レオノール・フィニ −2日本の自然遺産展

2005年07月25日

フィリップス・コレクション展−2 鏡としての心象風景

(六本木ヒルズ 〜9/4)
印象派のあたりも充実した作品が続く。
特によかったのはコローの「ファルネーゼ庭園からの眺め、ローマ」。まぶしい太陽が古い建物を輝かせ、木々が心地よい木陰を作り、遠くには糸杉が並ぶ理想郷・・・、イタリアの乾いた空気と古代への憧憬が画面に充溢している。
一方、シスレーの「ルーヴシェンヌの雪」はウェットな世界、雪が降った日の心の華やぎや風景への親密な想いが伝わってくる。
ルノワールは普段はあまりお気に入りの画家とはいえないのだが、今回の「舟遊びの昼食」は人々のさんざめく声や川面を渡る風まで描いて見事。
ゴーギャン「ハム」は彼にしては珍しい題材の中に独特の色合いが響き合い、セザンヌ「自画像」は懐かしい旧友に出会ったような感じ。

ゴッホは3枚、それぞれが理想追求と挫折のアルル、内面に向き合うサン=レミ、死を前にしたオーヴェールを象徴するような作品。
アルルの公園の入り口」は、力強い色彩ときっぱりした構図が精神面の充実を示していて、アルル賛歌と言ってもいいような作品。これに対して、施設で療養中の間の作品である「道路工夫」では、全体を覆う黄色のトーンがただごとではなく、何かがわだかまっているような不吉さを感じた。
一番心に残ったのは最晩年の「オーヴェールの家」、その題名とは裏腹に画面の下8割くらいに麦畑が広がり、風のままに色づいた穂先を揺らせている。何の変哲もない風景、しかしゴッホは一体どのような思いでこの一面の麦畑を見つめていたかを思うと胸が痛む。わずかに描かれた空も遠くの木々も、全てが揺れ動いている中にあるオーヴェールの家はいかにも儚げだ。

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1. フィリップス・コレクション展  [ 青色通信 ]   2005年08月14日 17:21
フィリップス・コレクション展 2005年8月7日 森アーツセンターギャラリー(〜9月4日) 「アートの教科書」という副題はどうかと思ったのですが、確かにそれに見合う展覧会だったと思いました。絵画と絵画の間も程良い距離で見やいものとなっていました。 エル・グレコ.

この記事へのコメント

1. Posted by アイレ   2005年08月14日 18:38
こんにちは
遅ればせながら拙ブログもフィリップス・コレクション展の感想をアップしましたので、TBさせていただきました。
どれもが素晴らしい絵画ばかりでしたが、ルノワールは流石に秀逸でした。
それに小品ながらもシスレーの冬景色は心安らぐものでした。
ご指摘のゴッホですが、私は3作品全てにゴッホの危うさを感じ取ってしまいました。ゴッホ展で見たあのやわらかな黄色を使っているだけに、ゴッホの心の痛みのようなものを感じずにはいられませんでした。
2. Posted by hokuto77   2005年08月14日 23:42
画像が沢山あって楽しく拝見しました。
あのような展示の流れの中で、わずか3枚の作品から危うさや心の痛みを感じさせるのは、やはりゴッホの凄さなのでしょうね・・・

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