人間とコンピューターとの戦い、と言うと
映画「ターミネーター」や「マトリックス」の、殺伐としたシーンを思い出します。

ただ本年1月14日に行われた、日本将棋連盟の会長 「米永邦雄 永世棋聖」と
何とも間抜けな名前に聞こえる、コンピューター将棋ソフト“ボンクラーズ”との対決
「電王戦」となれば、話は別です。

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結果は、ご承知のように113手で、ボンクラーズの勝利でした。

人間とコンピューターとの将棋対決は、人間優勢からコンピューター優位へと
いよいよ移りつつあるのかも知れません。

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この“ボンクラーズ”、富士通研究所の伊藤英紀氏が開発したもので、
「世界コンピューター将棋選手権」で優勝した将棋ソフトで
先輩将棋ソフト「ボナンザ」を、6台「クラスター接続」したことに由来する名前です。

ボンクラーズは、1秒間に1800万手を読むと言われるハイスペックで、
米長永世棋聖は、徹底して研究準備をして臨みましたが、ボンクラーズ側は
「米長さんだからと特別な準備はせず」、自然体で臨んだそうです。
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先手ボンクラーズの初手は、最も一般的な角道をあける▲7六歩
一方、後手 米長永世棋聖の2手目は、▽6二玉 えっ???
最初から、ボンクラーズを揺さぶる一手で、「研究の結果の最善手」とか。

その後、駒組が終わり四十手目あたりで、こう着状態に入った時の
ボンクラーズの指した手は、飛車を上下左右に右往左往させる「素人手」

ただ「手詰まりの時には、常識にとらわれず相手の出方を待つのも
 科学的には最適解だった可能性あり」、との判断が出されています。

一進一退の攻防で5時間が経過頃、米長永世棋聖の80手目でミスが生じ
この一手を見逃さずに攻勢にでた、ボンクラーズの一気の寄せには
「高速の寄せ」で有名な谷川九段でさえも、舌を巻いていました。

ボンクラーズなど将棋ソフトは、豊富な定跡データベースを駆使して
終盤は膨大な処理能力で手を読み、詰み筋に迫ります。

また各局面の有利不利を「評価関数」を利用して、常に分析しています。
評価関数の数字で、100は一歩程度有利、1000だと逆転できない大差
逆にマイナス数値の際は、同様の不利と判断します。

ボンクラーズの評価では、2手目で300以上、その後600近くまで上昇し
飛車を右往左往している時は低下し、100を切る状況だったそうです。

残念ながら、コンピューターに破れた米長永世棋聖ですが
次は、これまでの「電王戦」を、現役棋士と将棋ソフトによる5対5の戦いと、
まるでプロレスのドリームマッチのようです。

人間とコンピューターが戦うなら、こういった知的ゲームが望ましく
解説の渡辺竜王は、「まだ私の出番ではない」と威風堂々とした発言
そして、「右往左往も科学的には最適解」とは、深い言葉です。

準備段階から話題づくりに記者会見と、積極的に動き回った米長永世棋聖
日本将棋協会としては、米長会長に「一日の長」があったと私は考えます。