ドミノ










『ドミノ』(05年トニー・スコット)

ラスヴェガスの警察で取り調べを受けるのはドミノ(キーラ・ナイトレイ)、彼女は元モデルのバウンティハンターで、FBI捜査官タリン(ルーシー・リュー)は36時間前に発生した1000万ドル強奪事件の首謀者が彼女だと睨んでいるのだ。
ドミノはことの次第をタリンに話しはじめる。
ローレンス・ハーヴェイの娘としてロンドンに生まれたことから。
母ポーリーン(ジャクリーン・ビセット)同様、モデルとして生計を立てるも札付きの彼女は周囲との衝突が絶えず、新聞で偶然目にしたのがクレアモント(デルロイ・リンドー)が主催するバウンティハンターの募集広告だった。
やがて本格的なバウンティハンターとなったドミノはヴェトナム帰りのエド(ミッキー・ローク)とイケメンだがすぐに手が出てしょうがないチョコ(エドガー・ラミレス)の3人でチームを結成、銃撃戦も珍しくない死と隣り合わせのスリルにドミノは魅せられてゆくが、そんな彼女に目を付けたのがTVプロデューサーのマーク・ヘイス(クリストファー・ウォーケン)だった。
ドミノをリアリティ番組に出そう!

このブログの一番最初の記事は、ベルリンで撮影中、急逝したアンソニー・マンに代わってローレンス・ハーヴェイが仕上げた『殺しのダンディー』(68年)だったが、本作の主人公ドミノはハーヴェイの実娘である。
監督のトニー・スコットは、ドミノをことを英国の新聞紙『SUN』の記事で知った。
この映画に取り掛かる12年前のことだという。
すぐに彼女に接触すると、ドミノのユニークな人生の映画化を持ち掛ける。
面白そうだとドミノも乗り、脚本化の作業が開始されるが、これが難航した。
最終的に脚本を仕上げたリチャード・ケリーに、スコットは『サウスランド・テイルズ』(07年)の脚本を読んで声を掛けたのだが、それまでに前任者がふたりいた。
スティーヴン・バランシックロジャー・エイヴァリー
ふたりの脚本はともにドミノの自伝的な内容で、スコットのイメージと違った。
スコットは第三の男ケリーにこう言ったという。
人物設定は必要ない、すべて実在する人物だからだ
そこでケリーはドミノの人生に大胆にフィクションを導入、虚実を織り交ぜ、どこまでが真実か分からないまるで夢のような話に仕上げた。
たとえばリアリティTVやジェリー・スプリンガーショー、『ビバリーヒルズ高校白書』(90-93年)の出演俳優(ブライアン・オースティン・グリーンイアン・ジーリング)が登場する件などには嘘のような本当の話的奇妙なリアリティがあってすごくうまい。
自分は『ビバリーヒルズ高校白書』を見てなかったので、これを観た時、ひどく後悔したものだがさておきそんな夢のような不思議な現実感は、監督のスコット自身もこの作品に関わる中で実際に体験していたんじゃないか?
なんといっても、ポーリーンが友人のピーター・モートンと再婚して知り合いでもあり、それは演じたジャクリーン・ビセットも同様で彼女とはモデル仲間だった。
ちなみにピーター・モートンはハードロックカフェの創業者のひとり、なんでもマシュー・ヴォーンの代父だそうで、モートンがヴォーンを連れてハードロックカフェ巡りをしていたら後の盟友ガイ・リッチーに出会った、なんて逸話もある。
話を戻して夢のような話、は、なにもケリーの脚本の所為だけじゃない。
本作を撮るに当たりスコットは、ルールを儲けずなんでもやろう!と決めてアマゾンやマルボロのCM(アメリカではたばこのCMに制限があるためマルボロのCMを見る機会はない)などで培ったスタイリッシュな映像テクニックを炸裂させた。
それは1度観ただけでは内容を理解出来ないほどで、もはや実験映画と言って過言ではないが、スコットによれば、これはドミノの目に映る世界や感じ方を表現しているのだという。『マイ・ボディガード』(04年)における主人公(デンゼル・ワシントン)の心理描写を発展させたものだと。
ところでスコットはケリーの脚本にGOサインを出したものの1度読んだだけでは理解出来ず、3回読んでもまだ心許なく、そんなの観客が分かるだろうか?
それで『ニューズウィーク』誌などを参考にして人物相関図をテロップで加えることにしたのだが、もうだからこれは映像表現が洪水となって押し寄せて来る感じなのだ。
ラストに映し出されるのは、子供たちが大喜びで騒ぐ光景。
実は、これこそ本作で描きたかったことなのだ、とケリーは語る。
この映画は医療システムについて言いたいことがあったからそれが裏テーマ。最後に子供たちを救うって話なんだよ
本作はクエンティン・タランティーノエドガー・ライトのフェイヴァリット映画だという。
なお、ルーシー・リューの役はレズビアンだとのこと。

※DVD特典コメンタリを参考にしています。