2011年10月

2011年10月16日

戦略

NHLも開幕してホッケーシーズン真っ盛りとなった今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
こちらでは連日NHL情報がいろんなメディアで詳しく報じられるのですが、ビックリするのは練習でのラインコンビネーション(レギュラーラインだけでなくパワープレーやキルプレーの組み合わせまで)なんかも報道されていることです。当然熱狂的なファンは各試合どのラインで得失点したかなど、下手すると選手より詳細に記憶しているようで、「この前の試合の2ピリ途中からパワープレーのセットが変わったみたいだけどどうして?」とかファンに訊かれて、そんなこと憶えてなかったというNHL選手の話も聞いた事があります。

確かにホッケーのラインコンビネーションや相手チームとのラインマッチングは、野球の打順や継投策、サッカーの選手交代など、いわゆる選手起用は、監督やコーチの「采配」として、一般的な感心を集めるものです。
ファンにとっては自分の贔屓にしている選手が出場し活躍しているかどうかが、チームの勝敗以上の関心事であったりするからです。

しかし指導者としては、選手起用だけでチームの勝敗を決めることが出来ると思い込むわけにはいけません。もちろん選手起用の妙で数々の修羅場を乗り切ってきた名指導者も数多くいます。練習や試合で選手のモチベーションを極限まで高めることで「実力以上」といわれる結果を出してきた指導者もいるでしょう。しかし成功した指導者はいずれも、実際フィールドの上でどのように攻守を戦うかという具体的なアイディアを持ち、それを説得力ある言葉でチームに浸透させている、もしくはそのような役割のアシスタントコーチと連動して指導しているものです。

チーム戦術は専門的な内容なのでインタビューなどで取り上げられる機会が少なく、一般的に報道されることが少ないので、ほとんどの場合実戦やビデオを観て詳細に分析するか、コーチクリニックなどでコーチ本人から話を聞かない限り知り得ないものですが、実戦では頻繁にラインチェンジを変えて「調子の良いライン」を見つけるよりも、攻守の戦術を一つ変えることで劇的な効果を得ることの方が大きいように私は思います。

私も最近試合の前に今まで使ってきたシステムを完全に捨てて、まったく新しいシステムにぶっつけ本番で挑戦したことがあります。3セットで回せることが前提で使ってきたアグレッシブなシステムが、怪我人など欠席者が多発した状態では一試合通して機能しないことが分かったからです。今まで熱く語ってきたシステムを、試合直前に放棄して新しいシステムの有用性を説くのは簡単なことではありませんが、ここは素直に今までのシステムがいかに間違っていたかを説明して「自分がいかに間違っていたか」ということをむしろ力説する方が信頼を得られるというのが不思議なところです。その試合では結局システムの変更が功を奏したのか快勝しましたが、このようなシステム(やラインの)変更の効果が劇的なのは最初の数試合だけだということも心すべきことです。

コーチングは結局のところ指導の一貫性と多様性・柔軟性のバランスで成り立つものです。自分の指導するグループの力を最大に引き出すことの出来る戦術を見つけ、一貫して取り組みながらも変化に応じて柔軟に変更と修正を加える、、、そのすべてに説得力を持たせてプレーヤーに付いてきてもらうためには、、、結局のところコミュニケーション能力が不可欠なのです。私は過去に「ハッタリが利く」といわれたことが少なからずありますが、おそらくコーチングにとっては褒め言葉なのだと勝手に信じて、これからも精進したいと思います。

それでは。

hockeylabjapan at 16:37|この記事のURLComments(3)TrackBack(0)

2011年10月03日

叱って伸ばす

まずはコメントへの返信から、、、

こーーさん>
アジアリーグでも海外のリーグでも挑戦するのであれば、しっかりと大学を卒業し、さらに英語など語学の勉強に努めることをお勧めします。せっかく大学に進学したのですからホッケー後のキャリアに備えて学位をとるのは当然のことです。私も大学院で体育学を修めていなければホッケーコーチとしての労働ビザの申請すらできませんでした。たとえ日本にあるアジアリーグのチームでプレーするとしても、外国人選手の多くは英語を話します。外国人コーチも普通は英語でコミュニケーションをとるでしょう。海外挑戦するならなおさらです。NHLに即戦力で雇われたとしても練習や試合で通訳がつくなんてことはほとんどありません。言葉が分からず練習の段取りが理解できずもたもたしているうちにトライアウトは終わってしまうこともありえます、、、
そして一番重要なことは、粘り強く、自分の力で扉を叩いて道を切り開くことです。特殊な職種の場合は特に、障害が一つあるとそこで諦めてしまう人たちがほとんどです。参考になる人の成功例すらない場合でも、自分で考えて前に進める人にしか成功のチャンスはないということを自分にも言い聞かせつつ、応援の言葉とさせていただきます。

ということで本題ですが、今回はコーチングにおける最も難しい局面、叱ることについてです。
「褒めて伸ばす」なんてことが言われはじめて久しい今日この頃ですが、褒める方も褒められる方もお互いポジティブな心境になるコーチングの局面は正にコーチ冥利に尽きる幸せであり、コーチも生徒も明日も練習に来たくなること必至です。しかし、現実はそんなに甘く無く、逆にどうしても叱ったり罰したりしなければならない局面で、どのように行動できるか?これこそコーチとしての真価が問われると私は思います。

先週私が指揮したバンタム(13-14歳)の試合、3ピリ残り3分、この試合に勝たなければ準決勝進出が絶たれるという場面で、私のチームの選手がファイティング(小競り合いじゃなくてグローブ取って殴り合う本格的なやつです)を始めてしまい、ゲームミスコンダクトペナルティ(これは相手と相殺)に加えてファイティングを始めた罰として2分間のペナルティを食らってしまいました。残り3分の内2分がキルプレーとなり、勝ち越しの望みがほとんど絶たれてしまい、そのまま試合は引き分けで終了しました。

私は負けた試合であっても声を荒げて怒ることはほとんど無いのですが(過去にはずいぶんありましたが、いろいろ経験して成長したんですよー、、、酷い目に遭った皆さんゴメンナサイ、、、)、この試合後のミーティングではそのファイティングをした子供に対してかなりの勢いで怒り、USA Hockeyから課される1試合の出場停止に加えてチームからさらに1試合の出場停止をその場で言い渡しました。子供でも大人でも感情的になって間違いを犯してしまうことはあることですので、チームの前でそれを責めるのはこちらも気持ちいいものではありません。もちろんその子本人や親御さんにとっても屈辱の出来事です。

しかしこれは明らかに「褒めて伸ばす」なんて綺麗事では解決できず、私が指導者として厳然とした態度で叱るべき三つの状況、

「lack of effort」(努力不足)
「lack of discipline」(規律不足)
「lack of respect」(敬意不足)

の一つ「lack of discipline」(規律不足)に当てはまります。ファイティングという行為自体がプロでは認められている(互いに5分のファイティングメジャーペナルティで終了です)国ではありますが、これはアマチュアの試合です。ファイティングの上にチームに決定的な不利益をもたらしたわけですから、ここで規律不足を見逃せば今後チーム全体に悪影響でもあるので、非常に厳しく対処させてもらいました。そして対処方法は簡潔にアイスタイムを奪うことが一番有効だと信じています。

私は常々、「アマチュアホッケーでコーチの与える罰則として意味があるのはアイスタイムだけだ」と思って指導をしています。試合でのパフォーマンス不足や規律違反に対する制裁は、最終的には、彼らがホッケーという活動をする定義であり意味である、練習や試合のアイスタイムを剥奪することでしか課することが出来ないものだと思います。なのでUSA Hockeyで定められた1試合以上の出場停止以上に、チームに対する規律違反と不利益をもたらしたと言う意味で、チームから1試合出場停止は十分妥当だと思います。

数日後、落ち着いた状態でその子と話すとずいぶんと反省している様子でした。過ちは誰にでも起こるものです。こちらもストレスの溜まる問題でしたが、これを機にホッケープレーヤーとして成長してくれれば、それこそコーチ冥利に尽きるというものです。

それでは。
hockeylabjapan at 15:39|この記事のURLComments(0)TrackBack(0)