2009年03月

2009年03月04日

Change?

フェニックスに戻ってまいりました、、、でも来週はユタ州でロッキーマウンテン地域トーナメントがありますのでまた遠征、そのあとすぐ日本です!旅行用バッグを片付ける暇も意味もありません。

さて、USA Hockeyの大改革American Development Modelについて3回にわたって紹介してきましたが、Kさんより質問をいただきました。

> 試合数を制限する根拠はなんでしょうかね?
> オーバーワークは良くないと言うことかな?
> 肉体的にもコスト的にも。

まさにこの部分が父兄の間でも指導者の内部でも大問題として議論されているわけですが、これはそもそもADMの根幹にある選手育成理論「Long-term athlete development (LTAD)」に由来します。アスリートの長期にわたる健全な育成のためには練習と試合の比率をどのくらいにするのが理想なのか?世界的に長期にわたって仮説と実証を経た理論なのです。詳しい理由付けはUSA Hockeyの資料で論じられていますが、簡単に説明するならば

・トップレベルのホッケーの技術の習得には長期間のトレーニングが必要である。
・生理学的にもっとも技術習得が可能である若年期に実戦形式の試合ばかりしていると以下のような弊害が生まれる。

1.技術練習の時間が犠牲にされる。
「試合で上手くなる」なんて気軽に言われますが、基本的な技術を試合だけで上達させることはできません。技術をどう使うか?という部分については試合形式はもちろん有効です。しかし試合では結果が重視されるわけですから、高度な技術に挑戦して失敗するよりも、無難な技術で失敗なく切り抜けることに終始してしまいがちです。
子供が「生意気な技を使って失敗して怒られること」を恐れるようになったとき、スポーツの技術の発展は終わります。
1試合平均で1人の子供がプレーしている時間は平均8.5分にも満たないという驚愕の事実は過去に紹介した通りです。8.5分間無難なプレーをする試合のために1日を使うか、試合の比率を減らしてその代わり60分間みっちり技術の練習をするか?ゴールデンエイジの子供にどちらが重要か、おのずと答えは見えてきます。

2.結果至上主義に陥る
シーズンの中で、ある試合をどのように意味付けるかはコーチやプレーヤー次第ですが、誰が何と言おうと、スコアボードをつけて試合している以上、それぞれの試合の一番の目的は勝敗にあります。勝敗を論じないならばそれは競技スポーツではなくレクリエーションスポーツです(もちろんその価値は競技スポーツと同等かそれ以上に重要ですが)。
成長段階の子供の試合で狂ったように勝ち負けにこだわる姿は私も見ていて辟易しますが、コーチとしてベンチに立っているときはやはり勝たせるのが仕事の一部です。
子供のコーチも多くの場合勝ち負けで評価され、誰を育てたのか?ということで正当な評価が得られる制度はまれです。

*ヨーロッパの一部の国のサッカーでは育成した選手がプロ契約したときの契約金の一部がその子供を最初に受け持ったコーチに行く制度があるそうです。日本サッカー協会でも代表選手を若年期に育てたコーチを表彰する「ブルーペナント」制度を設けています。

ですから、少年ホッケーチームのコーチであっても、技術指導を徹底するべき年代の子供に無難なシステムばかり指導したり、ベンチ入りしている選手の半分も使わないで、なりふり構わず勝利を求める姿が洋の東西を問わず見かけられます。

学校でいうなら授業は練習であり、試験は試合です。授業なんて受けなくても試験をしていれば勉強ができるようになる、はずがありません。また、授業を受けるだけ受けたのに、試験で悪い点を取りそうだから、といって適宜試験を受けさせてくれなければ、実力の測りようがありません。

特に日本のようにメジャースポーツの野球ですら競技レベルを分けず、1回負けたらすべてが終わるあまりにも愚かなトーナメント制で試合をしていると、1回負けたらシーズンが終了してしまうわけですから、限られたメンバーで一戦必勝で挑むしかなくなります。それでもほとんどのチームが1回戦で20対0とかで負けるわけですから、そりゃ敗北を美談にでもしないと浮かばれません。

全然簡単に説明していない上にかなり横道に逸れてしまいましたが、練習数と試合数の比率を適切に保つことはアスリートの発展に欠かせない要素なのです。北米では基本的に試合数が多すぎて技術練習が疎かにされているので減らす方向に働きかけているわけですね。日本のように多くの地域で公式戦が少なすぎる国なら、全チーム一緒くたのトーナメントからレベル分けしたリーグ戦形式に移行して、どのチームも適切な試合数を確保できるようにするのが改革の方向かもしれませんね。

以上、終わってみればまったくの私見ばかりでしたが、一応回答になりましたでしょうか、、、?
それでは。