吉田食堂、ドラマ好きですがなにか

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

代表作に出会えた新垣結衣、代表作に恵まれそうな広瀬すず

この世の中に俳優は数え切れないほど存在する。その中で売れている役者はごく僅か。そして代表作を持つとなると、さらに限られる。

例を挙げると、新垣結衣。彼女は長瀬智也主演の「マイボスマイヒーロー」で初ヒロインを務め、このドラマが大ヒットしたことを皮切りに、一気に知名度を高めブレイク。映画で「恋空」「ハナミズキ」と主演を務め大ヒットに導いてきたが、ドラマでは主演としての代表作がなかった。ヒット作「コードブルー」は主演ではなく準主役的な女優一番手。主演作の「全開ガール」「空飛ぶ広報室」「掟上今日子の備忘録」などはいずれも安定した視聴率はあったものの、20%はおろか、15%以下の数字だった。及第点とはいえ、代表作とは言い難かった。だが昨年「逃げるは恥だが役に立つ」が最高視聴率20%超えを果たし、再ブレイク。新垣結衣にとって、連ドラとしての代表作と呼べる作品が誕生した。絶大な人気を誇る新垣でさえ、代表作に出会うまで女優デビューから10年以上も経過している。しかし一生出会えない人の方が圧倒的に多いわけだから、新垣結衣は間違いなく幸せだ。

そんな代表作と呼ばれる作品に、これから出会おうとしているのが広瀬すず。来年1月より坂元裕二脚本「anone」で主演が決まっている。彼女はすでに高い認知度を誇っているが、主演として代表作があるか…といえば、まだ誰もが知っている作品には出会えていない。映画は数多く出演しているものの、連ドラに関しては出演数も少なく、主演は初主演の「学校のカイダン」以来となる。来年度の「anone」に加え、再来年のNHK朝ドラ「夏空」のヒロインが決定している彼女。これらが当たれば、間違いなく広瀬すずにとって代表作となるに違いなく、そして女優としてもさらに頭一つ抜けることが予想される。実際、既に知名度のある有村架純は「ひよっこ」のヒットで代表作と呼べる作品に恵まれ、女優として一段ステージを上っただろう。それだけの期待高まる作品を広瀬すずに任せるということ、広瀬すずという女優の大きな可能性と逸材。「anone」は坂元裕二が脚本ということで放送前から話題性も高い。共演者も田中裕子、瑛太、小林聡美、阿部サダヲと演技派がズラリ。そしてNHKの朝ドラは、説明するまでもなく半年間、ほぼ毎日日本中の顔となる。作品とのめぐりあいは彼女が引き寄せた縁もある。それだけ広瀬すずが世間を惹きつける力がズバ抜けているということでもある。彼女が「anone」そして朝ドラを経た後、どうなっているのか。楽しみである。

醜い奴らの中、1人美しい愛情を貫いた阿部サダヲ〜「彼女がその名を知らない鳥たち」

「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」という個性的なツートップ作品を手掛けた白石和彌監督が初のラブストーリーを演出したことが最も気になった「彼女がその名を知らない鳥たち」。主演の蒼井優を始め、阿部サダヲ、松坂桃李、竹野内豊と豪華な顔ぶれ。4人で充分なくらいの重厚感あふれる物語を描け、しかもラブストーリーなのに共感度0%というんだから、ノーマルなラブストーリーではないことは明らかだろう。阿部サダヲのホームレスっぽい小汚い男が蒼井優に虐げられ、ストーカーのようにつきまとう予告からして、興味を惹きつけられる。

蒼井演じる十和子は、日中働きもせず阿部演じる陣治の家で居候しながら、彼の稼いだお金で時に遊び歩き生活していた。そんな十和子にゾッコン陣治は、罵声を浴びせられながらも、十和子のために懸命に働き、家事をこなし、一途な愛情を注いでいる。窒息しそうな陣治の重たい愛情を受け付けようとしない十和子はある日、クレームをつけた百貨店の時計売り場の責任者・水島(松坂桃李)と出会い、恋に落ちる。水島は昔交際していた黒崎(竹野内豊)に似た雰囲気があり、急速に惹かれていく。だがそんな折、黒崎が数年前から失踪しているという知らせが十和子の元に届く…。

とにかく登場人物が最低な奴らばかり。またそんな最低な奴らを演じる役者陣が巧くて強烈。男たちを手玉に取りつつ、不必要となれば虐げ毛嫌いする十和子の身勝手さを蒼井優が実に憎たらしく演じ、容姿はイケてるのに自身の立場が窮地に陥ると責任転嫁するゲスさを嫌味なく演じる松坂桃李、ワイルドさと優しさを兼ね備えながらも、保身のために女を捨て、そして利用しようとするズルさを色気たっぷりに見せた竹野内豊。
どいつもこいつも呆れるほどの醜さを放っていた中で、陣治役の阿部サダヲだけは唯一ブレないピュアさを貫いていたことが、取り分け際立っていた。どんなに虐げられ、どんなに罵倒されても、愛する十和子のために笑顔で尽くした陣治のストレートで不器用な愛情。決して美しくはないけど、愚直なまでに最後まで十和子を愛し抜く陣治を阿部が熱演している。ゆえにラストはきっと涙するに違いない。そして陣治というキャラクターは阿部サダヲが演じていることで成立していると証明している。松坂桃李や竹野内豊のようなスマートな役者が演じるより、阿部サダヲのような個性的かつ親近感のある役者が演じることで生活感のリアリティも生まれたことも大きい。

かつては名もなき端役を多く演じていたが、いつのまにか大河の主役に抜擢されるまでにお茶の間に広く浸透した阿部サダヲ。彼が演じたブレない愛情を貫く陣治同様、ブレない役者道を進んだ結果、いまや日本を代表する男優になったと言っても過言ではない。そして新たなラブストーリーを世に示した白石和彌監督。ダークな作品を多く世に送り出している一方で、今回のような男女の"愛"の物語を創り出してくれることを、今後も期待する。

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相変わらず"失敗しない"米倉涼子、でもそろそろ〜「ドクターX」

やはり今回のシリーズは米倉涼子が倒れた。まさかとは思っていたが…。前々回では岸部一徳、前作では内田有紀が病に倒れ、今回は大切な人が病に倒れるというネタは尽きている。米倉演じる大門未知子が病に冒される…みたいな展開じゃないと…と思っていたら、本当に予測通りになった。昨日の「ドクターX」予告で衝撃的な映像が映った。大門未知子が仰向けになって倒れていたのだ。これは一体…⁉︎

米倉涼子が「もうやりません!」と何度も宣言しては覆り、最新作でついに連ドラシリーズ5作目。だが視聴率は相変わらず20%を誇る人気ぶり。「私、失敗しないので」「いたしません!」のツートップ決め台詞は何度聞いても痛快で気持ちがいい。西田敏行を筆頭に遠藤憲一、段田安則、陣内孝則、草刈正雄と個性的かつ、濃い面々がズラリと並ぶ中でも抜群の存在感を放つ米倉は「ドクターX」とともに、女優としてのポジションを不動のモノにしてきたに違いない。だがここ数年、米倉は「ドクターX」しか出演していない。そろそろ別の作品で、別の米倉涼子を見てみたいのが本年でもあるし。米倉自身もそう思っているのではないだろうか。

元々、米倉涼子はモデル出身から女優へと転身を図った。連ドラ初出演の「恋の神様」を皮切りに、当初はラブストーリー系に多く出演していた。初主演も「整形美人」という恋愛モノ。それが今の「ドクターX」の枠で、松本清張シリーズの「黒革の手帖」でこれまでとは違った悪女役で新境地を図り、視聴率も好調で、女優として脱皮した。その後も「けものみち」「わるいやつら」と清張作品に軒並み出演し、「交渉人」「ナサケの女」などの縛られない"強い"女。特に「ドクターX」ではその"強さ"を備えた大門未知子を唯一無二の存在感で示し、好演している。

いずれにせよ、女優黎明期から看板作品をいくつも抱える女優へと成長した米倉涼子は、大門未知子というハマり役と出会ったことが世間の関心度をも動かしていることが、視聴率に繋がっていることは確かだ。しかし前述したが、やはり「ドクターX」とは違う別の米倉涼子も見てみたい。コメディエンヌでも、サスペンスでも、結構役柄は幅広くこなせるはず。このままじゃ、もったいない。それにしても、米倉扮する大門未知子さん。一体どんな病に倒れた⁉︎そして執刀医は誰⁉︎永山絢斗?田中圭?遠藤憲一?まさかの医師免許剥奪の岸部一徳か草刈正雄?皆で救っちゃう?これまでにないラストが待っているはず。お願いだから失敗しないで!

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宮藤官九郎と落語、ふたたび…〜「いだてん〜東京オリムピック噺〜」

「おんな城主直虎」もまもなく最終回。視聴率は芳しいとは言えないものの、内容は高評価で戦国時代の新しい見せ方を描いた作品といえる。森下桂子の脚本、お見事!と讃えたい。次作は鈴木亮平の「西郷どん」が控えているが、次作よりも再来年の大河ドラマの方が話題となっている。これはクドカン脚本が発表された時にも述べたことはあるが、キャスト発表でさらに拍車をかけたといえる。

中村勘九郎、阿部サダヲのダブル主演。大河ドラマをバトンリレーのように主演俳優が代わるのも珍しい傾向だ。さらに綾瀬はるか、生田斗真、竹野内豊、杉咲花、杉本哲太、ピエール瀧、大竹しのぶ、役所広司といったクドカン作品の常連から初めましての人まで多彩な役者陣がズラリ。そして今回はビートたけしが語り部役として噺家・古今亭志ん生役、その青年時代を森山未來、弟子を神木隆之介と第1弾出演者発表の勢いそのままに、さらにインパクトを与えた第2弾発表だった。

ここで感じたことは、宮藤官九郎は"落語"と深い縁があるようだ。遡ること12年前、長瀬智也と岡田准一のダブル主演「タイガー&ドラゴン」の脚本を務め、このドラマは落語にまつわる物語で、落語ブームの一端を担った。時を経て2年後、オリンピックの物語を語る手段として再びテーマとして選ばれた落語。時代の寵児と謳われるクドカンがいかに落語への関心を持ち、そして愛があるかを示している証ではないだろうか。

現在放送中の「監獄のお姫さま」でも、苦しい視聴率にブレることなくクドカンらしい世界を描いている。朝ドラ「あまちゃん」でもこれまでにない新鮮なインパクトを与えたことは人々の記憶に刻まれている。そんな宮藤官九郎がトライする大河ドラマ「いだてん」。すこぶる魅力的なキャスティングとテーマが密に絡み合い、これまでにない個性的な作品が生まれることを期待してやまない。一方で来年の大河ドラマ「西郷どん」の話題が…。先行発表は、時に諸刃の剣となるかもしれない。

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菅田将暉と桐谷健太で再び話題になる「火花」

「火花」は芥川賞受賞として、そして売れっ子芸人のピース・又吉直樹の処女作としても大きな話題を生みドラマ化、そして今回映画化に至った。菅田将暉、桐谷健太という演技力が伴ったブレイク街道まっしぐらな2人の俳優をダブル主演に据え置き、監督は近年俳優としてオファーの絶えない板尾創路と、公開前からさらに話題を呼んだ。

菅田演じる駆け出しの漫才師・徳永と、そんな徳永が心酔する桐谷演じる先輩芸人・神谷。売れるため、自身の面白さを世に知らせようと邁進する漫才師2人と、2人を取り巻く人々の漫才青春グラフィティが「火花」だ。

2人の漫才師が主人公なだけに、菅田と桐谷はもちろん劇中で漫才を披露している。漫才シーンだけではなく、飲み屋で交わす会話シーンでもボケとツッコミの掛け合いを繰り返し、漫才さながらの会話劇を展開。漫才文化と謳われている関西出身の2人だけあって、それぞれのコンビで息の合った漫才を見せている。さぞかし稽古を積んだことであろう。ボケては相手に振り、ボケにボケを重ねる桐谷と、対して激しく突っ込む菅田。徳永と神谷という彼らと等身大のようなキャラクターであることも、相乗効果を発揮している。
そして彼らの相方役である川谷修士は漫才師2丁拳銃のツッコミ、三浦誠己は心斎橋筋2丁目劇場育ちの元吉本芸人で2人とも漫才のプロ。特に川谷のツッコミは定評があり、漫才師としての技量の高さをスクリーンでも改めて見ることができる。また徳永が神谷に心酔すればするほど、すれ違い、距離が離れていく徳永と山下。そんなコンビのピリッとした空気感を、菅田と川谷が生み出している。
ヒリヒリ感ばかりではない。それだけではやはり疲れてしまう。そんな疲れをオアシスのような存在感で癒し役の立ち回りになる真樹を木村文乃が演じている。昨今は気が強めな役柄が続いていた木村だが、今作では笑いに身を投じる徳永と神谷を優しく見守る真樹を好演している。今まで見せたことのないような、木村史上No. 1な変顔をたくさん披露するなど、体当たりで演じる振り切った木村にも注目だ。

夢と焦燥感、そして限界…。"好きなだけでは飯は食えない"という現実を突きつけるある種の痛みを伴った作品だからこそ、芸人という喜びと絶望の表裏一体な世界を描いた「火花」は、芸人社会のリアリティがあふれているといえよう。ラストで菅田と桐谷が歌う「浅草キッド」が泣かせる。作詞と作曲はビートたけし。いい歌作るなぁ。

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浅野忠信と神木隆之介なしでは成立しない「刑事ゆがみ」

フジ系ドラマが今作いずれも視聴率に苦戦していることは、「民衆の敵」「明日の約束」でも述べたことだが、「明日の約束」は重たいテーマながらも視聴率に左右されず、迎合することなく丁寧に作品を我々に届けている。「刑事ゆがみ」もまた、視聴率では苦戦しているものの、これまでの刑事モノの中でも異彩を放った作品で好評を得ている。

「刑事ゆがみ」はオリジナルではなく漫画原作ありきのため、物語の筋書きや事件のチャプターに対する結末はある程度予測されるところがある。では原作モノを映像化して高評価を得ている大きな要因としては、やはり役者陣だよう。主演の浅野忠信、そしてバディ役の神木隆之介。彼らの全くアンバランスなようで、実は名コンビな空気感が「刑事ゆがみ」を創りあげている。

浅野忠信は今年1月、木村拓哉主演の「A LIFE〜愛しき人」で民放連ドラに約20年ぶりに出演を果たし、その怪演ぶりが大きな話題となったのは記憶に新しい。そんな浅野が連ドラで初主演を務めている「刑事ゆがみ」では、とにかくだらしなく私生活も適当で女好きという弓神役。前回の愛憎を秘めて苦悩する医師とは真逆の役柄だが、普段は飄々とした掴み所がないように見せながら、鋭い独特の観察眼でじわじわと犯罪者を追い詰めていくスタンス。でもどこか空気が抜けているようなキャラクターを浅野がナチュラルに演じている。

そんな浅野演じる弓神に翻弄され、反発しながらも、彼に少なからず影響を受けつつある若手刑事・羽生を演じているのが神木隆之介だ。子役時代から天才と謳われた神木も、いまやすっかり大人の役者に。10代前半までは純粋な少年を多く演じてきたが、10代後半〜20代に差し掛かると、心に闇を抱えたり、過去の傷を引きずっていたり、悪役やクセのある役柄を多く演じるようになり、完全に子役時のイメージを脱皮したといえる。今回演じている羽生も一見真面目なカタブツ刑事だが、実は人一倍出世欲の強い腹黒な青年…というんだから、浅野同様に神木も難易度の高い役柄に挑んでいる。

ボケとツッコミのような漫才さながらの掛け合いを浅野と神木が繰り広げつつ、事件の核心に着実に近づいていく様子と並行して、事件の被害者たちや罪を犯した犯人の悲しい動機なども注目点だ。また毎回豪華ゲストが事件の中心とっており、初回は杉咲花、その後も斎藤工や板谷由夏、早見あかりなどが出演していることも話題の一つだろう。クレジットになかったオダギリジョーが1シーンだけ出演したことも大きな話題を呼び、間違いなくラストに向けたキーマンである存在感を見せつけた。

1話完結で事件を解決してきた浅野と神木の凸凹コンビが、最終章に向けてどんなコンビネーションを見せてくれるのか。そして1シーン以降出演のない不気味なオダギリジョー。失声症の役でいまだ声一つ発しない山本美月の過去と、浅野がなぜ彼女にピッタリ寄り添っているのか。様々な謎がどんな結末を見せるのか。「刑事ゆがみ」らしい個性的なラストを期待する。

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前作同様、ブレることない真摯かつ丁寧な作風〜「コウノドリ」

今期は続編モノの作品が4作品。テレ朝系の「相棒」「科捜研の女」「ドクターX」といずれも高視聴率を誇る看板ドラマだ。そしてもう一つは、TBS系の「コウノドリ」。前作で産婦人科医と助産師、看護師たち、そして妊娠・出産に関わる家族の物語をシリアスかつ心温まる作風で反響を呼んだことは記憶に新しい。その続編が2年ぶりに放送中で、今作も前作同様に丁寧な作り方で心に響く作品を届けている。

今回の「コウノドリ」は前作の妊婦たちや家族たちの物語に加え、院内スタッフによりフォーカスを当てているように思える。初回は育児ノイローゼから自ら命を絶った患者に対する自責の念をひきずった綾野剛演じるサクラ、先週は亡くなった患者に寄り添い過ぎたがゆえに、医師としての行き場を失った松岡茉優演じる下屋、最新話では病に倒れ、子宮全摘という究極の選択を迫られた吉田羊演じる小松など、患者を救う立場の医師や助産師たちが悩み、迷い、傷つき、そしてまた立ち上がる姿が描かれている。次週は自信過剰になり始めつつある坂口健太郎演じる白川と、父の病気に自身の医師としての指針を見つめ直そうとする星野源演じる四宮の2人に焦点が当てられる。
悩みの尽きない彼らが自身の問題を抱えながらも、全力で出産に取り組もうとする妊婦たちの前ではそんな不安な表情を微塵も見せることなく救おうとする姿は、とにかく真摯な向き合い方でプロフェッショナルなのだ。それは「コウノドリ」という作品自体が前作も踏まえ、真摯な姿勢で作品と向き合い、視聴者に届けようとする思いの詰まった作品であるからだろう。単なる感動作としてキャッチコピーをあらかじめ掲げて押し付けがましく御涙頂戴的な作品とは違い、妊娠・出産にまつわる厳しさや予測不能な事態、起こりうる喜びと表裏一体の悲劇を描いているからゆえに、見る者は心を動かされ、落涙する。

そして何と言っても、役者たち。主演の綾野剛を始め、松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、江口のりこ、星野源、大森南朋といったチームペルソナの面々が創り出すバランスが最高だからこそ、「コウノドリ」は続編製作に至ったわけだ。特に悪役やフランケンシュタインといった特異的な作品の多い綾野剛にとって、鴻鳥サクラというキャラクターは綾野史上最も心優しく繊細で、尚且つ芯の強い人間だろう。その対極にいるのが星野源演じる四宮。星野もまた普段コントやトーク番組などで見せる明るく伸び伸びした姿を封印し、役者モードでは抑えた陰の役柄が多い。ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」でも、根暗だが真面目で誠実…という役だった。そんな役がハマる星野もまた稀有な存在といえよう。綾野と星野、松岡と坂口、吉田と江口、そんな彼らをそっと見守る大森。そう考えると、ペルソナは"家族"のようなチームなのだろう。

「コウノドリ」は今後も困難に立ち向かいながらも、最強のペルソナメンバーたちがスクラムを組んで乗り越えていくのだろう。その先に待つ悲しみ、そして喜びをこれからも我々に届けてくれるに違いない。

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綾瀬はるかと日テレ水10枠の相性抜群〜「奥様は、取り扱い注意」

役者とテレビ局、そして放送枠の相性は視聴率に繋がる要因の一つかもしれない。いい例が草剛。彼は民法連ドラ単独初主演を果たした「いいひと」以降、「僕の生きる道」などの"道"シリーズや「銭の戦争」「嘘の戦争」といった"戦争シリーズなど、関テレ制作のフジ系でヒット作を飛ばしている。また視聴率もさることながら、彼の場合は記憶に残る作品が非常に多いということも役者として稀有な存在といえよう。彼と似たタイプとしては、前述した「僕の生きる道」にも出演していた綾瀬はるか。彼女は日テレ水10枠と相性がいい。「ホタルノヒカリ」で単独初主演を果たして以降、同ドラマの続編や「今日、会社休みます」など…彼女の特性を活かしたラブコメがハマり、彼女の人気を不動のものとし、出世作へと導いた枠だ。そして現在放送中の「奥様は、取り扱い注意」も好評だ。

しかし「奥様は、取り扱い注意」は綾瀬がこれまで水10枠で出演してきた作品とは一線を画す内容だ。綾瀬扮する菜美は結婚しており、ラブがほとんど皆無。ちょいちょい旦那役の西島秀俊とのお惚気シーンも出てくるが、そこがメインではない。御近所のセレブ主婦たちが抱える問題を鮮やかかつ、爽快で痛快に解決していく。驚くべきことは、綾瀬の身体能力。巷のイメージだと、天然でかわいらしい愛され女優…というのが大半だろうが、今回は誰もが抱く"綾瀬はるか"像を封印して、逞しくてカッコいい綾瀬を見ることができる。アクションモノを多く手掛ける金城一紀の作品だけあって、主演の綾瀬はとにかく毎回呆気にとられるほどのアクションシーンをこなしている。「八重の桜」や「精霊の守り人」などでも実証済みではあるものの、改めて綾瀬はるかのアクション能力の高さには感心させられる。それだけに留まらず、戦闘シーンを終えたら「気持ちよかったー!」とぬいぐるみを抱きながら至福の笑顔を見せる姿は、誰もが知る女優・綾瀬はるかの表情を垣間見ることができ、ふふっとつい微笑みたくなる。

またこのドラマの配役バランスが絶妙だ。綾瀬の主婦友を演じている広末涼子は長女のようなお姉さん的存在、本田翼はどこか世間知らずな末っ子、綾瀬はその中間を取り持つという3人の女優陣がドラマでうまく機能している。一方で、旦那役の西島秀俊の不気味さったらない。もちろん誠実な雰囲気を初回から醸し出しているものの、回を重ねるごとに不穏な動きが目立ち、最新の回では冷徹な表情も見せるなど、怪しさ100%。敵か味方か…というのも興味深いところではある。そして西島以上に怖い存在なのが、中盤から登場した玉山鉄二。ラスボスにふさわしいくらいの鋭い目付きで存在感を放っている。企みと憎悪をたぎらせながら分厚いステーキ肉を食らう姿は、これまで見せたことのない玉山鉄二の悪役像を生み出している。怖い怖い。スマートで紳士的な玉山鉄二、どこ行ったー⁉︎

1話完結で華麗に御近所の問題を解決してきた綾瀬はるかだが、今後は広末や本田ら、そして自身も窮地に陥る場面が用意されているとのこと。西島秀俊と玉山鉄二、彼らにどんな謎が仕掛けられているのかも大いに気になるところだが、いずれにせよ最終的にはハッピーエンドで締めくくって、綾瀬らしい最高に愛らしい笑顔のエンディングを待ち望んでいる。

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低視聴率ながらも評価の高い火曜9時の関テレ制作枠〜「明日の約束」

視聴率が「民衆の敵」と同じ程度の苦戦を強いられているのが、火曜9時の「明日の約束」だが、この作品は前者と違って、評価は高い。大河ドラマ「花燃ゆ」で主演を務めて以降、初の民放登板となった井上真央主演。「花より男子」以降、朝ドラの「おひさま」や映画、舞台と活躍の場を広げてきた井上は、今作ではスクールカウンセラーとして生徒や教師たちを含め、学校の問題に一つ一つ向き合いながら、自身の抱える"闇"とも一歩前に進もうとする姿を、これまでとは違った抑えた演技で好演している。大人な表情を見せながら、毒親からの抑圧を強いられてきた過去があるゆえに時折見せる複雑な表情など、いくつもの顔を見せており、井上真央が改めて演技派として階段を上ったといえるだろう。

そんな井上扮する日向を筆頭に、日向の右腕でありながらも不審な動きが目立つ及川光博、日向の婚約者で早逝した兄との確執を根深く抱える工藤阿須加、自殺した高校生・圭吾と幼馴染で物語のキーパーソンになっている佐久間由衣、いまだに日向を縛り付けるヒステリックな母親役の手塚理美、圭吾に向ける過剰すぎる愛情が暴走していることに無意識な母親役の仲間由紀恵…といったように、若手とベテランも含め、一筋縄ではいかない面々が毎話演技合戦を繰り広げ、腹の探り合いをしている様子はある意味緊張感を創り出している。そんな個性派な役者たちが勢揃いしている中でも、井上真央のポジションがブレておらず、彼女の抑えた表現が脇役たちをより際立たせている。

また物語も興味深い。1人の高校生の自殺がきっかけとなり、学校の問題や高校生の家庭環境、そして毒親の存在…。主要キャラクターたち全員が抱える秘密など、まだまだ明かされていないことが一つずつ紐解かれていく様子もミステリアスで、回を追うごとに注目度が高まっている。

フジ系で唯一、関テレ制作の火曜枠。オリジナル作品も数多く、評価も毎回高い。この枠と相性のいい草剛は、昔から記憶に残るドラマをいくつま生み出して主演を務めてきたのは周知の事実だ。次回作は亀梨和也主演の復讐劇で、これも完全オリジナル作品。オリジナリティにこだわる作風で魅了する火曜枠。低視聴率な作品もあれど、高い評価をいくつも得ている証を胸に、ブレることなく今後も多くの興味深い作品を創られることを切に願う。きっと視聴者にはその思いは届くはずだから。

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月9の復活はそう簡単ではない〜「民衆の敵」

月9復活とは簡単にいかないものだ。夏ドラマの「コードブルー」が久しぶりにヒットを飛ばしたものの、現在の「民衆の敵」はうまく次に繋げないようだ。そもそも「コードブルー」は続編という固定ファンもおり、それに加えて山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香などの7年前からさらに人気や地位を確立した俳優陣の力も大きいだろう。特に新垣結衣は「逃げるは恥だが役に立つ」のヒットで再度ブレイクを果たして波に乗っている。それに乗じてヒット歴のある「コードブルー」は安定感があった。ゆえに今作の「民衆の敵」は、ある意味月9の真価が問われた作品とも言える。

だが初回から視聴率は10%を一度も超えることなく、低空飛行だ。篠原涼子を主演に据え置き、高橋一生・石田ゆり子と男女で最も咲き誇っている最強の役者を配したものの、この結果…。痛すぎる。初回で一桁ということは、物語の責任ではない。局のプロモーション不足、いやそれ以前に視聴者に「これは見たい!」と思わせるドラマではなかったのか…。

「anego」「ハケンの品格」「アンフェア」「ラストシンデレラ」とヒット作を連発した篠原涼子。この作品はいずれもカッコよくて同性に絶大な共感を呼んでいた。今作はどうだろうか。市民の目線に立った市議…という役柄を通して見れば、作り方によってはこれまでのようにカッコよくて痛快な物語もできたはず。だが今回はうまく機能していない。市議になろうと思い立った動機が"高年収"で儲かりそうだった。そりゃもちろん、そういう動機がいけないとは言わない。けれど篠原演じる佐藤智子は主役なのだ。安易すぎるだろ…と、見ていて思ったのか率直な感想。リアリティを求めることも大切な一方で、ドラマらしいフィクションとうまく融合はできなかったのだろうか。せめて子供の保育園事情や家族の財政難を通して、自分が市議になって、同じような境遇の人たちを助けたい!…みたいな動機であれば、少しはマシだったはず。放送日が解散総選挙の影響で一週遅れになったことが躓く一つの要因と言われているが、1話の市議になるきっかけで躓いたことは否めない。

役者を活かせていない使い方は、篠原のみならず高橋一生にも言えることだ。どこか陰のある役柄で、闇を抱えた青年…というのが彼の十八番。昨今では嫌われ者としての役割を担った「おんな城主直虎」の小野政次や、理屈っぽいビオラ奏者を演じた「カルテット」での家森などが彼の認知度を広く高めた役柄だろう。今回の二世議員・藤堂誠はどうだろうか。もちろん高橋が演じているだけに、何かやらかしてくれるんだろう…とこちらは期待して見ている。議員の顔と、遊び人の裏の顔。両方を巧みに演じているのは高橋らしいが、本当に高橋一生は必要だったのだろうか。今最もブレイクしているから起用しただけ…という理由も浮かんでしまうのは、ワタクシだけではないだろう。

役者ありきで物語が構成されるドラマが増えており(特にジャニーズ系)、物語の面白さが半減しているこの時代。フジ系月9は一体どこに向かっているのだろうか。来年は芳根京子主演の「海月姫」が決まっている。能年玲奈と菅田将暉共演ですでに映画化された作品だ。比較対象この上ない。オリジナルでもない。本来は長瀬智也主演の「フラジャイル」だったらしいが、身重な武井咲の降板事情などで放送延期したのだろう。でも枠は埋めなきゃいけない。伝統の月9枠だ。「もうこれでいいんじゃね?」と付け焼き刃で決まったのが「海月姫」か。なんか悲しいね。役者も作品も枠もすべて。降板でドラマ自体が吹っ飛び、寄せ集めしたのが今年1月西内まりや主演の「突然ですが、明日結婚します」だったろうに。1年後に再び同じ過ちを繰り返すことになった月9。伝統の枠が泣いてるよ。また来年の夏にでも「コードブルー」に助けてもらうか?映画公開前、先行として。

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