吉田食堂、ドラマ好きですがなにか

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

モンスター母を演じる斉藤由貴の強烈さ「お母さん、娘をやめていいですか」

再ブレイクとの声をよく耳にする。
斉藤由貴だ。
結婚と出産を経て、しばらくは育児に専念していたこともあり、ドラマ出演などは抑えていたが、最近は子供たちが少し手を離れたこともあるのか、ドラマ出演が途切れない。しかも一作ごとにインパクトを残している。

元々、斉藤由貴といえば若い頃からトップを走り続けていた。「スケバン刑事」の初代麻宮サキ、朝ドラ「はね駒」のヒロインを務め、民放連ドラ「はいすくーる落書」や「火曜サスペンス劇場」などでも数多く主演を務めていた。清純派で、正統なヒロインを演じることが多かったが、結婚や出産を経て、母になり、歳を重ねてからは、個性的な役も演じるようになってきた。印象的だったのは宮藤官九郎脚本の「吾輩は主婦である」の夏目漱石だった。この頃あたりから、斉藤由貴・第2章の開幕といっていいだろう。

昨年まで放送されていた大河ドラマの「真田丸」では、内野聖陽演じる徳川家康の側室・阿茶局。時に弱気な家康の尻を叩き、時に家康を後押しする女策士として立ち回るキレ者として鮮烈な印象を残した。そして携帯電話のCMでは、天然でほわんとした雰囲気を醸し出したかわいらしい母親役。お茶の間に、再び女優・斉藤由貴を蘇らせた1年だっただろう。

そんな彼女が、さらにお茶の間にインパクトを与えているのが現在NHKで放送中の「お母さん、娘をやめていいですか」である。斉藤が演じるのは、波瑠演じる美月の母・顕子。恋人のように仲のいい母娘が、1人の男性・松島(柳楽優弥)の出現で、これまで保たれていた母娘の関係性が崩れていく。

娘に執着し、自分の手から徐々に離れていく現実を受け入れられず暴走し、静かに壊れていく母親を演じている斉藤の姿が強烈だ。感情の起伏が激しく、娘が自分の思い通りにならないと気が済まない。劇中で様々な表情を見せる斉藤は、笑顔すら怖い。母親が怪物と化していく姿が怖くもあれば、子離れできない悲しさも併せ持つ顕子を、斉藤が体当たりで演じている。

今週はいよいよ最終回。
娘からの絶縁宣言に対し、母は殺してと禁断の言葉を口にする。
もはや修復不可能に思える母娘が、どんな結末を迎えるのか。
斉藤由貴が演じる顕子がモンスターから母へと戻れるのか。いろんな意味で、最終回が待ち遠しい。

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三浦友和がこれまでにない姿を見せる「就活家族」

三浦友和といえば、紳士で品格のある大人の男性…というイメージがある。
若い頃はアクションもこなすヤンチャな好青年な役柄もあったようだが、好青年が大人になっても雰囲気は変わらず、そのまま風格のある男性になった感じではないだろうか。

そんな彼が主演している「就活家族」では、なかなか目にすることのない姿を見せている。初回から苛立ちの矛先を向けるかのように、ドラムを叩きまくり、子供たちと大声でケンカをし、娘(前田敦子)が連れてきた彼氏(渡辺大)と今にも手を出しそうな雰囲気を見せながら、喧嘩腰で真っ向から対立。これまでの三浦友和が見せてきたどっしり構えた大人の男性と違い、感情むき出しになったり、家族に痛いところを突かれて右往左往する姿は、コミカルでかわいく見える。

それでも、社会派ホームドラマをテーマと謳った「就活家族」だけに、コミカルさを全面に出しすぎず、元々三浦の武器でもある真っ直ぐな正義感と男らしさがちょうどいい配合となっている。だからこそ、三浦があまり見せないコミカルな姿や家の外での闘いに辛酸を舐める連続で疲れ、哀愁を帯びた姿が実に画になる。

どこにでも存在するような"普通の家族"に忍び寄る危機、そして崩壊に対し、元の家族を取り戻すために、夫として、父として、一家の主人として、三浦演じる富川が今後どう立ち向かっていくのか。ドラマもそろそろ最終章。予告では黒木瞳演じる妻が離婚を口にする始末。彼らがどんな風に家族の絆を取り戻していくのかも、見逃せない。

一方で、三浦友和のこれまでで最も父親らしいリアリティあふれる姿からも目が離せない。コミカルさはいい意味で、失ってほしくない。

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ヒットメーカー・北川悦吏子が挑戦する次のステージ

昨日の「カルテット」は衝撃的だったから、「カルテット」のことを書きたいが、遡ればここのところ「カルテット」はもちろん、主要キャストである高橋一生など、「カルテット」関連のことばかり書いているようなので、書きたい衝動を少しばかり抑制して、別の話を書くことにする。

あの北川悦吏子が、朝ドラの脚本を担当するという。
2018年の春スタート「半分、青い」
聞いただけで、北川らしいタイトルで、いい意味で朝ドラらしくない。
大体朝ドラといえば平仮名表記が多く、「ちゅらさん」「ごちそうさん」そして現在放送中の「べっぴんさん」など親しまれるようなタイトルがこれまでも名付けられてきた。
もちろん「ゲゲゲの女房」「梅ちゃん先生」「花子とアン」「あさが来た」などもあるが、それらに比べると「半分、青い」というタイトルは、どこかシャレた香りがする。

北川悦吏子といえば、日本を代表する脚本家の一人だろう。
今はクドカンや福田雄一といった演出力も兼ね備えた個性的な脚本家たちが台頭している時代ではあるが、北川はバブル期にデビューし、90年代初頭からドラマ界を支えていた立役者と言っていい。
「ロングバケーション」「ビューティフルライフ」といった木村拓哉を不動の地位へと築いた作品を多く手掛けていることもさることながら、豊川悦司と常盤貴子の「愛していると言ってくれ」で手話を通したラブストーリーで社会現象を巻き起こし、「空から降る一億の星」では明石家さんま・木村拓哉・深津絵里という豪華な顔触れで初のラブサスペンスに挑み、「Love story」では中山美穂と豊川悦司で優しい空気感のある佳作を生み出し、「オレンジデイズ」では妻夫木聡と柴咲コウの共演で大学生の青春を描き、書けば当たるヒットメーカーだった。
彼女と肩を並べる存在と言えば、やはり野島伸司。彼も書けば当たる存在だった。

だが時代は流れ、北川の身には病が襲うなど、様々なことがあったせいか、しばらくはドラマ界から遠ざかっていた。かつて30%を当たり前としていた木村拓哉ですら、15%の視聴率を保つのがやっとな今の時代。ドラマ界は厳しい状況に置かれ、北川が久しぶりに連ドラで脚本を書いたとしても、20%を取ることは困難な時代である。どんなにいいドラマを書いたとしても、20%や30%を取れる保証などない。運とタイミングに近い。実際、最終回で20%を更新した「逃げるは恥だが役に立つ」は、視聴者の共感を呼んだだけでなく、新垣結衣への好感度や星野源のブレイク、恋ダンスなど、全てが流れに乗って、社会現象を巻き起こした。これもタイミングだろう。今の時代、高視聴率ありきでキャスティングしても、決して狙えるものではない。むしろ視聴者に見透かされて、失敗するのがオチだろう。

そんな彼女が、朝ドラを執筆すると言うんだから、これはある意味楽しみな話題だ。
これまでラブストーリーを中心に連ドラ界を引っ張ってきた彼女が、主人公の半生にわたる女の一代記を手掛けることも初。どういう物語になっていくのか、期待が高まるのも本音である。

そして気になることがもうひとつ。
NHK側の紹介には、オーディションでヒロイン決定…という記載がなかった。
クランクインが今年の秋というだけ。つまり、このドラマのヒロインはオーディションではなく、春から朝ドラ「ひよっこ」に主演する有村架純のように、指名されるのではないだろうか。
誰がヒロインになるのかも注目だ。

”ひねくれた人間”を演じると、高橋一生の右に出る者なし!

今、最も注目度の高い俳優と言えば、高橋一生だろう。
「カルテット」では念願の男優一番手で、大河ドラマ「おんな城主直虎」でもメインキャストの一人。三浦春馬に次ぐ、男性二番手である。連ドラと大河を掛け持ちしながら、舞台や映画出演もこなすまさに破竹の勢いとはこのことだろう。

涼しげで整った美系の顔立ちの高橋だが、彼の役どころと言えば、どこかひねくれたキャラクターが多い。
というか、むしろ得意で十八番だろう。
一見見れば好青年のようだが、実は心に闇を抱えた役柄が非常に多い。
皮肉なことにその役柄で注目度は急上昇。
岡田准一主演の大河ドラマ「軍師官兵衛」で一層注目され、極めつけは遠藤憲一と菅田将暉主演の「民王」でブレイクを果たした。
公設秘書の貝原役が世の女性たちを釘付けにし、彼のスピンオフドラマができるほどに。
そんな彼もエンディングではmiwaの主題歌に合わせて、出演者たちとタオルを振りながらダンスしていた。
が、そこは高橋一生。きっちり役のキャラクターに合わせ、笑顔ではなく、口を真一文字に結んだ、真顔でタオルを振っていた…。
それがまた妙におかしいし、面白い。

昨年は有村架純主演の「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」では、高良健吾に半分パワハラまがいに仕事を押し付ける、運送会社の先輩役。ひねくれているけど、根は優しいという複雑な役柄。
伊藤英明主演の「僕のヤバイ妻」では、キムラ緑子と偽装夫婦。
高橋が出演していると、絶対何かやらかしてくれるに違いない…と、こちらまで期待感を抱いてしまう。
そのくらい、彼のポジションは、彼の認知度と注目度の上昇とともに重要視されている。

実際、現在放送中の「カルテット」でも、秘密を抱えたビオラ奏者。
実はバツイチ子持ちで、子供を取り返すために、お金が必要で、松たか子演じる真紀にお金をせびろうとしていた…という秘密が先日明らかになったばかり。

「おんな城主直虎」では、柴咲コウ演じる幼馴染のおとわに淡い恋心を昔から抱いているものの、おとわと亀之丞(三浦春馬)が許嫁で想い合っていると知ってからは、亀之丞への友情と嫉妬がごちゃごちゃになった、これまた複雑な心境を抱くという役どころ。大人になってからはそれが加速し、ますます愛憎入り混じった心境へと変化しつつある。

この人はどうしてこんなにひねくれた役が得意なんだろう…と思うほど、とにかくうまい。
表情や言葉のニュアンスで、その複雑な心境の繊細さを表現しているところが長けている。
彼をそこまで見てしまうのは、きっと人間本来は、彼が演じているような複雑な心を持つ方が、リアルなのかもしれない。ドラマや映画に出てくるような登場人物のように、簡単に割り切ったり、そうそう生き方などもうまくいかないものだ。むしろ高橋が見せることの多い”グレー”な心境こそ、我々人間の誰もが抱いているではないだろうか。
グレーな心境を見せる稀有な役者・高橋一生。
彼が今後も、どんなキャラクターを演じるのか。見逃せない。

「スーパーサラリーマン左江内氏」は、福田雄一のゴールデン進出成功となるか!?

今、脚本家の中で、知名度・実力・人気を兼ね備えているのが、三谷幸喜か宮藤官九郎のツートップだろう。
そんな彼らと肩を並べてようとしているのが、福田雄一。
前クールでは「勇者ヨシヒコ」を手掛け、映画では「変態仮面」や「コドモ警察」などを世に送り出した奇才。
「笑っていいとも」の放送作家までしていたというんだから、異色の脚本家だ。

個性的なキャラクターと、ギャグを散りばめた自由度の高い深夜枠ドラマを得意とする彼が、久しぶりにゴールデンでのドラマを手掛けているのが「スーパーサラリーマン左江内氏」だ。
原作は藤子・F・不二雄の漫画で、主演はなんと堤真一。
堤と福田は、映画「俺はまだ本気出してないだけ」でのタッグを組んで以来だ。
いや、堤は「勇者ヨシヒコ」で、ラスボスのゾーマの声優を務めていた。

演技派でどんな役にもハマる堤だが、今回の役はこれまで以上にぶっ飛んだ設定だ。
なんせスーパーマンに扮したサラリーマンなのだから。
毎回スーパーマンのスーツに着替えては、大なり小なり街の問題解決に奔走している。
また勤しんで解決しているのではなく、仕方なくスーパーマンをしているところが、正義の味方らしくないゆるさ。
家では妻役の小泉今日子や娘役の島崎遥香にイビられ、肩身の狭い思いをしつつも、それが満更でもないプチMさも発揮した、どこか哀愁を滲ませる中年サラリーマンを、堤が好演している。
先日公開した「本能寺ホテル」で見せた、兄貴肌でキリっとした信長のようなカリスマ性を放った役のイメージが強めだが、今回は押しが弱く、頼まれると放っておけない優しい男性。
かつて松嶋菜々子と共演して大ヒットした「やまとなでしこ」での中原殴介のようなタイプだろうか。

正義の味方モノだが、ハッキリとした勧善懲悪を意識した物語ではなく、ほどよいゆるさがこのドラマの特徴。
原作ありきながらも、福田雄一が大胆にアレンジしているといっていい。
昨日放送回でも、爆弾事件が勃発するという、これまでで最も緊迫ある展開を予想できそうだが、そこはあくまで福田流。爆弾があろうが、世界観は全く変わらない。
福田作品の常連である佐藤二朗がオーバーにアクションする度に、堤が笑いを隠せない様子に陥ったり…。
こちらも常連のムロツヨシが、爆弾魔にピコ太郎のPPAPをダメ出しされながら披露させられたり。
ドラマの中に、いくつものコントが組み込まれたような娯楽作品となっている。

極めつけは、出演者全員によるエンディングのダンス。
「逃げ恥」のエンディング主題歌に合わせたダンスが社会現象になったことに乗っかったのか、元々初めから決まっていたのか、このドラマでも三代目 J Soul Brothersの主題歌に合わせたダンスを披露している。
だが、容易く真似できない難易度の高いダンス。
堤はかつてジャパンアクションクラブに所属していただけあって、運動神経は抜群。主役とあって、センターで踊らなければならないこともあり、キレキレのダンスを披露している。AKBでパフォーマンスしていた島崎や、元ももクロの早見あかりはダンス経験もあり安心感があるが、ダンス経験があるか不明な小泉今日子や賀來賢人も見事なリズム感で踊っている。一方で、少しテンポが遅れた感じの高橋克実、息切れ必至のムロツヨシと佐藤二朗ら中年組も注目してみると面白い。

福田雄一作品がゴールデン進出したのは、月9で小栗旬と水嶋ヒロが共演した「東京DOGS」以来。
このドラマは福田オリジナルの刑事モノだったが、ほぼギャグなどを封印したサスペンスタッチだっただけに、今回の「スーパーサラリーマン左江内氏」は福田雄一らしい娯楽作品となっている。
得意の深夜枠を飛び出し、今後はゴールデンでのファン層拡大が、「左江内氏」を皮切りに期待が持たれる。

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また満島ひかりの存在感に圧倒された「愚行録」

満島ひかりという女優は、一体いくつの顔を持っているのだろうか。
この前に書いた「カルテット」に関しても、彼女が関わっている。
新しい作品に出演する度に、彼女に対する評価は高まるばかり。
それだけ彼女が作品ごとに、他の役者を食っちゃうほど大きなインパクトを残しているからなのだが。

そんな彼女が今回挑戦していたのが、新作映画「愚行録」
妻夫木聡の、妹・光子。
妻夫木と満島の共演は、フジ系の「若者たち2014」以来。この時も兄妹だった。
だがこの時と比べて、全然世界観も違う。
「愚行録」はとにかく出だしからヘビー。

主人公・田中を演じる妻夫木聡は、終始眉間に皺を寄せて、不機嫌そうな表情を浮かべている。
好青年なイメージの強い妻夫木だが、今回は不満を腹に抱え、疲労感が漂った中年男性を演じている。
彼もまた、「愚行録」のヘビーな世界観に一役買っていると言える。

またそんな彼に輪をかけてヘビーなのが、妹・光子を演じた満島だ。
出だしから自分の子供をネグレクトしたことで逮捕され、子供は意識不明の重体。
だが本人は子供を虐待したことへの後悔などを気にする様子もない。
むしろ平然としており、精神鑑定の対象になることに…。
それがきっかけで、兄妹の過去にまつわる話と、秘密を紐解いていくことになる…。

満島は準主役的ポジションだが、冒頭に少し登場しただけで、しばらくは出てこない。
元々は犯人がいまだ捕まらず、未解決となっている一家惨殺事件を、妻夫木演じる田中が関係者に取材していくところから物語は始まる。殺された夫婦(小出恵介・松本若菜)を知る人々が取材を通して思い返す回想シーンが繰り返し出てくるうちに、夫婦の本当の”顔”が明らかになっていく。そして光子の抱える秘密も明かされていく。

とにかく、登場人物が皆、善人ではない。
悪人…とまでは言いきれないが、善と悪の狭間にいる人物たち。
些細な嫉妬や見栄などが積み重なり、やがて本音として言葉となり、ある者は人を殺めてしまう。
演技派な役者陣が集っているだけに、ヘビーな空気感と同時に、ゾクッとする怖さをそれぞれで作り上げている。
中でも、満島ひかりは群を抜いた存在感をここでも発揮。
そこまで多くない出演シーンながらも、クライマックスでの長台詞は圧巻。
能面のように表情一つ変えず彼女が語る言葉に、涙が溢れそうになる。

内面が”壊れてしまった”女性を、繊細に、そして時に怖く演じた満島。
そんな妹を、付かず離れずの距離感で見守る兄・妻夫木。
ヘビーな物語の中には、盲目的な兄妹愛も刻み込まれているようにも思えた。

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「カルテット」3人女優の対峙シーンは鳥肌モノだった!!

この前「カルテット」のことを書いたばかりだったが、やはり書かずにはいられない。

ラブサスペンスと銘打った「カルテット」だが、これまではそこまでサスペンス要素は感じられなかった。
4人の秘密が少しずつ明らかになっても、まだまだ序盤戦…という感じで。

しかし第5話で、その雰囲気が一変する急展開を見せた。
松たか子、満島ひかり、そして吉岡里帆。
3人が別荘で会話するシーンが、鳥肌モノであった。

松演じる真紀が、夫を殺したのではないか。そんな疑念を抱いた夫の母(もたいまさこ)から依頼され、真紀の動向を監視する役目をしていた満島演じるすずめ。だがカルテットとしての活動で、真紀に友情と信頼を抱くようになり、監視の役目を断ることに。そんな彼女の代わりに監視役を務めることになったのが、カルテットが普段演奏活動するレストラン・ノクターンの従業員・有朱(吉岡里帆)だった…。

有朱が、矢継ぎ早に質問を真紀に投げかけていく。
やがては夫の失踪という核心へと…。アンタッチャブルな内容と察したすずめは、別の話題へと方向転換しようと試みて、有朱の言葉にわざとかぶせていく。そんな2人の様子に動揺する真紀。有朱は一歩も引かないが、すずめも引こうとはしない。女たちの真っ向勝負。

これまで「カルテット」を見ていて、最もゾクゾクした場面に遭遇したと言っていい。
笑顔ながら、目が全く笑っていないという鬱屈した表現で好演していた吉岡里帆が、カルテットの2人を追い詰めていく鬼気迫る様子が印象的だった。演技派の松たか子と満島ひかりのツートップを前にして、今まで見せたことのない迫力を感じさせた。清純派な彼女が腹黒な立ち回りを務め、新境地を開拓したことは、今後もさらに違った顔を見せてくれることに期待する。

そんな吉岡に応戦する、さすがの満島ひかり。松演じる真紀を守ろうと、核心を突いてくる有朱の言葉の矛先を自分に向けようとする。だが、有朱が会話を録音しているレコーダーが真紀にバレてしまい、満島演じるすずめの監視行動を真紀が全てを知った時…。「終わった…」そう思い、目を閉じ、項垂れ、落涙。ここまで築き上げてきた信頼関係が音を立てて崩れる瞬間を、佇まいで見せた満島の存在感は圧巻だ。

そして、信頼していた仲間の裏切りを、レコーダーの再生ボタンを押す仕草で内に秘めた怒りと、目を赤くして今にも涙が零れそうに、悲しみを表現した松たか子。多くを語らず、夫の失踪に対して何を思っているのか。誰にも開けてほしくない、そして自分でも開けようとしないパンドラの箱を秘めた大人の女性・真紀を、静かに体現している。彼女がかつて映画「告白」で見せた、愛娘を殺され、生徒たちを追い詰めていく冷静さ故の、後からじわじわとやってくる怖さが、今回の「カルテット」の真紀にも通じているところがある。

今回の5話で一気にサスペンス度が増した「カルテット」。
来週は、そんなサスペンスに輪を掛ける展開が待っているようだ。
失踪中の真紀の夫が現れる。その夫を演じているのが、なんとクドカンこと宮藤官九郎。
袖には血痕、手は包帯が巻かれ、足元にはカラーボールの跡…。
1年ぶりに姿を現した理由、そして彼はこれまで何があったのか、なぜ失踪したのか。
「夫婦はなぜ壊れてしまったのか」という、興味をそそる予告。

サスペンス色をフルモードにして、「カルテット」第2幕、華々しく幕開けのようだ。
だけどラブは?これから絡んでくるのかな?
いまのところ、松たか子と満島ひかりペアが中心的存在になりつつある。
高橋一生と松田龍平も、これからどんどん絡まないと「カルテット」にならない。
そこは坂元裕二脚本。アッと驚く仕掛けが、今後待っているに違いない。

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「A LIFE〜愛しき人」で見せる、浅野忠信と及川光博の”目力”

キムタク神話は終わった…などと囁かれているが、それはあくまで視聴率の面だけでの話。
もちろん木村拓哉が主演で、とにかくカッコいい役をするというところでは、これまで演じてきたスーパースター的な役柄とさほど変わりないという評もあるだろうが、それでも彼が主演を務めるドラマには、今も尚注目度が高いことは事実である。そして彼が次に、どんな作品に出るのか。どういう役柄なのが。共演者は誰なのか、どんな物語なのか…など、色々気になって仕方がない。それくらい、木村拓哉が積み上げてきた実績であり、世間が注目を注ぐ役者だという証なのである。

そして現在放送中の「A LIFE〜愛しき人」も、放送前からその注目度は高かった。
木村がSMAP解散後初のドラマ主演作もさることながら、共演陣の大河ドラマ並みの豪華さ。
ヒロインの竹内結子を筆頭に、松山ケンイチ、木村文乃、菜々緒、及川光博、そして浅野忠信。
おまけに木村の父親役を田中泯、竹内の父親役に柄本明と、隅から隅まで豪華絢爛。
TBSの気合を感じる。

物語も中盤に差し掛かり、キャラクターそれぞれの人間模様が交錯しながら、脳腫瘍を患う竹内結子演じる深冬が助かるのかが1つの焦点となっている。また初めは厄介者扱いだった木村演じる沖田が、類稀なオペの腕と、そして患者や同僚たちと真正面から向き合いながら、徐々に信頼を集め始めている。そんな彼に嫉妬まじりの複雑な心境を抱く浅野演じる壮大。深冬を想う2人の男の決着もまた、物語の方向性として気になるところだ。

そんな壮大を演じる浅野忠信は、ごぶさたな連続ドラマ登板。
まだ知名度も浅い頃、渡哲也主演の「麻酔」で渡の息子役で出演していたことくらいしか記憶にない。
彼が映画の世界へとシフトしてからは、周知の事実だろう。いまやハリウッド映画でもオファーされるほどの実力。
映画ではクールな役どころや、ダークヒーローなど、物語のキーマンとして圧倒的な存在感を発揮している。
「A LIFE」での浅野は、抑えきれない感情を爆発させ、妬みや苦々しさなどを表現している。
ある時は髪を振り乱し、またある時は拳を壁にぶつけたり。
パーフェクトかつスマートに見せていた副院長・壮大の姿が、木村演じる沖田の帰国で音を立てて崩壊していく様が、ある意味人間臭くて、人間らしい。
そしてなんといっても、浅野の凄さは目力。
企みを目で表現する凄まじい目力は、見ているこちらも硬直してしまうほど。圧巻である。

そんな感情を爆発させる壮大と対極にいるのが、及川光博演じる外科部長・羽村。
彼もまたスマートで、品行方正な印象を感じさせるが、腹に一物ある曲者。
松山ケンイチ演じる井川が大病院の跡取り息子ということで、彼をかわいがっているのも今後の自分のポジション安泰のためだったり、いわば世渡り上手。
そんな羽村を、及川は嫌みなく演じている。加えて品がある。
そして及川もまた浅野同様、目の演技が巧い。元々切れ長で、流し目タイプの及川。その武器を十二分に活かした目の動きや目線で、羽村の心中を表現している。
”目は口ほどに物を言う”とは、まさにこのことだ。

「A LIFE〜愛しき人」で、木村拓哉と真っ向から対峙するには、彼と互角、それ以上の存在感がないと太刀打ちできない。
浅野忠信と及川光博。
2人は”目”という大きな存在感を放つ武器で、ラストまで彼と演技合戦を繰り広げ、物語を盛り立てていくに違いない。

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「サバイバルファミリー」は、コメディ以上にドキュメンタリー

小日向文世は、小市民を演じさせると右に出る者はいない。
そんな彼の象徴となる作品が映画「サバイバルファミリー」だ。

ある日、電気・水道・ガス…全てのライフラインがストップし、生活が一変。
この状況を脱するため、家族は東京を脱し、妻の実家である鹿児島を目指す…という話。

「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」「ロボジー」など、数々の個性的な名作を世に送り出してきた矢口史靖監督の新作だ。彼の作品は、主にコメディ色が強いイメージであるがゆえに、今回の「サバイバルファミリー」でも、見る前はそう思わせる予感がした。予告でも小日向が豚に必死でまたがって捕獲しようとしていたり、川の水を飲んで腹を下したり…。ライフラインのストップ以上に、小日向の涙ぐましい必死さが笑いを誘う予告になっていた。これは絶対に笑える作品だと。妻役・深津絵里の「あんな水、飲むから…」と呆れた言葉が、またおかしくて、フッと笑っちゃう。

だが、実際この映画を見ると…。ドキュメンタリーなのだ。
実際、他人事とは思えなくなってくる。
例えば、今後予期される震災だったり、いつ起こるかわからない天変地異やサイバーテロ。
ある日、電気や水道、ガスなどのライフラインを失ってしまったら…。
人々はどんな風になってしまうのか。
極限状態に追い込まれた人々は、自分たちが生きるため、数少ない水や食べ物を時には盗み、ぼったくりのような値段で売り捌いたり。
矢口監督が描いた「サバイバルファミリー」は、ある意味で、平和ボケして豊かな今を生きる我々への警鐘の意味でもあるように思えた。

だからといって、シリアスな場面ばかりではないのが矢口作品の良さ。
ドキュメンタリーチックに思わせつつも、随所にコメディを取り込んでいるところが巧みである。
自己中心的な小日向文世演じる父と、彼に反発する2人の子供(泉澤祐希、葵わかな)。
ネガティブになってあたふたする彼らを尻目に、おおらかに状況を楽しもうとする少し天然な母親役を演じている深津絵里。コメディエンヌセンス抜群の深津が生み出す絶妙な間合いと存在感が、作品におけるドキュメンタリーとコメディのバランスを保っている。

実際、小日向文世と深津絵里という、年齢差もそこそこある夫婦という2人の設定も面白い。
父と娘…というほどではないものの、特に深津絵里は歳を重ねても変わらぬ若々しさを見せつつ、リアルに大学生と高校生の子供を持つ母親役を演じるようになったことが、個人的には驚いている。

そして名バイプレイヤーとして名を馳せ、出演作が途切れない小日向文世。
脇役イメージが強いものの、松田龍平と共演した「あしたの、喜多善男」で連ドラ初主演を果たして以降は、主演としての顔も覗かせるようになり、もはや役者としては無敵な存在。「重版出来!」で見せた漫画家の重鎮でありながら仏のような良心的な役柄や、「アウトレイジ」などでの悪役もおてのもの。今回の映画で演じた小市民は、彼の十八番と言っていい。ムキになったり、むくれたり、子供たちにバカにされたり…。大人らしからぬ自己中でどこか情けない中年男が、極限に追い込まれた時、家族を守るため、父として、夫として、そして一人の人間として、男らしい姿を見せ成長していく様は、心揺さぶられる。

「サバイバルファミリー」はドキュメンタリー、コメディ、そんな言葉一つ一つで片付けられない、役者たち、そして制作陣の魂がこもった作品。見ればきっと、誰もがそう思えるはず。予告であれだけ笑いを誘って、面白そうとひきつけておきながら、まさかここまで笑い以上にドキュメンタリーな作品だとは。矢口史靖にヤラられた。なんか悔しいじゃないか。

そういや矢口作品常連の竹中直人は、今回出てなかったな。
柄本明は出てたけど。

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春ドラマ発表速報〜中山美穂が月9で、まさかの脇役!?

2017年1月スタートのドラマも折り返し地点に差し掛かり、4月スタートの春ドラマの情報解禁が増えてきた。
テレ朝は木曜日に天海祐希主演の「緊急取調室」の続編。
日テレは綾野剛主演の「フランケンシュタインの恋」と、沢尻エリカ主演の「母になる」
フジ系は桐谷美鈴主演の「人は見た目が100パーセント」
そして嵐の相葉雅紀主演の「貴族探偵」が発表された。

珍しく発表が最も遅く、焦らし気味な月9だが、今回は早い段階での新ドラマ発表。
なんでも、月9は今回で30周年を迎える記念作品だという。
驚きなのが、相葉以外の共演陣だ。
ヒロインの武井咲を筆頭に、井川遥、生瀬勝久、滝藤賢一、松重豊、中山美穂、仲間由紀恵。
脇役のエキスパートから、主演クラスの役者陣まで勢ぞろいさせた豪華さは、久しぶりの気合をキャスティングからは感じられる。

特に、中山美穂が脇役ということが個人的には驚きだ。
これまで主演でしか見たことがないだけに…。
「すてきな片思い」や「逢いたい時にあなたはいない」などのバブル時代の月9を支えた作品から、「FOR YOU」「おいしい関係」「二千年の恋」など、90年代後半〜2000年代でも月9で数多くの主演を務め、代表作を生み出してきた。その中山美穂が脇役…。そのことの方が、よっぽどニュースである。

「ごくせん」以降のヒット作を牽引してきた仲間由紀恵ですら、朝ドラの「花子とアン」以降は主演と脇役を兼任しながら女優業を邁進しているわけだから、不思議ではないものの、仲間由紀恵が脇に回った時もかなり驚いた。

ここまで役者陣を集めて、さすがに失敗はできないだろう。
フジテレビが春の月9でどんなドラマを創り上げていくか…。見ものではある。
いい役者たちが十分活かされるドラマになることを切に願いたい。

個人的には沢尻エリカ主演の「母になる」が興味津々だ。
誘拐された子供が数年後、現れて…みたいな話らしいが、「八日目の蝉」と坂元裕二脚本の「Mother」と若干似ててかぶる内容にも思えるのは気になるところではあるが、どんなヒューマンドラマになるのかはそれ以上に気になるので、期待は大きい。

そしてまだ未発表のTBSは、どんな春ドラマを揃えてくるのか…。
待ち遠しい。
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