富士山麓の自然

富士山麓には、古くから「御厨(みくりや)」と呼ばれてきた地域があり、御殿場市、裾野市、小山町の一帯におよんでいます。そこには、日本の各地で絶滅危惧種に指定されている希少種が多数生息する貴重な自然が残されています。その一方で、気候変動の影響や開発、外来種の侵入などにより、年々変わりつつある「みくりや」の自然の現状も目にしています。この豊かな自然が長く保たれることを願いつつ、富士山麓の自然の生物多様性の一端をこのブログを通して記録していきます。

 モートンイトトンボの個体を多数確認することができました。湿地の環境を好むモートンイトトンボは生息域が限定的で個体数が激減している種の一つであり、全国41の都道府県で、全滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類、準絶滅危惧種、要注目種の扱いを受け、北海道と東京都ではすでに絶滅したとされています。今日確認できた個体数は10個体を超えていましたし、御殿場市では複数の生息場所が確認されています。モートンイトトンボは、環境の指標となる生物であり、イトトンボの仲間の中でもとりわけ小さいモートンイトトンボが御殿場市の環境の自然度の高さを証しています。

モートンイトトンボという名前は、ケネス・J・モートンというスコットランドの昆虫学者にちなんでいます。彼はトンボ目や脈翅目に特に興味を持っていました。彼のコレクションはスコットランド国立博物館に所蔵されています。 それらには、世界のトンボ、トビケラ、クサカゲロウなどの標本が含まれます。


次の写真はオスの個体です。
モートンイトトンボ♂DSCN6378

次の写真はメスです。橙黄色の体色は未成熟の個体であることを示していて、やがて全身が明るい黄緑色に変化していきます。
モートンイトトンボ♀DSCN6394


 御殿場市深沢でハラビロトンボ Lyriothemis pachygastra の黒色のオスの個体と出会いました。このあと青い粉をふき、腹部の色が変化します。


ハラビロトンボ♂DSCN6260

写真を撮っているとそこに未成熟なオスの個体が現れました。

ハラビロトンボ♀DSCN6268

 二者を比較するとオスの成熟度合いと体色の変化の関係がわかります。

 『トンボ王国』(杉村光俊)という本には次のような興味深い一編のエッセイが載っています。

 

ハーレム

 

トンボの雌は、目につきにくいものである。雄の方は縄張り占有やパトロールなどをするので、同じ場所にとどまったり、雌を求めてあちこちに姿を現わす習性がある。それだけ人間の目にもつきやすい。ところが、雌にはこの習性はない。水辺に姿を現わすのは、普通、産卵のためだけである。時間も短い。特にサナエトンボの仲間などは、唐突にやって来て、わずか数分で産卵をすませて飛び立っていくのが多い。雌と会うために、一頭の雄に見当をつけて長時間粘っても全く成果がないこともあって、「情けないやつだ!」などと、モテない雄についつい八つ当たりをしたくなったりもする。しかし、これも元をただせば、雌の生態がよくわかっていないためなのだが……。

 種類によっては、雌のいる場所がよく知られているものもある。モノサシトンボは、水辺から少し離れた木陰にいるし、シコクトゲオトンボは谷川沿いの林の下草で休んでいる。ハラビロトンボは、湿地のまわりの草原で若い成虫と一緒に生活している。普通、雌は、仲間の未熟な成虫が移動する場所で、共に生活していることが多いようである。

 四万十川沿いの電線には、オナガサナエの雌がよく休んでいる。たまに雄もいるが、圧倒的に雌で、九月に入ると朝から夕方まで止まっている様子は興味深い。この時期は、雌でもおばあさんばかり。若いうちは、近くの林にいて梢の先から下界を見下ろしている。

 

 「ハラビロトンボは、湿地のまわりの草原で若い成虫と一緒に生活している。普通、雌は、仲間の未熟な成虫が移動する場所で、共に生活していることが多いようである。」とありますが、この場所で観察を続ければ、メスの個体に会うこともできるかもしれません。
 

 ハラビロトンボは、北海道と千葉県で絶滅危惧Ⅰ類、青森県、茨城県、埼玉県で絶滅危惧Ⅱ類の指定を受け、東京都では絶滅危惧Ⅱ類となっています。隣県の神奈川県では、要注目種の扱いとなっています。

昨日までまだあまり咲いていなかったドクダミが今日はたくさん咲いていました。一足早く自然界の暦は6月に入ったのかもしれません。
ドクダミDSCN6193

マダラミバエの仲間に出会いました。ハエらしくないハエです。
マダラミバエDSCN6191

ベッコウがガンバも見つけました。ガガンボらしくないガガンボです。
ベッコウガガンボDSCN6189

次の画像は、2019年8月17日に富士山の1400メーチル地点で撮影したベッコウガガンボです。前の画像が標高約200メートル地点で撮ったものですので、生息域の標高差は1000メートルを超えることがわかります。
ベッコウガガンボDSCN4707

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