吉田食堂、ドラマ好きですがなにか

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

民放に帰ってきた野島伸司〜石原さとみ主演・日テレ系新水曜ドラマ「高嶺の花」

ヒットメーカーの野島伸司が久しぶりにゴールデンタイムで7月から連ドラの脚本を担当する。日本テレビ系列の水曜22時枠「高嶺の花」。石原さとみ主演で、相手役には峯田和伸。石原は1月クールの「アンナチュラル」のヒットも記憶に新しいが、フジ系の「5時から9時まで」そして日テレ系の「校閲ガール」もそれぞれヒットを飛ばしており、女優陣の中でも数字を持っている。峯田はNHKの朝ドラ「ひよっこ」でヒロインの有村架純の叔父役で、個性的な印象をお茶の間に一気に浸透させた。そんな2人がラブストーリーを繰り広げるというのだ。相手役が峯田ということでラブコメか?と思いきや、ラブコメではないらしい。純愛エンターテイメントだそうだ。しかも脚本は野島伸司。何かが起きないわけがない。視聴者の興味は間違いなく惹きつけられているに違いない。

 野島伸司といえば、かつては脚本を担当した作品が社会現象を巻き起こしたり、賛否両論を生み出すなど、世間をざわつかせる作風が強烈だった。だからこそ、視聴者を毎回釘付けにしていた。だが時代の流れとともにテレビ界の規制が強くなったせいか、野島が持ち味とする人間の業や闇を深く描いた作品は徐々に敬遠され、差し障りのない作品の増加と共に、視聴者のドラマ離れも加速、視聴率も低迷の一途を辿っている。今ではどの枠でも10%以上、二桁を記録すれば及第点と言われるような時代となり、野島自身も地上波での登板はほぼ無くなり、現在は規制の少ない月額使用料が課される配信ドラマや、BS系での登板が目立つようになった。実際、彼が脚本を担当した配信ドラマ「雨が降ると君は優しい」はセックス依存症の妻と、その夫の苦悩を描いた久しぶりに野島らしい持ち味を活かした作品が好評だった。そんな野島が満を持して民放に帰ってくる。待ち遠しい。

 注目すべき点はもう一つ。石原さとみと峯田和伸という、美女と野獣コンビと謳われた2人に立ちはだかるキャラクターだ。石原扮する妹役の芳根京子と、彼らを翻弄していく華道家役の千葉雄大。両者とも近年めざましい活躍ぶりを見せていることは周知の事実。特に物語が展開するにつれて、石原扮する姉への嫉妬や敵意などを向けて追い詰めていく存在になるという、野島ワールドを彷彿とさせる役柄に挑む芳根に注目度は高い。
 野島伸司の脚本を彩ってきた女優陣と言えば、かつては桜井幸子や池脇千鶴、松本莉緒などが有名だろう。いずれも儚げで幸薄な魅力を放っていることが作品を際立たせてきた。そういう意味では、主演の石原さとみ以上に芳根京子の方が野島伸司の世界にはピタッとハマるようにも思える。今作の「高嶺の花」でカムバック成功を果たせば、野島作品の次回民放作品への期待も膨らむと同時に、芳根京子がかつての女優陣のように野島作品の常連となる可能性も高い。

いずれにせよ、「高嶺の花」が夏から始まるドラマの中でも期待値は大きいというわけだ。視聴者の心を引き寄せ、最後まで離さない野島伸司らしいインパクトをある作品を待っている。差し障りのない、誰でも書けそうな作品なら、野島伸司である必要はない。これぞ野島伸司…という作品であることを願っている。

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豊川悦司がこんなにもかわいくておもしろいおじさんを演じるなんて〜「半分、青い」

豊川悦司がこんなにもキュートなキャラクターだとは思わなかった。きっと私以外にも、思っている人は少なくないだろう。トレンディドラマ最盛期の頃、「この愛に生きて」や「この世の果て」などで徐々に頭角を現し、武田真治と兄弟役を演じた「NIGHT HEAD」で一気に知名度を上げた。そして彼がゴールデン枠初主演を務めたTBS系の「愛していると言ってくれ」。聴覚障害者を持った画家・榊晃次を演じ、ヒロイン役の常盤貴子と共に大ブレイク。DREAMS COME TRUEの主題歌「LOVE LOVE LOVE」も200万枚を超える大ヒットとなり、スマートな立ち振る舞いと顔立ちで一躍時の人となった。その後も愛する女性との逃避行を描いた「青い鳥」や、中山美穂と主演を務めた「Love story」など、恋愛モノでは欠かせない存在となっていった。だが昨今の民放連ドラはラブストーリーが減少傾向にあり、豊川の連ドラ出演もそれとともに少なくなった印象だった。むしろ最近は映画出演を多く務めており、「椿三十郎」「必殺剣鳥刺し」といった時代劇に挑戦したり、大竹しのぶ主演の「後妻業の女」では関西出身を惜しげもなく活かした商売人で新しい一面を覗かせていた。榮倉奈々との共演作「甥の一生」では、榮倉奈々の足を舐めるシーンを見せるなど、連ドラではあまり見せたことのなかった姿を表現をしているそんな豊川が久しぶりに地上波のドラマに出演しているのが、NHK朝の連続テレビ小説「半分、青い」だ。脚本は北川悦吏子。先述した「愛していると言ってくれ」「Love story」で豊川が主演を務めた脚本を務めいたのも、北川。まさに盟友であろう。

 「半分、青い」は、永野芽郁扮する楡野鈴愛が親元を離れ、漫画家、シングルマザーを経て、やがて一大発明を成し遂げるまでの半世紀を描く物語。豊川が演じているのはそんな彼女が上京するきっかけとなる人気少女漫画家・秋風羽織。見た目はジョンレノンを彷彿とさせるサングラスで長髪、かつて巷の女性たちを虜にした豊川のイメージとは完全に真逆で、とにかく偏屈で気難しい中年のおっさんなのだ。実際の豊川も大ブレイクした時期から20年経っているので、もちろんおっさんなのだが。しかしおっさん臭を微塵も感じさせないのは、彼の持つ華やかさからだろう。

 この、豊川演じる秋風羽織。自分の思い通りにならないと気が済まない。すぐに怒鳴ったりするが、一方で実は気が小さい。小姑のようにしつこく鈴愛を追い込んでいこうとするが、ちっともめげない鈴愛を見て、追い込みを失敗したときに情けない顔。あの豊川悦司がこんな顔をするだなんて…それだけでとにかくおかしくて面白い。秋風という偏屈だけど、ちょっと憎めないかわいらしさを兼ね備えたキャラクターは、豊川だからこそ面白く演じているのであろう。そんな彼のために秋風羽織というキャラを創り上げた北川悦吏子もさすが。昔から豊川のことをよく知っているからこそ、できる技ではなかろうか。

朝ドラがヒットする傾向として、ヒロインを盛り立てる個性的な面々が最大の要因とも言える。かつて「ごちそうさん」で杏をイビリ倒してブレイクしたキムラ緑子が良い例だ。今回の「半分、青い」も滝藤賢一、中村倫也、清野菜名、志尊淳といった演技派がすでに登場し、今後は斎藤工、間宮祥太朗、先述したキムラ緑子も登場するらしい。マネージャー役の井川遥も豊川に負けじとはっちゃけている。かつては主演で多くの視聴者たちを魅了してきた豊川悦司が個性的な役柄でヒロイン・永野芽郁を引き立て、そして「半分、青い」に強いインパクトを残していることは、改めて今後の彼の出演作でどんな姿を見せてくれるのか。楽しみで仕方がない。

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「花のち晴れ」は「花より男子」のプレッシャーを跳ね除けるか?

「花のち晴れ」は、4月スタート作品の中でも最もプレッシャーのかかったドラマであろう。それもそのはず。あの「花より男子」から10年後の時代を描いているというのだ。「花より男子」といえば、当時はまだ知名度としては浅かった井上真央主演で、F4メンバーに松本潤、小栗旬、松田翔太、阿部力の4人が扮して大ヒットとなり、続編と映画化に制作される人気ドラマとなった。主演の井上真央の知名度は浅かったと先述したが、実際のところ、嵐として人気を誇っていた松本以外は、まだブレイクには至っていなかった。小栗と松田はこの作品をきっかけに俳優としてランクアップしたと言っても過言ではない。松本も役者のみならず、主題歌が大ヒットし、嵐としても不動の地位を築く後押しをしたターニングポイントといっていいだろう。そんな誰もが記憶に残っている作品の続編というのだから、「花のち晴れ」は二番煎じだと揶揄され、ヒットしないと予想されるのも仕方ないのかもしれない。それが大ヒット作の続編の宿命だろう。裏を返せば、それだけ4月スタート作品の中でも注目度が高い作品ともいえるわけだ。

 主演は演技派女優といて名を馳せ、NHKの朝ドラ「とと姉ちゃん」でお茶の間の認知度が一気に浸透し、今作が連ドラ初主演となる杉咲花。相手役にはKing&Priceとして今春CDデビュー予定の平野紫躍、そして現在イケメン枠で映画やドラマに引っ張りだこの中川大志。この3人が主軸となり、ドラマが展開している。知名度としては、「花より男子」出演時点で松本潤のような大きな認知度を高い役者陣はいない。杉咲と中川は今現在、ポジションもヒロインや相手役など主役級・準主役級などを担うようになっているものの、誰もが顔を見て名前が浮かぶ俳優として、不動のポジションに至るまではまだ時間が必要だ。平野は映画初主演作「honey」でデビューしたものの、知名度としてはまだ低い。むしろ”キンプリ”としてのグループも「花のち晴れ」は全体的に「花より男子」に比べると、キャスティングに関しては地味目な印象を受けたのが率直な感想だ。

 「花より男子」の二番煎じだとか、キャストが地味だとか、プラスなこと以上にマイナスな要素の意見を受け止め、またプレッシャーを抱えてのスタートとなった「花のち晴れ」ではあるが、物語を見ていくと、そんな不安材料は打ち消される。杉咲演じる音と平野演じる神楽木の愉快で軽妙なやりとりのコミカルさを見ていると、「花より男子」の時の井上真央と松本潤の関係性を彷彿とさせる。一方で音と中川演じる天馬の相思相愛なのにもどかしさを感じさせる恋模様。そこに神楽木も入っての三角関係が勃発し、天馬の前では素直になれない音がゆっくり確実に神楽木にひかれていく様を、杉咲が丁寧に演じている。またそんな音を巡り、直情型で勝負を挑む神楽木を演じる平野と、クールかつ品格を保ちながらも音を愛し大切にする様を演じる中川。2人がタイプの違う男を熱演し、好演している。青春ドラマ特有のキラキラ感とテンポの良いコメディタッチ、それゆえに恋愛モードとなれば切なさが際立ち、宇多田ヒカルの「初恋」が切なさを倍増させる効果をもたらす。「花のち晴れ」は「花より男子」の二番煎じなどではない。見れば、そう言い切れる。

 そんな彼らをより引き立たせる周囲の大人たちも個性的だ。木南晴夏、滝藤賢一、志賀廣太郎、堀内敬子、高岡早紀、反町隆史、菊池桃子と、皆それぞれがハマり役。若人たちの成長を温かく見守る者もいれば、時に阻み、ひっかき回すキーパーソンとして立ちはだかる者もいる。1人でも圧倒的な存在感を放つ演技派たちなのに、錚々たるメンバーが揃った存在感はもはや無敵だろう。「花より男子」の時も、松嶋菜々子や加賀まりこ、加藤貴子に石野真子らがとにかくいい味を出していた。今回も同様のことがいえる。特に菊池桃子の天然な母親役はとにかくかわいらしく、杉咲演じる娘よりも精神年齢が子供のような母親で、これもまた強烈なインパクトを放っている。歳を重ねても美しく、お姫様のような可憐さを持つ菊池の力なのだろう。かつては多くの連ドラで主演作やヒロインを務めていた菊池桃子が、今では母親役が板についている。それも「花のち晴れ」での新たな発見と言っていい。そんな菊池の対極の存在として君臨するのが、高岡早紀。近年の高岡は必ずと言っていいほど、ヒロインを苦しめ
るラスボスのようなポジションとして出演している。それだけ彼女が各作品で欠かせないということなのだろう。見る者に爪痕を残していく。

 ここまで書き記して振り返ると、「花のち晴れ」がそれだけ中身がぎっしり詰まった作品だということがわかる。もちろん「花より男子」の二番煎じやキャストの地味さ、そんなイメージが一気に払拭されるわけではない。しかし主演の杉咲花、相手役の平野紫躍と中川大志ら、今後の日本を代表するであろうフレッシュな面々が繰り広げていく物語を毎週見ていると、「花より男子」を見ていた時のように、夢中になったことを思い出す。そこに松本潤や小栗旬らかつての出演者たちが友情出演して花を添えている。まさに百人力だろう。毎週火曜日は楽しみで仕方がない。

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スリリングな展開、そして出演者たちの濃さが売りの「モンテ・クリスト伯」

ディーンフジオカ主演の「モンテクリスト伯」が面白い。「巌窟王」という原作は読んだことないが、自分を地獄に突き落とした人物への復讐という物語はハラハラ感と同時に、ワクワク感を視聴者に植え付ける。序盤から拷問のシーンや劣悪環境な刑務所といったゴールデン枠でも酷な場面も多い中、腹に一物を抱えたキャラクターたちの探り合いなどが少しずつ見え始め、物語は加速しつつある。
 漁師の暖(ディーン)は、仕事も順調で、恋愛面では恋人のすみれ(山本美月)との結婚も決まり、幸せの絶頂にいた。だがそんな暖を妬む身近な男たち(大倉忠義、新井浩文)と警察の公安部(高橋克典)によって、不幸のどん底にたたき落とされる。死の淵から蘇った暖は、モンテクリスト真海と名を改め、15年の時を経て、再び彼らの前に姿を現す。自分の人生そのものを奪った男たちに、復讐するために…。

 ディーンフジオカといえば、やはりイメージが強いのは朝ドラ「あさが来た」での五代友厚だろう。波瑠演じるあさを仕事の面から大きくバックアップし、彼女が銀行、保険会社、そして日本初の女性大学校を作ることを後押しした度量の広い男性として認知度や好感度も急上昇。夫役の玉木宏と人気を二分するほどだった。そんな「あさが来た」と同時期に、深田恭子主演の「ダメな私に恋してください」では「あさが来た」の五代とは全く真逆なドS上司役で、さらに女性たちを虜にしている。爽やかな好青年というイメージを築いたディーンだが、今作ではその持ち味を封印し、静かに且つ不気味さを抱え、復讐に燃える男を演じている。目的のためには手段を選ばない…。そう言わんばかりの鋭い眼差しを向けつつ、人間味を失った表情からは、鳥肌モノの怖さを感じさせる。ディーンのにとって、新境地にふさわしい作品と言っていいだろう。

 またそんな作品を支えているのが、多彩な共演陣たち。復讐のターゲットとなる主要人物には、関ジャニ8の大倉忠義、演技派として定評のある新井浩文、そして近年は良き兄貴分や時代劇でも活躍が目立つ高橋克典。加えて新井の妻役に稲森いずみ、高橋の妻役に山口紗弥加、かつてディーンや新井の勤務していた漁業会社の跡継ぎ息子を高杉真宙、高橋の娘役に岸井ゆきの、大倉の秘書役には「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」の桜井ユキ、ディーンの秘書役として三浦誠己と、若手からベテランまで演技派がズラリと勢揃い。15年後を舞台に移してから登場人物も一気に増加し、物語も単なる復讐劇で片付けず、それぞれの過去や人間模様が交錯し、より深みのある骨太なドラマとなっている。さすが脚本の黒岩勉。伊藤英明主演の「僕のヤバい妻」で見せた二転三転する展開で、毎回ハラハラさせ興味を最後まで惹きつけた持ち運びは、今作「モンテクリスト伯」でも遺憾なく力を発揮していくことだろう。

 ディーンもさることながら、中でも曲者で注目なのが、やはり演技派の新井浩文。そして過去を抱える稲森いずみと山口紗弥加。この三人だろう。出演作で毎回スパイスを利かせ、物語を引っかき回す立ち位置を得意とする新井。今回もディーン扮する暖を陥れ、大倉・高橋と復讐のターゲットとなっている三人の中でも最も要注意人物。味方のふりしてあっさり裏切りそうな飄々とした立ち振る舞いはさすが。また何かやらかしてくれそうで、見る側をワクワクさせてくれるのが新井の力だろう。そしてそんな新井に関心を寄せてもらえず、孤独な日々を送る専業主婦・留美を演じているのが稲森。快活な女性を多く演じてきた彼女も今作では主演のディーン同様にこれまでのイメージを封印し、秘密の過去を抱えながら生きる孤独な女性を演じている。先週の放送で初登場したばかりだが、高橋克典との間に子供を授かった過去が明らかになったり、夫が熟睡している隙に複数の男と一夜を共にする行動など、多面性を持つ留美のインパクトは非常に強く記憶に残った。また稲森同様、先週から登場した山口も、今後物語でキーパーソンになるに違いない。高橋の後妻として君臨し、岸井ゆきの演じる前妻の娘とも良好な関係を築いているように見えるが、この女性も何か過去があり、企みを持っていると思わせるのは山口の存在感ゆえ。10代から長年ドラマや映画での出演を絶えることなく続け、いまや物語では欠かせないバイプレーヤーとして活躍する山口紗弥加。彼女が今回はどんな隠し球を持っているのか…早く見せてほしい。

 放送前は自身を不幸のどん底に突き落とした男たちへの復讐劇のみだと思われた「モンテクリスト伯」。だが蓋を開ければ一転、復讐劇に絡みつく人間模様と骨太な人間ドラマが描かれている。復讐劇の結末に救いの光はないに等しいだろうが、悲劇的な結末になるのか。はたまた少しは希望を感じられるのか。全ては黒岩脚本に委ねられている。

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「正義のセ」の立役者に、加藤正俊プロデューサーあり!

日本テレビ系列の水曜10時枠は、女性を主役にしたドラマを十八番としていることはこれまで何度か書いたことがある。現在は、吉高由里子主演の「正義のセ」が放送中。吉高演じる竹村凛々子が、検事としての仕事と日々向き合いながら、恋も含めて成長していくお仕事系ドラマである。この「正義のセ」をプロデュースしているのが、加藤正俊プロデューサー。日本テレビ系列で多くのヒットドラマを生み出した、いわばヒットメーカーだ。

 過去に加藤プロデューサーが手がけたドラマでヒットしたドラマは、代表的な作品だと仲間由紀恵主演の「ごくせん」。近年だと杏主演の「花咲舞が黙ってない」だろう。両作品とも続編が制作され、シリーズ化されている。そしてどちらも女性が主役で、勧善懲悪モノ。一話完結のスカッとした結末を毎回用意しており、脱落者や初めて見た途中参加の視聴者も楽しめる内容であることも大きい。そして加藤プロデューサーが手がける作風として最も顕著なのは、明るく前向きな雰囲気だ。決して重たい作品は前例がない。
 多くの作品を手がけると、様々な作品を手がけることの方が多いかもしれない。役者陣が幅広い演技力を求められるのと同時に、制作側も振り幅を実は求められているのかもしれない。一方で多彩なジャンルではなく、一貫して作風を変えることなく期待に応えている制作もあるということ。それを実践しているのが加藤プロデューサーだろう。

 彼が手がけてきた作品で先述した「ごくせん」「花咲舞が黙ってない」の二作品とも、教師と銀行員という職業ドラマではあるものの、そこに特化するのみならず、主人公の家族とのふれあいが必ず描かれており、時に物語の鍵となっていたりもする。今回の吉高由里子主演の「正義のセ」もそうだ。検事としての凛々子の視点から毎回事件の争点や関わる加害者、被害者の関わりを描く一方で、事件に行き詰まった際に凛々子が頼るのが父(生瀬勝久)・母(宮崎美子)・妹(広瀬アリス)の三人。家族の会話としてあーだこーだ言い合いながら、凛々子は何気ない会話の中で事件の糸口を見つけたり、落ち込んでいる時は励まされたり、時に口論となってぶつかりあったり…と、主人公にとって欠かせない存在となっているのが”家族”なのだ。これは「ごくせん」も「花咲舞が黙ってない」も同様。加藤プロデューサーの手がける作品は明るい作風と職業モノとして捉えられがちなのだが、実はそれらひっくるめて大枠で言えばホームドラマではないだろうか。TBSで貴島誠一郎氏と八木康夫氏、そして伊藤一尋氏という90年代からのTBSドラマ黄金期を築いた三人のヒットメーカーがいたが、彼らの作ってきた作品はラブストーリーやヒューマンドラマなど多岐に渡っていたが、それらドラマのほとんどがホームドラマをベースに置いた作品が多かったように思える。

 昨今、刑事ドラマや医療モノなど、原作モノも含めて職業を突き詰めた作品が手堅く視聴率を取得しやすいがために、多く制作される傾向にあるようだが、いつの時代もラブストーリーが求められているように、どこかホッとするような泣き笑いを描くホームドラマも必ずゴールデン枠で求められている。朝ドラとは別に。ゆえに、加藤正俊というプロデューサーがいることは、ある意味日本テレビでは強みといえよう。ブレない一貫性の作風で、これからも作り続けてほしい。本年度の春ドラマ「正義のセ」では職業&ホームドラマであるが、TBS系の「花のち晴れ」はラブ&ホームドラマだろう。「花のち晴れ」に関しては、また別の機会に…。

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新境地!あたふたする玉木宏〜「あなたには帰る家がある」

あんなにヒステリックで鬼の形相をする中谷美紀や、あんなにも無様に山の中をスーツ姿で逃げ回り、挙げ句泥まみれになる玉木宏をこれまで見たことがあっただろうか。中谷や玉木といえば、美形な顔立ちから汚れ役な立ち位置は少なかった。もちろん、悪役を演じていても、例外ではない。それが今演じている役では、ある意味人間味たっぷりに演じている。そんな2人が夫婦役で共演しているのがTBS系列の金曜ドラマ「あなたには帰る家がある」だ。

 娘の中学受験までは専業主婦だった中谷演じる真弓と、娘には甘いものの、家庭には非協力的な旦那・秀明を玉木。一方で亭主関白な夫・太郎をユースケサンタマリア、そんな夫に従順で控えめな妻を木村多江が演じている。そんな二組の夫婦が織りなす不倫ドラマが「あなたには帰る家がある」だ。

 体育会系出身で、勝ち気な真弓はこれまでおっとりして品性ある女性を多く演じてきた中谷とは真逆な役柄ゆえに、中谷がサッパリした女性を演じていることが新鮮に感じる。玉木もまた、これまで好感度の高い好青年や、朝ドラ「あさが来た」での良き夫の印象が強いだけに、不倫に溺れる男もまた新境地と言っていい。一方で玉木は「ウォーターボーイズ」や「のだめカンタービレ」など自身のブレイクのきっかけとなった作品では、惜しげもなく変顔を披露したり、体当たりな演技で三枚目ぶりを発揮していた経験があるだけに、今作ではそんな三枚目バージョンの玉木宏が大いに活かされている。浮気がバレていないかビクビクしたり、密会中を妻とニアミスしかけて山中を逃げ回ったり、逆上した妻にケチャップまみれにされたりと、「昼顔」のようなホラーチックでハラハラ感のある不倫ドラマというより、むしろコミカルに描かれている。玉木演じる秀明が不倫に対してさほど悪びれず、普段の生活に疲れ果て、久しぶりの恋を楽しむ様子が窺える。これは波瑠主演の「あなたのことはそれほど」にも通ずるところを感じる。「あなそれ」でも、波瑠が自身の不倫に対して罪悪感を抱かず、むしろ清々しいほどに不倫を貫く姿が潔くも見えた。今回の「あなたには帰る家がある」では、「あなそれ」ほどの清々しさはなく、玉木演じる秀明が妻の存在に怯えつつも、木村多江演じる綾子への恋心を止められないやるせなさや、誘惑に負ける男の情けなさなど…。誰がどう見てもカッコいい玉木宏が、とにかくカッコ悪く演じているところがまた見どころの一つだ。

 このドラマは、キャスティングが実にお見事と言っていい。主演として多大な存在感を放つ中谷美紀と旦那役の玉木宏、そしてそんな彼らの夫婦生活を壊そうとするユースケサンタマリアと木村多江という2人の演技派が立ちはだかる。この4人を集結させたことは非常に大きい。
近年は屈折した役柄で作品にスパイスを与える立ち位置にいるユースケは、今回もまた妻を日常的に無意識に追い詰めている旦那役。不気味な雰囲気を漂わせ、不穏な空気を放っているキーマンとして目が離せない。そして木村多江。この作品で最もハマり役と言っていいだろう。天然でおっとりとした母親役なども彼女の十八番ではあるが、控えめで儚く、幸薄な女性を演じると彼女の右に出る者はいない。今回はユースケ演じる旦那・太郎に遠慮しつつ、玉木演じる秀明との出会いを通して、これまでの鬱屈した胸の内を吐き出すように、女性として目覚めていく様子を、静かに美しく演じている。木村独特の佇まいが、艶っぽく妖しい魅力を引き立てている。

 先週の放送では不倫がバレてしまい、今週は中谷と木村の直接対決。修羅場な展開を早速迎えることになるが、まだ物語は序盤戦。玉木と木村があっさり別れるとも思えないし、ユースケ自身はまだ木村が不倫していることはおろか、その相手が玉木だということすら知らない。今後、不倫の事実をユースケが知った時、4人の関係がどう転がっていくのか。さらなるドロドロな展開が待ち受けているとは考えられる。かといって、「昼顔」のようなホラーな展開よりも、玉木のとほほな三枚目な役柄が活かされるような、クスッと笑える要素が盛り込まれることを少しは期待したい。ただでさえ、不倫ドラマは重たいことが目に見えているんだから。
しかしながら、玉木宏。中谷美紀と木村多江の間を右往左往。いやはや御苦労様です。

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嵐の二宮和也から、俳優・二宮和也へと変身した「ブラックペアン」

「持ってろよ!」研修医・世良役の竹内涼真を大声で叱り飛ばす外科医・渡海。演じるのは嵐の二宮和也。だがそこにいるのは、ニノの相性で親しまれる嵐の二宮和也は存在しなかった。まぎれもなく、俳優・二宮和也の姿だった。

 そんな二宮が数年ぶりに主演を務める「ブラックペアン」。「チームバチスタ」シリーズの海堂尊原作の医療エンターテイメントで、主演の二宮を始め、今大ブレイク中の竹内涼真、朝ドラ「わろてんか」でヒロインを務めた葵わかな、二宮の上司役に内野聖陽、対立する外科医の小泉孝太郎、その上司に市川猿之助と重厚感たっぷりな演技派が脇を固める一方で、ドラマ初出演となるフリーアナウンサーの加藤綾子や、久しぶりの連ドラ登板となる加藤浩次など、バラエティな顔ぶれも揃っている。役者陣の多彩さは「ブラックペアン」のプロデューサー・伊與田英徳の作品の特徴と言っていいだろう。前作「陸王」では松岡修造と桂雀々、「ルーズヴェルトゲーム」「下町ロケット」では立川談春と、普段役者としては見慣れない彼らを積極的に起用し、新たな一面を覗かせたことは非常に大きい。実際、立川談春は「ルーズヴェルトゲーム」に出演後、連ドラに限らず、映画出演なども果たして、大きく世界を広げている。
また小泉孝太郎も伊與田作品の「下町ロケット」では初の悪役に挑み、高い評価を得ている。彼が持つ品の良さも相まって、ほとんど善人の役を多く演じてきた小泉にとって、ターニングポイントになった作品だろう。今回も二宮と真っ向から対立する、いわば悪役的立ち位置。ザ!悪役…というよりも、敵か味方か…どっちに転がるかわからない不気味さのある、厄介な悪役が小泉にハマっている。彼の存在は非常に大きい。

 小泉孝太郎を始め、曲者揃いの役者陣の中でも、やはり主演の二宮和也は負けず劣らずの存在感を放っている。二宮は近年、映画主演が多く、連ドラ主演は「弱くても勝てます」以来4年ぶり。10代〜20代の頃は等身大の若者を投影するようなリアリティあふれる人物描写に定評があり、ジャニーズ屈指の演技派として名を馳せた。等身大の若者を演じることに長けた二宮も30代になり、若者を演じる機会が自然と少なくなってきた。そんな中での「ブラックペアン」は初の医師役ということで、うまくいけばかつての小泉孝太郎のように、二宮にとってもターニングポイントになる可能性を秘めた作品だ。二宮が演じる渡海は”オペ室の悪魔”と称される天才医師だが、医局からは煙たがられている人間性に難あり。これまで二宮が演じてきた等身大の若者たちも、決して真っ直ぐな人間ばかりではなかった。ヒットした「フリーター、家を買う」では、就職浪人になって意欲のない今時の若者・誠治を、母の鬱病をきっかけに仕事や周囲の人たちの関わりを経て、成長していく様を演じていた。真っ直ぐというより、どこか屈折した歪さを演じることで個性を活かしたところが、二宮らしさというべきか。今回の「ブラックペアン」でも、鋭い視線と眼力の強さから過去の因縁、そして闇を抱えた様を表現している。ゆえに彼の影響をダイレクトに受けることとなる研修医役の竹内涼真、看護師役の葵わかなのフレッシュかつ純粋さが際立っている。

 伊與田プロデュース作品は「半沢直樹」を筆頭に、人間ドラマの真骨頂を描いて、TBSの日曜劇場で看板的作品を多く残している。「ブラックペアン」もその看板の一つとなるか。一貫してブレない人間ドラマを世に送り出してきた伊與田作品X日曜劇場。相性の良いタッグに、俳優・二宮和也の新たな一歩が刻まれるに違いない。

 最後に…。ここ最近出演作が途切れない、注目の若手女優・趣里。水谷豊・伊藤蘭の娘としてデビューした当初は話題性だけで伸び悩んでいたものの、朝ドラ「とと姉ちゃん」以降からは停滞期を脱したように様々な役柄に挑んでいる。むしろ鼻っ柱が強めだったり、毒っ気のある役。「ブラックペアン」でも、二宮演じる渡海が信頼を寄せるクールな看護師役。彼女も含め、役者陣が個性をぶつけ合う姿もまた「ブラックペアン」の見どころの一つだ。

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「きみが心に棲みついた」の向井理、とにかく怖い!でもハマってる!

TBSの火曜ドラマ枠は、TBSの中でも個性的な作品で今最も話題性が高いと言っていい。火曜枠が新設された頃は視聴率に苦戦を強いられていたが、深田恭子主演の「ダメな私に恋してください」あたりから風向きが変わってきた。その後はこの枠始まって以来のヒットとなった「逃げるは恥だが役に立つ」や中毒性をもたらした「カルテット」に、視聴率が回を追うごとに上昇した「あなたのことはそれほど」そして宮藤官九郎脚本の「監獄のお姫さま」と、話題に事欠かない枠となっている。そんな火曜枠の流れを引き継いでいるのが、「きみが心に棲みついた」だ。NHKの朝ドラ「あさが来た」で注目され、その後途切れることなくドラマに出演して一気にブレイクを果たした吉岡里帆の民放連ドラ初主演作。

吉岡演じる小川今日子は、挙動不審な態度ゆえにキョドコとあだ名される下着メーカーの材料課に勤務するOL。そんな今日子が出会って心惹かれる雑誌編集者と、大学時代に依存していた先輩との間で心揺れる三角関係ラブホラー。

ラブストーリーといえば、ラブコメ、ラブサスペンスなどが多くを占める。今回のドラマはラブホラー。ホラーというジャンルがある意味新鮮であるものの、ホラーと謳っているからといって、別に幽霊やミイラ、ゾンビが毎回登場するわけではない。ゾクっとする怖さを作品の中に溶け込ませているのが今回の特徴なのだろう。そのホラー的役割を担っているのが、向井理。この星名、向井がとにかくハマっている。

向井が演じているのは今日子の大学時代の先輩で、表向きは物腰柔らかな好青年だが、本当の姿は高圧的で今日子の心を支配していた悪魔のような男・星名。絶対的な存在感を放ち、今日子や石橋杏奈演じる飯田を心理的に揺さぶりをかけ、巧みに操っていく。冷めた視線、ニヒルに微笑む口元、女たちを虜にすることで自分のテリトリーに取り込むことに長けた星名の悪魔っぷり。挙句、逆らう者には腕ずくでも従わせようとする怖さ。まさに彼の存在自体がホラーだと思わせる。「ゲゲゲの女房」で日本中から一躍認知され、好青年を演じることが多かった向井が今回はイメージとは真逆の役柄を体当たりで挑んでいる。

しかし向井理が今回のような悪役的立場を演じることは、初めてではない。ブレイク直前に出演していた水嶋ヒロと榮倉奈々主演の「メイちゃんの執事」では、水嶋演じるSランク執事の最大の敵となる執事・忍役でラストまで2人を追い詰めた。クールで頭脳明晰、手回しが早く毎回ピンチに陥らせるという役柄がこの時もハマっていた。執事の忍は少し浮世離れな世界観もあったが、今回の星名役はサラリーマンであるからこそのリアリティも映え、日常に潜む怖さをより表現している。

そんな向井に真っ向から挑んでいるのが、初主演の吉岡。「カルテット」の腹黒女や「ごめん、愛してる」での死にゆく男への純愛を貫く女性と、毎回演じる女性の役が異なり幅広い。そして今回の「きみが心に棲みついた」では、挙動不審で自己肯定感が極めて少ない卑屈なOL。だが一度スイッチが入ると止まらなくなる猪突猛進な一面もあるという、かわいらしさも持ち合わせた難役にトライしている。

吉岡演じる今日子が向井演じる星名の呪縛から解き放たれ、桐谷健太演じる吉崎との恋に邁進できるのか。まあ吉崎へのアプローチも暴走気味で前途多難ではありそうだが、この三角関係がどんな風に変化していくのか…。「きみが心に棲みついた」というタイトルからして、今日子が星名に依存しているだけではなく、星名が今日子に依存している意味もある。そして吉崎に今日子が"棲みついた"という意味も。やはり、タイトルの意味は深い。

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石原さとみと野木亜紀子の真骨頂「アンナチュラル」

野木亜紀子待望の新しいドラマ脚本が、早速話題となっている。一昨年、新垣結衣と星野源共演で話題となった「逃げるは恥だが役に立つ」の脚本を担当し、コミカルで小気味の良いテンポを保ちつつ、視聴者をやきもきさせるムズキュンな展開で一躍その名を世に知らしめた。そんな彼女が約1年ぶりに登板しているのが、石原さとみ主演の「アンナチュラル」。「逃げ恥」もさることながら、「重版出来!」や映画「図書館戦争」なども含めて原作ありきの脚本化がこれまで多かったが、今回は完全オリジナル作品。より野木の個性が活かされるというわけだ。

「アンナチュラル」は、不自然死の謎を究明する石原さとみ扮する三澄ミコトを中心に、井浦新、窪田正孝、市川実日子、松重豊らUDIラボのメンバーが真相解明に着手していくヒューマンミステリー。

初っ端から石原さとみが天丼を頬張るという、これまでの法医学ドラマではまず見たことのないシーンから「アンナチュラル」の方向性の確かさが見えた気がする。これまでの法医学ドラマといえば、案件に対する一話完結モノ。特にプライベート面などの側面は描くことはしない。しかし「アンナチュラル」では不自然死の真相究明を軸にしながらも、石原扮するミコトの家族や過去に秘められたパンドラの箱、井浦新と竜星涼扮する葬儀屋の謎めく関係、冷静に見えて実は暴走キャラな窪田正孝扮する医大生など、興味をそそられる要素がたっぷり詰まっている。それに加えて石原と市川実日子の黄色い女子トークがこのドラマのバランスをふんわりと持ち上げている。この2人の息の合った愉快な掛け合いもまた、野木作品の強みの一つであろう。

そして、何と言っても作品を重ねるたびに高まる石原さとみの魅力だ。デビュー当時から高い演技力を買われていた彼女だが、同じ事務所で年代も近いものの、早くからヒット作を量産していた綾瀬はるかとは少し差をつけられていた印象だ。だがドラマ、映画、舞台と主演や脇にこだわらず出演作を重ねた結果、松本潤主演の「失恋ショコラティエ」で小悪魔な紗江子役のどハマりっぷりで人気が爆発。小栗旬主演の「リッチマン・プアウーマン」や山下智久と共演した「5時から9時まで」といった男を惚れさせる役柄では右に出るものなしという武器を手に入れた一方で、プライベートとの境界線がないほどの明るいキャラクターがまたかわいらしく感じさせ、一気に視聴者を虜にしている。ゆえに役者次第で「アンナチュラル」の作品テーマ自体が狙い外れな重厚感をまとわりつかせてしまいかねないが、その重たい作品の空気感を丁度良いポップさを纏っているのも、野木亜紀子の脚本力とそれを活かす石原さとみの力であろう。

法医学の連ドラで今も尚伝説的に語り継がれているのが、深津絵里主演の「きらきらひかる」だ。深津を始め、鈴木京香、松雪泰子、小林聡美の4人が「アンナチュラル」同様、真相究明に挑む一話完結の物語であるが、毎回ラストで一仕事終えた4人が美味しい料理とお酒に舌鼓を打ちながら、あれこれ女子トークを繰り広げていたのが何とも印象に残っている。
現在、主演作が5作連続で視聴率を二桁キープするというヒットの立役者的存在となっている石原さとみと「逃げ恥」を大ヒットへと導いた脚本家の野木亜紀子。「きらきらひかる」から15年の時を経て、新たな法医学ドラマの扉を開こうとしている。

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「anone」は広瀬すず、初の代表作となるか⁉︎

連続ドラマでまず注目されるのは、大概が主演の役者。次に周りを固める脇役たち。そして主題歌。だが主演と肩を並べるくらいに脚本家が注目されることがある。かつては野島伸司、北川悦吏子が脚本を担当するとなればすぐに一面トップを飾っていた。そのくらいヒットメーカーだということだ。最近は三谷幸喜、宮藤官九郎、そして坂元裕二。坂元は広瀬すず主演、1月の水曜ドラマ「anone」の脚本を担当している。間違いなく今クールで最も注目度の高い作品の一つだ。

坂元はフジ系の「同・級・生」で脚本デビュー後、「東京ラブストーリー」でヒットを飛ばし、「二十歳の約束」など月9で数多くの作品を手がけてきた。だが彼の作品は王道のラブストーリーから一転して、近年は巧みな会話劇と濃密な人間ドラマを描いている。学校内の闇を描いた「わたしたちの教科書」がターニングポイントとなり、誘拐を通して偽りの母娘の絆を描いた「Mother」で鮮烈な印象を残した。以降「Woman」「それでも、生きてゆく」「最高の離婚」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」と、ヒューマン・ラブコメ・サスペンス…と、彼が脚本を担当する度にいずれの作品も大きな話題となっていた。そして今回の「anone」もまた、放送前から高い関心を持たれていた。10代の女優陣の中でもズバ抜けた存在感とスター性を放つ広瀬すずを主演に据え置き、「Mother」「Woman」と坂元作品の常連となっている田中裕子、それに加えて瑛太、小林聡美、阿部サダヲと個性的な演技派がズラリ。何かやらかしてくれるに違いないと、見る側は期待を抱かざるを得ない。

過去の出来事から周囲に不信感を抱くようになったハリカ(広瀬)と、彼女を気に掛ける亜乃音(田中)との出会いを軸に、人間模様が描かれる「anone」は、初回はハリカとネットカフェ暮らしする友人たちが大金を見つけたことから物語が展開していく。だが序盤はまだ謎だらけ。田中裕子が偽札を作る意図や、小林聡美がやたら命を絶ちたがろうとしたり、余命宣告されたカレー屋の主人役である阿部サダヲもまだ何かありそうな予感。瑛太に至っては初回のラストでゲームセンターで両替に手間取る意味深な1シーンの登場だけ。これから物語中心の5人がどう絡んでいくのか、どんな結末を迎えるのか。静かな序盤から中盤〜終盤にかけて急展開していくであろう坂元作品への期待感は高まることこの上ない。

そして何と言っても、主演の広瀬すず。彼女にとって連ドラ主演は華々しく初主演を飾った「学校のカイダン」以来。以降、連ドラではヒロイン役や映画にも数多く主演、そして脇でも出演し、初主演の頃以上に演技力も備え、その分注目度もより高まってきた。これまでは明朗快活な役柄が印象強めだったが、今回の「anone」では彼女の武器である笑顔を封印し、トーンも低め。悲しい過去を背負ったハリカを言葉少なめに繊細に体現している。
だが、まだ彼女にとって名刺代わりとなる代表作はない。高視聴率でヒットを飛ばせば必然的にその作品が代表作となるが、近年は数字が取りにくく、数字判断での代表作を掲げる例は少なくなってきている。いわば「anone」は広瀬にとって、大きなターニングポイントとなる作品と言ってもいいだろう。坂元裕二という話題性かつ質の高い脚本、田中裕子ら共演陣にも恵まれ、これ以上ない環境に恵まれている広瀬。来年にはNHKの朝ドラ100作目という記念作「夏空」も控えている。ますます上昇気流に乗ることが約束されている広瀬すず。まずは2018年度の「anone」を代表作として認められるか。全ては彼女次第であろう。

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