこの脚本を、『ダーティハリー』(71年ドン・シーゲル)を観ながら書いた。冒頭からマスコミにやんややんや言われるシーンからしてパクリだが、そりの合わない上司で出演しているのがサソリを演じたアンディ・ロビンソンで、その件に関しては割と堂々としているところが好感を持てる。ついでに(ということもないが)言うと、前回でも書いたスタローンがこだわったマリオンという役名はジョン・ウェインの本名で、ウェインはハリー・キャラハン役の候補に挙がったことがある。だから拝借したというワケではないだろうが、スタローンが本作を現代版西部劇としてイメージしたことは想像に難くない。
まあ、どうしようもないことこのうえなく、80年代を代表するバカ映画に間違いはないが、たとえばイングリットが病院で襲われるシーンのタイトな演出や、追い掛けられているのにクルリと逆を向き、バックで走行しながら敵を撃つというトンチが光るカーチェイスなどはローアングルの効いた棄てがたい魅力に溢れている。
監督のジョルジ・パン・コスマトスは、先日出た『クライム・アクション100』(12年)の中でてらさわホーク氏に「職人と呼べば聞こえはいいが、業者と言った方がいいかも知れない」とかなり納得する指摘をされていたギリシャ人だが、DVD特典の監督コメンタリでは、途中で飽きて来て本編そっちのけで代表作『カサンドラ・クロス』(76年)の話をしはじめた。友だちとしてはイイ奴なんじゃないかな。05年に他界。
さて、まだ観ていない人は記事イントロのピザはなんだろう?と思うでしょう。
仕事を終え、帰宅したコブラがまずするのがピザを食べることだった。ハサミでワイルドに切り取るところをマネした記憶があったのだが、再見してみると、すでにカットしてあるピザをちょっと切って食べるというかなりみみっちい方法だったのに驚く。
でももっと驚いたのは、同時進行で銃の手入れをするのだが、その時の道具をタマゴのパックに入れてあったこと。なんで?ダサいんですけど・・・と一瞬思ったが否!断じて否!!これはスタローン的にカッコいいことなのだ。
メイキングを思い出せ。スタッフの誰もが防寒具の中で身を縮ませ、というか映画自体クリスマスが舞台であるため、出演者たちも暖かそうなブルゾンやコートなどを着込んでいる中で我らがスタローンはヘンリーネックのシャツいちで奮闘するのだ。
カッコいいとはこのことだ。シャツいちのことだ。
最後にクエンティン・タランティーノが、この映画について語った言葉でシメたい。
僕にとっての大事な映画だ
俺にとってもだよ!

※DVD特典コメンタリ、メイキングを参考にしています。