吉田食堂、ドラマ好きですがなにか

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

有村架純と高橋一生に目を奪われた「3月のライオン」

今年初の大作と言っていいだろう。
大友啓史監督の最新作「3月のライオン」
大友監督といえば、これまでの作品を振り返ると代表作の「るろうに剣心」シリーズを始め、「プラチナデータ」「秘密」「ミュージアム」など、ハードなアクションを得意とする作品が多かった。だが今回の「3月のライオン」では、生身の人間同士が武器を使って傷つけ合うというアクション作品ではなく、濃密な人間ドラマが描かれている。

主演の神木隆之介を始め、染谷将太、伊藤英明、佐々木蔵之介、豊川悦司、加瀬亮といった演技派たちがプロ棋士として軒を連ねており、重厚感が味わえる。その一方で倉科カナや清原果耶、板谷由夏ら女優陣たちが花を添え、日々厳しい戦いを挑む神木演じる桐山に安らぎを与えており、物語の中でも緩和的な役割を果たしている。

大河ドラマ並みの豪華出演者たちの中で、際立っていたのがやはり有村架純だろう。公開前から話題になっていたが、今回の有村はこれまでと違った悪役的立ち位置。有村演じる香子は、桐山を虐げる義姉。事あるごとに"ゼロ"となじり、桐山が家を出て離れて暮らすようになってからも度々姿を見せてくる。桐山にとって、ある意味目の上のたんこぶ。だがその心の奥底では、豊川演じる父・幸田に認められたいのに見放された孤独感と、伊藤演じる後藤と不倫関係にあるのもその孤独を埋めるため。父にプロ棋士になりたい夢を強制終了させられた元凶である桐山を嫉妬と憎悪の入り混じった複雑な心境で接しながら、羨ましさも抱えている。

有村架純はこれまで儚さというよりも、都会の中でたくましく生きる女の子を演じているイメージだ。連ドラ初主演「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」や、映画「ビリギャル」でも逆境をはねのける姿を見せているのが印象的だ。か弱いイメージはさほど見ない。初の悪役で新境地ではあるものの、これまでに見せてきたたくましい女の子像を活かし、Sっ気のある気性の激しい女性はピッタリな感じもした。朝ドラ「ひよっこ」やアクションに初挑戦した映画「関ヶ原」など、今年は有村の様々な姿を見せてもらえそうだ。

そしてもう1人、高橋一生。
主要キャストではないため、出番も少なかったものの、桐山の通う高校の担任教師・林田として、孤独な桐山の唯一の味方といっていい役柄だろう。端正な顔立ちをしていながら、理屈っぽくクセがあり、面倒くさいキャラを演じさせたら右に出る者がいないほど毎回作品ごとにインパクトを残す高橋だが、今回は彼が「3月のライオン」の中でも良心的な立ち位置に見えた。

「お前俺より稼いでるだろ。奢れ」
「早く行け!出席日数なんか、俺に任せとけ」

一言一言が桐山を優しく後押しし、そして高橋が醸し出す雰囲気が鮮明に記憶に残った。これまで彼はクセのある役柄で脚光を浴びてきたが、今回のさりげない優しさを見せる役柄もまた、彼の新しい姿を今後見せてくれるに違いない。

前編でこれだけのインパクトを残した「3月のライオン」。後編では、川本家の問題児的父親として伊勢谷友介が登場したり、倉科カナや清原果耶もフューチャーされることが多くなるなど、川本家との関わりがより濃く描かれる模様。大友監督が得意とする武器を使ったアクションではないが、人間同士が魂をぶつけ合う姿を見せる「3月のライオン」もまたある意味でアクション映画だろう。

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この冬、最も期待を掻っ攫った「カルテット」

この冬、最も話題をさらったドラマが最終回を迎えた。
「カルテット」だ。
視聴率こそ低かったものの、松たか子・満島ひかり・高橋一生・松田龍平の演技派4人の競演という話題性と、坂元裕二脚本による質の高さによって、回を追うごとに中毒性を帯びる視聴者が急増したことは明確だ。序盤はそれぞれが秘密を抱えた穏やかな展開が、中盤以降は一気にサスペンス化が加速し、そして最終章へと盛り上がったペース配分に、思わず唸った。

絶妙だったのはカルテット4人の役割。4人とも演技派というだけあって、これまで真っ当な役柄よりもクセのある役を多く演じてきただけに、むしろ演技派の良さがかえって諸刃の剣としてドラマを胃もたれしかねないのでは?と当初は考えられていたが、見ていくとその心配は無問題だった。主役ながらもニュートラルな立ち位置の松たか子、物語を牽引する満島ひかり、得意の引っ掻きっぷりを見せた高橋一生、穏やかなまとめ役の松田龍平。誰もかぶるキャラクターがおらず、ほどよくバランスのとれた4人が奏でるハーモニーが、毎回釘付けにしワクワクが止まらない。満島演じるすずめの言葉で表現すると、"みぞみぞする"という表現だろうか。

「カルテット」の良さは、毎回書いているかもしれないが、ラブサスペンスと謳いながらも、くだらない笑いを決して忘れなかったところだ。最終回では、初回に登場した唐揚げレモン論争が再び巻き起こる。学習したはずの3人だが、高橋演じる家森に再び説教される。付け合わせのパセリを蔑ろにしていないか…と。とにかくくだらない。だけど、なぜか笑ってしまう。むしろ初回で見た時のくだらない印象以上に、最終回でのくださらなさの笑いがレベルアップしている。全話見て、完全に「カルテット」にハマった証だろう。

そして先週でフェードアウトしたはずの吉岡里帆、やっぱり出てきた。「人生ちょろかったー!」と宣言しながら相変わらず目の奥が笑っていない、ちっとも反省の色すら見せない小悪魔・有朱。間違いなく吉岡がこれまで見せたことのない役柄で、「カルテット」は彼女のターニングポイントになったに違いない。

「逃げるは恥だが役に立つ」で一気に注目を浴びたTBSの火曜22時枠が、「カルテット」でさらに個性的な枠として一層期待感が高まったに違いない。4月からは朝ドラ以降、良質な作品に恵まれている波留がTBS初主演を務める「あなたのことはそれほど」が控えている。清楚な波留が不倫に溺れていくという、これまでにない役柄を演じることも新しい挑戦であり、夫役の東出昌大も妻の不倫に心が壊れていくという、これもまた朴訥な彼の新しい一面が見ることができそうだ。

「逃げ恥」で注がれた期待度をいい意味で裏切り、むしろ期待以上のクオリティを見せてフィナーレを迎えた「カルテット」。春ドラマが始まるまでのインターバル期間中に、もう一度1話から見直してみると、新たな発見があるかもしれない。たくさん伏線があるから、じっくり見返す面白さもまた「カルテット」の良さなのだろう。

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佐藤浩市もカッコいいが、山口智子もカッコよかった「LEADERS」

佐藤浩市がとにかくカッコいい。
映画「64」でも、リーダーシップを発揮し、周囲の人々を諭して導いていく姿は今回の「LEADERS」でも重なる部分があった。だが「64」と明らかに違うところは、純粋さ。国産車生産の夢を一途に追いかけ、実現に向け、幾度も挫折を繰り返しながらも、決して諦めることなく仲間たちと歩みを進めていく。強烈なカリスマ性を放って先頭に立ちながら、社員を"家族"のように大切に思い、多くの人々に慕われた愛知佐一郎を演じていた佐藤。戦後の不景気による資金繰りや労働争議に頭を悩ませながらも、考えていることはいつも車のことばかり。いい意味での車バカ。社員も呆れるほどの車好きで、初志貫徹というべき変わらぬ姿勢が清々しく、微笑ましい。子供のようにエンジンの改良を社員たちと汗まみれ泥まみれになりながら無邪気に笑顔を見せる姿は、見ている側をも虜にさせる。骨太な印象の佐藤が見せる大人のピュアさが、これもまたカッコよく映る。

そんな佐藤演じる佐一郎を支える社員たちも、またカッコいい。理想ばかり追い求める佐一郎を諭しつつ、社のために尽力する副社長石山を橋爪功、佐一郎の国産車生産の夢に力を貸す社員たちに椎名桔平、吉田栄作、萩原聖人、高橋和也、えなりかずき、緋田康人、須田邦裕…など。佐一郎に共鳴し、国産車生産の夢を共に追いかける仲間たちの友情が深まるっていくがゆえ、彼らが労働争議で激しく対立する様子は特にリアルで痛々しく、そして悲しい。

男くさいこのドラマの中で、特に印象に残ったのが山口智子の存在感だ。目立った女優陣といえば、山口と宮沢りえ、そして前田敦子の3人くらいだろう。ものづくりと格闘する男たちのヒリヒリした日々を描いている中、山口演じる佐一郎の妻・晴子が出てくるとこれまでの緊張感が嘘のように切り替わる。「まあまあ」と佐一郎を始め、訪れる人々を宥めながら、穏やかな空気感を醸し出し、おもてなしをする晴子はまさに良妻賢母。そんな彼女だが、佐一郎が命を蔑ろにしようとする言葉を口にした時、激昂。彼女もまた、ものづくりに命を削ろうとする佐一郎を命懸けで止めようとする姿は男たち以上にとてもカッコよく見えた。どんな時も佐一郎を信じ、佐一郎を支え続け、そして佐一郎が家族だと謳う社員たちにも家族のように愛情深く接する晴子を演じた山口は、色褪せぬ女優としての魅力を放っていた。「ダブルキッチン」「29歳のクリスマス」「ロングバケーション」などの代表作では、彼女が男性以上に自立してカッコ良さを存分に放っていたが、今回の「LEADERS」ではカッコ良さもさることながら、むしろ男を立てる女性という新しい山口智子の姿を見せていたことも注目すべきところであったといえる。

今週26日には「LEADERS 供廚箸いΑ⊃靴靴ぁLEADERS」のドラマが幕を開ける。これまでのキャスト陣に加え、内野聖陽や東出昌大、菅野美穂、郷ひろみ、大泉洋、山崎努など日本を代表する役者たちがさらにドラマを盛り立てるとのこと。「LEADERS 供廚録轡ャストたちも佐藤浩市や山口智子に負けず劣らず、とにかくカッコいい姿がきっと目に焼きつくドラマになるに違いない。

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ドキュメンタリーを超えたドキュメンタリードラマ「山田孝之のカンヌ映画祭」

これは本当にフィクションなのか。
そう思わせるくらいの緊張感が毎回伝わるドラマが「山田孝之のカンヌ映画祭」だ。

山田孝之といえば、いまや演技派・個性派として広く知られている実力派若手俳優の1人。かつては「ちゅらさん」「恋がしたい恋がしたい恋がしたい」「ウォーターボーイズ」「世界の中心で愛をさけぶ」などで見せていたピュアで純朴な高校生などを演じることが多く、整ったルックスもそのイメージを後押ししていた。

だが、いつしかそんな役柄からかけ離れるような、まるで真逆の役柄を目にする機会が多くなった。映画「クローズ」あたりからか。極め付けは「闇金ウシジマくん」だろう。瞬き一つせず、口数も少ない丑嶋馨の威圧感を見せた彼の姿は間違いなくデビュー当時のピュアな少年からは一皮も二皮も向けたと言っていいだろうし、実際「ウシジマくん」は彼の代表作にもなった。以降は主演もさることながら、バイプレイヤーとしても唯一無二の存在感を放ち続けているのは言うまでもない周知の事実。

そんな彼がドキュメンタリータッチのドラマとして主演を務めているのがテレビ東京系の「山田孝之のカンヌ映画祭」だ。昨年放送された「山田孝之の東京都北区赤羽」が深夜ながらその一風変わった内容に反響を呼び、その流れを汲んだかのような作品が今回の「カンヌ映画祭」

「映画界の最高峰、カンヌ映画祭で賞を取りたい」
そんな何気ない山田の一言で始まったことがきっかけとなり、監督として山下敦弘、主演女優として芦田愛菜をはじめ、多くの映画界を代表する役者やスタッフたちが山田の一途なカンヌ映画祭受賞目標と、それに向けた予測不可能な山田の発言と行動に振り回され、翻弄されていく様が、時に滑稽で、時にピリッとした緊張感を生み出している。

最終回を前にして、これまで苦楽を共にした監督の山下は山田と対立した末に降板させられ、制作陣がバラバラになる様子を見かね、主演の芦田も山田に三行半を突きつけて現場を後にする…。回を追うごとに山田の純粋な思いが少しずつ歯車を狂わしつつ、暴走し始め、その矛先が山下や芦田たちをかき乱した結果が映画の無期延期という最悪の事態を招くという結末に至る最終章。そしてドラマは今週、いよいよ最終回を迎える。

皆が本人役として出演し、特に山田に至っては世間へのイメージを恐れることなく挑んでいることを讃えたい。「これは本当の話?だったらヤバくないか?」みたいな風に思わせるほどの本気の空気感を生み出しているこのドラマは、ドキュメンタリーという一言では片付けられない。テレ東らしくて、テレ東にしか作られない。テレ東だから作ることができた。演じるという行為を超えた演技をリアルに見せ、極限まで追い込んだギリギリ感のある遊び心がたっぷり詰まった「山田孝之のカンヌ映画祭」。この作品を生み出したことが、カンヌを沸かせる作品だろう。

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「下剋上受験」は、TBSを代表するホームドラマの一つ

TBSでは、これまで数多くのホームドラマが誕生した。「ダブルキッチン」「スウィートホーム」「私の運命」「長男の嫁」「理想の結婚」「オヤジぃ」「おとうさん」など。嫁姑バトルから家族を主体とした作品まで、TBSの御家芸といってもいいくらい、得意分野の一つであろう。
今期はそんなTBSにまた一つ、新たなホームドラマが生まれた。
「下剋上受験」である。

娘の中学受験の実話を基にしており、家族二人三脚で難関中学合格を目指す物語。阿部サダヲを演じる信一は、自身が中卒という経験上、山田美紅羽演じる佳織の将来に不安を覚え、最難関の私立中学合格を目指そうと娘や家族、仲間たちと奮闘していくのだが、その道のりは想像をはるかに超えるものであった…。

TBSで受験モノといえば、「スウィートホーム」が懐かしい。この時は私立小学校受験をテーマにしつつ、お受験にのめり込む母に山口智子、そんな妻に振り回される夫を布施博。お受験ブームを起こし、また同じようにお受験を通して家族のあり方をコミカルに描いていた。お受験専門の塾講師を演じていた野際陽子や、山口と布施夫婦をライバル視する隣人に段田安則と深浦加奈子という個性的な顔ぶれがドラマを盛り上げていたのが記憶に残っている。布施以上にお受験にハマる山口の父に橋爪功、山口の妹にはブレイク前の瀬戸朝香と、今から考えると出演者も豪華な顔ぶれで、西萩弓絵脚本も愉快で面白かったことが印象に残っている。

「下剋上受験」は「スウィートホーム」のようなコメディにバトルチックを加味した要素はないものの、ホームドラマを軸にしつつ、笑わせつつ、ほろりと泣かせ、ヒューマンやコミカルな要素を取り入れた受験ドラマだろう。信一を演じた阿部サダヲは本来備えたコメディセンスを見せつつも、娘に対してまっすぐに愛情を注ぐ父親を好演。大ヒットを記録した「マルモのおきて」でも芦田愛菜と鈴木福の父親代わりを演じ、その時でもコミカルさと愛情深さの絶妙な匙加減の芝居センスを見せていたが、今回もまたその阿部らしい良さが出ていた。

連ドラ初挑戦だった娘役の山田がまた泣かせる。期待を背負いつつ、なかなか上がらない偏差値と格闘しながらも、ライバルとの友情、両親や周りの人たちへの愛情を改めて感じながら、受験勉強を通して成長していく等身大の小学生・佳織を体現していた。彼女もまた、今後子役として様々な役柄を演じていくであろう、楽しみな女優の1人だ。

そんな2人を支える妻であり、母・香夏子を演じていたのが深田恭子。ディーンフジオカと共演した「ダメな私に恋してください」で再ブレイクし、前回のラブコメとは全く違う母親役に連ドラで初挑戦。しかし深田の母親役に違和感なく、これがハマり役。阿部演じる信一同様中卒のギャル育ちながらも、家族の精神柱として時にどっしり構え、受験生活に奮闘する信一と佳織を見守る良き妻であり、良き母を深田もまた好演。阿部サダヲとの夫婦役も相性ピッタリに感じさせ、深田が持つほんわかした空気感が輪を掛けて、受験ドラマ特有のピリピリ感を和ませるホームドラマらしい味付けを加えていた。

信一の父親を近年は大河ドラマや映画て引っ張りだこの小林薫、信一の後輩で中学受験経験者でアドバイザー的役割でサポートする楢崎を風間俊介、信一の同級生で佳織のライバル・麻里亜の父を要潤と、バイプレイヤーたちも一役も二役買っている存在感を放っていた。

加えて泣かせるのが、斉藤和義の主題歌「遺伝」。「遺伝するのは、顔だけか?」などの歌詞がドラマとマッチし、胸に染み渡ってくるバラード。毎回エンディングに流れてくると、さらに感動の波が押し寄せてくる効果を及ぼしていた。

昨日、佳織の中学受験合格で最終回を迎えた「下剋上受験」。間違いなく、TBSを代表するホームドラマの一つになっただろう。

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追悼・渡瀬恒彦さん

いつもはドラマや映画の論評を書いていますが、今回は特別に俳優さんのことを書きたくなりました。
渡瀬恒彦さんのことです。
今朝、他界されたと報道されました。

渡瀬恒彦さんといえば、「十津川警部シリーズ」や「タクシードライバーの推理日誌」「世直し交渉人」といった2時間ドラマのシリーズ物を多く抱え、一方では「おみやさん」や「警視庁捜査一課9係」などの連ドラでも長寿番組として今も現在進行形としてシリーズが放送されている作品で、全て主演を務めている。日本のドラマ界において欠かせない役者だったと言っても過言ではないだろう。

年々円熟味を増し、渋さと同時に圧倒的な存在感を放ちながら、どこか飄々としたコミカルな一面も覗かせる見せ方も渡瀬さんらしさを感じさせた。

そんな渡瀬さんの出演作で最も印象に残っている作品は、朝ドラ「ちりとてちん」だ。吉田食堂が落語と縁のある仕事をしているということもあるのだが、彼の演じた噺家・徒然亭草若という役は上方落語における大看板という立ち位置だった。存在感はもちろん、その存在感が放つ可笑しみ、そしてどこか艶っぽさも感じさせ、自然と人を惹きつけていく。草若という噺家のキャラクターは、渡瀬さんと重なるところが多々あったのではないだろうか。「ちりとてちん」で貫地谷しほりさん演じるヒロインの喜代美を、幼い頃に落語の世界へと導き、そして彼女が大人になってからは師弟として、優しさと厳しさを併せ持ちながら、彼女を見守っていく。皮肉なことに渡瀬さんが演じた草若もまた、志半ばで病に倒れ、物語中盤で他界するのだが…。

渡瀬さんの実兄・渡哲也さんが言っていた。「喪失感が拭えない。辛さが募るばかり」
当然だろう。我々も渡瀬さんが他界したことは、まだどこかで受け止めきれていないところがある。現実味がない。4月から新シリーズがスタートする「警視庁捜査一課9係」に、ひょっこり出てくるのかもしれない。そんな期待すら寄せてしまいそうだ。

渡瀬恒彦さん。
本当にたくさんの作品で、楽しませていただきました。ありがとうございました。長い間、お疲れ様でした。
心より、御冥福をお祈り申し上げます。

合掌

WBCに負けない「カルテット」最終幕開幕!

不謹慎な発言かもしれないが、WBC早く終わってくれー!と思ったことは本音である。なぜにクライマックスで盛り上がる「カルテット」にぶつけてくる?恨みでもあるのか?しかも2週連続。結局どちらも1時間遅れで23時前スタート。皮肉にも、通常放送よりも視聴率が高かったことはWBCのおかげなのか、それとも「カルテット」の最終幕に向けた注目度なのか。もちろん後者と信じたいし、声を大にして言いたい。

宮藤官九郎が出てきてから、一気にサスペンス色が増した「カルテット」は、先週再び松たか子演じる真紀が、実は真紀じゃない…という衝撃的な真相で、さらにサスペンス度が増したといえよう。「は?どういうことですか?」とハテナマークを引きずったまま、この1週間を過ごし、昨日の放送に至る。

実は早乙女真紀という戸籍を買った偽名ということが判明。本当の名前は、山本アキコ。母は演歌歌手で子供の頃に他界。義理の父と暮らすが、日常的に暴力を振るわれて過ごし、やがて戸籍を買って別の人間になりすまし、失踪。その間に宮藤官九郎演じる幹生と結婚したり、カルテットを組んだり、ささやかな幸せを感じつつも、警察の追跡がついに真紀の元へやってくる…。というのが昨日の話。

嘘の人生を歩んできたものの、その嘘の人生が小さな幸せをもたらし始めた矢先、その幸せも終わりを迎える…という悲しみ。絆を深めたカルテットメンバー3人との別れ。真実を告げようと涙ながらに話そうとする松たか子に、満島ひかり演じるすずめがそっとハグをする。そんな2人の様子を見つめ、高橋一生は暖炉に火を灯し、松田龍平はハーブティーを注ぐ。「あなたの帰ってくる場所はここだよ」そんな言葉で包んでくれているような、じんわりとした空気感がもたらした4人の別荘でのシーンは、格別だった。

だが「カルテット」のスゴいところは、最終幕でサスペンス温度が高まっている時でも、くだらない笑いを忘れないところにあるのではないだろうか。第1話の唐揚げにレモンをかけるかけないに始まり、ゴミを出す出さないで大揉めの第4話、そして昨日の第9話ではホッチキスやバンドエイドは商品名で、本当の名前はステープラーに絆創膏…高橋一生のモノマネも加わり、くだらない笑いもサスペンス並みに高まりつつ、そのくだらなさが後々の伏線に繋がっているんだから、ある意味ズルい。また見てしまう、見たくなる、そんな中毒性を放っているのが「カルテット」を手掛けた坂元裕二の秀逸なマジックだろう。

そして吉岡里帆。「カルテット」の中で、物語を引っ掻き回す悪女を演じていた彼女は、今後さらに飛躍することが期待されたに違いない。最近の悪女の代表格といえば菜々緒だが、吉岡は彼女のように目立ったヒール役というタイプの悪女ではなく、当たり前のように側に存在し、敵か味方かわからない不気味さを持ち合わせた悪女。だから何をしてくるか予測不能で、怖い。昨日でフェードアウトしたようだが、最終回でも再び現れるだろう。どんな爪痕をのこしていくのか、注目だ。

そして来週はいよいよ最終回。
なのに、なのに、みたびWBCがあるようだ。
最終回なんだから22時スタートを願う。

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「A LIFE〜愛しき人」で見せる松山ケンイチの存在感

「A LIFE〜愛しき人」が来週最終回を迎える。
主演の木村拓哉もさることながら、対極側で悪役を演じた浅野忠信と及川光博の存在感の大きさを示した作品だと言える。「ドクターX」のように天才外科医が決め台詞を持ち、痛快に展開する医療ドラマではなく、キャラクターそれぞれの内面を深く描いた作品であった。人間ドラマの名手である脚本家・橋部敦子の手腕があってこそだろう。

アクの強い役者陣の中でも、松山ケンイチは今回珍しくその"アク"を抑えたポジションだったことも興味深い。映画「デスノート」でのLはもちろん、ドラマでも彼がこれまで演じてきた作品は「銭ゲバ」や「ど根性カエル」のような漫画原作で特異的な作品も多い。そんな彼が今回演じたのは、自信過剰な外科医で、大病院の御曹司・井川。

前半は及川演じる外科部長・羽村のコバンザメ的な立ち回りで、木村演じる沖田に何かと対抗意識を向けていたものの、自身の失敗経験や患者第一に考え真摯に向き合う沖田に影響を受け、徐々に成長し変化を遂げていく。と同時に、自身の医師としての方向性に悩みを抱えていくという、このドラマで最もまっすぐで人間くさい役を松山が演じている。

一方で、木村文乃演じるオペナース・柴田に一途な思いを抱き、冷たくあしらわれても、めげることなく一直線に自分の思いを伝えていく不器用ながらかわいらしい一面を覗かせる井川を、憎めない愛されキャラクターに松山が創りあげている。

昨今の作品でいえば、映画「聖の青春」の役作りで、体重を20キロ増量させて撮影に臨んだ松山。役作りに臨むストイックさは折り紙付きだが、今回彼が演じた井川は、これまでの漫画チックなキャラクターとは違い、等身大の青年という難易度もより高度な役柄。尚且つ、個性派が揃う今回のドラマの中でも、男性キャラの中で唯一清涼剤的な役割を果たしている。

「A LIFE〜愛しき人」では、浅野忠信や及川光博、菜々緒といった悪役を牽引している役者たちが存在感を放っている一方で、松山ケンイチが演じる"普通の青年"の存在感もまた大きい。

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「コードブルー」続編ふたたび…。そして新垣結衣への期待値

4月の新ドラマが出揃った中で、フジ系月9枠で「コードブルー」が7年ぶりのシーズン3をスタートさせるということで話題になっている。

「コードブルー」といえば、主演の山下智久をはじめ、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介の5人の医師と看護師を中心としたドクターヘリを扱った群像劇。
第1シリーズは木10枠で最高視聴率を20%超獲得し、スペシャルも20%以上、第2シリーズは月9枠へ移ったものの、平均視聴率は第1シリーズを超える人気作。第2シリーズの結末の様子から、続編を伺わせるような終わり方だったことで、スペシャルなのか続編なのか、続きを期待されていたものの、時が流れ、気が付けば7年後というこのタイミングでの続編発表は一体何なのか。

それは月9復権と、月9枠の30周年記念という意味合いがあるだろう。「コードブルー」の前に放送される相葉雅紀主演の「貴族探偵」は、中山美穂や仲間由紀恵といった主役級を脇に回してのキャストの配置。前にも書いたが、中山美穂が脇に回ることなど、ほぼ初めてのことではないだろうか。相葉雅紀主演のドラマで豪華出演陣集結いうより、中山美穂が女性出演者4番手ということの方が話題であるこのドラマ。

そのバトンを受け継ぐのが、7月の「コードブルー」だ。固定ファンもおり、医療ドラマは安定的な視聴率も望める。フジ系の人気作「救命病棟24時」と肩を並べるくらいのシリーズ化になるやもしれない。

ただ、主演の山下智久は、昔ほど数字を期待されてはいない。「コードブルー」第1シリーズや月9で主演を務めた「プロポーズ大作戦」「ブザービート」などの時に比べると、下降気味。ポスト木村拓哉と言われていたこともあったが、そんな木村拓哉ですら平均視聴率が15%を取るのがやっとの状態が今のドラマ界。山下は4月から日テレで亀梨和也主演の「ボク、運命の人です」に出演予定だが、この作品も前述した「プロポーズ大作戦」と内容が酷似ではないかという話も出ている。実際脚本が「プロポーズ大作戦」と同じ金子茂樹氏、山下は神様役という設定であるが、「プロポーズ大作戦」の時は三上博史が神様役を務めていた。脚本と神様役という設定の2条件に加え、山下智久の出演からそういう話が出るのも、正直無理はないのかもしれない。まだスタート前なので、どんな内容なのかは見てのお楽しみではあるが…。

むしろ、山下以上に今期待されているのは新垣結衣だろう。代表作「逃げるは恥だが役に立つ」でさらにブレイクを果たした今、次回の連ドラ出演が待ち望まれている彼女が出演する作品は「コードブルー」。新垣が20歳の時に第1シリーズ放送となった「コードブルー」は、これまで高校生役の多かった彼女が大人の役柄で、尚且つ職業モノの役を演じた第一歩にふさわしい作品だろう。以降は弁護士やSATの狙撃隊員、探偵など、様々な職業モノを自然体に演じてきた。

当時はドクターヘリにも不慣れで、フェローの中でも受動的な白石役を演じていた新垣も、7年後の「コードブルー」第3シリーズではさらに成長した白石を見せてくれるに違いない。それは彼女が培ってきたこれまでの女優としての過程を最大限に活かし、これまでのイメージだった"かわいい"や"キレイ"だけではない、"カッコいい"新垣結衣を見ることができるかもしれない。それもまた、ナチュラルに演じてくれることであろう。

続編に対して、なぜ7年後の今?という疑問があるものの、人気作の「コードブルー」が今回はどんな展開を見せるのか。放送が待ち遠しい。ただ7月スタートを今発表してしまい、4月スタートの「貴族探偵」は正直霞んでしまってはいないだろうか。

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伝説のドラマ「ラストフレンズ」ふたたび…。

久しぶりに「ラストフレンズ」の再放送が関西地区で始まり、話題になっている。
「ラストフレンズ」とは、フジ系の木10で10年前に放送された若者たち5人の群像劇。長澤まさみ、上野樹里、瑛太、水川あさみ、錦戸亮という豪華共演で話題となり、高視聴率を獲得した。

中でも話題となったのは、性同一性障害を抱える瑠可を演じた上野と、長澤演じる恋人・美知瑠にDVを行なう宗佑を演じた錦戸。彼ら2人にとって、これまでにない役柄を演じたことは高く評価され、尚且つ衝撃的なシーンも数多くあったといえる。
第1話から、錦戸が長澤に暴力を振るい、ラストでは上野が眠る長澤にキスをするなど、視聴者にインパクトを与え、話題性を生んだ作品である。

一方で脇役を固めた大人たちも秀逸で、田中哲司や平田満といった配役もさることながら、中でも長澤の母親役・倍賞美津子がハマリ役。男にだらしなく、娘に金をせびるというアバズレな母をねっとりと印象深く演じていた。

そして近年のドラマでは少なくなった主題歌に合わせたタイトルバックがあったことも、このドラマの特徴の一つ。宇多田ヒカルの「Prisnor of love」に合わせ、主要キャスト5人が真っ白いカーテンに包まれた部屋を迷いながら赤い糸に導かれながら進んでいく…。タイトルバックからラストの暗示や意図を込めたところも、遊び心が詰まっていた。
(※ 瑛太の目線や、ラストで他界する錦戸亮だけ黒いネクタイをしている…など)

再放送とともに、話題性に上がるほど、当時人々を夢中にさせた「ラストフレンズ」。昨年は「逃げ恥」が久しぶりに世間を賑わせていたが、今後も再放送に負けないリアルタイムで放送中のドラマが話題性をさらう作品が出てくることを切に願う。

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