2011年02月

2011年02月11日

締め切り間近!

日本では全日本選手権もいよいよ準々決勝を迎えているようですね、、、思い出せば私がバックスのコーチだった頃、2005年には準々決勝で釧路厚生社と対戦して6-1で勝ち、2006年には東洋大学を6-0で下しています。

2006年にはプロホッケー現役引退の大会となったショーン・ポディーンも出場していましたが、彼は東洋大学との点差がついてきて力の差がはっきりすると、「これ以上俺をシフトしないで欲しい」と自ら申し出て残り時間普段出場機会の少ない若手に指示を送りながらベンチを温めていました。同じようなシーンはアジアリーグで中国チームと日本で対戦した際や、サーパス穴吹とのエキシビションゲームでも見られました。これは別にショーンのやる気がなくなったわけではなく、北米のスポーツ特有の、

「力量の差が明らかな試合では、ある程度以上点差がついたらそれ以上相手を痛めつけるようなプレーをしない」

というスポーツマンシップに基づいています。日本的には甲子園の地区予選のように、「強豪校に胸を借りた結果」50点差がついても強豪校が攻め手を緩めないところに対戦相手を尊重するスポーツマンシップを見いだしたりするのですが、こちらではその逆です。

これはプロ、アマチュアを問わず求められる精神で、子供の試合でも基本的に第2ピリオド終了時に6点差がついていると、そこからホイッスルが鳴っても時計を止めずにロス込みの試合が行なわれます。また、ほとんどのトーナメントでは1試合あたりの得失点差に限界値が設けられており、たとえ20-0で勝ってもその得失点はプラス6として扱われるようになっています。これは勝ち点が並んで順位決定が得失点差争いになったときに、弱いチームをどれだけ惨殺できたか?という勝負にならないように工夫されているわけです。

相手のレベルに関わらず常に全力で勝負すべきかどうか?は議論が分かれるところですが、そもそもこの北米的スポーツマンシップは、

「競技スポーツは、似たような実力と条件下での競り合いであり、明らかに勝負にならないような実力差で行なわれるべきではない」

という、ある意味とても健全な競技スポーツ哲学から生まれたと思われます。特に子供達のスポーツでは、どんな大会でも適切にレベル分けをして、全勝や全敗でシーズンを終わることがないように工夫されていますし、全試合大差で圧勝しそうなチームを編成すれば

「なんでレベルを上げて挑戦しようとしないの?全大会優勝したいから?」

と言われますし逆に大差で連敗が続くチームは

「レベルに合わないリーグでプレーすると他チームの迷惑になるから降格すべきだ」

と勧告されたりもします。もちろん何十年何100試合も戦っていれば、ごくまれに明らかに格下のチームが奇跡的な勝利をおさめたりもしますが、基本的にはレベルに差があるチーム同士の戦いから得る物は(胸を貸してもらったみたいな精神的な満足感はあるかもしれませんが実質は)双方共に少ない、という見解なのでしょう。そんなわけで、プロになって10数年で初めてという大学生との試合後に

「いやー、もちろん日本的な考え方とは違うと思うけど、、、これってどういう気持ちで、何点取るまでやるつもりなのかなーって思ってたよ、、、」

と試合後に話したショーンが印象的でした。


そんなショーン・ポディーンにホッケーを教えてもらえる「Smile&Dream Minnesota Hockey Camp 2011」参加者募集の締め切りが近づいてきましたよ。申し込みはお早めに!

それでは。

2011年02月02日

再会

少し前になりますが、私が師と仰ぐフランソワ・アレールと再会しました。

フランソワはNHLモントリオールでパトリック・ロワと共にスタンレーカップを2回獲得、アナハイムに移籍後はJ.S.ジゲールをスターゴーリーに育てて3度目のスタンレーカップを獲得、、、その他NHLの多くのゴーリーを育て、近代的なゴールテンディングスタイルを確立した第一人者です。また、この世の中に存在しなかった「専任ゴーリーコーチ」という職業を築いた人物でもあり、最近では「アシスタントコーチとして史上初めてホッケーの殿堂入りを果たすのではないか?」と噂されるほどの、ホッケー史上に残る指導者です。

私は非常に幸運にも、フランソワの元で10年以上、ゴールテンディングだけでなくコーチング、そしてホッケーのプロとしての生き方を学ぶことができました。フランソワに出会っていなければ今の私は間違いなく存在しなかったでしょう、、、フランソワの日本でのゴーリークリニックが行なわれなくなり、私も北米に拠点を移したりしてなかなか会える機会がなくなっていたのですが、フランソワが試合で近くの町まで来ることになったので、私の結婚報告と奥さんの紹介のために食事をすることになりました。
フランソワは最近ワークアウトにも励んでいるようで、2年前にあったときより締まった顔つきでした。

FA_Hiroki

お互いの近況報告も終わったところでフランソワに最近のNHLのゴーリー事情などについていろいろと聞いてみました。フランソワ曰く、

「近年のNHLでは高額なベテランのスターゴーリーたちのキャリアが残り少なくなってきたこともあって、GMたちが安くても使える若手のゴーリーを雇い、その代わりに優秀なDFに投資する傾向にある。これはもちろんスターゴーリーが入れ替わるサイクルの一部ではあるが、それでも一昔前には考えられなかったほど若手のゴーリーが伸びてきている。実際今の若いゴーリーたちは専門的なトレーニングを早くから積んでいるからプロに入る頃にはテクニック的に非常に完成された状態にある。だからNHLレベルに対応する時間が昔より格段に短くなってきている。特にヨーロッパから来るゴーリーたちは、以前は近代的なゴールテンディングの教育を受けていなかったが、最近ではゴールテンディング理論と教育で北米に追いついている。さらに身体能力のトレーニングについては以前から北米の上を行っていたので、即戦力のゴーリーが次々やってくる。ゴーリーの分野でも北米のトップ選手を凌駕するのは時間の問題だろう、、、」

また、モントリオール、アナハイムと二つの成功したフランチャイズを経た後、これまた北米ホッケー界で最大の歴史と影響力を持つトロントで働くことになったフランソワに、成功するフランチャイズの特徴を聞いてみたところ興味深い答えが返ってきました。

「成功するフランチャイズは、組織としてトップダウン式でコンパクトにまとまっていることが多い。成功していた頃のモントリオールがそうだったように、オーナー以下現場までが一つの目標に向かってまとまっている組織は成功しやすい。例えば初期のアナハイムはウォルト・ディズニーという超巨大企業の一部だったが、その結果誰が組織のどの部分に責任を持っているボスなのかということが現場に伝わり辛く、組織としての一体感に乏しかった。だから、アナハイムが強くなったのはディズニーを離れてからだ。ホッケー専門の会社組織になった後は、オーナーが常にゲームを視察しに来て「ボスは優勝を臨んでいるんだ!」という緊張感をGM以下の現場にもたらし、結果として組織が勝利に向かって敏速に動くようになった、、、」

なるほど、、、フランソワはコーチとして優秀なだけではなく、ホッケービジネスを生き抜く能力にも長けていた人です。その証拠に彼は25年のNHLコーチ人生で一度もクビになったことがありません。彼がモントリオールやアナハイムで長年教える間に、GMもヘッドコーチもアシスタントコーチもクビになりまくっているのに、フランソワだけは(当然実力もありますが)オーナーの信頼を経て組織にとどまり続けていたからです。そんなフランソワの言葉だけに非常に説得力があります。

彼が現在指導するトロントは長年の不振の後、カナダの超名門フランチャイズにアメリカ人のGM(ブライアン・バーク)とヘッドコーチ(ロン・ウィルソン)、さらには最大のライバルチームであるモントリオールで働いていたフレンチ・カナディアンのゴーリーコーチ(フランソワ・アレール)を雇ってチームを再建するという荒療治を施しています。

「去年来た時にはトップチームが不振だっただけではなく、ファームチームでまったく若手が育ってなくて引き上げようもなかった。それに比べれば今年はゴーリーも含めてやっと若手が育ってきている。まだまだ時間はかかるが、、、」

とのことですが、過去NHL2チームを優勝させたゴーリーを育てた名コーチの力で、数年後には見違えるようなチームになっている、かもしれませんね。

ちなみにフランソワは日本のクリニックの思い出というと、、、

「Karaoke」

だったそうで、、、未だに

「いやークリニックの最中は大声出し過ぎて夜のKaraokeの調子はイマイチだった(笑)」

と言い訳をしておりました。それはどーかな(笑)
それでは。