吉田食堂、ドラマ好きですがなにか

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

「昼顔」の映画化、そして「ジョジョの奇妙な冒険」の実写化に対して…

今日、ある新作映画が2本発表された。
1つは上戸彩主演でヒットした連ドラの映画化「昼顔」。
もう1つは大ヒットコミックの実写化「ジョジョの奇妙な冒険」

どちらも話題性にはなっているものの、ヒットするかは別である。
特に「ジョジョ」に関しては今も連載が続いており、昔からジャンプファンのみならず、多くの読者たちを魅了してきた作品。しかもあまりにエピソードが多すぎるため、どこを映像化するのかも困難が生じるのは目に見えている。
(※ 今回は第4部を実写化するらしいが…)

「るろうに剣心」や「ルパン三世」の実写化ヒットも相まってか、漫画原作「ジョジョ」に限らず、ここ最近「銀魂」を小栗旬主演で、「BLEACH」を福士蒼汰主演で実写化するという動きが出ている。しかし、いくら豪華キャストを並べても爆死することも大いにあり得る話。今年の春に放映された「テラフォーマーズ」がいい例だ。しかもヒットしている実写化作品は、「アオハライド」「ストロボエッジ」「ヒロイン失格」「orange」「オオカミ少女と黒王子」など少女漫画原作がほとんど。それらに主演を務めヒットへ導いた山賢人や福士蒼汰をジャンプ系の実写化に据え置くのは、あまりに安易である。実際「ジョジョ」の主演が山賢人と発表され、「細すぎる」という声が大多数。このマイナスからのスタートを、どう打破するか。「テラフォーマーズ」で大失敗した三池崇史監督は、二の舞にならねばいいが…。クオリティもさることながら、興行的に失敗すれば「ジョジョの奇妙な冒険」と、山賢人の名に傷をつけることとなる。とりあえず、お手並み拝見という感じか…。

さて。「ジョジョの奇妙な冒険」ばかりの話をしてしまったが、もう1つの映画化を置き去りにしてしまった。「昼顔」の映画化。これにも驚いた。ドラマ放送中はヒットしたこともあり、映画化がちらほら噂として流れていたが、まさか誰もが「昼顔」の存在を忘れた頃に映画化とは…。実際内容も3年後の設定で、本当にドラマから3年後に公開になるわけだ。主演はもちろん上戸彩、相手役は斎藤工、妻を伊藤歩が続投。吉瀬美智子や北村一輝の名前がなかったから、2人は出演しないのだろう。この2人の関係はドラマで完結したというわけか。3年後に再会して、また不倫するんかいな。懲りない"昼顔妻"を上戸彩が女優本格復帰として位置付けている。あ、ドラマの最終回で離婚しているから、作中では妻ではないのか。

しかし問題は、なぜ今頃「昼顔」を映画化にしようとしたことだ。いくらヒットしたとはいえ、3年後に公開なんて…。"鉄は熱いうちに打て"という言葉があるように、映画化にするならするでヒットしているうちにドラマと一緒に撮影して、次の年に公開すればよかったのに…。そうすればまだファンも話題性も引っ張れたはずだ。制作側であるフジテレビの策が理解できないのが本音。映画化よりもスペシャルドラマとして放送した方が、まだ傷は浅い気もするが。そこまでして映画化にこだわる理由も知りたいところではある。

以上の2作品が公開されるのは来年。
2017年も様々な作品が目白押しとなるはずだが、どれだけ期待を裏切る作品が出てくるのか、いい意味で期待を裏切る作品と出会えるのを心待ちにしている。

2本の夏ドラマに出演した俳優・本多力って誰?

ドラマは主役がもちろん一番輝いているとは思うが、最近は脇役も注目されている。演技派の名脇役が連投し、やがて主役を担うことも珍しくなくなってきた。ほとんど終わってしまった夏ドラマにも、気になる脇役俳優がいた。

その名は、本多力。
彼のことは初め知らなかったのだが、調べてみるとヨーロッパ企画の劇団員だった。ヨーロッパ企画といえば、映画「サマータイムマシーンブルース」や長澤まさみ主演の映画「曲がれスプーン」などに取り組んでいるような、京都を拠点とした有名な劇団だ。

そんな彼を知ったのは、この夏ドラマで最もヒットを飛ばした北川景子主演の「家売るオンナ」。本多は北川景子の同僚・宅間役で、イモトアヤコ演じる営業所一の問題児・白州と何かと絡む役柄だった。まさかラストでこの2人が結婚するとは、夢にも思わなかったが…。
そしてもう1つは「闇金ウシジマくん Part3」。こちらは引きこもりのニート・コセちん役。「家売るオンナ」では営業マンだったが、「ウシジマくん」では部屋もゴミだらけ、無精髭で不潔感満載なニート役という真逆の役柄を演じており、同じ人物とは思えないほどの風貌の違いには驚かされた。

共通していたのは、本多の持つ癒し系的な空気感。
「家売るオンナ」では、イモトアヤコに散々邪険に扱われながらも、回を重ねるごとに、彼女を放っておけず見守る先輩という立ち位置。「ウシジマくん」では、誘惑してくる同じくニートの女性のために甲斐甲斐しく世話をしてあげたり、老人たちがニートの友人たちが仕組んだ詐欺に引っかかりそうになったら、正義感を振り絞って立ち上がってみせるという、割と真人間な好青年を演じていた。

どこか気弱な雰囲気で、相手の押しに負けてしまいそうな印象を見せ、"引きの演技"で2本の夏ドラマで爪痕を残した本多力。ヨーロッパ企画でも主要人物で活躍している彼が、本格的に映像の世界へと進出し、今後も彼の動向に注目したい。

気弱ゆえの、狂気を抱え込んだ犯罪者の役…とか、"いい人"に留まらない役などを演じる彼を見てみたい。

「模倣犯」で見せた、坂口健太郎の可能性

こんな芝居もできるんだ。
先日放送されたテレビ東京のスペシャルドラマ「模倣犯」で見せた、坂口健太郎に対する印象である。

昨年の映画「海街diary」では長澤まさみのヒモ彼氏役で「誰だこの男子は?」と人々に植え付け、その後の活躍は周知の事実。「ヒロイン失格」「俺物語」などの恋愛モノで"二番手の彼"でヒロインを見守る優男を演じ、「at home」「予告犯」「残穢」「64」などのミステリーモノでもキーマン的役柄をこなしてきた。ドラマは映画からの逆輸入と言わんばかりに「コウノドリ」で初出演し、その後は「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「重版出来!」でも主要キャストと頭角を見せ、朝ドラ「とと姉ちゃん」で高畑充希の恋仲・星野役で一気に認知度を不動のものにしたといえる。

ここまで羅列した作品では、坂口健太郎=いい男役のイメージ。前述したように、ヒロインを見守る役柄が多い。金曜日に放送された「がっぱ先生」でも、二階堂ふみの幼なじみ役で、だらしないが彼女を支えるというポジション。結ばれるか結ばれないかは別にして、だ。
だが今回の「模倣犯」では、それを真っ向から覆す役柄。かつて中居正広が映画で主演を務めた悪役・ピースを演じた。

宮部みゆき原作の「模倣犯」が、長編であり、映像化するのにも尺が必要となってくる。中居が主演を務めた「模倣犯」では映画の時間配分の関係上もあってか、森田芳光作品にしては評価も低い。一方で今回のドラマは前後編の二夜連続としており、原作を忠実に再現されていたとされ、また主人公を坂口演じるピースではなく、中谷美紀演じるルポライターの前畑滋子に据えたことも功を奏したようだ。

だが物語の中心的なピースを演じた坂口は、前編ではほとんど姿を見せない。前編のラスト近くで現れるだけだが、後編から主人公の中谷美紀を食うように、一気に物語を侵食していく…。

事件そのものを楽しむかのように、目をひん剥きながら語り、洗脳に近い形で人々をコントロールしていくピースが、これまで見せてきた優男・坂口健太郎とは思えない不気味さを放つ。朝ドラで見せたぬくもりのある笑顔も、ヌメッとした粘着質のある気持ち悪い笑顔に見えて、頭からへばりついて離れない。

そんな彼に追い詰められて狼狽し、我を失っていく滋子を演じた中谷美紀もまたスゴい。後編のほとんどを坂口演じるピースが有利に思える流れだが、クライマックスで彼を追い詰め、優位に立ち、一気に蘇っていく様子がまた圧巻で清々しく、思わずガッツポーズしたくなるような爽快感を中谷が見せてくれる。「模倣犯」において、この2人の対決は見応え十分だ。

初の悪役を演じた坂口健太郎。
自身も「今後は、悪役をやってみたい」と語っていた通り、殺人に対して全く罪の意識のないような犯罪者の役など…。決して共感できないが、どう見ても彼が犯罪を犯すように思えない雰囲気と表情を活かした、闇を抱えた役をこなすことで、今後彼が演技派として歩んでいくかのポイントとなるはずだ。

いつまでも、良い役ばかりではきっと頭打ちする時が来る。だからこそ、貪欲にどんな役でもこなせる役者が、必要とされていく違いない。
坂口健太郎。
今、彼が掴んでいる流れを、乗り続けてもらいたい。

いつの世も、時代はドラマを必要としている

中島裕翔主演の「HOPE」が今日で最終回、また一つ夏ドラマが終わる。
明日は桐谷美鈴の「好きな人がいること」が、そして翌火曜日は武井咲の「せいせいするほど愛してる」がラスト。
木曜日の松嶋菜々子「営業部長・吉良奈津子」で、ゴールデンの全ての夏ドラマが最終回というわけだ。

視聴率が惨憺たる結果なのは、これまでいくつもニュースで取り上げられてきた。
夏ドラマの視聴率が低迷傾向なのは例年通りとはいうものの、いまや一桁台がほとんどというのも、寂しい結果だ。
実際、夏ドラマでトップ視聴率だった北川景子主演の「家売るオンナ」ですら、平均視聴率は11%台。
昔は及第点が20%がざらで、昨今は15%台に落ち込み、現在では10%を超えれば御の字という、ハードルがどんどん低下しつつある。
その低下の一途をたどるがゆえ、スポンサーも降板する会社が続出し、ドラマ制作に充てる金額も当然減る。そしてクオリティの低い、中身スカスカなドラマばかり作られ、視聴者はまた離れる…という悪循環は断ち切ってもらいたいのが視聴者の本音である。

お金があろうがなかろうが、視聴者には一切関係ない。
今も昔も、面白いドラマならば見る。ただそれに尽きるはずだ。
視聴者を侮っているドラマなど、すぐ見抜かれるのがオチ。
キャストだけで飾っててもダメ、キャストも力入ってなければその時点でアウト、作らない方がマシ。
そして視聴率が取れなければ、主演俳優や脚本家たちの責任…って、おかしいだろおい!

まあ脚本家はストーリー展開なども含め、面白い物語を作るかで視聴率を左右するから責任は多少なりともある。
しかしながら、主演俳優たちは別に悪いことはしていない。
だけど、数字がついてこなければ、戦犯扱い。
”低視聴率俳優”のレッテルを貼られている役者は、いまや結構存在する時代になってしまった。
あれこれ書かれるがゆえ、ドラマから離れ、映画や舞台へと活動拠点を移す人たちも少なくない。

今年の夏ドラマが、決して力が入っていないとは言っていない。
「好きな人がいること」では、苦戦を強いられるとわかっているが、月9という王道を貫いてラブストーリーを選択したことは拍手。
関テレ制作「ON」では、ミステリー&サスペンスの枠を築きつつあり、主演の波留の魅力を引き出していた。
「家売るオンナ」は文句なしに単純明快でスカッと笑えたし、「はじめまして、愛しています」では遊川和彦らしいド直球な人間ドラマを描き、「仰げば尊し」では寺尾聡と若手俳優たちで、吹奏学部版のスクールウォーズで感動的なハーモニーを奏で、「そして、誰もいなくなった」では最後まで謎めいたストーリーで引っ張った。
「HOPE」では、中島裕翔の初々しい新入社員ぶりも応援したくなり、厳しくも温かな遠藤憲一&山内圭哉の上司コンビにも「こんな上司がいてくれたらなぁ…」なんて思った人たちもいたはずだ。

…というように、それぞれの中身には良いところもたくさんある。
作品に希望が光っている証なのだ。
ドラマ界が氷河期と言われる今だからこそ、オリジナリティあふれる面白い作品を作ることのできる、ある意味チャンスかもしれない。
チャンスを活かした作品が反映されれば、視聴者は毎週釘づけになり、巷で話題をふりまき、やがてスポンサーも、役者も、再びドラマ復権へ立ち上がるだろう。

いつの世も、ドラマは必要とされている。

映画「怒り」から感じた役者魂

いよいよ、待ちに待った封切り…といったのが最初の感想だ。
世界をも魅了したあの「悪人」から6年。
原作・吉田修一と監督・李相日が再びタッグを組んだ話題作「怒り」。

渡辺謙を筆頭に、森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、妻夫木聡…と、日本を代表する主役級の演技派俳優たちが勢揃い。吉田修一が実写化に対して「オーシャンズ11のような豪華キャストで…」と要望したというのだから、納得のキャスティングだ。
しかしながら、単なるネームバリューのある役者を揃えでもダメ。中身スカスカで演技力ゼロの俳優を使うなら、実写化なんてやらない方がマシ。かえって原作を傷つけかねない。「怒り」はそのくらい、重厚感ある人間ドラマなのだ。

3つの物語が並行して進行していく今作。

・房総半島の漁協で生活をする槇親子(渡辺謙・宮崎あおい)の前に現れた、素性の知れない男・田代(松山ケンイチ)。
・末期癌の母を抱えるゲイのエリートサラリーマン(妻夫木聡)と発展場で出会う、直人(綾野剛)。
・沖縄の離島に遊びに出かけた女子高生・泉(広瀬すず)が廃墟で出会う謎のバックパッカー・田中(森山未來)。

この3つの物語と、刑事(三浦貴大・ピエール瀧)が追う八王子夫婦殺人事件が、少しずつ少しずつ、忍び寄るように絡んでいく…。

原作を読んでいる者にはわかるが、映像化となれば限られた時間の中で原作を完結させなければならない。つまり全てを忠実に再現することは叶わない。それは「怒り」に限った話ではない。それでも「怒り」がスクリーンから発してきた熱量はとてつもない。

殺人事件という血なまぐさい冒頭から、水色に透き通った沖縄の美しい海、陽の当たるところでは決して肌を寄せ合えないゲイたちが体を寄せ合い、互いの体を求めあう姿…。背景も含め、様々な人間模様が交錯する場面にどんどん引き込まれていく。

中でも、森山未來、宮崎あおいが印象的だ。
まず森山未來。長髪に髭面という風貌が怪しそうに見えつつ、広瀬すず演じる泉の心に寄り添い、信頼を得ていく。が、後半になってその態度が豹変する怪演ぶりは圧巻。突如、見せていく乱暴さが実に怖い。普通のように見えて、闇を抱えたクセのある役柄は彼の十八番ともいえる。

そして宮崎あおい。ここ数年はデキる大人の女性や、清楚で美しさを発揮した役柄が多い印象だった。昨今では朝ドラ「あさか来た」で、妹・あさ(波留)の良き理解者で家を守るため、耐え忍ぶ姉・はつを演じていたのが良い例だ。だが今作では、全く真逆と言っていいだろう。どこかふわふわとしていて、つかみどころのない女性・愛子。おっとりした話し方で、自分の世界に浸った、どこか幼児っぽさを引きずったまま大人になった女性…というより、女の子といっていい。そんな愛子が、松山ケンイチ演じる田代と出会い、恋をし、少しずつ父離れして成長していく姿を見事に演じている。
この愛子を演じるにあたり、体重を7キロも増やしたという宮崎。男優が役柄に応じて体重の増減をするのはよく聞くが、女優ではあまり耳にしない。それだけに、宮崎あおいの女優としての向き合い方を、改めて評価したい。

他にもゲイ役に体当たりで挑んだ妻夫木聡と綾野剛が、リアリティを追求すべく同棲生活したり、レイプなどハードなシーンを含め、監督に何度も何度も罵倒されながらも、最後まで作品に挑み続けた広瀬すず…など。
日本を代表する役者たちが"魂"を込めた「怒り」は、間違いなく、彼らにとっても代表作となったに違いない。

yoshidashokudou.com

計り知れない「だれかの木琴」の怖さ

常盤貴子と池松壮亮。
この2人を見ると、どんな関係に見えるか。
親子…というと少し実年齢に無理があるが見えなくもない。
少し年の離れた姉と弟。あるいは、恋人。
このあたりが妥当だろう。

そんな2人が共演しているのが「だれかの木琴」
直木賞作家・井上荒野原作だ。
平凡な主婦が、担当になった美容師からの1つのメールのやりとりをきっかけに、彼のストーカーと化していく…。

ストーカーと聞けば、狂気が孕み、極端に言えばホラーをイメージする。だがこの物語は、そういったダイレクトに目で見てわかる怖さ以上に、後々からゾクッ…ゾクッと来る怖さ。しかしながら、美しい。常盤貴子扮する主婦が、静かに、そして無意識に池松壮亮扮する美容師・山田へ少しずつ接近していき…。また彼女の行動は、やがて夫(勝村政信)や娘、そして山田の彼女(佐津川愛美)の心をもかき乱していく…。

汚れ役とまでは言わないが、日常に不満を抱え、ストーカーまがいな行動をとる主婦役という、闇を抱えた役柄は、常盤にとってデビュー当初の「悪魔のKISS」以来ではないだろうか。当時の若さゆえの危うさとは違い、今回は大人の女性、母親という人生の経験を積んだ怯まない様が、自身の行為を肯定するようにも思え、それがまた怖さを引き立てている。

決して、夫に愛されていないわけではない。
むしろ夫に愛されて、セックスも日常的。
多感な年頃の娘との関係も良好。
不満なところはないはず…。なのに、自身でも無意識ながら、誰かに自分の"女"としての存在を知ってほしかったのだろう。それが、池松扮する美容師だったのだ。

往年の名作「愛していると言ってくれ」でまっすぐに愛をぶつける頃とは違い、静かに男性の心へと忍び寄る常盤貴子。そんな彼女を客として無下に扱えず、翻弄される池松壮亮。妻の微妙な変化に気付きつつ、自身もワンポイントでの浮気をする夫・勝村政信。彼につきまとう主婦に嫉妬し、警戒心を募らせる佐津川愛美…。
演技派俳優たちが見せる、日常に潜んだ小さな闇。
だからこそ、怖さが後からやってくる。

「四月は君の嘘」は、石井杏奈と中川大志に注目

広瀬すずと山崎賢人。
今や押しも押されぬ若手俳優の競演で話題の「四月は君の嘘」
天真爛漫なバイオリストのかをり(広瀬すず)と、母の死を乗り越えられず、ピアノが弾けない公生(山崎賢人)。2人の出会いがもたらす奇跡と、切ない1つの嘘にまつわる青春ラブストーリー…という、割とベタな題材ではある。

もちろん2人に注目が集まるのは当然。
しかし、彼らを取り巻く2人には余計に注目した。
同級生役を演じた、石井杏奈と中川大志。
ある意味、準主役的なポジションだ。
この2人もここ1、2年で出演作が飛躍的に上昇し、尚且つ注目度も高い。

石井杏奈は御存知の通り、E-girlsのメンバー。
しかしE-girlsと言われるまでは気付かなかったのが正直なところ。石井杏奈という女優としての名前が認知されだしてから、彼女がE-girlsのメンバーだということを知った人も多いのではないだろうか。ある意味、逆輸入パターン。

中川大志は、あの「家政婦のミタ」で一家の長男役を演じてからドラマや映画でよく見るようになった。現在放送中の「真田丸」では豊臣秀頼として、今月ようやく登場予定。そして主演の広瀬すずとはシーブリーズのCM、山崎賢人とは「水球ヤンキース」で共演しており、旧知の仲といってもいい。

そんな石井と中川は、山崎賢人の幼なじみ役で、彼と広瀬すずの出会うきっかけを作る、いわばキューピット役なのだが、石井演じるつばきは山崎演じる公正に片思い、中川も広瀬演じるかをりが想いを寄せる渡役という、友人で四角関係という複雑な心境を描いている。

公生の、止まった時間の動くきっかけに…と彼を後押しするものの、かをりと公生が少しずつ距離を縮めていくことで、つばきの中に小さな嫉妬が芽生え始める…という複雑な表情を見せたり、ソフトボール部に所属する快活で心の声がダダ漏れな嘘のつけない女子高生を、石井が瑞々しく表現しており、自由奔放なかをりを演じる広瀬に負けず劣らずの存在感を放っている。
現在放送中のドラマ「仰げば尊し」でも、継母との関係に悩む吹奏楽部部長という、繊細な難役も演じるなど、"女優・石井杏奈"の認知度をさらに高めている作品になっていることは間違いない。

そしてもう1人。
サッカー部のエースでモテ男、電話がひっきりなしにかかってくるチャラい一面があるものの、体育会系の熱い男で、かをりと公生の仲をさりげなくとり持つ渡を爽やかに演じている中川。これまでは不器用でいじめられっ子といった、弱さの目立つ役柄を多く演じてきた印象だが、今作では主演の山崎の背中を押す側に回っている。
端正なルックスと、憧れを抱かれるような先輩キャラで今作では新境地を開拓した印象だ。母性本能をくすぐるタイプだろう。

極め付けは、エンドロールで流れるいきものがかりの「ラストシーン」。映画公開前から配信されているが、映画を見ながらこの歌を聴くと、本当にこの映画のために作られた曲だと改めて実感し、涙する。映画を知らなくてももちろん素敵な楽曲だが、この映画を見ると、より切なさ感が増すだろう。

2016年度10月スタート新ドラマ期待値発表

本日で波留主演の「ON」も最終回。
ただてさえ視聴率が壊滅的なのに加えて、オリンピックの影響からか、どのドラマも通常より短めだったり、1週休止したりと散々な結果だった夏ドラマ。

夏は視聴率が軒並み低くなるとはいえ、二桁の平均視聴率をキープしてるのが、北川景子主演の「家売るオンナ」だけとは、寂しい結果ではないだろうか。

そんな夏ドラマのどんよりした空気を吹き飛ばすくらい、秋のドラマは豪華な主役級を揃えて視聴者たちを虜にしようとしている。それが視聴率に繋がるかは別の話だが、各局とも気合は感じられる。
それではいつものように、◎ ◯ ▲ の3段階で評していく。


【月曜】
(月曜21時・フジ系)
「カインとアベル」(山田涼介主演)→▲

今、ジャニーズの中でも頭角を現してきたHey!Say!JUMPの山田涼介が月9初主演で禁断のラブストーリー。とはいえ、山田涼介はまだ弱い。いまだ金田一少年だったり、日テレの土曜枠主演イメージが拭えない。今後発表されるヒロインやライバルの兄貴役などでどこまでカバーできるか。物語にも左右されるはず。月9はここのところずっと視聴率が1桁台で苦戦を強いられているが、福山雅治でもダメだった月9を山田涼介で復権できるかは…。微妙なところである。

【火曜】
(火曜21時・フジ系)
「チームメディカル・レディ ダヴィンチの診断」(吉田羊主演)→◯

今の火曜22時からお引っ越しして、21時枠になって初ドラマ。
そして吉田羊の民放連ドラ初主演。
中島裕翔とのスキャンダルで干される干されると言われながら、相変わらずの売れっ子ぶり。WOWOWのドラマ主演に引き続き、満を持しての民放初主演でどこまで数字を伸ばせるか。
「チームバチスタ」のスタッフが集結して、女性陣で描く医療モノ。清純派から脱皮しつつある相武紗季、「あさが来た」以来出演作が続く吉岡里帆、立ちはだかる最大の敵に伊藤蘭と、演技派女優たちの重厚感あるドラマに期待。

(火曜22時・TBS系)
「逃げるは恥だが役に立つ」(新垣結衣主演)→◯

「リーガルハイ」以来、個性的な役柄も演じ、演技に幅が広がってきた新垣結衣の今作は、契約結婚する女性。就職先=結婚という一風変わった作風にも興味をそそられる。そんな新垣の相手役には、星野源とこれもまた面白そうな組み合わせ。女性に免疫のないサラリーマンの独身男というのも、素朴な印象な星野らしい人柄がうまく引き出せそう。この相交なさそうな2人がどんな風に惹かれ合っていくのか。ラブストーリーに一献を投じる作品であって欲しいと期待。

【水曜】
(水曜22時・日テレ系)
「校閲ガール」(石原さとみ主演)→◎

日テレ水曜枠のお得意な、働く女性を描いた作品。今作の「家売るオンナ」も好調だが、秋スタートの新ドラマでは出版社の校閲担当女性編集者に石原さとみが扮する。これまでも、たくさんの働く女性たちを描いて多くの共感を呼んできた水曜22時枠だけに、今回も痛快かつスカッとした作風に期待を寄せる。また普段目にすることのない"校閲"という仕事を通して、女性がいかに社会に斬り込んでいくのかにも注目。また相手役にはブレイク中の菅田将暉。大学生の作家役という、これまたクセのありそうな役柄。石原とのバトルにも目が離せない。続編の「ドクターX」を除けば、期待値はNo.1!

【木曜】
(木曜21時・テレ朝系)
「ドクターX」(米倉涼子主演)→◎

もう何言うことはないでしょう。過去連ドラ3シリーズとも大ヒットを飛ばし、1年ぶりに放送したスペシャルでも視聴率20%を記録したことで、抜群の安定感は証明済み。むしろネタ切れや視聴率低下を恐れ、「もうやらないで!」という声の方が多いのでは?しかしながら、「私失敗しないので」「いたしません」の決め台詞に死角なし。ラスボスに再登場の西田敏行、スペシャルが続投の生瀬勝久、そして彼らを超える曲者であろう吉田鋼太郎、美人だが腹黒そうな草刈民代と、米倉涼子を苦しめる最凶の素材を揃え、シリーズ最高傑作への挑む模様。

(木曜22時・フジ系)
「chef」(天海祐希主演)→◯

「離婚弁護士」「BOSS」などシリーズ化でヒットを飛ばし、この枠とは相性のいい天海祐希が3年ぶりのフジ系主演に選んだのは、元三ツ星シェフの給食のおばさん。自信に満ち溢れ、エベレストよりも高いプライドをへしおられ、給食のおばさんとして再びリベンジする物語…という内容からして、天海祐希にピッタリ。カッコいい→カッコ悪い→さらにカッコいい…という成長過程を備え持ったオーラで爽やかに見せつつ、可愛げなコミカルさも見せたら天海の右に出る者なし。彼女が悪戦苦闘しつつ、プライド以上に大切なモノを得ていく姿もまた、多くの共感を呼びそうだ。

【金曜】
(金曜22時・TBS系)
「砂の塔〜知りすぎた隣人」(菅野美穂主演)→◎

結婚後、連ドラ復帰初主演となる菅野美穂。そして最凶の隣人に松嶋菜々子と、この秋最も期待され話題をさらっているのがこのドラマ。相手役には三代目JSOUL Brothersの岩田剛典と、これまた豪華で見たくなるキャスト陣。タワーマンションを舞台に、ママ友たちの小競り合いや嫉妬、そして周辺で騒がれている誘拐事件と…。ドキドキ感を凝縮した内容。内容もさることながら、菅野美穂 vs 松嶋菜々子という二大トップ女優の競演が一番の見もの。久しぶりの悪役を演じる松嶋菜々子は「家政婦のミタ」を超えるインパクトにも期待を寄せられている。早く始まってほしいのが本音。

【土曜】
(土曜21時・日テレ系)
「ラストコップ」(唐沢寿明主演)→▲

スペシャル版とネット配信ドラマになった刑事モノの続編。刑事モノは安定した視聴率を約束されてはいるが、物語としてはワンパターンな傾向も否めない。「踊る大捜査線」のように、刑事はスーパーマンなどではなく、一般市民同様のサラリーマンという既成概念を覆して大ヒットを飛ばしたような、中身のインパクトに欠ければ、大誤算はないものの大ヒットも約束されない。前作もリメイクの「時をかける少女」だっただけに、オリジナルで勝負するのではなく、続編を据え置くのも正直ガッカリなところではある。

【日曜】
(日曜21時・TBS系)
「IQ246」(織田裕二主演)→◯

織田裕二が久しぶりの連ドラ主演。
これまで演じてきた熱い男ではなく、演じるのは一風変わったIQの高い貴族紳士。そんな彼が事件を求めて巷へ繰り出し、解決していくという物語。一話完結パターンはこれまでもよく放送されてきたから、演じる織田裕二の役柄に注目。スマートな割に浮世離れした金持ちというアンバランスさが目を引く。共演には朝ドラ以来、出演作の途切れない土屋太鳳とディーンフジオカ、そして織田にゾッコンな監察医に中谷美紀と、この4人だけでお腹いっぱいになりそうなほど魅力的なキャスティング。しかし織田裕二も最近は不調気味で露出も激減。だがこれまで代表作を数多く生み出してきた彼の功績でもある。今回の作品も、久しぶりの代表作となるか。

(日曜21時・フジ系)
「タイトル未定」(玉木宏主演)→▲
フジ系で再び復活したものの、いまだ視聴率が二桁に到達できない日曜ドラマ枠。今作の「HOPE」は良作で、決して質は悪くない。いかんせん、裏枠のTBSが強い。歴史もある。新規参入に対しては厳しいのが現状だろう。秋からは玉木宏の刑事モノらしいが、織田裕二もミステリーモノなのに、同じ類になりかねないところが残念ではある。TBSとは対極の作品を見せることが、勝利のカギとなるはずなのだが…。このまま低視聴率が続けば、再びドラマ枠撤廃もあり得る話だ。日曜の夜、ファミリー層を意識したフジらしいドラマに期待する。



(日曜22時半・日テレ系)
「レンタル救世主」(沢村一樹主演)→▲

日テレで唯一視聴率に苦戦しているドラマ枠。前々作が「ゆとりですがなにか」で社会派人間ドラマ、夏が「そして誰もいなくなった」とサスペンスと、毎回枠がコロコロ変わっている。そして今作は…?というイメージだ。
日テレが新設したドラマ枠も、設立して1年が経過したが、いまだ枠のテーマを決めかねているように思えてならない。水曜は働く女性モノ、土曜は学園&青春モノという日テレらしいテーマが固まれば、この枠のヒット作品も生まれてきそうだが…。「デスノート」がヒットし、その後も斎藤工の「日村英生の推理」や藤原竜也の「そして誰もいなくなった」も話題にはなっている。この枠はミステリーやサスペンスタッチ中心に作品を生み出していけばいいのではないだろうか。


以上。
秋ドラマの期待値発表でした。
個人的には、TBSがそれぞれの枠で異なるジャンルのドラマを制作しており、またキャストや中身も踏まえ本気度を感じるので、楽しみではあります。

さすが大竹しのぶ!と言わしめた「後妻業の女」

この映画は、予告を見た時から気になって仕方がなかった。
とにかく主演の大竹しのぶが大暴れしている印象が伝わったから。
それ以外にも、豊川悦司が関西弁でクソボケなどと似つかわしくない汚い言葉を吐いたり、尾野真千子が得意の勝気なキャラで大竹しのぶと大立ち回りしてみたり、おまけに笑福亭鶴瓶が脱ぐシーンまであるってんだから、これは見なきゃいけないと思わせる映画が「後妻業の女」だ。

やはり、大竹しのぶはすごい。
全編オール関西ロケで、もちろんしゃべる言葉は関西弁。
しかし彼女は東京出身。元旦那が関西人とはいえ、関西弁がしゃべれるとは限らない。が、関西弁も巧みに操り、おまけに数々の男達を手玉に取る悪女っぷりには脱帽である。二枚舌もええとこだ。

しかしながらこの映画は、遺産狙いというドロドロさをなぜか感じさせない。むしろ喜劇色が強いゆえに、上映時間の2時間半があっという間。笑いが絶えない作品になっている。

見どころといえば、大竹しのぶと笑福亭鶴瓶のラブシーンだろう。ディープキスもさることながら、over50と60の2人が見せる大胆なベッドシーンがとにかく面白い。鶴瓶が脚本や監督ではなく、相手役が大竹しのぶと聞いて即出演を決めたというんだから、その意気込みが十二分に現れている。

話を盛り上げるキャストたちも演技派が勢揃い。
先述した面々の他にも、長谷川京子、水川あさみ、風間俊介、永瀬正敏、余貴美子…。挙句、鶴瓶の兄弟子の笑福亭鶴光まで登場するんだから、まさに大阪を舞台にした映画にはもってこいのキャスティングだ。

全編、派手な服着たオバちゃんとして後妻業の女を演じた大竹しのぶ。そのファッションからして、大阪の街にいそうな感じで、大阪色に染まった様子が、演技を超えた大阪の女を創り上げていた。
相変わらず達者な女優さんだなと、つくづく感心させられる。

ブレないテレ東の「侠飯〜おとこめし」

テレ東は路線が明確だ。
いまやどの局も視聴率に苦しみ、得意路線すら見失いがちだ。
そんな中でも、テレ東は視聴率は二の次。ブレてない。
深夜ドラマ枠をいち早く打ち立てたのも、テレビ朝日とテレ東だ。

テレ東の深夜ドラマ・金曜深夜のドラマ24はこれまで数多くのインパクトあるドラマを残してきた。
映画化にもなった「モテキ」や「みんなエスパーだよ」
高評価だった「アオイホノオ」「勇者ヨシヒコ」
そして忘れちゃいけないのが「孤独のグルメ」だ。

サブカル的役割を担うドラマとして、ドラマの可能性を広げた「孤独のグルメ」を生み出した功績は大きい。
そんな「孤独のグルメ」を踏襲したドラマが、この夏からスタートした「侠飯〜おとこめし」だ。
ヤクザの抗争に巻き込まれた就活中の大学生が、ヤクザの組長に命を助けてもらった代わりに、しばらく家に匿う羽目に…。奇妙な同居生活の中で、組長が極上の"侠飯"を振舞っていく…。

一見Vシネマみたいなテーマのようだが、内容はお腹が空く夜食テロコメディ。自慢の腕を見せていく組長には生瀬勝久、彼を匿う大学生には柄本時生。
どちらも個性派俳優として名を馳せている2人が競演という時点で、これまた魅力的だ。

また生瀬勝久の組長が板についている。
これまでは割と饒舌な役が多い印象だが、今回は口数も少なめな寡黙さでヤクザの怖さを感じさせつつ、人々を唸らせる料理のうまい組長というギャップが愉快で面白い。表情一つ変えず、淡々と美味しい料理を作るところも見所だ。

そんな彼に怯えながら暮らす大学生役を演じる柄本時生もまたおかしい。うんざりしつつも、どこか彼らとの生活を楽しみつつ、少しずつ絆を深め、心を許していく姿がうまい。また就活中の大学生という彼の年齢としても等身大の役柄がハマっている。生瀬の片腕役の三浦誠己との、兄弟のような掛け合いもまた面白い。

"夜食テロ勃発!"という触れ込みのとおり、毎週お腹の虫が鳴き止まないであろう料理が続々登場するであろうこのドラマ。
単なる料理紹介にとどまらず、ヤクザを匿った大学生と、匿われたヤクザが今後どうなるのか。さすがにずっと同居ってわけにはいかないだろうけど、いざ彼らが姿を消すと寂しい展開になるのは目に見えている。

Vシネマのように血まみれで登場人物全員死ぬ…みたいなアンハッピーな展開にだけはならないで欲しいと、切に願う。まあ中身からして、そんなドラマではないから大丈夫ではあろうけど。
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