2017年7月6日(木)
パリ、そして…
松尾葉子愛知県芸術文化選奨文化賞受賞記念コンサート

須川さんの余韻が残る中、僕はすぐ次の本番の準備に取り掛からねばならなかった。

イベールの室内小協奏曲は、フルート協奏曲の副産物のように言われることもあるが、小とはいえ、天才イベールがサックスのために残してくれた名曲だ。

サックスを学ぶ者なら、皆オーケストラとの共演を夢見るだろうし、僕もその1人だった。

松尾葉子先生との出会いは、このイベールだった。

まだ大学院を出たての僕を、今や世界の山田和樹さんが松尾先生にご紹介下さり、セントラル愛知交響楽団のコンサートでのソリストに抜擢して下さった。
と聞いている。(山田さんとの話はまたいつか)

以来松尾先生とは、セントラル愛知交響楽団、愛知室内オーケストラ、また女声合唱団等とも共演を重ねさせていただき、イベールは3回目となる。

松尾先生はキャリアの浅い僕の可能性を信じて下さった、僕にとって、恩師いうのはおこがましいかもしれないが、宗匠のような方だ。

今回のコンサートは先生の受賞記念コンサートで、先生のこれまでの音楽人生で思い入れのある曲がプログラミングされたが、その中にイベールの室内小協奏曲が並んだのだ。

サックスのコンチェルトが普通にプロオーケストラのコンサートにプログラミングされることは、かなり稀なことだ。

音大のコンサートや各種新人演奏会等で取り上げられることはあっても、ピアノやヴァイオリンと比べちゃいけないが、管楽器、特にサックスのコンチェルトが実演されるのは稀有と言うしかない。

こういう指揮者がいらっしゃることは、サックスの未来は明るいなと希望が持てる。

本番は、今までのイベールの中では1番本質に近づけた気がする。
演奏しながら、アドレナリンに酔って、このまま終わらなければいいのにと過ぎった。

終演後、いつものTHE KINOSHITAに妻と訪れると、仙台からコンサートを聴きにきてくれ、ホテルへ帰りしななぜか導かれるように1人でそこにフラッと寄った父と遭遇した奇跡に狼狽えた。

さすがTHE KINOSHITA、なぜか皆集まる。

元名音大学長の盒鏡萓犬函4人で遅くまで盛り上がってしまった。


余談だが、カデンツァに入る時、ふと客席から携帯電話の着信音が響いた。

僕は少し落ち着いて、ゆっくりと用意したカデンツァに入ったが、内心少し焦っていた。
やはり音楽と聴衆の集中力が途切れたのは否めない。
本番終了後、事務局の方が、「カデンツァなんだから、着信音の音マネとかサックスでやっちゃえば良かったのに」と仰った。

なんでも、割とそういう事例は世界に溢れているようで、演奏家のユーモアが客席を和ませているそうだ。

悪いがそんな余裕はない。

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