2021年10月10日

京都大賞典 追憶の血統 〜第11回勝ち馬 パッシングベンチャ〜

1976年京都大賞典。代替開催の阪神競馬場にテンポイントが帰ってきた。前年の阪神3歳S、関西の競馬ファンを熱狂させたあのレースから実に10ヶ月ぶりの登場となる。
しかし、皐月賞、ダービーと敗れ傷ついた貴公子を迎え入れる歓声は少なく、観衆から挙がるその声の多くは不安、疑心であり、そして6番人気という低評価だった。
あの時の熱狂はトウショウボーイとクライムカイザーにかき消され、もはや阪神競馬場に残っていたのは僅かな燻りだけだった。

3着に敗れたテンポイントに「これで充分だ」と労いの声をかける杉本アナ。そのテンポイントを4角からまくり先頭で押し切ったのが、同じ3歳馬のパッシングベンチャ。14頭立て10番人気の重賞未勝利馬が後の天皇賞馬に、そして同じ勝負服を着た同年春の天皇賞馬エリモジョージに土をつけたレースでもありました。

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父ヴェンチアがサセックスS(芝8f),セントジェームスパレスS(芝8f)勝ちのあるマイラー。母父ソロナウェーは愛2000ギニー(芝8f),コーク&オラリーS(芝6f,今のダイアモンドジュビリーS),ダイアデムS(芝6f,今の英チャンピオンスプリントS)勝ちのあるスプリンター。
母母ローズィミスは「父Nearco×母父Bois Roussel×母母Rosy Legend」という超良血。Rosy Legendはダービー馬Dante、愛ダービー馬Sayajirao、日本に種牡馬として輸入されたハロウェーを産んだ名種牝馬。DanteとSayajiraoの全兄弟はその父がNearcoなので、パッシングベンチャの2代母ローズイミスとは3/4同血の間柄。

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そんな重厚な母母ローズィミスに対して、ソロナウェー&ヴェンチアと2代続けてスピードを投入したことで誕生したのがパッシングベンチャ。そのため3/4スピード,1/4スタミナという1/4異系の関係になります。
次いでパッシングベンチャの父父RelicはMan o'Warの系統で、Commando5×4のクロスを持つ米血馬。これにより1/4米血,3/4欧血という1/4異系。
さらに、パッシングベンチャ自身のクロスは、Pharos=Fairway4×4*4,Phalaris5・6×5*5,Dark Ronald5×5。父父RelicがPharos〜Phalaris〜Polymelusの血脈を一切持たないため、ここでも3/4Pharos≒Fairway,1/4非Pharos≒Fairwayという1/4異系になります。

このようにパッシングベンチャは、母母ローズィミスを起点とした多様な3/4と1/4の関係性で誕生し、名馬テンポイントに土をつけた数少ない同世代馬の1頭となり得たのでした。


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2021年10月02日

スプリンターズS 追憶の血統 〜速いからこそ美しい 華麗に咲き誇るサクラの歴史 サクラシンゲキ〜

1980年のサクラゴッドに続き、1981年のスプリンターズSを制したサクラシンゲキ。またの名を、日の丸特攻隊。
鞍上の小島太と共に第1回ジャパンカップを大暴走した姿が印象的ですが、その戦績は1200m以下で5戦4勝、2着1回と連対率100%。1600m以下でも13戦7勝、2着3回3着3回と複勝率100%の成績を残した、短距離〜マイルのスペシャリストでもありました。

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サクラシンゲキは父ドン×母アンジェリカという血統で、主なクロスはNasrullah3×4、Dante≒ハロウェーの3/4同血クロス4×4。

父ドンは仏2000ギニーを含め重賞3勝を挙げた短距離馬。ドンは母系が面白く、その4代母Dossa DossiがSt.SimonとPretty PollyによるMolly Desmond≒Dutch Maryの3/4同血クロス2×3。3代母DureraはClarissimus3×3。2代母DesubleaはSpearmint4×4,Carbine6*5×5。母DivianaはSpearmint〜Carbineのクロスを継続しており、Nogara4×3,Catnip5*6×4,Spearmint6*6・7×5*5,Carbine7*7・8×7・6*6。
そしてドン自身はNearcoを3×4にクロスすることでNogara4×5*4,Catnip5×6・7*5と母のクロスを更に継続させつつ、父母KongがNogara〜Carbineの血を持たない1/4異系の形をとっています。

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母アンジェリカは、2代母にオークスと有馬記念を制したスターロッチから続く名牝系。サクラシンゲキ以外にも、エリザベス女王杯3着馬サクラスマイル(その産駒に2冠馬サクラスターオー)や秋の天皇賞馬サクラユタカオーを産んでいる名種牝馬です。

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アンジェリカは、父ネヴァービートがNearco3×3。母スターハイネスはPharos=Fairway5×3ながらNearco-Nogaraを持たない非Nearco血統。
そのためサクラシンゲキは、Nasrullah3×4のクロスを皮切りにNearco4*5×5・5,Nogara5*6・5×6・6と、父ドンがその母系から引き継いだ3/4Nogara〜Carbineの血脈を見事に継続したことで、父から優れたスピードを受け継ぎました。また、そこにDante≒ハロウェーという3/4同血クロスが影響したのか、ただ一介のスプリンターとしては終わらない活躍を見せたのでした。


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2021年09月29日

スプリンターズS 追憶の血統 〜速いからこそ美しい 華麗に咲き誇るサクラの歴史 サクラゴッド〜 改訂版

1980年のスプリンターズSで開花したのが、サクラゴッド。サクライワイのスプリンターズS制覇が3歳&4歳と早熟だったのに対し、サクラゴッドは5歳で花開いた遅咲きのサクラ。雨降る中山競馬場、不良馬場のスプリンターズSは1分11秒8という遅いタイムでの決着。そんな泥だらけの馬場を大外から差しきり、大輪を咲かせました。サクラゴッドの重賞勝利はこのスプリンターズSのみでしたが、それ以外にも安田記念や牝馬東タイ杯で2着に入ったりと、実績を残しています。

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父イエローゴッドは欧州の短距離界で重賞3勝、英2000ギニー2着の実績を持ちます。

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その父Red GodはNasrullah産駒、そして母父がFair Trial産駒のFun Fairということで、イエローゴッドの持つクロスはPharos=Fairway4×4とLady Joshphine5×5になります。Pharos=Fairwayの父PhalarisとLady Josephineが出会うとSainfoin=Sierraの全姉妹クロスが出来るため、その産駒にはスピード化の影響が見られます。

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そしてRed Godの母Spring Runの父系はPharamond。Pharamondの血統はPharos=Fairwayと同じ「父Phalaris×母父Chaucer」の組み合わせなので、PharamondとPharos=Fairwayは3/4同血馬。すなわちPharos=Fairway≒Pharamondの3/4同血クロス4*4×4になります。また、イエローゴッドの父父Nasrullha,父母Spring Run,母父Fun Fairの3頭は各々がSpearmintも持っており、このクロスが6*6×6になります。

それに対し、PhalarisもChaucerもSpearmintもLady Josephineも持たない母母Core Deans。自身は現役時代はウォーキンガムステークスという英国の6Fハンデ重賞を勝利しています。

その血統を見てみると、Sainfoin=Sierraの全兄妹クロス4×5がまず目に入ります。その血を持つHurry OnとSundridgeは、「Sainfoin=Sierra,Dinah=Suiside,Speculum」などが共通する血統構成なので、「Hurry On≒Sundridge」2×4 という影響力のある強いクロスとなります、このクロスが、1/4異系としてイエローゴッドの活力になっているのでしょう。

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サクラゴッドの母エラミラは英国産ですが、血統はむしろフランス産と言ってもいい構成をしています。
主なクロスは、Sheba=Durbanの全姉妹クロス5×4。

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父Roan Rocketは英G1サセックスS(芝8F)勝ち馬で、Pharos4×4 とMah Mahal4×4のクロス。
れは共にPherozshasとFaramoudeに由来しており、すなわちPherozshas≒Faramoude3×2と表記出来ます。

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母のTenebelは父Djebel×母父ThorでKsar3×3という強いクロス。また、Ajax=Heleneという全兄妹クロス5×3も持ちます。

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このようにエラミラは共にクロスの強い(=近交)父母から生まれたアウトブリード馬(=遠交)という特徴が見て取れます。

そんな2頭、イエローゴッドとエアミラから生まれたサクラゴッドの持つクロスは、Pharos=Fairway≒Pharamond5・5*5×6・6、Mumtaz Mahal5×7・7、Lady Josephine6*6×8・8。これらのクロスは全て父イエローゴッドと母父Roan Rocketに由来しています。特にイエローゴッドの父父Nasrullahと、Roan Rocketの母母Faramoudeは、Pharos,Blenheim,Mumtaz Mahal,Rabelaisが共通する血統構成のため、Nasrullah≒Faramoude3×4のニアリークロスとなって仕上げられており、これがサクラゴッドの持つスピードの中核と成えています。

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そして、それらの血を全く持たない異系の近交馬である母母Tenebelが1/4異形として、活力と底力を補強したのだと考えることが出来ます。

Bromus≒Rock Sandの純化によって手に入れた爆発的なスピードによって頂点に立ったサクライワイとは違い、「Phalaris系×Lady Josephineの継続」と「1/4異系の導入」によってしぶとく頂点に登り詰めたサクラゴッドは、美しさや儚さだけでない「サクラ」が持つたくましさや生命力を、その力強いスピードと共に見せつけたスプリンターだったのです。

※2014年の記事に加筆修正しました。


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2021年09月28日

スプリンターズS 追憶の血統 〜速いからこそ美しい 華麗に咲き誇るサクラの歴史 サクライワイ〜 改訂版

最強スプリンター論争において必ず名が挙がるのが、1993&94年のスプリンターズS覇者サクラバクシンオー。電撃6ハロンをレコードで圧勝する爆発力と、スプリンターズステークス連覇という実績。そしてその驀進王たる名前を併せ持つ、日本競馬スプリント史に燦然と輝き続ける最速馬の1頭です。

サクラバクシンオー以外にも「サクラ」の冠を持つ駿馬はスプリンターズSと関係が深く、振り返ってみるとサクライワイ、サクラゴッド、サクラシンゲキの3頭がスプリンターズSを先頭で駆け抜けました。その中でもサクライワイはサクラバクシンオーと同じく1974&,75年と連覇を達成。サクラゴッドとサクラシンゲキは前者が1980年、後者が1981年と2年連続してスプリンターズSを勝利しているため、「6ハロンのサクラは2度咲く」という通説があったとか無かったとか。

そんなスプリント界で華麗に咲き誇ったサクラの歴史を、血統表と共に眺めてみます。

サクラの冠を最速の代名詞としたことで祝福を受けたのは、1974,75年のスプリンターズステークスを連覇したサクライワイ。1974年のスプリンターズSでは1200m戦において日本初の1分8秒台を叩き出し、その存在を不動のものとしました。

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サクライワイの父マタドアは英国産。The Boss系というスプリンター血脈にふさわしく、現役時代は英G1ジュライカップ(芝6f)を制した生粋のスプリンター。その血統の特徴としては、Bromus 4×5,The Tetrarch 4×5のクロスが挙げられます。その中でもBromusは、Springfield 2×3という強いクロスを持つことが特徴。そのSpringfieldは英G1チャンピオンステークス(芝10f)などを制した名馬ですが、マタドア同様ジュライカップを2度も制したスピードを持っていました。Bromusのクロスは、すなわちSpringfieldの影響を強く受けることとなるため、マタドアの産駒にもその影響を与えることとなります。

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母のグランドフェアーは22戦3勝という成績で繁殖入り。主なクロスはSainfoin 5×5、Gallinure 5×5。
その中でSainfoin 5×5は、父父父母Bromusと母父母父Rock Sandを介してクロスとなっています。この2頭は共に父Sainfoin×母父St.Simonという3/4同血馬ですので、クロス表記にするとBromus≒Rock Sand 4×4となります。

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そのため、Bromus 4×5のマタドアとBromus≒Rock Sand 4×4のグランドフェアーを掛けあわせたサクライワイは、Bromus≒Rock Sand 5*6×5*5という3/4同血クロスを継続クロスとして持つことになりました。
サクライワイが見せた日本史上初ともいえる爆発的なスピード。その源流の一つとして、快速馬Springfieldを紡ぎ出会ったBromus≒Rock Sandのクロスの影響力も、決して少なくないと思います。

※ 2014年の記事を加筆修正しました。



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2019年03月06日

ラッキールーラから見る「Domino+Woodbine」の組み合わせ

ラッキールーラの追憶の血統がまとまらなかったので、Twitterに簡易的に書きましたが、
ラッキールーラには数多く「Domino+Woodbine」という組み合わせがあり、
これが絶妙に母父ハクショウを回避しているのが素敵だなと感じるわけです。


なのでそれを、実際に血統表を用いで見ましょう。
まずラッキールーラの6代血統表に、「Domino+Woodbine」に関連する4頭を囲っておきました。
それを順に追っていきましょう。

ラッキールーラ.jpg

1、Sweep Outについて
Sweep Outは、父母Pink Dominoと母母Cloakが共に「Domino+Woodbine」を持おり、自身はその組み合わせを増幅しています。
SweepOut.jpg

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2.Alcibiadesについて
Alcibiadesは父父UltimusがDominoのクロスを、母母Lady CiceroがWoodbineのクロスを持つ配合です。
Lady Ciceroは、Woodbineの娘であるFeronia=Viopletの全姉妹クロスも持ってますね。
Alcibiades.jpg

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3、Rosie o'Gradyについて
Rosie o'Gradyはその母Cherokee Roseが「Domino+Woodbine」持ちます。
CherokeeRose.jpg

4、Dominantについて
Domnantの場合は、その母Dominoesが「Domino+Woodbine」です。
Dominoes.jpg

以上、ラッキールーラの血統に出てくるDomino5頭の父系は、全てWoodvineという名牝系と出会うこととなったわけですが、
その結果が、素晴らしい能力を花開かせたのかもしれません。











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