2008年01月06日

ホンダレディ『World Record』インタビュー(1/2)

world record Hondaladyの新作『World Record』は彼らのキャリア中最もポップな作品に仕上がった。そして、その構造はかなり極端でユニークだ。

 カットアップを多用したことで、これまで以上にハイで多幸感に満ち溢れているサウンド。そして、制作時に日本のフォークを聴き込んでいたというマルの歌詞は、うだつの上がらない状況を言葉がはみ出るほど暑苦しくまくしたてていて、遂には死生観まで語りだしている。
 そしてこの二つの極端に膨れ上がったベクトルは、相反するものなのに、音楽としてひとつの器に収まることで、果てしなく歪で切ない快楽をもたらしてくれる。
 で、このやたら癖になる感じは何だろうと考えていたのだけど、思うに真心ブラザーズのそれに近いんじゃないかという結論に至った。

 Yo-Kingのフォーク直系の野暮で朴訥なヴォーカルと、やたらに洗練されたスマートな桜井のトラック。それが交わった時に生まれるどう聴いてみても噛み合ってないのにやたらと引っかかりのあるサウンド。それをダンス・ミュージックをベースにして表現してしまったのが『World Record』という作品なんじゃないか。で、それは間違いなくHondaladyがたどり着いたオリジナルの文法だ。

 個人的に打ちのめされたのは"リンジューサンバ"。これはマルの好きなユニコーンの"リンジューマーチ"をもじった曲で、未練たらたらながらも(←ここ重要)過去への惜別が描かれている曲だ。
 口笛を吹くような軽快なメロディーから「信じるものはもうなにもないさ」と歌い、跳ねるようなビートに突き動かされていくこの曲から、どんなにしんどい過去もこれから訪れる八方塞がりの現実にも、それなりにまあポジティヴにやっていきますよという、彼らのタチの悪いくらいしぶとくてタフな泣き笑いの精神が宿っていて、それが徹底的にジョイフルなビートに説得力を与えている。それはダンス・ミュージックがダンス・ミュージックであるための、ダンス・ミュージックがダンス・ミュージックで終わらないために必要なもの。つまり彼らはアーティストとして大きなジャンプアップを果たしたということなのだろう。
 先日の彼らのライヴは非常にタイトでエンターテインメント性に富んだ素晴らしいものだった。長い継続が彼らをここまで連れてきたとしたなら、なんだか現実もそんなに悪くないような気がする。
(インタビュー・佐藤譲

int_1●非常にシンプルでまとまりのあるポップな作品になりましたよね。

マル「まとまりは出たよね。寺田さんの力もデカいんじゃないかな」

Die「あの人、音のいらないの抜いちゃうし」

マル「勝手に作っちゃうからね。ヴォーカル素材とかデータを渡すと必ずひと加工されて返ってくる。尺とかも変わってる。だから新鮮だった。次どうなるんだろうっていうのを心待ちにしてた。レコーディングが終わってすぐに、またやりたいなと思うくらいね。あと音とかもライヴを重ねて試行錯誤した結果、シンプルにやろうと思ってて。ひとつの音色を太く鳴らそうってのがあったの。それは前作から意図していたことだったんだけど」

Die「でも、前作は頭でっかちになって、そこまでいかなくて、ライヴを繰り返していく内に吸収していく感じだったんだよね」

●今回はプロデューサーに寺田創一さんを起用してますけど、実際どの範囲までやってるんですか?

Die「もうリミックスみたいな感じだよね。で、寺田さんもプロデューサーとして人の曲をやるのがはじめてだから、最初は互いに探り探りやっていったんだ
けど」

マル「で、寺田さんってね、超器用なの。なんでもできるし、まず真正面に返ってこない(笑)。予想していないところにくる。それは狙い通りだし、色々いじってもらった方がよかった。だからレコーディングがすごく楽しかったんだよね」

●彼を起用した経緯は?

マル「俺らのラヴコール。ファンだったの。今回のゲストボーカルの森若さんもそうなんだけど、2人でやってると行き詰まりを感じるのよ。そつなくこなせちゃうんだよね。だから新しい風が入るといいなって」

Die「でも、今まで一緒にやるタイミングがなかったんだよね。俺が福岡にいるときDJで使ったりしてたくらい好きだったんだけど。で、知り合いになって、うちらは本気でお願いしていたんだけど、寺田さんは社交辞令だと思っていたらしくて。で、今回はレーベル的な問題があってさ」

マル「前作の『303』出したレーベルが解散したんですわ。うちらがそこのレーベルに入った意図ってそこのスタジオを使いたかったからっていう面もあるのね。だからスタジオがなくなって、どうしようかってなっちゃって。で、普通にスタジオでやってもいいけどお金もかかるし、それだったらホームスタジオでもいいんじゃないかって発想になって寺田さんにお願いしたんだよね。最初は録音の手伝いならって感じだったんだけど、その後共同プロデュースって形になった。で、そんな中年3人の楽しい感じがアルバムに出たんじゃないかな。だからポップになったんじゃない?」

●"リンジューサンバ"が代表的な感じだけど、今回はフォーキーな歌い回しにエレクトロが融合した楽曲が軸になってますよね。これは前の作品と大分違うよね。

マル「そうだね。前のアルバムは結構ロックっぽいアプローチが多かったし怒ってたからね。でも、詞に関して言えば前作"二十九、三十"が今作を引っ張ってるんだよね」

Die「前作から今作にかけて日本のフォークにマルがハマってたんだよね」

int_2●なんでまたフォークだったの? しかも日本の。

マル「リスナーとして響いたんだよね。というのもね、やっぱり絶望なんすわ。光がないんだよね。例えば5年後には状況はよくなっているんじゃないのって根拠のない期待を抱いてたんだけど、違うんだよ。それに歳を重ねるごとに憂いを抱いている訳ではないけど疲れるし……」

Die「階段も昇れないしね(笑)」

マル「フィジカルにも来るしね。で、アリーナやってるミュージシャンにはさそれって絶対分からない感情だとは思うんだよ。で、"二十九、三十"がフォークの影響を受けつつ先細りみたいなことを書いた詞だったんだけど、それをポップに消化することで普遍性を持たせようとしたの。それを暗く歌ったらしょうがないと思うし」

Die「まあ、ジゴロにハマる子みたいなもんだよね。本人は幸せに金を貢いでいる訳でしょ。でも、はたからみたら可哀想っていう。『World Record』って内容は救いようのないものなんだけどパッと聴きはポップなわけじゃん」

●ジゴロの例えはちと分かりにくいかも(笑)。でも、結果としてフォーク・ミーツ・エレクトロって今までにない感じだよね。

マル「ああ、そうね。今回はひとつのオリジナルになってるかな。成長したんだね。きっと。あのさ、僕がバンドをはじめたのと同じくらいにマンチェスターのムーヴメントがあって、ドラムマシーンでグルーヴ出るんだ! って感動があったんですよ。でもそれをおっかけても二番煎じでしかなくて。例えば奥田民生が好きで、民生と同じようなことをやっても民生は超えられない訳ですよ。民生を聴いてりゃいいわけだから。そうするとそこではないどこかへ行きたくなる訳ですよ。いわゆるダンス・ミュージックの手法は目的ではなくて、それをツールとしてどう発信していくかってことなんだと思う」

●なるほど。それでこういう不思議な組み合わせが出てきたと。

マル「そうそう。フィルターハウスでお洒落な感じなのに歌ってることがフォークでさ、オートチューンなのにコブシきかせてっていうのはとりあえず1人もやってなかったから。これだってなった。異なったふたつの要素がガチっとはまったのが"二十九、三十"でそれが大きかったしモチベーションになったと思う。その影響は今回のアルバムにあったし、そうした要素をシンプルにポップに打ち出せるようになったとは思う」

Die「あと歌詞をマルが考える訳じゃん。それを俺は一切考えずに意見を行ったりしているから音はポップなのかもしれない。俺はHondaladyの歌詞がどうとか言われてもよく分からないからね」

●実際ポップだったのは意識していたところだったんですか?

マル「そうだね。ワンフレーズのひっかかりってのは意識してた。『303』はレーベルが変わって強気になってて、ストロングスタイルな感じがあったんだよね。それが一周回ってポップになった。あと身の回りでポップな人に会ってたからね。ケラさんとかマグミさんとか電撃ネットワークのギュウゾウさんとか。そこからインスパイアされているところはあるかな」

int_3●あと今回は結構カットアップ/チョップを多用してますよね。ここら辺が寺田さんの仕事だったんですか?

マル「や、オートチューンやチョップはバンド側で使おうと思ってたの。で、寺田さんもそれをやるかなと思ったら意外とやらなかった」

Die「寺田さん曰く『オートチューンってヌーブラとかパットみたいなもんよ。それはそれでいいけどありのままのが好きな人もいるじゃないか』って。で、マルの声はそのままで刺さるから、ってことであまりいじらなかったみたいなんだよね」

マル「まあ、おっぱいがちっちゃくてもそのままでいいじゃないかと(笑)」

Die「声なり歌詞をしっかり聴かせた方がいいんじゃないかと。で、歌のバランス大きくしたりしたの。それは第三者の視点からね」

マル「評価されてるんだなと、じゃあそうしようってなって」

Die「まあ、時間があれば歌もチョップしたかったんだけどね。だから前作のマルの声をチョップして、それが意味を持っているように聴こえたりするように組んだのが"PROUDIA"とかその辺」

●チョップを多用してエレクトロな質感が強まったことで、結果として昨今のニューレイヴにもリンクするような音になってるよね。

マル「まあ、ニューレイヴ的なものはとっくにやっていたので、今さらみたいな部分はあるけどね。まあ、当時日の目は見なかった訳だけど」

Die「その辺のジレンマがないといったら嘘になるわけじゃん。だからより届けたいって気持ちが作品をポップにしたのかもしれないよね」

●実際ニューレイヴの音楽性をずっと前にやってきていたHondaladyとしては今のニューレイヴはどうなの?

Die「俺は正直実態が分からない。何を指しているのか。昔のレイヴ・フレーズを引っ張り出してみたりしているけど」

マル「俺らニューがつく前からレイヴ・ミュージックが好きだしな。」

Die「俺は本当にかっこいいと思っているから上がるよね。勘違いもしているかもしれないけど、自分に正直にかっこいいのを出しているつもりだしね」

マル「てゆーか日本人は本当は誰もレイヴを通過してないからね」

Die「そうそう。だから俺が思い描くレイヴの感覚を出しているんだよ。でもそれがニューレイヴってことなんじゃないの?」


ホンダレディ『World Record』インタビュー(2/2)

WORLD RECORD


hondalady at 14:16│ 雑談/ネタ