2005年03月25日

芸術というもの

 刀剣類は金属を鍛えて作る製品で、その加工技術は、わが国が世界に誇ることができるものの一つです。この記事の作品は700年前の作品とのことですが、それが現代に残っているのは感慨深いものがあります。
 金属は不思議な素材で、熱を加えたり冷ましたりしながら叩いていくこと(焼きなまし)で密度が高まり、非常に硬くなります。例えば安物の「大根おろし板」がすぐに曲がってしまうのに対して、職人さんがしっかり叩いて作られた「おろし板」は、人が一人乗っかっても歪みません。

 実は、これら刀剣類の加工と楽器の製作は共通点が多くあります。ホルンのような金管楽器に使われる金属は刀剣とは異なり「真鍮」という柔らかい金属ですが、やはり金属なので何度も焼きなましながら加工すると、柔らかいながら、粒子の密度が上がり、硬くなります。これが音色・耐久性・吹奏感に圧倒的な影響を与えるのです。
 ただし、楽器には耐用年数があり、金管楽器の場合だと20〜50年くらいで音が鳴らなく(響きにくく)なるようです。これは、金属に振動を与え続けると粒子の並びが一定になっていくという性質があり、ずっと使われていると劣化していくのはこれが影響しているのではないかと思います。
 一方、弦楽器や木管楽器の寿命は金管楽器のそれよりも長く、特にストラディヴァリウスなどは17年代前半のものが現在でも使われています。どこかで聞いた話では、弦楽器は良いプレイヤーと修理職人に恵まれると300〜500年後に最高の状態を迎えるといいます(えらいアバウトですが許して)。ストラディヴァリウスはまさしくその円熟期にあるので、良い音がするとされるのではないでしょうか。「現代の技術をもってしても再現できない」とはよく言われていますが、年月と人が楽器を仕上げて最良の状態に持っていくものですから、それは仕方が無いというか当然のことでしょう。
 楽器と人が共同で長年作り上げていくというのには感慨深いものがあると思いませんか?
 そういえば、ストラディヴァリと同じクレモナ地方の有名なアマティという職人が作ったチェロを持つプレイヤー(マヌエル・フィッシャー・ディスカウ氏)と共演したことがあるのですが、プレイヤーの技量はもちろんのこと、そこから出される音にはもう、本当に驚きました。腕と楽器がどちらも優れているとあれほどの音が出せるのだということが初めて分かりましたよ。

 なお、トラックバック先の管理者の方は、私が仕事上知り合う事ができた方で(お酒の席だったのですが)、本業の合間に趣味として「刀剣のソムリエ」を目指しているのです。刀に関して熱く語る姿は私の楽器に対する想いと似ている所があると思ったものです。
horns at 01:53│Comments(0)TrackBack(0)ホルン 

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