富士山麓の自然

富士山麓には、古くから「御厨(みくりや)」と呼ばれてきた地域があり、御殿場市、裾野市、小山町の一帯におよんでいます。そこには、日本の各地で絶滅危惧種に指定されている希少種が多数生息する貴重な自然が残されています。その一方で、気候変動の影響や開発、外来種の侵入などにより、年々変わりつつある「みくりや」の自然の現状も目にしています。この豊かな自然が長く保たれることを願いつつ、富士山麓の自然の生物多様性の一端をこのブログを通して記録していきます。

2020年09月

9月13日にルリタテハの蛹化についての記事を載せました。
その時の蛹が昨日、2個体ほぼ同時に羽化しました。蛹化から羽化まで13日間かかったことになります。
ルリタテハP9262080
ルリタテハP9262091


922日にカワセミの写真を撮りました。このあと、このカワセミは魚をとらえて飲み込み、飛び去っていきました。


カワセミP9221815

 

『探鳥山ある記 富士山麓の野鳥』(高橋節蔵)には次のような一節があります。

去年5月、御殿場市東山の沢に、二男が見つけた巣を見にいったところ、がけの上の方の堅くなった部分の下の、やや軟らかい土層に巣穴があり、巣穴の下には尿酸で白くなった糞が多量にあった。後で巣の中を調べたら、カワセミが吐き出した魚の骨が、まるで美しい銀細工のように出てきたのには驚いた。

 

22日に見たカワセミが飲み込んだ魚もやがて銀細工へと変わっていくのかもしれません。

9月22日にタカネトンボの産卵と交尾行動を確認しました。
最初はメスが池の水面に産卵をしていました。

P9211869

そこにオスが激しくぶつかり、雌雄ともにからみあうようにして水没してしまいました。

P9211870

やがてオスは去り、メスは水上に浮いた状態となりました。
P9211877

しばらくは陸上にあげても動くことができませんでした。オスの接近は交尾行動の一環と見られますが、結果的にはメスの産卵の妨害ということになりました。
P9211884

タカネトンボには透明な翅の個体と色つきの個体がいますが、この個体は後者になります。

9月21日、富士山で初冠雪が記録されました。昨年は10月22日に初冠雪が見られ、例年より22日遅い記録でした。御殿場では朝の風が肌寒く感じられるようになってきました。

2020.09.21

913日にヨツスジトラカミキリの写真を撮りました。

ヨツスジトラカミキリP9131676 - コピー

ヨツスジトラカミキリは、西南日本の沿海地方、暖流の影響を受ける島々に多く生息する暖地性のカミキリムシとして知られています。御殿場では目にする機会があまりありません。体表の黒紋や体色には地理的な変異が見られ、「カミキリムシの地理的変異 ―ヨツスジトラカミキリー 」
(『昆虫と自然』200310月号)という論文は、奄美大島から沖縄島にかけての琉球列島中部でヨツスジトラカミキリの体色の暗化があり、その地域では、ヨツスジトラカミキリが擬態しているスズメバチ科のハチ類にも暗化の傾向が見られることを指摘しています。つまり、ヨツスジトラカミキリの地理的変異は、擬態しているハチの地理的変異に合わせた結果であると推定できるのです。

↑このページのトップヘ