メトロポリタン美術館−13 中世美術、リーメンシュナイダー目白バロック音楽祭−4、ザ・南蛮、そして雑感

2007年07月03日

永青文庫所蔵 白隠画の逸品−1 十界図 

(早稲田大学會津八一記念博物館 6/2終了)
永青文庫での”白隠和尚・禅僧の書画”展開催中に、そこから徒歩10分ほどの早稲田大学で、”永青文庫所蔵 白隠画の逸品”という展覧会をやっていた。
ここも最終日の訪問になったのは、麻疹で早大キャンパスがロックアウトされていたらしいからだが、もしそのまま会期切れを迎えたらどうなったのだろう。
こちらは全19点、比較的大判の有名な作品が多かったが、必ずしも大きいことが白隠画の魅力というわけでもないようだ。

十界図」、仏教的世界観の反映か、透明な玉座のようなところで観音が机に向かって巻物を持ち、それを取り巻く人物がそれぞれに楽しそうなのだが、見れば見るほど素晴らしく、同時にどうにも難解な絵。
しかし、まずそこを照らしている現実離れした光が美しく、そして”透明な岩”のようなものに囲まれた空間の神秘的な感じが見事に表現されていて、それをただ楽しめばいいのだという気もしてくる。
特に観音の背の白い円は澄み切った鏡のようでもあり、その向こうで天に通じているような奥深さもあり、まさしく白隠のみが描き得た仏界の奇跡のよう、所謂禅画とか高僧の揮毫といった趣を超えた、シュールレアリズムの世界でもある。

続く「一葉観音図」はハンモックのように葉の上に横たわって休む観音が、実に気持ちよさそうでいい。
しかし、この後に続く「楊柳観音」「物見山観音」「蓮池観音図」などは、大きな画面にしっかりした線で一見見栄えはするし、確かによく描き込まれているのだが、どういうわけか観音に生気がなく魅力が伝わってこない。
肝心の筆の勢いや内発性のようなものが感じられないのは、おそらく依頼に基づいて以前描いた図柄の中からテーマを選び仕上げたからなのだろうと思われる。このあたりは以前永青で見た「隻履達磨図」に近いものがあるようだ。
ただし、3枚の「蓮池観音図」の一番右にあった作品は、観音にふくよかな生気が戻り、画面全体の響き合いも強いように思われた。

hokuto77 at 23:08│Comments(0)TrackBack(0)日本絵画 

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