「殺し屋なんやで」

目の前に現れた関西弁の小倉唯ボイスの女性はそう自己紹介した。

ついに私を殺しに来たか。

そう思った。

私は麻雀が強くなりすぎた。

おかげでいろんな恨みを買った。

恐らく殺されても仕方がないのだ。

きっと私を殺すように頼んだのは…

『あの人』だろう。

私もいい加減疲れた。覚悟というか諦めはついている。


○○「わかりました。殺してください」

××「えぇっ!?違う違う!ちょっと待ってや!」

怜「私はアンタを殺しに来たんじゃないんや!」

○○「…」

咲「えぇっ!?」



咲「殺しの注文ですか…?」

怜「そうや。私はアンタを殺しに来たんやない」

怜「アンタから殺しの注文を貰いに来たんや」


咲「そ、そうですか…でも私、殺しの注文なんてありません」

怜「ほんまか…殺して欲しい人…おるやろ?」


咲「…っ」

咲「いません…」


咲「大体…もし殺すなら、どんな方法で殺すんですか?」

怜「なんや、興味あるんやん」

怜「私の殺しはな…」


怜「病死させるんや」


咲「ん?病死…?」

怜「そう病死。普通殺すのに銃や毒を使ったら、最後は足ついてバレてまうやろ」

怜「でも私は相手を病気にして、そのまま自然に不審を抱かれず病死させることができるんや」


咲「…」

咲「どうやって病気にさせるんですか?」

怜「それはなんというか…呪い殺すって奴やな」

咲「呪い殺す… あ…!」

怜「どや?私なら証拠を残さず完璧に殺すことができるんやで」

怜「ほら、例えば…」

怜「『あの人』…殺したいんやないか…?」

怜「恨みがあるんやないか…?」


咲「…」


咲「こ、殺し屋さん…」

咲「ありがとうございました!」ダッ

怜「あっ…!」

怜「行ってもうた…なんや、今回ははずしたかぁ…」



殺し屋さんと別れた後、私は『あの人』について徹底的に調べた。

そして『あの人』がとある大きな病院に入院していることを突き止めた。

『あの人』は重い病にかかっていた。恐らくもう治らないだろう。

しかしこの病気は殺し屋さんがかけたものではない。

だいたい、あの殺し屋さんには人に病気をかける力なんてない。

そもそも殺し屋ですらない。

あの殺し屋さんはここの病院関係者だろう。

そして病院内で不治の病にかかり、死期が近づいた患者が現れれば、

その患者のことを徹底的に調べ上げる。住所、恨みを持ってる人、商売敵など…

病気が治らないことは本人にも家族にも告げない。

後は調べたその患者に恨みを持っている人に出会い、殺しの注文を持ちかけ、

自分が病気にかけて殺したことにして多額の報酬を貰うのだ。


何故私がその殺し屋の手口を知ってるのか?


私、文学少女なので。

昔読んだ星新一の「殺し屋ですのよ」を思い出したので。


いずれにせよ『あの人』が死ぬ前に会えてよかった。

『あの人』は昔に比べてすっかり痩せてしまって

声もかすれてしまって

でも目の奥だけは、まだ変わってなかったように思う。

やっと「ごめんね」と言えた。

やっと氷が解けた。

やっと氷が解けたのに…

大事なものはどうして失くしてから気づくんだろう。




カン!

星新一の「殺し屋ですのよ」 と怜でした。

コメントから頂きました。

怜と咲さんに物騒な言葉言わせてごめんなさい。