富士山麓の自然

富士山麓には、古くから「御厨(みくりや)」と呼ばれてきた地域があり、御殿場市、裾野市、小山町の一帯におよんでいます。そこには、日本の各地で絶滅危惧種に指定されている希少種が多数生息する貴重な自然が残されています。その一方で、気候変動の影響や開発、外来種の侵入などにより、年々変わりつつある「みくりや」の自然の現状も目にしています。この豊かな自然が長く保たれることを願いつつ、富士山麓の自然の生物多様性の一端をこのブログを通して記録していきます。

2018年12月

12月30日に富士山南麓の冬の自然を観察してきました。
途中で先ず大野原の広大さと美しさに目を奪われました。
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標高900mの地点で、夏の間、確認できなかったキビタキ用の巣の中を見てみました。
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中には巣材が残っていました。営巣の痕跡と思われます。
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次の画像は、同じ場所で2年前に撮ったキビタキの画像です。
キビタキIMG_2379

週末に向けて寒波が日本列島を襲うという報道が盛んになされています。この数日で富士山も大きく姿を変えるかもしれません。今日の富士山を記録しておきます。
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『日本のカモ 識別図鑑』(誠文堂新光社)というとても良い本と出会いました。
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この図鑑を読むと、カモの多くに個体変異と成長による変化が見られることがわかります。
次の画像は、12月8日に御殿場市東山湖に1個体だけ見られたホシハジロの写真です。この個体は目の脇に白い線が見られますが、これは成鳥のメスの特徴であることが図鑑の174ページを見るとわかります。
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クロスズメバチの写真を撮りました。
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クロスズメバチは地蜂とも言われ、
「地蜂とり」という風習が信州では広く行われてきました。JA長野県のホームページには地蜂とりについて次のように紹介されています。


「地蜂とり」とは、夏から秋にかけて、目印の真綿(最近では果物などについているスチロール)にエサであるカエル、川魚、イカ、エビなどをつけて、それを蜂にくわえさせ、オリンピックの優勝者でも敵わないような足取りで、足下がどうなっていようがおかまいなしで、野山で蜂を追いかけたり、蜂の飛んでいる姿を目を皿のようににして追いかけ、その巣を探しあて(スカシ)たりし、老いも若きも男たちが夢中になって、地蜂の巣を発見することをいいます。

「地蜂とり」は「スガレ追い」とも呼ばれ、井伏鱒二の随筆に「スガレ追い」という作品があります。この作品の中にクロスズメバチにはいくつかの種類があることが記されていますが、分類学的には、クロスズメバチとシダクロスズメバチが別種とされています。
こちらが今日、撮影した個体の頭部です。頭盾中央の黒帯が下縁まで達していないことからクロスズメバチであることがわかります。
クロスズメバチDSCN0172 - コピー

次は201466日に撮影した個体です。頭盾中央の黒帯が下縁まで達していることからシダクロスズメバチであることがわかります。
シダクロススメバチce0da62c-s - コピー

富士山北麓に行ってきました。
山中湖では多数の水鳥が見られました。
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こちらはヒドリガモのオスです。ヒドリガモは日本で最も普通に見られるカモ類の一つで、御殿場市の東山湖などにも飛来しています。
こちらはメスです。
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マガモの雌雄です。
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山中湖の次に忍野村の浅池に行ってみました。そこではヒメシャラの実を啄むカワラヒワを目にすることができました。久しぶりにカワラヒワの鈴のような美しい声を聞くことができました。
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12月9日に裾野市の景ケ島に行き、フタツメカワゲラ属の個体を採集しました。専門家のご教示によると、この属には既知種が4種と未記載種が4種、確認されているということです。どれも非常によく似ていて、幼虫での同定は属までが限界のようです。
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次はタニガワカゲロウ属です。こちらの属も種の同定は非常に困難ですが、専門家の方からはクロタニガワカゲロウではないかとご教示をいただきました。
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フタツメカワゲラやタニガワカゲロウを見ていると、まだまだ勉強しなくてはならないと強く思います。

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