平成から令和へと移り変わる今年の大型連休を利用し、東北を旅してきた最終日に、福島県立美術館で開催されている「伊藤若冲展」を観ることができた。
今回はその美術展の様子を書き記しておきたい。

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伊藤若冲と東北との結びつきというと、2013年に東北3県(宮城・岩手・福島)で開催された企画展「若冲が来てくれました -プライスコレクション 江戸絵画の美と生命」の大盛況ぶりが真っ先に思い浮かぶ。
当時はまだ美術展を観る楽しみにさほど目覚めていなかった自分ですが(苦笑)、それでも東日本大震災の復興支援の一助として、アメリカからはるばるプライスコレクションが貸し出され、東北3県を巡回したこの企画展のことは知っていた。
見に行かなかったことを後になって残念に感じたものだったが・・・

あれから6年。
今回はすべて伊藤若冲の作品ばかり。
国内外にある若冲の作品を100点前後公開というスケールの大きさもさることながら、普段なかなか見る機会の少ない若冲の水墨画が多く出展されていることと、福島だけの公開というその2点が決め手となって、旅行の行程に組み込んで見に出かけた。

開館(9:30)前に到着するように出向いたにもかかわらず、やはり若冲人気の凄まじさへの理解が足りなかったせいか(汗)、美術館から1駅離れた場所に車を駐車し、飯坂電車に乗って美術館を訪れる!といった想定外の体験もできましたし・・・
入場するまでの列の凄さ、館内の人の多さにとても驚かされた美術展でした。

時間はしっかり確保してあったので、音声ガイドを借り、展示作品をすべてじっくりと鑑賞。
音声ガイドのナビゲーターは、福島出身の俳優 西田敏行。
温かみ溢れる落ち着いたナビゲートで聞きやすかったと思います。


第1章 若冲、飛躍する

伊藤若冲(1716~1800)は京都の商業の中心地、錦小路の青物問屋の4代目として生を受けたのは正徳6年。
幼いころから絵を描くのが大好きであったが、23歳のとき、父の急逝によって家督を継いだのと同じ頃、本格的に絵を学び始めた。

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「葡萄図」 一幅  フィラデルフィア美術館


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「猿猴捉月図」 一幅  キンベル美術館


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「松梅双鶴図」 一幅


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「雪柳雄鶏図」 一幅


第2章 若冲、自然と交感する

最初は狩野派の絵を学んだものの、本人的にしっくりこず、狩野派のルーツでもある中国絵画を模写し続けることで腕を上げていく。
模写を続ける中で若冲の心境が徐々に変化してくる。
つまり、自分の身の回りにある京都で見ることのできる花や鳥に題材を求めることに!
入念な観察を行う中で、若冲にしか描けない絵を追及していった時代。


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「花鳥図押絵貼屏風」 六曲一双  九州国立博物館


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「鷹図」 一幅  公益財団法人摘水軒記念文化振興財団


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「猿蟹図」 一幅



第3章 若冲、京都と共に生きる

若冲の最大の特徴は、生涯ほぼ京都を離れることがなかったことにあるという。
他の地域に作品の材を求めることにほとんど関心がなく、京都のど真ん中の商家から軸足を移さず、40歳で弟に家督を譲ってからも、ずっと京都と共に生き続けたのだ。

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「双鶴・霊亀図」 双幅  MIHO MUSEUM


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「果蔬涅槃図」 一幅  京都国立博物館


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「雷神図」 一幅  千葉市美術館


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「三十六歌仙図押絵貼屏風」 六曲一双  デンバー美術館


第4章 若冲、友と親しむ

孤高の画家、一見そんなイメージが若冲には漂うか・・・
売茶翁との深い絆や、青物問屋の旦那として錦小路の存続に尽力するなど、若冲は京都の中で人との繋がりを持った画家だったとも言えるようだ。

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「骸骨図」 一幅


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「売茶翁像」 一幅


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「蟹図」 一幅  京都国立博物館


第5章 若冲、新生する

天明8年(1788)の正月三十日、鴨川の東側で発生した火災が、折からの東風に乗って火の粉が京都中に降り注ぎ、京都市街を殆ど焼き尽くす大火となった。(天明の大火)
若冲の住む錦小路も灰燼に帰し、一時的に摂津に仮住まいを強いられたのは72歳のとき。
その後再び京都にこそ戻ったものの、若冲は老いてますます画業への意欲を失わず、様々な手法で作品を生み出し続けた。


今回の美術展で、前期公開の最大の目玉が「蓮池図」。
その作品に描かれた世界が、まさに今現在の福島の苦悩と重なり合う部分が多いとの指摘がなされているが、蓮は泥の中から出でて花を咲かすが如く、復興への希望を与える意義も込めて、今回この作品が福島にやって来たのだろう。


後期展示されていた「群鶏図障壁画(海宝寺旧蔵)」も今回の展示の目玉の一つ。
本物だけが放つ力強さと輝きを目の前にして、息つくことすら忘れてしまいそう。


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「白象群獣図」 一面


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「象と鯨図屛風」 六曲一双  MIHO MUSEUM


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「梅花叭々鳥・牡丹白鶴図」 双幅  公益財団法人鍋島報效会


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「百犬図」 一幅



2時間以上じっくりと若冲と向かい合って、様々な技法・題材の作品を存分に堪能した。
若冲という人は生活のために絵を描いた人ではなく、飽くなき好奇心と向上心を老いてなお持ち続けた画家。
ここ20年くらいの間に急速に知名度と人気を高め、今回の企画展も間違いなく全国あらゆる地域から足を運んだ人たちによって混みあったのだと感じる。
スーツケースを引いた姿で美術館に来ている人をたくさん見たし、飯坂電車も普段ではあり得ないような混雑っぷりだったようで・・・
人混みの嫌いな自分ではあるけれど、今回はそれを押してでも出かけて行って本当に貴重な経験をさせてもらえたと、今しみじみ感じている。