吉田食堂、ドラマ好きですがなにか?

作家&プロデューサー・吉田食堂の…。 ドラマと映画に関する噺

ブレないテレ東の「侠飯〜おとこめし」

テレ東は路線が明確だ。
いまやどの局も視聴率に苦しみ、得意路線すら見失いがちだ。
そんな中でも、テレ東は視聴率は二の次。ブレてない。
深夜ドラマ枠をいち早く打ち立てたのも、テレビ朝日とテレ東だ。

テレ東の深夜ドラマ・金曜深夜のドラマ24はこれまで数多くのインパクトあるドラマを残してきた。
映画化にもなった「モテキ」や「みんなエスパーだよ」
高評価だった「アオイホノオ」「勇者ヨシヒコ」
そして忘れちゃいけないのが「孤独のグルメ」だ。

サブカル的役割を担うドラマとして、ドラマの可能性を広げた「孤独のグルメ」を生み出した功績は大きい。
そんな「孤独のグルメ」を踏襲したドラマが、この夏からスタートした「侠飯〜おとこめし」だ。
ヤクザの抗争に巻き込まれた就活中の大学生が、ヤクザの組長に命を助けてもらった代わりに、しばらく家に匿う羽目に…。奇妙な同居生活の中で、組長が極上の"侠飯"を振舞っていく…。

一見Vシネマみたいなテーマのようだが、内容はお腹が空く夜食テロコメディ。自慢の腕を見せていく組長には生瀬勝久、彼を匿う大学生には柄本時生。
どちらも個性派俳優として名を馳せている2人が競演という時点で、これまた魅力的だ。

また生瀬勝久の組長が板についている。
これまでは割と饒舌な役が多い印象だが、今回は口数も少なめな寡黙さでヤクザの怖さを感じさせつつ、人々を唸らせる料理のうまい組長というギャップが愉快で面白い。表情一つ変えず、淡々と美味しい料理を作るところも見所だ。

そんな彼に怯えながら暮らす大学生役を演じる柄本時生もまたおかしい。うんざりしつつも、どこか彼らとの生活を楽しみつつ、少しずつ絆を深め、心を許していく姿がうまい。また就活中の大学生という彼の年齢としても等身大の役柄がハマっている。生瀬の片腕役の三浦誠己との、兄弟のような掛け合いもまた面白い。

"夜食テロ勃発!"という触れ込みのとおり、毎週お腹の虫が鳴き止まないであろう料理が続々登場するであろうこのドラマ。
単なる料理紹介にとどまらず、ヤクザを匿った大学生と、匿われたヤクザが今後どうなるのか。さすがにずっと同居ってわけにはいかないだろうけど、いざ彼らが姿を消すと寂しい展開になるのは目に見えている。

Vシネマのように血まみれで登場人物全員死ぬ…みたいなアンハッピーな展開にだけはならないで欲しいと、切に願う。まあ中身からして、そんなドラマではないから大丈夫ではあろうけど。

「家売るオンナ」は北川景子の代表作となるか。

夏ドラマのスタート平均視聴率は軒並み低空飛行。
トップですら12%台というんだから、これが決していい数字とは言えない。
そんなトップスタートを切ったドラマが「家売るオンナ」
北川景子の結婚後初主演ドラマとして放送前から話題となっていた。

北川景子は、昨年夏に「探偵の探偵」というハードなドラマに臨んで新境地を開拓したが、今回の「家売るオンナ」もまた新境地に近い役柄だ。家を売るためなら手段を選ばない女・三軒家万智。クスリとも笑わない能面のような顔付きは、かつて松嶋菜々子が演じた「家政婦のミタ」を思い出す。

しかし「家政婦のミタ」とは違い、「家売るオンナ」はライトコメディーといったところだ。毎回出てくる家を買いたいお客と売りたいお客の絡みから、彼らの問題を解決し、結果家を売ることにも成功する…というお決まりの流れで構成されている。

やはり北川景子は、コメディだと遺憾なく力を発揮するようだ。シリアスなドラマにも数多く出演してはいるが、クールビューティーな風に見えて天然だったり抜けているような役柄といったギャップで魅了してきた実績があるだけに、今回はまた一風変わったコメディでコメディエンヌとしての才能を開花しつつある。

またこのドラマの面白いところは、脇役陣だ。
純粋だけど出来の悪い営業マン役に工藤阿須加。
エリートだけど、実は腹黒な営業マンに千葉雄大。
そんな千葉にゾッコンで、仕事やる気ゼロの契約社員にイモトアヤコ。
出世を諦め、窓際族として余生を楽しむ社員に梶原善。
曲者揃いの面々に悪戦苦闘しつつ、やる気が空回り気味な課長に仲村トオル…と、どれも一筋縄ではいかないキャラクターが揃い、魅力的だ。

特に小悪魔のような笑顔を振りまく、千葉雄大演じる足立の腹黒さが◎ 笑顔から一瞬にして波が引いたように真顔へと豹変する変わりっぷりにはゾッとする。

またこのところ、三枚目役が板についてきた仲村トオルも見逃せない。かつてビーバップで世間を賑わせ、二枚目路線で売り出していた仲村とは思えないくらい、北川景子やイモトアヤコに振り回されて毎回辟易する中間管理職の哀愁を滲み出している。

「私に売れない、家はありません!」
「ドクターX」の大門未知子ばりの決め台詞で、毎回周囲を圧倒する三軒家万智。彼女に売れない家があるのか、はたまた彼女の秘密が明らかになるのか。一体どんな結末が待っているのか。気になるところだ。

いずれにせよ。
この調子だと「家売るオンナ」は、北川景子の代表作になるだろう。視聴率的にも。

2016年夏ドラマ期待値

いつも放送前に期待値を発表するんですが、遅くなりました。
軒並み第1話が放送されていますが、期待値発表です。

【月曜21時】
「好きな人がいること」(フジ系)→◯
(桐谷美玲主演)

【火曜22時】
「ON 異常犯罪捜査官 藤堂比奈子」(フジ系)→◯
(波留主演)

「せいせいするほど愛してる」(TBS系)→▲
(武井咲主演)

【水曜22時】
「家売るオンナ」(日テレ系)→◎
(北川景子主演)

【木曜21時】
「はじめまして 愛しています」(テレ朝系)→◯
(尾野真千子主演)

【木曜22時】
「営業部長 吉良奈津子」(フジ系)→▲
(松嶋菜々子主演)

【金曜22時】
「神の舌を持つ男」(TBS系)→▲
(向井理主演)

【金曜23時】
「グラメ」(テレ朝系)→▲
(剛力彩芽主演)

【土曜21時】
「時をかける少女」(日テレ系)→◯
(黒島結菜主演)

【日曜21時】
「仰げば尊し」(TBS系)→◯
(寺尾聰主演)

「HOPE〜期待ゼロの新入社員」(フジ系)→◯
(中島裕翔主演)

【日曜22時】
「そして誰もいなくなった」(日テレ系)→◯
(藤原竜也主演)

【日曜深夜】
「闇金ウシジマくん」(TBS系)→◎
(山田孝之主演)


今期はこんな感じです。

◎作品は、北川景子主演の「家売るオンナ」と山田孝之主演の「闇金ウシジマくん」の2作品。「闇金ウシジマくん」はシリーズもので、尚且つ映画も新作が待機中。漫画の実写を極限までリアルに追求した作品として安心感もあり、実証済みである。

「家売るオンナ」は、北川景子がサイボーグのごとく全く笑わない不動産営業マン。これがまた妙にハマっている。ダメ社員役の工藤阿須加とイモトアヤコ、窓際社員役の梶原善、腹黒なデキる営業マン役の千葉雄大、そして北川景子に振り回されるどこか間抜けな上司役に仲村トオル…と、個性的なキャスティングが皆ハマっていて愉快で面白い。

そして良作は週末に集まっている印象。
「時をかける少女」「仰げば尊し」「HOPE」「そして誰もいなくなった」。

夏らしくみずみずしい作品が、好感触を得られる傾向だろう。
今後、それぞれどんな展開を見せていくか。
注目である。

「ひよっこ」が大きく羽ばたいた有村架純

「とと姉ちゃん」が今週から戦後編に移り、いよいよ第2部へと動き出す感じ。2部の中心的な唐沢寿明や伊藤淳史たちが出てきて、ますます賑やかな展開になるであろう。
そんな朝ドラの次回作は「べっぴんさん」
すでにクランクインしており、共演陣の追加発表が行われるなどの話題の種蒔きも余念ではない。

そんな次回作がスタートする前に、来年春からスタートする朝ドラのヒロインと内容が先日発表された。
岡田惠和脚本の「ひよっこ」。
ヒロインは、有村架純。
「花子とアン」で主演を務めた吉高由里子以来、オーディションなしでヒロインが決まった朝ドラだ。

有村架純といえば、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで、若手女優の中でも一歩も二歩も抜きん出た存在感を放っている。
その大ブレイクのきっかけとなったのが、朝ドラ「あまちゃん」だ。
しかし彼女は主役ではなかった。
ヒロイン能年玲奈の母親役・小泉今日子の少女時代を演じていた。
いわば、脇の脇と言っても過言ではない。
が、「あまちゃん」に出演した中では間違いなくブレイクを果たしたNo. 1俳優と言える。相手役を演じた福士蒼汰以上であろう。

「あまちゃん」出演後はCMでの露出が格段に増えるばかりか、連ドラでの出演もひっきりなし。そして映画「ストロボエッジ」や「ビリギャル」の大ヒット、今年に入ってからは月9「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」で民放ドラマ初主演を果たした。

2年前には名前すらほとんど知られていなかった彼女が、いまや国民的女優となって朝ドラに凱旋主演。これがまたヒットすれば、有村架純のポジションは揺るぎないものとなるであろう。
朝ドラの「ひよっこ」のタイトル通り、ひよっこが大きく羽ばたいていく姿は、有村がブレイクしていく様をドラマでも重なって見えるのかもしれない。

ぶっとんでいるがゆえに「TOO YOUNG TOO DIE〜若くして死ぬ」

予告からしてぶっ飛んだ映画だなという印象だった。
クドカンこと、宮藤官九郎が監督脚本を務めた「TOO YOUNG TOO DIE〜若くして死ぬ」
クドカン作品の常連でもある長瀬智也と神木隆之介が主演を務めている。

「ゆとりですがなにか」では、クドカンテイストをちょいちょい入れつつも真面目なドラマを描いていただけに、この映画はその反動と言わんばかりのスパークしたクドカン作品と言える。
そもそも地獄が舞台というんだから、ぶっ飛んでいることこの上ない。
でもクドカンが創ったということで、妙に納得できるのも、彼がこれまで築き上げてきた高いクオリティ作品を世に送り出してきた功績なのだろう。

「FUCK YOU〜‼︎‼︎‼︎‼︎!‼︎」
一見、誰だかわかんない地獄のボーカル役を演じる長瀬が高らかに声を上げる。他のメンバー(桐谷健太、清野菜名)もとてつもないメイキャップで、ホントに誰が誰だかわかんない。まあ桐谷健太は声ですぐ判明したが。
ストーリーというより、キャスト陣の個性的なメイクにばかり目がいってしまう。
閻魔大王の古田新太、楽器屋の片桐仁、なぜかブスな女役の皆川猿時、すごい勢いでドラムを叩きまくっていたから、たぶんシシドカフカ。シシドカフカをたぶん…としか思えないくらいのメイクなのだ。もはや皆、原型をとどめていない。

一方で、キレイどころの森川葵や宮沢りえは、どアップな画が多数。もちろん原型をとどめている。"死神"とあだ名をつけられた尾野真千子が少しばかりお気の毒だ。その分、尾野真千子はさすがのキャラクター作りでインパクトを残している。まさに"死神"だ。

しかしながらキャラが話を食いまくっていて、ストーリーの置いてけぼり感は否めない。ギャグや小ネタは要所要所に取り入れクドカンらしい笑いは忘れていないものの、個性的なキャラとロック音楽の融合に気後れしてしまう場面もしばしば。確かに面白いっちゃ面白いんだけど、見終わった感はちと疲れが残る。そんな印象だ。

で、エンドロールに中村獅童と名前があった。
どこに出ているのか、全然わからなかった。
何役なのか、どんなメイクなのかも。
中村獅童ならパッと見でわかるはずなのにわからない。
見終わった後、悔しさも残った。
わかった方、教えてください。

また始まるらしいよ「ドクターX」

「私、失敗しないので」
これが口癖の女医がまた復活するらしい。
米倉涼子主演の「ドクターX」だ。
夏に初のスペシャルドラマで1年ぶりの復活を遂げるわけだが、それに乗じて10月からは連ドラの第4シリーズがスタートする。

やっぱりな…という印象だ。
スペシャルドラマで終わるわけがない。
テレビ朝日としても「相棒」と並ぶ、ドル箱的視聴率を誇る番組。
終わらせたくはないだろう。

だが前々から米倉涼子は「これが最後!」とシリーズがある度に豪語していたが、またもや覆されたわけだ。
米倉涼子としても、ここ3年以内の連ドラはずっと大門未知子。
他の役もやりたいだろう。
だが米倉としても、この役はハマっている。
とにかくカッコよくて、オペ以外興味なし。
一貫して「いたしません!」を貫き通し、院内政治に無関心。
興味があるのは、患者の命を救うことだけ。
ストイックで熱いハートを持った女医だ。
ここまで完治させる!と断言する医者がいるなら是非ともお願いしたいくらいだ。

そんな「ドクターX」も、これまでは視聴率も順調だったが、今回はどうだろうか。もちろんオリジナルよりも安定した数字は予測できるが、ネタも尽きないか心配だ。
実際、テレ朝の看板である「相棒」ですら、全盛期に比べれば、視聴率は下降気味。ファンが離れ、新鮮味が失われている証だろう。

できれば「ドクターX」にはその二の舞に遭ってほしくない。
とりあえず、まずは7月放送予定のスペシャルドラマの視聴率に注目が集まるだろう。そこで20%を超えたら、第4シリーズはひとまず安心だろう。

役者たちがたっぷり遊んだ「99.9%」

春ドラマの話題をかっさらった「ゆとりですがなにか」の最終回が始まる前に、今期平均視聴率でトップを飾ったドラマも一足早く最終回を迎えた。
松本潤主演の「99.9%」

当初から安定した視聴率と、回を追うごとに個性的なキャラクター陣の遊びがあちこちに飛び出すようになったことが印象的だった。
堤幸彦監督がよくしそうな小ネタだったり、カット割りだったり…。でもこのドラマは、堤幸彦演出ではないんだけど。

もちろん内容は起訴された刑事事件の無実証明に動く弁護士たちの物語。弁護士のドラマといえば、骨太かつ重厚な人間ドラマがよくありがちだが、このドラマに関しては、むしろ真逆と言っていい。
肩が凝るような法律用語がたくさん出てくる訳でもなく、それ以上に松本潤と香川照之が寒いギャグをぶっこんでくることの方が多い。

またこのドラマをエンターテイメントとして娯楽作品へと完成させたのは、役者陣の力であろう。軽妙な松本潤をはじめ、そんな彼に弄ばれるイジられキャラの香川照之、プロレス好きの榮倉奈々、香川同様に松本潤に遊ばれる片桐仁、パラリーガル(渡辺真起子)に首ったけな藤本隆宏、榮倉奈々に首ったけなその部下(馬場徹)、ストーリーとはほぼ無関係なのに毎回主要メンバーと絡んで話を脱線させる役目の池田貴史と岸井ゆきの、極め付けは腹の奥底では何を考えているのかわからない所長役の岸部一徳。

これだけでも曲者揃いなのに、検察サイドは青木崇高と奥田瑛二という、濃い2人。そんな中でも青木崇高は割とノーマルな立ち位置だったように思える。それにしても奥田瑛二は最近、悪役が続いているなぁ。(※ 映画「64」でも隠蔽に加担する刑事部長だった…)

個性的な役者陣が、事件を解決するストーリーを軸にしながら、小ネタやギャグを入れては時折脱線。その絶妙なバランスが、視聴者にウケたのだろう。緊張感を見せつつ、肩の力を抜かせてもらえるような…。リラックスして見ることのできた作品だった。

続編がありそうな結末。
松本潤と奥田瑛二の間にも、まだ本当の決着はついていない感じだし。これだけじゃ終わらない可能性、99.9%だろう。

昨日で終わっちゃったよ「ゆとりですがなにか」

最高傑作との呼び声が高い。
「ゆとりですがなにか」
クドカンこと宮藤官九郎脚本作品が、昨日最終回を迎えた。

平均視聴率は10%と満たなかったものの、それはクドカン作品によくあること。珍しいことではない。視聴率以上に話題になるのは、クドカンだからこそであろう。

ただ一つ残念なことは、クドカン脚本の作品は、クドカンの評価が高いだけで終わっているところだ。もちろんクドカン作品は本当に面白い。個性的なキャラクターに加えて、彼らが織り成す台詞回しも独特かつちょいリアルな言葉が時折泣かせてくれたりする。ぶっちゃけズルさを兼ね備えたドラマだ。散々笑わせて、泣かせるんだから。

でもそれだけではない。
クドカン脚本を彩ったのは、役者陣であり、演出家を始めとする制作陣だ。
今回のメインキャストである岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥に安藤サクラ。リアルゆとり世代な4人が、ゆとり世代とレッテルを貼られ、一括りにされたがゆえにもがきながら、現実と向き合い成長していく姿。多くの人々の記憶に残ったであろう。

またこのドラマの評価すべきところは、脇の脇まで、単なる端役に終わらせていないところ。松坂桃李の同僚役だった加藤諒が吉岡里帆とのツーショット場面を見せたり、岡田将生の出向先であるバイトリーダーとバイト(少路勇介・矢本悠馬)が、回が進むにつれていつしか仲間のような存在感を見せていったり…。ここはクドカン作品の特徴的なところでもある。脇の脇役まで、役者たちを活かし、遊ばせる作品。そういったところも、評価に値する。

「ゆとりですがなにか」が21世紀の「ふぞろいの林檎たち」と方々で言われているらしいが、吉田食堂は「ふぞろいの林檎たち」世代ではないので、よくわからない。もちろん「ふぞろいの林檎たち」を作った山田太一がドラマ界でもレジェンドだということは知っている。だが、「ゆとりですがなにか」は完全に別物だ。宮藤官九郎が初めて社会派ドラマに挑戦し、ゆとり世代と揶揄された人々にスポットを当てた人間模様なのだ。

そんなドラマに、岡田将生、松坂桃李、柳楽優弥、安藤サクラたちメインを筆頭に、ゆとりモンスターを怪演した太賀、就職に悩む大学生を演じた島崎遥香、自らの進路と恋愛の板挟みに遭う教育実習生を演じた吉岡里帆など…。彼ら珠玉のキャストが揃ったからこそ、「ゆとりですがなにか」が成立したのだ。

宮藤官九郎に生み出された作品たちは、きっと幸せだ。いつもキャッチーで、人々の心を掴んで離さない。そんな作品を彩る役者たちもまた、クドカン作品に出たくてこぞって出演している。役者たちも、クドカン作品が好きだし、愛しているだろう。見てて面白いんだから、演じる側はもっと面白いはずだ。

ああ。ちょっと味わってみたいな。
クドカンワールド。
どんなに面白い世界なんだろうか。

ささやかな幸せを描いた「植物図鑑」

この映画、出演者は主役2人だけでいいんじゃない?
というより、出演者はほぼ2人だけ…という印象が強かった。
そう思えるくらいの映画だったのが「植物図鑑〜運命の恋、拾いました」

今、10代〜20代の女の子たちに絶大な人気を誇る三代目JSouLbrothersのガンちゃんこと岩田剛典と、「とと姉ちゃん」の高畑充希が主演。
旬な若手2人がどんなラブストーリーを見せてくれるのか。
岩田はさほど演技経験はないが、高畑は言うまでもなく申し分もない演技派女優。
高畑がリードする感じかな?と思いきや、いざ見てみるとそうでもない。むしろ控えめな役柄の高畑を岩田がリードしていく感じの印象だ。

ポスターなどには、"甘く切なく泣ける"…とか、"胸キュンNo. 1"…とか書かれている。そうすると見る側としては、甘ったるい女性が好むようなラブストーリーを事前に想像するわけだが、これがそうでもない。

出会い方は唐突だが、植物を通して、2人の関係が少しずつ深まっていく過程がとても丁寧に描かれている。
仲睦まじく野草探しを2人で楽しむ姿。植物好きの岩田演じる樹が毎回、高畑演じるさやかに料理を振る舞うのだが、出来上がった料理に幸せをかみしめながら味わう様子。
さらには仕事のお昼休み、さやかが弁当箱を開けると同時に、パッと笑顔になる表情など…。

特別なサプライズがあるわけではないが、ささやかな日常の幸せを積み上げていく様が、ほほえましく思える作品である。

ラブストーリーは男性には敬遠されがちだが、これは男性1人でも見に行ける作品だ。見ればきっと、女性と恋に落ちたくなるはずだ。

記憶に残った「重版出来!」と「僕のヤバい妻」

春からスタートしたドラマがほとんど終わりを迎えたつつある。
今日で松本潤主演の「99.9%」。そしてクドカン脚本の「ゆとりですがなにか」の2作品が最終回を迎える。方や視聴率好調、方や内容が話題性となり、春ドラマを盛り上げた作品だった。

2作品の最終回を見るのは待ち遠しいが、終わった春ドラマにも記憶に残る作品があった。それも火曜日の同時間帯に2作品。
TBS系の「重版出来!」と、フジテレビ系の「僕のヤバい妻」だ。
どちらも視聴率的には振るわなかったものの、クオリティの高さでは指折りの作品だったと言える。

「重版出来!」は、見終わった後の後味が清々しいのだ。力が湧き上がってくるような、前向きにしてくれるドラマ。
一方の「僕のヤバい妻」はといえば、清々しさからは程遠いものの、「どうなるどうなる⁉︎」という続きが気になって仕方がないドラマだった。

編集者と漫画家たちの、漫画愛にあふれた大人たちの青春を描いた「重版出来」と、金に翻弄され、愛と殺意が交錯した人々のヒューマンサスペンスを描いた「僕のヤバい妻」。どちらの作品も、制作陣の本気度がハンパなく伝わってきた。それが視聴率に繋がっていないことが、もったいない!本当にもったいない。そして一番もったいなくて残念なのは、視聴率をすべての結果で収束させているマスコミの反応が、もったいなくて、残念すぎるし、悲しい。

しかし、両作品とも演技派の豪華なキャストを集め、中身のクオリティを最大限に活かしたこと。その本気度は少なくとも、視聴者たちの記憶に残ったことは間違いない。視聴率では測れない評こそ、作品の讃えるべきところではないだろうか。

最後にもう一つ。
ユニコーンの「エコー」
安室奈美恵の「Mint」
エンディングのここぞ!って場面で流れてくる主題歌もまた、両作品をざわざわっと盛り立てた。主題歌も、ドラマの主役だ。
落語会プロデュースと文章【新作落語、芝居、小説、評論…何でも対応】書いてます。⚫️ブログ「吉田食堂は、実はドラマ好き」(ほぼ毎日更新中)→https://t.co/DfZlYv9olb ⚫️次回公演→5月13日(金)「いちのすけの風〜其の九」
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