菅義偉官房長官は26日午前の記者会見で、日本がクジラ資源の管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を正式に発表した。年内にIWC事務局に通知し、来年6月30日の脱退が決まる。

 驚くべき決定であるが、マスコミは賛否両論である。しかし、もう鯨肉を食べる人は少なくなったので捕鯨の必要は少なくなった、というのは間違いである。
 「やぶにらみ」のような年寄りには昔の鯨肉をふんだんに食べていた時代は懐かしい。供給が少なくなったから高価になり食べられなくなっただけの話である。

 国際協調を重視したこれまでの戦略からは大転換となる。日本の国際機関脱退は戦後ほとんど例がなく、極めて異例な措置。今後は多様な食文化の尊重を世界に訴える構えだが、国際社会からはルール無視との批判は免れない。

 伝統的な捕鯨地域選出の与党議員らの脱退を求める声の高まりを背景に政府が決断。商業捕鯨は日本近海や日本の排他的経済水域で実施する方向であるが、国内でも賛否両論である。

 しかし、なぜ今、離脱しなければならないのか。国内議論もまったく不十分だと言う意見もある。
 脱退で南極海の調査捕鯨は不可能になる。政府は日本近海や排他的経済水域(EEZ)内での捕鯨を模索するが、国連海洋法条約に基づく国際合意の取り付けが必要で、簡単ではない。

 したがって、日本近海からだけの商業捕獲となるので鯨の捕獲量は全く増えないどころか、減少する可能性もある。
 今のままでIWCの云う通りにしていると、南極海の調査捕鯨も駄目になりそうだから脱退を決めたという人もいるが、もう少し考えるべきではなかったのかと思う。
 ノールウェーなどはIWC加盟でありながら商業捕鯨を遣っているのである。
 
 日本の調査捕鯨は「事実上の商業捕鯨」と批判され、国際司法裁判所は14年に「科学に値しない」と指摘した。9月のIWC総会で日本提案が捕鯨国からも支持を得なかったのは、批判に耳を傾けようとしない日本の姿勢への反発もあった。
 今回の判断の背景には「捕鯨は日本の伝統文化」とする自民党の捕鯨議員連盟の影響もある。

 公明党の山口那津男代表は20日の記者会見で、政府が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退する方針を固めたことに関し「日本は科学的な根拠に基づいて捕鯨の取り組みを訴えてきたが、IWCの対立的な構造は変わっていない」との認識を示した。
 その上で「最終的にはこうした国際機関にどう日本が関わるか。政府全体でよく検討し、さまざまな観点から熟慮した上で対応すると思う」と述べた。

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安倍・二階氏の意向大きく=IWC脱退、外交に冷や水(時事通信12.27)
12/27(木) 7:13配信

 決断に至る過程では、古くから捕鯨が盛んだった地域が地元の安倍晋三首相と二階俊博自民党幹事長の意向が大きく働いたとみられる。一方、脱退は、オーストラリアなど反捕鯨国との国際協調に冷や水を浴びせる恐れがある。

【図解】鯨肉の消費量

 和歌山県太地町の三軒一高町長は26日、自民党本部に二階氏を訪ね、脱退決定に謝意を伝えた。二階氏は「(捕鯨を)徹底的にやれ」と激励。この後、三軒氏は記者団に「幹事長が地方の声を官邸に届けてくれた。神様みたいだ」と語った。

 太地町は「古式捕鯨発祥の地」だ。その町を選挙区に抱える二階氏は早くから商業捕鯨再開を主張。今年9月のIWC総会で日本の提案が否決されると、10月に開かれた捕鯨議員連盟の会合で外務省幹部を「何をぼやぼやしているんだ」と一喝するなど、脱退に向けて強硬姿勢を強めた。

 一方、首相の地元である山口県下関市も「近代捕鯨発祥の地」として知られる。ある政府関係者は、今回の決定で大きな役割を果たしたキーマンについて「山口と和歌山の政権ツートップ」と語り、首相と二階氏だったことを示唆した。

 政府は表向き、脱退の決め手は「9月のIWC総会」(菅義偉官房長官)としている。ただ、政府内では、漁師から「商業捕鯨の将来が見えない中では、老朽化した漁船を買い替えられない」との悲鳴が上がっていたことが、首相らの判断を後押ししたとの見方も出ている。

 政府は25日に脱退を閣議決定したが公表せず、発表を26日にずらして、その間に関係国に説明、衝撃を緩和しようとした。菅氏は26日の記者会見で、農産物などの価格安定を目指す「一次産品共通基金」という国際機関を2013年に抜けた例を持ち出し、日本の国際機関脱退は珍しくないと強調してみせた。

 しかし、IWC脱退は、日本が戦前に孤立化を深めるきっかけになった国際連盟脱退を想起させ、パリ協定など国際枠組みからの離脱を表明するトランプ米大統領の姿とも重なる。来年は大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議をはじめ重要な外交案件が立て込んでおり、影響を懸念する声も漏れる。

 「今後、外交的に厳しくなる。そこまでしてクジラを食べる必要があるのか」。外務省関係者はこう不安を口にした


政府、IWC脱退を正式発表 来年7月、30年ぶり商業捕鯨再開へ(産経新聞12.26)

2018.12.26 11:22

調査捕鯨で捕獲されたミンククジラ=2013年9月、北海道・釧路沖の太平洋
 菅義偉官房長官は26日午前の記者会見で、日本がクジラ資源の管理を担う国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を正式に発表した。年内にIWC事務局に通知し、来年6月30日の脱退が決まる。政府は来年7月から商業捕鯨を再開する方針。1988年以来約30年ぶりで、日本の捕鯨政策は大きな転換点を迎えた。
 政府は25日の閣議で脱退の方針を決めたが公表していなかった。関係方面への調整に時間を要し、翌日の発表になったとみられる。
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 IWCは反捕鯨国が加盟89カ国の過半数を占める。近年は保護に偏って捕鯨国との対立が激化し、機能不全に陥っていた。日本の国際機関脱退は極めて異例で、豪州など反捕鯨国からの反発も予想される。
 菅氏は「官房長官談話」も発表した。その中で「持続可能な商業捕鯨の実施を目指して、30年以上にわたり、収集した科学的データをもとに誠意をもって対話を進め、解決策を模索してきた」と日本の立場を説明した。
 脱退の理由については、反捕鯨国からの「歩み寄り」が見られず「9月のIWC総会で鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが明らかとなった」としている。
 日本はIWC科学委員会にオブザーバーとして参加するなどし、領海や日本の排他的経済水域(EEZ)で商業捕鯨を再開する考えだ。談話で「IWCで採択された方式により算出される捕獲枠の範囲内で行う」と理解を求めた。脱退に伴い、IWC加盟が条件となる南極海での調査捕鯨はできなくなる。

IWC脱退、政府が正式発表 商業捕鯨の再開に道 (東京新聞12.26)
2018/12/26 11:23

政府は26日、国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を正式に発表した。脱退方針は25日に閣議決定していた。捕鯨に反対する国との意見対立が解消できず、現状では商業捕鯨の再開が困難だと判断。脱退によって日本の領海や排他的経済水域(EEZ)での商業捕鯨に道が開ける。国際機関からの離脱で諸外国の批判が強まる懸念もある。

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政府は国際捕鯨委員会(IWC)からの脱退を決定した=日本鯨類研究所提供
菅義偉官房長官は26日午前、談話を発表した。1988年以降中断している商業捕鯨を「2019年7月から再開する」と表明。捕獲の範囲を日本の領海とEEZに限定し、南極海と南半球は含めないとした。
談話は今年9月のIWC総会に関して「条約に明記されている捕鯨産業の秩序ある発展という目的はおそよ顧みられることはなく、鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが誠に残念ながら明らかとなった」と指摘。「この結果、今回の決断に至った」と説明した。
脱退を巡っては「国際的な海洋生物資源の管理に協力していくという我が国の考えは変わらない」と強調した。IWCへのオブザーバー参加を含め「国際機関と連携しながら、科学的知見に基づく鯨類の資源管理に貢献する」と訴えた。
IWCの規定では脱退を来年1月1日までに通知すれば同6月末に離脱することになる。IWCは1948年に発足。現在は89カ国が参加する。日本は51年に加盟した。IWCは資源保護を理由に82年に商業捕鯨の一時中止(モラトリアム)を決めた。日本は異議を申し立てたものの、88年からは商業捕鯨を中断している。
日本はIWCから離脱することで、同団体が保護対象とするミンククジラなどの捕鯨に道が開け、日本近海などで約30年ぶりに商業捕鯨を復活できる。一方で、南極海に船を向かわせてクジラをとる調査捕鯨は国際法上、実施できなくなる。
IWCは日本などの捕鯨国とオーストラリアなどの反捕鯨国との間で意見対立が続き、長年にわたって議論が前に進まない状況にあった。
日本はマグロなど他の水産資源と同様に科学的なデータに基づいて食料として持続的に利用できるよう訴え、今年9月のブラジルでのIWC総会で資源量が豊富なクジラの商業捕鯨を再開するよう提案した。だが反捕鯨国は「いかなる捕鯨も認めない」と宣言し、反対多数で否決された。
日本は「IWC締約国としての立場の根本的な見直しを行わなければならない」と反発。これまで脱退も含めた対応を検討していた。自民党内でも捕鯨推進を掲げる議員から、IWCからの脱退を求める強い要請が政府に出されていた。オーストラリアなど反捕鯨国からはすでに批判の声が相次いでいる。
かつて年20万トンを超えた日本の鯨肉の消費量も、ここ数年は年3千〜5千トンで推移している。仮に商業捕鯨が再開したとしても、国内の鯨肉消費が盛り返すかどうかは不透明だ。