gal_remake_taking_of
















『サブウェイ・パニック』(74年ジョセフ・サージェント)

ニューヨーク。地下鉄公安局のガーバー(ウォルター・マッソー)は、日本から来た同業者を案内していたらいつもと違う雰囲気なのだ。どしたん?ハイジャックされた!のは、ローカル線ペラム駅を発車した“123号”で17人の乗客と車掌がひとり人質になっているという。犯人からの要求は、小額紙幣で100万ドル。期限は1時間で、それを過ぎると1分毎にひとりずつ殺害する!早速ニューヨーク市長(リー・ウォレス)に事態は報告されるが、「市民を救えば人気が回復しますよ」ブレーンの言葉に市長は支払いを許可するが、その時、残り時間はすでに26分となっていた。「お役所仕事に時間が掛かるのはお前も知ってるだろ?少し時間を延ばしてくれないか?」ガーバーは無線を通じて犯人グループに頼むが、主犯格のブルー(ロバート・ショウ)は「ダメだ」と一蹴、「そんな殺生な・・・」「エッキション!」「お大事に!」ブルーの隣には鼻炎気味のグリーン(マーティン・バルサム)がいた。ところでブルーもグリーンも本名ではもちろんない。残りの一味はグレー(ヘクター・エリゾンド)とブラウン(アール・ハイマン)で、彼らは互いを色で呼び正体を隠しているのだったが、そのアイデアを強奪したのはクエンティン・タランティーノだった。

70年代の作品でタイトルに“パニック”が付いているのでパニック映画と思われるかも知れないが、というか思われるようにしたのだと思われる。つまりパニック映画のように思わせて客を呼ぼうとしたのだ(原題は『THE TAKING OF PELHAM ONE TWO THREE』)。そのくらい当時、パニック映画がウケていた証拠で、たとえばこれと同じ年に公開された作品だと、『大地震』(74年マーク・ロブソン)がある。

earthquake-1974-movie-11











そのタイトル通りに大地震が起きてパニックになる。本当の地震はこんなもんじゃない、という批判も当時、あったようだが、今の感覚でもそれなりによく出来ていると思う。古き良き特撮も味があってよいし、充分、迫力も感じられる。
実はこの映画にマッソーが出ている。酔っ払いの役で、酔っ払っているから大地震が起きても気付かない、という喜劇的役柄でカメオ的だが、マッソーはこの時、隣のスタジオで『フロント・ページ』(74年ビリー・ワイルダー)に出ていたのだが、ワイルダーがあまりにも粘るので全然、出番にならず、痺れを切らして、なんか役ないか?
そういえば『サブウェイ・パニック』にも酔っ払っていて気付かない人質のオバハンが出て来る。演じたのは30年代から映画に出ているルイーズ・ララビーで、『大地震』のマッソーの役名が“Drunk”だったのに対し、ララビーは“Alcoholic”だった。

DfeDIWNXkAA4OjD











飲んだくれつながりで続けると、『大地震』の主人公、建築家のチャールトン・ヘストンにはエヴァ・ガードナーの妻がいるが、これがまた飲んだくれだった。で、妻として愛せず、ジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの愛人がいる。ヘストンは地震が起こる前に妻とひと悶着あり、それがクライマックスの伏線になっているのだが、パニック映画にお決まりの流れでもある。やはり同じ年に作られたヘストン主演のパニック映画もまた冒頭で痴話喧嘩が行われて最後の伏線だった。

airport-1975-karen-black
















『エアポート'75』(74年ジャック・スマイト)でヘストンの操縦士は、カレン・ブラックの客室乗務員に結婚を迫られているのだが決断出来ずにいる、というのが冒頭。で、ブラックが乗った旅客機が心臓麻痺起こして操縦士失った自家用ビーチクラフト機にぶつかり機長は重傷を負い、ブラックが操縦桿を握ることになる。これを先取りしたのがドリス・デイ『影なき恐怖』(56年アンドリュー・L・ストーン)だったが、このブラックを見ていると、思い出すのは『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(84年スティーヴン・スピルバーグ)ケイト・キャプショーで、というのもインディ・ジョーンズ博士のモデルは『インカ王国の秘宝』(54年ジェリー・ホッパー)のヘストンと言われているのだ。
さて、『エアポート'75』にも、当然のように酔っ払いが出て来る。それはマーナ・ロイで、バーボンのビール割りを注文して「ボイラー・メイカー」と言われる。そう言うのは3人組の、やはり酔っ払いだが彼女には勝てない。で、そのダメな3人組のひとりを演じて『サブウェイ・パニック』にも出ているのがジェリー・スティラーで、『サブウェイ・パニック』で彼は刑事を演じてつまり、ほかのパニック映画で酔っ払いを演じていたふたりがハイジャック犯に挑む、というのが『サブウェイ・パニック』なんですね。
ちなみにこのジェリー・スティラーはベン・スティラーのお父さん。

pelham9











『サブウェイ・パニック』は、実際にニューヨーク市の地下鉄でロケされたが、当初、交通局は協力を拒否、というのも模倣犯を恐れたからで、しかしジョン・V・リンゼイ市長が介入して撮影許可されたがハイジャック保険が掛けられた。それが下りる事態にはならなかったが、『マネートレイン』(95年ジョセフ・ルーベン)公開時に模倣犯が出たことあり用心するに越したことはないのだろう。
原作(73年)は、『ジョニー・ハンサム』(89年ウォルター・ヒル)の原作者でもあるジョン・ゴーディ(『ジョニー・ハンサム』の原作『復讐の二つの顔』が発表されたのは72年で『サブウェイ・パニック』よりも早い)。しかし驚いたのは、エッキション!が原作にはないという話だから。本当に?どうやって終わんの?
エッキション!を考案したのは、ピーター・ストーンだという。ストーンは以前、『料理長殿、ご用心』(78年テッド・コッチェフ)のところでも紹介したが、主に犯罪映画を手掛けている作家で、特徴として喜劇的要素が挙げられる。だからこれはストーンなんだよ、と言われればそうだったのかと膝を打つところがあるが、マジで原作どう終わるのかあまりに不思議なのでまたチェックしたい。その結果も追記の形でこの記事に後日、書き加えたいと思います。
チェックしたい、といえば、『サブウェイ・パニック』を観る時は決まって吹き替え版なのだが、「お大事に」と富田耕生が言う言語は「Gesundheit」で「Bless You」ではない、ということを和田誠さんの『お楽しみはこれからだPART2』(76年)で知った。前者はドイツ語だが、現在では英語に取り入れられていて、どちらも「お大事に」という意味で使われているという。これも和田さんの本で知ったが、『5つの銅貨』(59年メルヴィン・シェイヴルソン)ダニー・ケイルイ・アームストロングの「聖者の行進」の掛け合いの中でケイが「ハチャトリアン!」と言うとサッチモがすかさず「Gesundheit」と言うのだ。
そんなわけで「聖者の行進」で終わる・・・わけないだろ。デヴィッド・シャイアのスコアが破格のカッコ良さなのに。



※下記書籍を参考にしています。