5話は奇跡だ。展開自体は、「にこがμ'sに加入した話」ということになってしまうが、実はそんな単純なものではない。

 この話は他の話と比べて作りが特殊である。なによりも重要なことは、5話開始時点では、μ'sに目的が無いことだ。もちろん、廃校阻止のためのグループなのだから、そのための活動が目的ではある。ところが、穂乃果は2週間も浮かれっぱなしである。他のメンバーも浮かれまくっている。廃校阻止の活動に取り組んでいるとは思えない。

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「くぅぅ~~~~~」


 Aパートの前半では、6人になってテンションが爆発したμ'sの賑やかさが存分に描かれる。特に凛は優遇されている。穂乃果への毒舌、真姫へのいじり、海未へのフォローがあって、雨上がりのアクロバットで〆。ここでは凛がフォーカスされていたが、それぞれがμ'sの一員であることを満喫していることは想像に難くない。

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「うー、テンションあがるにゃーーー!」


 この直後に大雨が振り出し、屋上での練習は出来ない、ということでメンバーの意見が一致する。そしてここで初めて5話での目的が示される。「練習場所を何とかすること」、だ。
 さて、練習場所を何とかするための会議がファストフード店で行われる。

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(実はメンバーの頼んだメニューが、性格である程度説明できるようになっていたりする)


 ここで穂乃果は妙案を思いつく。というか、思い出す。正式な部活ならば、練習場所は確保できるため、部活申請を通せば問題は解決される。ここで目的が、「練習場所を何とかすること」から「部活申請を通す」ことへと切り替わる。

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「部活申請すればいいんじゃん!」


 この申請はあっけなく絵里に却下される。アイドル研究部が存在するため、申請を受けるわけにはいかない、とのことである。しかし、希の助言により、アイドル研究部と話をつけることができれば、部活の権利を使うことができるようになることに気付く。
 そして現れるアイドル研究部の矢澤にこ。
 この流れの中で、「部活申請を通すこと」ことから、「矢澤にこと話をつける」ことへと、目的が変化している。

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 しかし当然ではあるが、説得は成功しない。「矢澤にこと話をつける」という目的は、「練習場所を何とかすること」という目的が変化したもの。この考え方では、矢澤にこを、練習場所確保のための手段としか見ていないからだ。
 説得には失敗するが、穂乃果は諦めない。ほんのちょっと何かあれば、上手くいきそうな気がするとまで言っている。具体性に乏しいと海未には言われるが、それはそうなのだ。穂乃果は抽象の中から、答えを見つけ出そうとしているのだから。

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「それはそうだけど……」


 そして穂乃果は、この問題が、ある方法で解決できることに気付く。海未と友達になった時と一緒だ、と穂乃果は言うのである。ここで重要なのは何か。「矢澤にこと話をつける」という目的は、「練習場所を何とかすること」が変換された結果である。しかし穂乃果の思考はこの次の変換をせずに、いきなり別世界へとジャンプし、「矢澤にこと、仲間(ともだち)になる」ことを導き出すのである。
 
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 当たり前の話、のように思えるかもしれない。しかしそうではないのだ。この話で描かれた穂乃果の思考の流れこそが、ラブライブ!の物語を動かす最も大きい力なのだ。すごいところに連れて行ってくれる、その原動力である。
「矢澤にこと話をつける」ことから「矢澤にこと、仲間(ともだち)になる」ことを思いつく。これが、穂乃果なのだ。もちろん、ここでのジャンプは軽い。軽いのだが、論理的な飛躍が確実に存在する。とんでもないことを起こす、思考の跳躍。その源泉がここにある。

 極端な話をすれば、廃校を阻止する目的と、アイドルという手段を組み合わせた事だって、これと同じ話だ。常人では考え付かないことを、穂乃果は閃いてしまった。だから、アイドルをやっているのである。
 
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 そして無事に、「矢澤にこと、仲間(ともだち)になる」という目的が果たされ、ことりは上手くいってよかったね、と言う。雨は上がり、部室ではなく、屋上での練習が始まる。
(このことが物語的に「練習場所を何とかすること」、と、「矢澤にこと、仲間(ともだち)になる」ことの間に論理的な飛躍があることを保証する。もしこの飛躍が無いとすると、屋上で練習できる状態になることで、矢澤にこは不必要になってしまう)

 気付いたらもともとの目的である、「練習場所を何とかすること」というのは穂乃果たちとは全然関係のない所で解消されている。にも関わらず、矢澤にこはお役御免にはならない。もともとの目的とは別の、すごい所に来てしまって、でもメンバーは皆それを、上手くいった、として受け入れているのである。
 

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 もう一度書く。
 5話では穂乃果の思考が、(「練習場所を何とかすること」から導き出された)「矢澤にこと話をつける」という地点から、「矢澤にこと、仲間(ともだち)になる」、という地点へとジャンプしているのだ(ちなみに、練習場所はいつの間にか何とかなっている)。

 この展開、どこかで見てきた話と一緒だと思うのだが、どうだろうか。







おまけ


矢澤にこ考察その1
 キャラ作りが大事、かのように言っているけれど、その前の行動を拾っていくと、とりあえずμ'sがアイドルとして成立していない理由を並べ立てるうちの一つ、のような気もしてくる。もちろん矢澤にこのキャラクターが強烈過ぎて、キャラ作りが大事、という言葉の説得力は凄くあるのだけれど。

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「とっとと解散しなさい」
「ダンスも歌も全然なってない。プロ意識が足りないわ」

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「でも、ずっと練習してきたから、歌もダンスも!」
「そういうことじゃない。あんたたち、ちゃんとキャラ作りしてるの?」


矢澤にこ考察その2
「アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない、笑顔にさせる仕事なの」と、矢澤にこは言う。これは矢澤にこが考えるアイドル論……ではあるのだが、次のような見方も十分成立する。

 これは矢澤にこの持つアイドル論というよりは、行動原理ではないだろうか。先ほどの言葉を書き換えると、
「笑顔にさせられないアイドルは、(仕事として)アイドル失格」
である。
 こう考えると、矢澤にこがA-RISE等を見ても笑顔ひとつ見せないことの説明がつく。彼女らは、矢澤にこの中ではアイドルとは認められないのだ。そして同時にこの原理から、にこが笑顔を見せたμ'sはアイドルである、ということも導き出せたりする。

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オススメの記事紹介

・鬼の矢澤のアイドルゲーム「ラブライブ!」第5話


5話での矢澤にこの振る舞いについての考察記事。
矢澤にこの振る舞いがどのような原理に基づいているのかについて、非常に深い考察がなされています。