SHIBUYAで仏教美術-2 奈良博と出会う牧歌礼讃/楽園憧憬-2 ボーシャンの夢

2022年05月19日

スコットランド国立美術館 THE GREATS-1

(東京都美術館 〜7/3)
スコットランド国立美術館展のタイトルになぜ “THE GREATS 美の巨匠たち” とついているのか、訪れるまではその意図がよくわからなかったが、最初の章 “1.ルネサンス“ からそう呼んでいい名前が続いているものの、展示されているのは素描や未完ないしは”帰属”とされているものが多く、確かに本展は作品より作者の方を前面に押し出さざるを得なかったかと納得した。
それでも上質な素描には平凡な油彩をはるかに超える魅力があるのも事実で、ラファエロの 「“魚の聖母” のための習作」(1512-14)は、安定感ある構図の中に人物が確かな造形で再現されていて、意外にもミケランジェロによるシスティーナ礼拝堂のフレスコ画を思い出させる堅固さが感じられた。

ヴェロッキオ(帰属)「ラスキンの聖母(幼児キリストを礼拝する聖母)」(1470)は比較的大きめのテンペラ画、”帰属” の関係性も薄いものではなさそうに見える貴重な聖母子像だが、未完とは言わないまでももう少し手を入れる余地があるようにも思えた。
というのも、母マリアの着衣は丁寧に描き込まれているのに対し、肝心の聖母と幼子、そして背景の廃墟がかなり儚げに見えたからなのだが、背景はイエスの誕生で建物が崩壊したという奇跡を翳の薄さで表現したと理解すべきだろうか。
本作は ジョン・ラスキンが所蔵していたことから “ラスキンの聖母” と呼ばれているとのこと、そうした来歴を重視するところは東山御物などを珍重した我が日本に通じるようでもあり、もしかしたら周縁部の島国に特徴的なことかもしれないなどと思ったりした。

パルミジャニーノ、ティツィアーノ、ロレンツォ・ロットの名のもとに並んでいたのはいずれも素描、しかし エル・グレコの 「祝福するキリスト(世界の救い主)」(1600年頃)は “純度” が高そうな油彩の礼拝画だった。
若く見えるキリストの表情に生気と聖性を感じさせていたのは、確かにこの画家が得意としたハイライトの効果だけではないだろう。

hokuto77 at 19:30│Comments(0)西洋絵画(古典) 

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