プラド美術館展−1 エル・グレコプラド美術館展−2 リベーラ

2006年03月29日

クレー −5 出会い

(大丸東京 3/5終了)
余談の続きだが、そういう割り切った説明のしにくい画家との出会いは難しい。それだけに、そこを境に嵌まり込んでしまうような運命的な出会いには感謝しなければならないと思う。
私の場合は、もう何年前かも忘れてしまったが、それは京都の何必館という美術館での展覧会だった。たしか月曜日に大阪近辺で用事があり、それなら前日に京都見物でもしようと日曜に京都に到着、しかし天気も悪くお寺巡りをする気もしないまま繁華街を歩いていて、たまたま入った珈琲屋で展覧会があることを知った。
何必館は四条通に面した小さな私設美術館で、小ぢんまりした各階の展示室を上り下りしながら、極めて親密な空気の中で一点一点のクレーに向き合うことが出来た。それまでも各種の展覧会で数点ずつは見ていたものの、これといった特色あるスタイルがある画家ではないためにはっきりした印象を持てずにいたが、ここで何の夾雑物もなく次々と現れるクレーの世界に浸っているうちに、そのイメージの広さ、豊かさにすっかり飲み込まれてしまったような気がした。
一点ずつが全く違う世界をもち、その都度遠く果てしないところまで連れて行かれ、それでも全体として幸福な調和が取れているような作品群。線の面白さ、色彩の微妙さ、そして意表をつくタイトルに想像力を刺激されながら、そのときの私は、たぶん夢遊病者のように、何必館の迷宮を経巡っていたのだろう。


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