2012年04月

2012年04月30日

アイスタイムの話:その2

ご無沙汰しておりました。
ミネソタでのキャンプの後、4/9より香港に来て指導をしております。1-2月の台湾に続いて、香港のホッケー事情を目にすることになりました。どちらも日本に比べてリンク事情や競技人口で遥かに劣る中、大きなビジョンを描いて競技ホッケーの発展に取り組む姿には感銘を受けます。
また、国際アイスホッケー連盟(IIHF)は、フィンランドのVierumakiに続き、中国はハルビンに国際ホッケートレーニングセンターを設立すると発表しており、いよいよアジアのホッケーマーケットの可能性が注目されていることが分かります。

しかし、日本でも常に問題になってきたことが、リンク事情と競技人口です。ホッケーはリンクと切り離せない競技ですから、その発展にはリンクの整備が欠かせません。ここ香港でも500人前後のホッケー人口がありながら競技が可能なサイズのリンクは一つしかありません。あとは小さめのリンクが二つ、、、いずれのリンクもショッピングモールの集客を目的として作られているため、アクセスは容易ではなく、ロッカールームやプレーヤーのベンチなど、競技に必要な設備も完備されていません。

日本はというと、アジアでダントツ、世界9位の20226人の登録競技人口を抱えながら、屋内リンクは99カ所しかなく(2011年IIHF調査)、ホッケープレーヤー204人に1カ所の屋内リンクしかありません。対するホッケー大国カナダは572411の登録人口に対して2486カ所の屋内リンクですから、230人に1カ所の屋内リンク、アメリカでは500579の登録人口で1800カ所の屋内リンクですから278人に対して1カ所の屋内リンク、、これではアイスタイムに差が付いて当然、、、ん???

いやいや、単純なデータだけなら日本の方が競技者に対するリンクの数が多いことになってしまいます。もちろんアメリカ、カナダには相当数の屋外リンクがありますが、とりあえず本格的な競技ホッケーの練習用というわけではないのでここでは別の話にしておきます。また、北米のリンクは一つの施設に2面リンクがあるのがほぼ標準ですので(8面なんてのもあります)、このIIHF統計がリンクの面数をカウントしたのか、それとも単純にリンク施設を一つとして数えたかによって、実際の競技人口に対するリンクの比率は大きく変わってきます。

しかし、スウェーデン(62003人/342カ所/181人に1リンク)、フィンランド(65251人/246カ所/265人に1リンク)、ロシア(63580人/340カ所/187人に1リンク)など、その他のホッケー大国の数字を考えると、約200-300人に1カ所の屋内リンクというのはホッケー先進国でもごく普通の値であり、日本はホッケー競技者に対するリンク数が少ない、わけではないのかもしれません。
(ちなみに、これまたホッケー大国のチェコは競技人口100668人に対して屋内リンク58カ所ですから、なんと競技者1736人に対してリンク1カ所と、無視出来ない数字になってきます。これはあきらかにリンク事情が悪い国でありながら、トップクラスの競技力を保っている事になります)

もちろん単純に「リンクの数=ホッケー利用の可能性」になるわけではありません。フィギュアやスピードスケート、カーリングや一般滑走などの利用者と競合しながらホッケーの枠を取っていくのは簡単なことではありません。これは北米の大都市でも同様の問題です。さらに、全てのチームが20人で練習や試合をしているわけではありません。競技人口200人の町に20人のチームが10チームではなく、10人のチームが20チームできてしまった場合リンクの競争率は2倍になります。

また、実際リンク使用可能枠があっても、毎日貸し切り出来るほどの経済力があるチームはユースレベルでほとんど存在しませんから、結局週2-3回、多くても4回が限界ということになります。これは、実は私が教えて来た北米の地域でも大差ありません。我々は「本場では子供達は毎日練習してプレーして、、、」という幻想を抱きがちですが、実のところシーズン中の練習時間は日本の多くの地域と大差ないものです。そして北米ではオフシーズンになるとホッケーをしない子供達も多いので、日本の都市部で通年ホッケーをしている子供達の方がリンクに乗っている時間が長かったりするかもしれないのです。いや、日本のリンクの貸し切り時間が基本1.5時間であるのに対して北米ではほとんど60-70分間なので、本当に日本の子供達の方が帯氷時間が長いかもしれません。あ、あと一般滑走でスケーティングの練習とか、日本以外ではほとんど見た事無いので、日本人はスケーティング上手くなるわけだと納得したりもします(笑)

私は主に北米とアジア圏でのホッケーを指導し、環境を観察してきましたが、少なくとも日本と韓国は、ホッケー大国と互角に戦える競技力を付けるには大変な時間がかかるにしても、主要なホッケー大国のリーグに、何人ものプレーヤーを送り込めるだけの競技人口と、競技施設はすでに持ち合わせていると確信しています。いや、そもそもホッケー人口やリンクの数だけが、ホッケーをメジャーにしたり、そこから優秀な選手を生み出すことにつながるわけではないと思い始めています。

先日、日本代表が世界選手権D1Aで争ったライバル国(イギリス、ハンガリー、オーストリア、ウクライナ、スロベニア)はいずれも日本の半分から10分の1の競技人口しか持ち合わせていませんが、競技力は互角ですし、オーストリア、スロベニア、ウクライナからはNHLレギュラー選手も生まれています。

カナダなど一部の例外を除き、そもそも世界中で競技資源が限られているこのスポーツの競技力を上げるためには、普及活動を行うだけでなく、育成方法をできるだけ効率化する必要があります。そしてリンク利用の効率化こそがその第一歩であることは、リンクなしに成り立たない競技特性からして当然です。(第二歩は当然コーチングです!)

次回は限られたリンクの効率的利用法について思うところを書く予定です、、、なるべく早めに書きます、、、たぶん、、、

それでは。