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『荒野の処刑』(75年ルチオ・フルチ)

ひと儲けしようとソルトフラットの町にやって来た詐欺師のギャンブラー、スタビー(ファビオ・テスティ)だったが、あっと言う間に檻の中。翌朝、釈放されたスタビーが見たものは、あちこちに転がる死体の山だった。「悪の巣窟となったこの町の洗濯をした」と保安官(ドナルド・オブライエン)は言う。
スタビーは同様に牢屋に入れられていた娼婦バニー(リン・フレデリック)、黒人バット(ハリー・バード)、飲んだくれの浮浪者クレム(マイケル・J・ポラード)の4人で粗末な荷馬車で、まるで追い立てられるようにその町を出た。
4人の旅は、スタビーとバニーが夫婦と間違われたり、楽しいものだった。夫婦に間違われたのは、バニーが誰の子供か妊婦だったからということもあるが、さておき旅の途中で4人の前に現れたのが謎のハンター、チャコ(トーマス・ミリアン)だった。射撃の名手であるチャコは仲間に加わりたいと申し出、それは願ったりだったが、その時4人はまだ知らなかったのだ。チャコの正体を。

イタリアンスプラッタの帝王、ルチオ・フルチ(『地獄の門』(80年)『ビヨンド』(81年))が、まだそう呼ばれる前に作ったマカロニウエスタンの異色作。フルチがマカロニを手掛けるのはこれが2本目で、1本目は『真昼の用心棒』(66年)だが、異色作と表現したのは、すでにマカロニのブームが去っていたことも関係しているだろう。
アメリカではニューシネマが作られていて、実はそれも終わっていたのだが、この映画はマカロニよりもニューシネマ的な青春ロードムーヴィーの味わいを持つ作品でマイケル・J・ポラードが出ているのは偶然ではない。
結局、チャコは悪い奴で、4人を麻薬でおかしくすると、バニーを犯してクレムの脚を撃ち、荷馬車を奪って去る。チャコを仲間にした時、それはそう、終わりのはじまりだったのだ。その後、仲間はひとりずつ人生に悲しい結末を付けてゆく。
青春映画にカテゴライズしたい誘惑に駆られるけれど、ジャンルに収まり切らない不思議な展開を見せるのがフルチで、たとえば突然、バニーは産気付く。たまたま居合わせたスタビーとは予てからの知り合い、牧師サリヴァン(アドルフォ・ラストレッティ)は、すぐ近くの町に連れて行こうと言う。「少し、変わった町だが・・・」
その町のどこが変わっているのかというと、男だけしかいないから。男の町。で、そんなところにバニーを運んでどうなる?と思ったら、子供が産まれてそりゃ町は大騒ぎさ。そんなことがないので。雪が降る中、ヤッター!と天に向かって銃を撃ち、ハットを放り投げて騒ぐムサ苦しい男たちは、なかなか絵になる。
あるいは、なんとさっき食ってメチャ美味かった肉は仲間の尻で、それが判明するシーンなどは、後のフルチを予言するようでもあった。
チャコを演じるトーマス・ミリアンは、数々のマカロニに出演しているマカロニスターだが、チャコを演じるに当たり、参考にしたのがチャールズ・マンソンだった。チャコの両目の下には十字架が描かれているのだが、それは獄中でマンソンが額にバッテンを入れていたことから着想されたという。言われればあっと言う間に4人に取り入り、意のままに操る彼はカリスマ教祖的なところがある。
ヒロインを演じたリン・フレデリックは、ピーター・セラーズの4人目の妻でセラーズを描いた『ライフ・イズ・コメディ!』(04年スティーヴン・ホプキンス)ではエミリア・フォックスが演じたが最終的に彼女の場面はカットされた。どういう人だったか知らないでいたのだが、朝日から出たマカロニコレクションの小冊子には驚くべき彼女の紹介がある。セラーズの遺産、日本円で約22億円を手にしたフレデリックは、その後、『フロスト×ニクソン』(07年ロン・ハワード)デヴィッド・フロストと再婚、82年に離婚するが、同年に発表されたセラーズの追悼作品『トレイル・オブ・ザ・ピンクパンサー』(82年ブレイク・エドワーズ)を訴え、4億円を獲得して話題となった。その同じ年、外科医と結婚して唯一の子を出産するが、91年、離婚。そして94年、ロサンジェルスの自宅で遺体となって発見されるのである。まだ39歳だったという。
話を映画に戻すと、ニューシネマの感覚があるのは既成曲が使用されているからということもある。フォーキーな楽曲を提供しているのはオランダのデュオ、グリーンフィールド&クック。まるで知らないアーティストだったけど(ウィキペディアによると、オランダのサイモン&ガーファンクルらしい)、「恋はウソつき」(71年)というシングルが日本でも発売されている。2枚のアルバムを残して74年に解散しているが、この映画には一体、どういう経緯で参加したのか。
残されたアルバムに本作で流れる曲は入っていないようだ。



※マカロニウエスタン傑作映画DVDコレクション22の小冊子と下記書籍を参考にしています。